【厳冬の罠】 黒狐の断末
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:Urodora
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 40 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:12月22日〜12月27日
リプレイ公開日:2006年12月29日
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●オープニング
【これまでの出来事】
王国顧問ラスプーチンの介入を受けて、賊討伐に向かった銀狐兵団の小部隊。
激戦の末、かなりの被害を被ったが無事任務を遂行する。
その裏に冒険者たちの尽力があったのは、公式文書に記されていない。
小隊を率いた者の名をニコライ・イヴァノヴィチ。
虐待の咎で謹慎を受けた彼を指揮官にすえた王国顧問の真意は、定かではない。
そして、聖夜祭が始まる今。
ロシア国王ウラジミール一世は、キエフを発つ。
★★★
『黒狐の断末』
●聖夜祭
キエフの街並は聖夜祭一色だ。
家々の門に色とりどりの飾りつけ、広場に立つツリー。
通りを歩く人々の顔にも、笑みがこぼれている。
その中、ウラジミール一世は、かねてからの計画通り、賑わう街を後にして周辺視察へと向う。
彼の目的が奈辺にあるか? それは今より起こる事件が、その一端を物語っているのかもしれない。
●兵舎
銀狐兵団宿舎。
ドアを叩く、青年が一人。
「ボリス・ラドノフ。入ります」
彼は、前回の任務明け休暇が終わったばかりだった。
一人身だとはいえ、聖夜祭はやはり楽しみにしていた最中、呼び出しとは、何の用なのだろう。
国王様の巡行と何か関係があるのだろうか?
ボリスは、あまり気の進まないまま部屋に入った。
元々銀狐兵団は、ロシア軍主力とはいえ騎士ばかりではない集まりである。それは戦士の集まりである鋼鉄の鎚兵団も似たようなものではあるが。
今回のような国王護衛のような任務の場合、王の主家ルーリック家直属の兵である炎狐騎士団や、赤天星魔術団から選抜されたものが担うことが多く、特に彼、ボリスのような一般団員にとって、聖夜祭を楽しむ余裕があるはずだった。
・・・・表向きは。
「ボリスか。前回の任務ご苦労だった」
「いえ、私一人の力ではありません」
「謙遜は美徳だな。さて、早速なのだが君に新しい任務を与えよう」
「俺、いえ、私にですか」
驚いたボリスに、隊長は答える。
「何、狐狩りの準備だよ、黒色のな・・・・」
●背信
その女は黒髪の美しい女で、風貌、肢体は東洋の美を体現している。
切れ長の瞳からは鋭い視線が飛び、隙はない。
彼女の前には無骨で巨躯な男が一人。傷だらけの顔には冷酷と好色さが浮かぶ。
「で、イレーナさんよ。俺にどうしろと」
「王宮占拠をするさいの陽動作戦を頼む。とのことです」
「ずいぶんと思い切ったことをするじゃねえか、面白そうだな」
「人員はこちらで用意します。決行は王国顧問殿が出立した後ということで」
「ふん、まあ暴れられるのなら俺はそれでいい。それよりも・・・・なあ」
男が女に手を伸ばそうとした瞬間、風が巻き起こり、男は軽くいなされた。
「では、私は準備がありますので、頼みましたよイヴァン殿」
「喰えねえ女だ、まったく」
●ギルド
「え、軍の補佐ですか?」
ギルドを訪ねてきたボリスという青年は、自分が銀狐兵団の団員だと名乗り、依頼があることを告げた。
「はい、正確にいうと俺と一緒に戦ってくれる人が欲しいのです」
「しかし、そういう場合兵団から戦力を出せばいいのではないでしょうか」
ギルド員の言うことも確かだ。
「兵団にも色々ありまして、それにこう言ってしまうと失礼かもしれませんが、ある作戦で本隊の到着までの時間稼ぎを頼みたいのです」
「時間稼ぎですか・・・・。まあ、そういうことなら、しかし聖夜祭の時期になぜ?」
「それは、今俺の口からは、よろしくお願いします」
「分かりました。募集してみましょう」
こうしてギルドに依頼が張り出された。
【ここからは戦闘を行う上での、情報となります】
今回の任務は、銀狐本隊が到着するまで蜂起したターゲットを
足止めする。または、撃破するのが成功の条件となっています。
ちなみに、相手が逃亡した場合、依頼は失敗です。
以下の情報を見、戦いに参加する場合、指針を決めてください。
対決構図
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現地は、雪が積もっていますが普通に行動可能な場所です。
天気予報は晴れ。
「表示記号」
☆ 推定、敵位置
■ 遮蔽物・障害物(主に家屋)
= 道
数字 配置可能位置
『マップ』
←キエフ市街地
■■■■■3■■■■■■
■
1 ■
====☆========
■
■
■■■■■■■2■■■■
王宮方面→
敵のデータ概略も載せておきます。
○ニコライ・イヴァノヴィチ
銀狐兵団小隊長 あらくれイヴァンの異名を取る男です。
膂力はオーガなみ。専用にあつらえた巨大なクレイモアを操ります。
平均的ウィザードの方は、ほぼ一撃で重傷です。
さらに彼の必殺剣を喰らった場合、戦士クラスでも一撃で重傷になる可能性もあります。
といっても、ニコライスペシャルは、そんなに当たりませんが、振ってる剣が剣ですので・・・・。
補助武器として、ショートソード。彼は騎士崩れらしく、オーラエリベイションも使います。
○ニンジャ
どこからか雇われてきたジャパンの忍者です。平均的能力をもちます、術に特化している忍びも数人いるようです。
基本的にイヴァンを援護回復するか、魔法を使うものを狙います。
敵の総数は、両者合わせて8人以下のようです。
図上の配置可能位置に、冒険者を配置可能です。
配置は複数でも単数でもかまいません、どこにどう配置するのかを、はじめに明記してください。
勝つ気なら、多分勝てます。ただ無策の場合大怪我をするかもしれません。
なお、勝敗が決しなくても一定時間すると兵団本隊がやってきて戦闘は終了となります。
敵のデータ、地形などについては、ボリスから聞いたことになりますので、事前情報として知っています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●リプレイ本文
●作戦の前に
ボリスがもたらした情報と冒険者の配置を少し加味しておく
○銀狐本隊は、王宮方面に到着予定。
「配置位置」
1、磧箭(eb5634)アーデルハイト・シュトラウス(eb5856)
ロイ・ファクト(eb5887)エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)
2、シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970) 所所楽柳(eb2918)
ジュラ・オ・コネル(eb5763)
3、サーガイン・サウンドブレード(ea3811)ボリス・ラドノフ(銀狐団員)
敵の数は総数八体のもよう。
●狐狩り
積もった雪。
踏み固められていないそれを踏みしめ進む男が一人。
背負った剣は地に触れるか触れないか、大きさが目を引く。
その男イヴァンは、周りを見渡したあと付き従う黒い影に言った。
「ここか」
頷く影は周囲を探る。
「こんなところで暴れろって、何もねえじゃねえか」
冷たい空気が頬をくすぐる、その時だ。
「さっぶいで御座る。こんな時は酒に限るで御座る〜。お、人が? 聞きたいで御座るがちょうどこの辺りで美味いジャパンの酒を売ってる処は無いで御座るか」
いきなり現われたのは緑色の物体、カッパである。
というかここはロシアのような気が・・・・ジャパンの酒が普通にあるのか不明である。
「なんだこいつは」
鋭いイヴァンの視線などものともせず、カッパの箭は続ける。
「冬といえば、酒と鍋。これジャパンの伝統で御座るよ」
「ああ?」
そのやりとりの背後で動くウィザードが一人。
目配せを交わすシシルと柳・・・・気は熟した。
箭の擬態に不信を感じたイヴァンは付き従う影に周囲の警戒を命じ、自らは剣抜く。
狼狽したふりをする箭だが、すでシシルは魔法の射程内。
物陰からあらわれたシシルは呪文の詠唱を終えるが、魔法は抵抗される。
「俺に逆らうだと、木っ端どもが、潰せ」
叩きつけられた剣を回避した箭と同時に現われるロイ、エリヴィラ、アーデルトハイトと後方からジュラ。
前衛の四人を出迎えたのは炎の洗礼だった。
火炎のダメージは大きい。魔法ではなく、火遁の術は火炎そのもの抵抗はできない。
そこへ突撃してくる忍者は三人。
焼け焦げた匂いの中、エリヴィラ、ロイ、箭、ユニコーンとアーデルトハイトはイヴァンと忍者を牽制しひきつける。
もう一方、残った忍者はジュラ、シシル、柳に向かった。
同じく火炎の洗礼を受ける三人の身も危うい。
急ぎ物陰に戻ったシシルは呪文の詠唱を始め、忍者を引きつけた柳、ジュラもひとまず忍者を牽制しつつ突破を試みる。
受け流した刃、叩きつける炎の鉄笛、一つ、二つ、三つ。
これで何度目だ、きりがないな。彼女はそう思いつつも打つ、その間にシシルの呪文によって忍者二体は氷柱に封じられ、突破したジュラはイヴァンへ向かった。
シシル嬢は大丈夫だろうか? ウィザードであるシシルのダメージはきっと大きい。
それでも、今はこの場をなんとかするのが、きっと自分の務め。
柳は笛を構えた。
剣は轟音、宙を凪ぐ。
舞い散る雪、剣風に威圧されたエリヴィラの動きが、一瞬止まった。
「小娘は、家に帰って震えてな」
その挑発に答えるエリヴィラ。
「何よ、口ばっかりで図体だけでしょ。あたしみたいな小娘一人倒せないなんてたいしたことないね、おじさん!」
「言うねえお嬢ちゃん。ってよくみりゃ可愛い顔してるじゃねえか、楽しませてもらおうか色々と」
イヴァンは楽しげにエリヴィラに言う、それを聞いたジュラはすかさず
「しゃべった! このミノタウロス、しゃべるぞ!」
ちらりとジュラに視線を向けたイヴァンは
「ああん、まっ平らには興味ねえよ。牛の乳でものんどけ」
どうやら、イヴァンにとってジュラは対象外のようである。
その言葉に微妙な屈辱を感じつつ、ジュラは近くいた忍者に思いっきり剣を叩きつけた。
ボリスとサーガインは仲間たちの死闘を隠れて見ている。
「あの、サーガインさん」
「なんですか?」
「援護しなくていいのかなと」
ボリスの問いに、彼はちょっと芝居がかった仕草で
「フ、出番はこれからですよ。今日こそ私の計画が遂行されるのです。そう、何の邪魔もなく、ああ自由って素晴らしい」
どうやら自分の世界に少し入り込んでいるサーガイン、それを見たボリスは・・・・溜息をついた。
戦いは二局に入る。
死闘を演じる前衛。後方は有利だがダメージも大きい。
無傷のサーガインは機を熟すのを隠れ待っていたが、ついに彼の素敵計画が始動した。
「兵達よ、今一度立つのです。立って抗うのです。ククク」
駆け出した彼は死者に触れ魔法を唱え、立ち上がった不死者にイヴァンを襲うよう指示する。
しかし、それによって目立った結果、忍者が一匹飛んで来た。
それを見た、彼はそのまま元の位置に逃げ去り
「さて、私の出番は終わりました。あとは頼みましたよ、銀狐の人」
そして聖域結界を作り出し引き籠もるサーガイン、その時ボリスが何を思ったかは知る由もない。
そして時は訪れた。
箭が天を翔け、忍者に龍飛翔を喰らわせ戦場を振り向いた時、そこには・・・・。
受け流す刃、光る汗、舞う雪、剣戟、さらに衝撃。
忍者とイヴァンの連携に守りを崩されたのは
「エリヴィラ!」
ロイの叫び、彼はすかさずイヴァンとエリヴィラの間に割り込むと、さらに振るわれる忍者の刀を手甲で受け切り返す。だがロイを見たイヴァンは歪んだ微笑みを浮かべ呟いた。
「消えな」
天を突く剣、一振りの影、細切れの時間が連続し組合わさった時。
落ちた一撃は終りの誘いまともに斬撃を受けたロイは吹き飛ぶと、痛みより先に意識が途絶える。
とっさに箭は残ったダーツを牽制に投げ、ジュラとアーデルトハイトも援護に向う。
立ち上がったエリヴィラはロイが吹き飛ぶ姿を見、ロイは・・・・動かない。
エリヴィラの胸を鼓動が弾け、熱さは全身を駆け巡る。言葉はいらない、剣を握れ、全てを倒せ、失ったものを取り戻すために、血だ、贖えぬ罪は血で清めよ、雪を染めて消してしまえ。
(いけない)
アーデルトハイトは、エリヴィラの様子に気づいた、あれは・・・・。
「やめなさい! 冷静さを欠いてどうにかなる相手じゃないわ」
アーデルトハイトの静止で止まらず、瞳は赤に燃え狂った半人の演舞は続く
「狂化で御座るか、厄介な。Missジュラ。フォロー頼むで御座る」
「了解、あのアンデットは?」
「盾に使うで御座るよ、ともかく今はMissエリヴィラを・・・・」
無意味に剣を振り回すエリヴィラ。イヴァンと忍者を抑えるジュラ、箭、不死者。
アーデルハイトは、一歩引きエリヴィラの剣を避けつつ前に立ち言った。
「全く、無粋極まりないわ。あなたはそれで満足でしょうけれど、彼はまだ生きているのよ。生きて帰らないでどうするつもり」
「うるさい。あたしは奴を倒す」
その様子を見たアーデルハイトは深く息を吐いたあと、右手を高くあげエリヴィラの頬へ向かって容赦なく下ろす、打たれた勢いで倒れかけたエリヴィラへアーデルハイトは言った。
「目を覚ましなさい。彼を見るのよ」
指された向こう、ロイはふらつきながらも立ち上がるところだった。
ロイの安否を確認したエリヴィラの内部から熱は引いていく、立ち尽くす彼女、狂化は徐々に解けていった。
忍者を打ち倒した柳とシシルはポーションで傷を回復している。
その間、二人は繰り広げられた一連の騒動を見ていた。
「シシル嬢、あれは?」
「きっと狂化です。ロイさんが・・・・やられたから」
「恋は時に惨事を招くか。だけどもしかして絶好のチャンス、かな」
今、イヴァンの背後はがら明きである。
「もう一度挑戦ですね」
シシルは間合いを計り、詠唱を始める。
イヴァンは取り付かれたアンデットをなぎ払う。
「ええい、しつこい木偶どもめ」
ジュラと箭の回避能力はかなり高い、よって彼の攻撃は当たらない。その上サーガインのズゥンビも嫌らしくまとわりつき、短気なイヴァンは激昂しはじめた。
すでに護衛の忍者は三人に減ってはいるが、彼自身の傷はそれほど深いものではないようだ。繰り出される一撃を警戒しつつ、確実にダメージを与える冒険者たち。イヴァンの大剣は唸るが何度か空を切る。
そのイヴァンを背後から襲ったのは一陣の呪力。足元に現われる氷の棺、凍結は静かに速やかに進む。
「馬鹿な、このお・・れ・・く・・そ」
言葉は続かない、数秒後残ったのは氷漬けのイヴァン、その瞬間冒険者たちを巻き込む煙、それは窮地を悟った忍者たちの術であった。
戦闘は終わった。
ほぼ全員が傷を負い、それを癒すのに手持ちのポーションを使う、足りないものは相互に多少の融通を利かせるが、どちらにせよ辛勝というところだろう。
アーデルハイトの警戒もどうやら杞憂に終わったようだ、周囲の木々に鳥は一羽いたことはいて戦闘後飛び去ってはいったが・・・・。
一通り終わったあと、箭はダーツは回収しつつ氷柱に呟いた。
「さて、熱燗で一杯。ニコライ殿もいかがで御座る?」
●戦いの終り
かくて戦いは決着した。
危うい勝利ではあったが、勝つには勝った。
しかし、氷柱と化したイヴァンから真実の欠片を手に入れることはかなわず、核心に歩みよるには至らない。
その後、到着した銀狐の本隊と合流した冒険者たちに告げられたのは、視察と慰安に向かった王と王妃の襲撃事件の話。驚く冒険者たちにボリスの上司である銀狐の部隊長は語る。
「冒険者の実力も侮れないものだな。その君たちのことだ、すでに気づいているかも知れない。あえてこの時期にキエフを空にした理由・・・・。それは反乱分子を燻りだすことだ。結果的に裏をかかれたというべきだが。どちらにせよ時間がない、我々は王の救援に向かう。ひとまず任務ご苦労」
旗をなびかせ、銀の狐はイヴァンらを回収するとその場を去っていった。
残された冒険者とボリスは、戦いの余韻にしばし浸っている。
だが、謎は解けたわけではない。
イヴァンを踊らせ銀狐に情報を流した人物、異国の地に現れた忍者とイレーナと名のる女の目的。
そこに起こった王の襲撃、見えぬ王国顧問の思惑、それらの絡み合った糸はいまだロシアの地に根付いている。
しかし、それは今語るべき物語ではない。
今はただ、困難な目的を遂行した冒険者たちの活躍を讃えることにしよう。
剣に名誉、魔術に栄光、雪の激闘に勝利した勇者たちに精霊と神の祝福を。
こうして、王の視察と呼応したキエフ市中での内乱騒動は終息に向かった。
のちに銀狐の部隊で、荒くれイヴァンを倒した冒険者たちの話が噂されたとも言う。
その話を聞くたびボリスは誇らしげに
「腕が立つし気のいい奴らだったよ。変わってた奴もいたけどさ」
笑顔でそう言ったそうだ。
●聖夜祭
ということで目的を遂行した冒険者たち。
聖夜祭のキエフ。賑わいと雑踏の中での彼らの姿を話していくのだが、あえてふれなかったことがある、やはり話さねばなるまい。
今回我らが「てぶくろ」はまともな格好していたようで、嬉しいような寂しいような気分である。
なお、知らない方に説明すると、通称「てぶくろ」とは、まるごとてぶくろという全身防寒着だ。ある意味素晴らしいアイテムで、どんなにシリアスな場面でもコメディに変えてしまうユニークアイテム。それを普段常用しているのが、このパーティーの一人ジュラなのだ。
しかし、ここに男が一人。
「聖夜祭・・・・姉さん達は・・・・。フ、くだらない。それにしても寒いですね。ん、皆さんどうかしましたか?」
男の名はサーガイン・サウンドブレード。アンデッド実験なマゾ青年。
その彼がおもむろに取り出し着た防寒着は、ワイルドな一品「まるごとオオカミさん」ガオー、ガオー。
・・・・最近のキエフは、まるごとファッションが大流行なのだろうか? それとも周りにそういうのばかり集まるのだろうか。少し気になってしまう。
ともかく、ようこそサーガイン君、まるごとワールドへ。てきとうに頑張って♪
それでは、大人しく聖夜の冒険者を観察していくことにしよう。
雪の聖夜、街並を歩く数人。
「柳さんはうちの隊長が裏で糸を引いていると思ったのですか? ここだけの話、立派に見えますけれど戦闘馬鹿なので・・・・そんな頭の回ることはできないと思いますよ」
柳の探りにボリスは明るく答えた。
「そうなのかい?」
「武人たるもの策略ではなく正々堂々と戦えが口癖ですからね。言い方がねちっこいだけですよ。俺は王国顧問殿あたりが怪しいと思いますね、今回の情報もその筋という噂です。それにしてもシシルさんは何をやってるのかな」
ボリスの視線の先に、なにやら怪しい行動をしているシシル。防寒着は無し、風邪引きますよ。
「シシル嬢は隠れるのがきっと趣味なんだよ」
「趣味って、どう見ても前を歩いている二人を尾行してるように見えるんですけど」
「細かいことは気にしない、そういやボリスさんは、聖夜祭を一緒に過ごしたい人は居ないんだ?」
柳の質問にボリスは苦笑いで答える。
「うわ、痛いなあ。柳さんだって一人身じゃないですか。だいたいみんな寂しい人のような。そういやてぶくろさんは普通の姿でしたね。元は結構可愛いのに・・・・」
くしゅん。
「Missジュラ。どうした御座る」
妙な輝きを抱いた猫のマスターシェをあやしていたジュラが急にくしゃみをした。
「風邪かな」
「そういえば、いつもの防寒着ではないで御座るし」
「僕も一応空気読めるからね」
ということは、ジュラのてぶくろは狙っているのだろうか? 謎である。
「それにしてもラヴラヴな街で御座るな、あと前を歩いている推定二名」
そのころ推定二名は。
夜風に女のスカーフが揺れた。
黒であり赤ともつかないそれは白い世界の中映える。だが、男は気づかない。
戦いの中、自分を見失ったエリヴィラ。
彼女は、気まずい思いを抱きながらもロイと歩く。
「あのロイさん」
「どうした?」
そんなエリヴィラの思いに気づくロイでもない。雪の道、二人は無言で進んでいる。
(鈍感男はこれだから。そこで今回のフォローしつつ、そのスカーフ似合ってるよとか褒めるの、ついでに手を繋いで、そのまま・・・・あーじれったい)
ちなみに、心の声はシシルさんです。
広場に進む皆。
聖夜を祝う人々は流れる音楽に歓喜で踊る、たどり着いたその場所。
演奏に合わせ異国の楽士は笛で歌う。
彼女の奏でる軽快だが哀愁を感じさせる音は、どこか望郷の想いを感じさせる。
息をつく楽士、柳の前でぎこちなく始まるダンス。
エリヴィラが差し出した手をロイはそっと取る、触れ合う二人、鼓動は一瞬重なった。
この時間がひと時の安らぎだとしても、今は皆で聖なる夜を祝おう。
(幸せで何より。如何でも良いけど、綺麗な夜ね)
踊る二人を見、夜風の中アーデルハイトはそう思うのだった。
了