喜劇の終幕
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:Urodora
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:3 G 6 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:12月27日〜01月06日
リプレイ公開日:2007年01月04日
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●オープニング
●世俗の人形
聖夜の日、貴方の進む道に幸あらんことを。
恋の歌が流れる街に一組の男女が立つ。
悲壮な想い、終りなき昨日、切り開く明日。
背負ったものが大きければ大きいほど、人は自らを悲哀の主人に仕立てて踊る。
踊る舞台の果てにあるものが未来ならば、今はただ、繋いだ手の先にある愛という名の温もりにひと時の安らぎを求めよう。
その繋いだ手を離したとき
想いが陽炎のように消えるのなら
最後の涙で全てを清めればいいから
「いこうエレーナ」
男は手を取った、明日を夢見て
「ミハイル」
女は答える、未来を託して
あえて言うならば、物語の結末は最初から決まっているのかもしれない。
幸と不幸がないまぜにされた想いの終点。そこに残されたものは悲劇をかたどった喜劇のようなものだ。
ある貴族には子女がいた。貴族は貴族ゆえ階級に縛られる。階級は落差を生み、生んだ先に息づく愛は身分の鎖に繋がれた。
目くるめく炎、交わす契り、その末に選ばれる意思。駆け引きよりも純粋さに儚い望みをつなげた男女。二人が選んだのは・・・・逃避行。
だが、女の首輪の主である父の矛先は容赦なく向けられる。
「方法は選ばん。必ず連れて帰れ。家門を汚すとは恥知らずが」
追われるものと追うもの。その間に何があるというのだろう。
恋に善悪はない。 けれど社会に壁は存在する。
もし光の道筋が一つだとするのならば、この人形たちの舞台も運命という戯れを前に悲劇に終わるのか?
今、劇は幕を開けた。
その筋書きを変える小さな輝きは君たちの手の中にきっとある。
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【チェルニーゴフのガイド】
今回の冒険の舞台は、キエフから北に約140?ほどに位置する、
チェルニーゴフ公国主都のチェルニーゴフとなります。
だいたいキエフから馬車にて、片道三日弱程度の距離です。
・チェルニーゴフ公国の背景
チェルニーゴフ公国の大公は名をヤコヴ・ジェルジンスキーといいます。
当然ハーフエルフで歳は百手前ほど、国王ウラジミール一世とは親戚関係にあり関係は良好のようです。
各大公家と比べると、チェルニーゴフ公国の軍事力は比較的脆弱ですが、後にあげる商人ギルドが抱えている傭兵隊の力で、バランス的には同じレベルに引きあげられています。
チェルニーゴフは交易路の中継地点であり、資源集積地として重要な位置に立つ街です。
よってそれに関連した仕事に従事する労働者が多く、街の規模人口の割りに商業関係の施設、市場、商店、宿場町、歓楽街、スラムが発達しており建築物も立派なものが多いようです。
このような事情から商人ギルドの影響力が大きいのですが、今のところ大公と折り合いは良く、問題はありません。
なお、チェルニーゴフに冒険者ギルドは存在しません。
ですが、ジーザス教黒の教会は普通にありますし、他に小規模の白の教会や、冒険を行う上での施設はほぼ揃っています。
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探索するうえで、それほど有益な情報ではありませんが、そういう場所と憶えておくと旅をした気分になれるかもしれません。
逃亡した二人は、裏に通じていない一般人ですので、一般的施設に潜伏している可能性が高いという話のようです。
●リプレイ本文
●移動してる時に
さて、チェルニーゴフに先行した三人。
シャリオラ・ハイアット(eb5076)、
クロエ・アズナヴール(eb9405)、
シャルロッテ・フリートハイム(eb9900)、
については、また後でふれるとして今はものすごく窮屈な馬車を見てみよう。
え、なぜ窮屈なのかって? 馬車の内部を見渡してみる。
すみっこに座っているイルコフスキー・ネフコス(eb8684)はパラの白クレリックである。
パラはちっちゃい、よって無関係。
その向かいのイリーナ・ユマチェワ(ec0019)、ユーリア・プーシュキナ(eb9784)の二人は、どちらもスタイルはよさげだが、通常の範囲を超える体型ではないの関係なし。
問題は・・・・。
「なんだべ、わしの顔に何かついてる」
魁沼隆生(eb9569)、そうジャパンの君だ! 身長ドデカイ、体重モノスゴイ、そのうえ禿。
素晴らしいです、感動をありがとう。でも、馬車止まりそうです。
しかし、ロシアで仕官の道はあるのだろうか・・・・この国はハーフエルフ超優遇制度というちょっとズレタ国だ。とりあえず、魁沼は違う馬車に乗り換えさせてっと。
それでは、チェルニーゴフに参りましょうか。
●チェルニーゴフにて
聖夜祭の中、新年を迎える準備をする街。
その賑わいと雑踏を歩く女が一人。彼女はときおり道に積った雪を意味も無く蹴りつつ目的地を目指している。
すれ違う幸せそうなカップルの姿を見るたび羨ましいような、むかつくような気分を感じつつ、その女。シャリオラは歩いていた。
目指すのは黒の教会、到着したシャリオラは扉を蹴り破り・・・・ではなく開く。
出迎えた司祭に開口一番、彼女が放った言葉は
「幸せそうなカップルを見るとぶち壊したくなる事ってありません? ・・・・じゃなくて最近こちらの街にやって来た男女を探しているんですけど」
司祭、沈黙せり。
「そうですか。ありがとうございます」
そんなシャリオラとは対照的に、のほほんと情趣収集を続けているのはクロエである。街並の中、彼女も楽しそうに歩くカップルとすれ違う。その姿を見ると追っている二人について思いが及んだ。
(しかし愛の逃避行ですか。・・・・ふふっ、若いというのはいいですね。それにしてもどこに隠れているのでしょうか)
クロエは急ぎ次の聞き込みを始めた。
太陽が西に進む。
歩みを止めた女は隻眼を細め見た。ロシアの冬、短い陽射しが姿を照らす。
美しい女だ。だが、それを損なうものが一つ。顔にかかった眼帯、その奥そこに何があるのか分からない。女、シャルロッテは息を吐くと目の前の看板を見つめた。
(ここが今回の宿か。若さゆえの逃避行・・・・。若いということは同時に愚かであるということでもある。愚かであることそれ自体は罪ではない。だが、自覚できないのは間抜けでしかないな)
シャルロッテは扉をくぐった。
●丸テーブルの宴会
宿の酒場で、先発組は情報の交換をしている。
「さて…手持ちの資金も限られているだろうし、出来るだけ出費は控える筈だ」
シャルロッテの意見にクロエは頷いた。
「そうですね。どうやらこの宿にはそれらしい二人組みはいないようです」
「私も教会で聞きましたが、そういう話はないようでした」
と、シャリオラ。
「捜索は男の情報をメイン探した方が良いかもしれん」
「後発組の皆さんが着いてから、そのように動きましょうか」
先行組と後発組が合流したのは、次の日のことである。
その後、先行組の収集した情報と後発組の情報収集の結果から、どうやら裏通りにある安宿、そこにいる二人。それが一番怪しいのではないか? という結論に至る。
ということで、一応聖夜祭期間。
夜の宿でのパーティーの姿を少しだけどうぞ。
「エールちょうだい」
「シャリオラさん、それ五杯めだよ。大丈夫?」
イルコフスキーの前で、シャリオラがぐいっと呑んでます。
「聖職者が酒か・・・・」
そういいつつ大ジョッキで呑んでるシャルロッテは豪気ですね、さすがアネゴ。
「これは水です。水ならいくら呑んでも大丈夫、駆け落ちなんて・・・・聖夜祭のバカやろう!」
シャリオラは、何かあったのでしょうか。
「うめー、これ何でございますか? うひゃひゃ」
何か語尾が変、酔ってる? 食べすぎな魁沼はそれ以上肥えると帰れませんよ。
「父さん、母さん、ペットのほにゃらら。イリーナは元気です」
多分、寝ぼけてますね。
「男なんて・・・・男なんて・・・・男なんて・・・・男なんて・・・・男なんて・・・・」
ユーリアにあえて言い返しましょう・・・・女なんて・・・・。
「皆元気ですね。せっかくの聖夜祭楽しみましょう」
ということで、ニコニコしているクロエの一言で宴会は閉め、ってちょっと待った。
「お会計、合わせて5Gになります」
・・・・。仕方ない、宿代も含めて必要経費にあげときます。
●捕縛と血
確定した事柄を覆すことは容易ではない。
ましてや、運命という名の舞台で踊る人形たちにその手段を覆す手段など残されてはいない、逃げる旅人はあてどなく迷路を彷徨うだけだ。そして、迷路の案内人はいまだ・・・・。
到着していない。
その二人を追う影は白刃の煌きを伴う、刃の主たちはあの言葉を忠実に遂行する。
ある男は言った。
「方法は選ばん。必ず連れて帰れ」
方法はいくつもあるだろう。だから彼らは選んだのだ。とてもシンプルかつ無意味な方法を・・・・。
チェルニーゴフの逃走劇がここに始まる。
はたして、道先案内人たちはこの劇に間に合うのだろうか?
クロエ・アズナヴールは自らの懸念が当たらないことを願った。だが、宿の出て皆で捜索に向かう道。それを見た、逃げる男女を追う何か。彼女は剣を抜くしかないことに気づいた。逃げた兎を捕まえる猟師は自分たちだけでは無い。走り出す彼女、抜いた刃は赤く光る。
クロエの行動に一部メンバーも事情を悟った。横道で迷子になっていた魁沼は少し遅れたが。追うものとそれを告げるもの、彼らは二手に別れる。
小さな広場で四本の剣が逃げる一組の男女を包囲している。
広がる白い世界、教会の鐘が終りを告げた。
そして剣は、ただ。
無慈悲に振るわれた。
血が空に舞う、時間の連続は体に切っ先を滑らす、散った赤が美しい。
命の灯火は消える寸前に輝く、彼の命もきっと綺麗に輝いて消えるだろう。
だが、その輝きは弾けなかった。
殺気に気づいて振り向く影。
「間に合った」
「下衆が、恥を知れ」
息を切らせて走りこんできたクロエ、次にシャルロッテ。
彼女らは間に割り込むと有無も言わせず影たちに切りかかる。あとから追いついた五人は、それぞれに己のできることをする。 戦闘はたいして時間もかからずに決した、相手は戦闘のプロではない。
降伏した彼らは冒険者に恨めしそうに言う。
「あんたたちも、連れて帰るのが目的だろう? それなら男を消して何が悪い」
彼らの言うことも一理ある。賛同できるかは別とはいえ。
それを聞いたイルコフスキーは、空しさよりも怒りを感じた、その想いは知らぬ間に言葉になって迸った。
「違う! おいらはあんたたちが言ってることを認めない。愛だけで人は生きられないけれど、愛を失ったものはみじめでしかない。おいらは、二人の幸せを願ってここにきたのに・・・・そんなの、そんなの変だ」
なぜだろう、胸が痛い。イルコフスキーはぎゅっと十字架を抱きしめるとうなだれた。
「どちらにせよ、この二人は私たちが預かります。お仕事ご苦労さまでした。ああ、治療費は自腹でお願いしますね。しかし聖夜祭だというのに『下衆』がお似合いとは残念でしたね」
クロエのさらりとした物言いは、その場の沈鬱な感じを少しだけ和らげるのだった。
●終幕
形の無いものに答え求めた時、幾通りもの道を示すのかもしれない。
イルコフスキーとイリーナの示す愛の形、逃げない愛。家族のための愛。
それはきっと正しいだろう。
けれど正しさだけで人の心は救われるのだろうか? 流した涙の代償が正義の生贄になるのならば、恋愛という二文字はきっと怠惰な罪なのかもしれない。
エレーナの伸ばした手に、ミハイルの血潮が一滴落ちた。
「私は父を許せません」
強い言葉。憎しみは憎しみを呼び、いずれその連鎖は全てを滅ぼす。
だからこそ・・・・
階級という不可避の壁に阻まれた恋人たちと愛の名を冠した悲喜劇。
その終幕は、間近だ。
夕陽に照らしだされた街。赤と朱の混ざったそこに九人の影が伸びる。
その中で彼らはその想いをそれぞれ語った。
シャルロッテは、イルコフスキーの手によって傷を癒した恋人たちに向かい言う。
「カーテンコールを望むのかい? 運命なんてものは責任を背負って自分で選択するもんだ」
それを聞いたクロエが、とぼけた感じで続ける。
「私たちは連れて帰ることが仕事ですからね、そのあと新しい依頼があれば受けるだけです『逃亡の手助けをして欲しい』なんてあったら面白そうですね。・・・・後はご自由に」
二人の言葉を聞いたイルフコフスキーは、あえて口を挟んだ。
「でも、愛だけで人は生きていけないよ。今が良ければそれでいいなんて、それは本当に愛なのかな? おいらは違うと思う。それに逃げるだけじゃ何も解決しない、だから・・・・」
だが、続かない。彼にも分かっていた。
相手を殺してでも娘を取り戻そうとする父親と話し合ったところで、妥協点を見つけるのはきっと難しい。それでも・・・・。
黙ったイルフコフスキー、続けてユーリアが言った。
「私は、皆さんの意見に従います。けれど一つ。首尾よく逃げたところでこれからどうやって生活していくつもりなのですか? 恋なんて醒めればそこまです。男なんて、みんな・・・・同じ」
滲む不信、彼女の過去に何があったかは分からない。だが、その視線に拭いえぬ冷たさが混じる。
それを聞いていたイリーナはふと思った。家族は大切にしなければいけないのもの。
けれど、この二人もいずれ家族を新しく作るのかもしれない。それならば、自由の無い鳥籠の中に戻すのが、本当に彼らにとって幸せなことなのだろうか。何が正しいのかなんて、分からない。分からないなら。
彼女はあえて何も言わず、その場の流れに任せる。
最後に口を開いたのは、斜に構えた微笑みを浮かべている、やさぐれ気味のシャリオラ。その笑みが怖いのは気のせいだろうか・・・・。
「世の中、全て丸く収まるほど甘くないです。一度の失敗程度で諦めるなら、そのほうが自分のため。この先どうするかなんて私は知りません、それは貴方達の意思ですから」
突き放した感じでいうシャリオラ、彼女の言うとおり選択するのは冒険者ではない。
二人なのだ。
陽が傾く。
恋人たちの手に金貨。
白い指が金貨をなぞると弾いた。
高い音、空に跳ねた金貨は夕陽を背に回る。
放物線を描き落ちたそれは、一人の観客の手にのった。
「第二幕への入場料。確かに受け取った」
シャルロッテの手のひらの上、金貨が輝いている。
かくして喜劇は幕を閉じる、悲劇を抱えたままに。
彼らの選択は正解だったのだろうか? 閉じた幕の先で劇はまた繰り返されるのかも知れない。
けれど、今はあえて愛を信じたい。
嬉しそうな二人の姿を見る限りそれも悪くはない。新しい幕があがるのは先のこと、その結末がどう終わるのかは。
彼らの愛しだいなのだから。
(一件落着だべか、まったく贅沢だべさ、わしなんて生きるのもぎりぎりでロシアに来たべ、生活できるだけ十分。さあ、とっとと帰って報酬、報酬 )
『魁沼隆生・冒険のおもひでより抜粋』
●便り
皆さんお元気ですか? 私たちは元気です。
あの時は、お世話になりました。
移り住んだ街は田舎ですが、住み心地がよいところです。
最近、やっと家事にも慣れました。
楽しいことだけではなくて辛いこともあるけれど、それでも良かった、そんな気がします。
シャリオラさん、やさぐれててちょっと怖かったのを思い出します。
イルコフスキーさん、説得してくれたのにごめんなさい。
クロエさん、ボーっとしてるようで、結構鋭い人な気がしました。
魁沼さん、仕官頑張ってくださいね。
ユーリアさん、世の中悪い男ばかりじゃないですよ。
イリーナさん、私の分もご家族を大事にしてあげてください。
あと、眼帯の女騎士さん? 貴方の言うように、これから自分たちの人生。
その責任を背負って生きます。
色々ありましたけれど、いつか父もきっと理解してくれると思います。
それでは、またどこかでお会いできることを祈って。
エレーナ
今、劇は静かに幕を下ろした。
了