革命の舞踏
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■ショートシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:8 G 76 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:04月30日〜05月05日
リプレイ公開日:2007年05月08日
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●オープニング
●これまでの経緯
冒険者の力を試すべく蛮族掃討依頼を出した国王ウラジミール。
掃討作戦の功績を持って冒険者は有用と考えた彼は、次は国内情勢に一端目を向けた。
一方その頃、王室顧問ラスプーチンにも独自の動きが、表向きは国家を支援する活動を行っているように見える彼、しかしその思惑は?
★★★
『革命の舞踏』
文書
国王がキエフ郊外の親王派貴族邸を訪問することは、すでに決定された事項。
今回、他方面からの助力により警備は最低限度に留められる、この点からも機会を逃すのは無為だろう。よって作戦の成功確率は飛躍的にあがったとみる。準備を行うよう指示。
次に・・・・。
部屋に影は二つ。送られてきた文書を前に話している。
「また、思い切ったことをしますね」
「君は言うとおりに動けばよいだけだ。もとより断れるはずが無いのは分かっているだろう」
それを聞いた影の一つが、もう一方を睨む。
「汚いと罵れば満足ですか?」
「好きにしたまえ。だが、君の手腕には期待しているよ」
そして部屋には、うなだれた影だけが残された。
●黒狐の逃亡
最近の平和と春の暖かさの訪れに、眠気に欠伸と格闘している浅黒く精悍な顔した中年の男、名をブラーギン。銀狐兵団の小隊長である彼は、多少退屈しつつも毎日を過ごしていた。しかし、その眠気を吹き飛ばすかのような報告が突如もたらされる
「はぁ? イヴァンが逃げた」
「という噂が流れていますが、真偽は不明です」
驚いたブラーギンに部下が返す
「・・・・噂ね、噂ってやつは、だいたい三割ほど真実を含んでいるものだ」
「今は時期が時期ですからね」
どこか含んだ感じのする部下の言葉に、ブラーギンは
「きな臭さ満点だな。匂うな、匂う、匂う。しかし、いまさらあの膂力猿をどうするつもりだ。力しか取り得が無いだろう」
「それを必要とする者がいるのでしょう。もしこれが事実だとすると、やはり」
「手引きができるのは、内部の人間かもしれんな。本営の警備を破るのは容易ではない」
「上層部ですか?」
「おそらくな、身内を疑いたくはないが」
その時、ブラーギンの脳裏にある男の名前が浮かんだが、彼はあえてそこで沈黙を守った。
●銀狐兵団兵舎
最近は、何事もなく一兵士として生活していた銀狐兵団一般兵ボリス・ラドノフ。
そんなある日、朝から道で二度転ぶなど、不運と嫌な予感を感じ兵舎にやって来たところ、案の定呼び出しが掛かった。
「ボリス・ラドノフ入ります」
お馴染みとなりつつある光景に、今度はどんな無理難題を叩きつけられるのか、内心溜息をつくボリスにブラーギンは言った。
「まあ、そんなに硬くなるな、今日は私個人の頼みだ。手短に言うと、ある男の身辺を調査して欲しい」
「調査? 思ったより単純なんですね」
「ああ、証拠は無いのだが気になってな」
ブラーギンの表情が曇る、それを見たボリスは珍しいと思いつつも問う。
「それで、誰を」
一息おいたあと、
「銀狐兵団参謀ヴィトゲフト。私の旧友だよ」
そう彼は言った。
●街の闇
目覚めたばかりのそれは、予想以上に面白い事態がこの国で起きていることを知り、悦びに震えた。
そして、それは確信にも似た予兆をたどり此処にやって来た。訪れた先に居たのは見知らぬ何か。いや、知っている、だが違う形をした意思。
その影へ敬意を示すかのように尻尾を振ったあと、それは言った。
「貴方に恩義も義理もない。しかし、争いを起こすのは我が望み。一枚噛ませてもらおう」
それの発言に暗闇に居る何かは答える。
「好きにするが良い。邪魔をしなければ問題は無い」
月明かりに照らし出されたそれは、その返事を聞き嬉しそうに大きな二枚の翼を一度羽ばたかせた後、人型へ身を変え街の雑踏に消えて行った。
●リプレイ本文
●宿屋
さて、ボリスと合流した冒険者たちは、ひとまず今後の対策を立てる上でマナウス・ドラッケン(ea0021)が用意した宿屋に集まることになったようだ。
ボリスは、マナウスをはじめて見るのだが、第一印象。なかなか気が利く男だと感じたようだ。
次にあらためてボリスは、その他のメンバーを見る。なんだかどこかで見たことがある。というより全員知っていることに気づいた。
その中の一人、デュラン・ハイアット(ea0042)こと冒険野郎デュランは
「今日は暇つぶしにやって来た、特にすることもなくてな」
暇つぶしで冒険とは剛毅な男だ。というよりも、そういう時は大人しく勉学に励むのがウィザードという気もする。 だが、そんな正論が効くデュランではない。
あれでいて、彼は彼で内心は意外と繊細なところもある気もする。けれどそこまでフォローしている余裕は、今日はない。
「久しぶり、その後どう? エリヴィラ嬢」
所所楽柳(eb2918)は、かなりお久しぶりのエリヴィラ・アルトゥール(eb6853)に挨拶をした。
その後というのは、きっと愛と恋の二文字にまつわるエトセトラな話のことだろう。エリヴィラは、その質問に対してどう答えれば良いのか迷っていたところ
「エリたんは無事くっつきましたー、拍手、拍手」
「や、やだ、シシルさん」
シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)が、なぜかにやけつつも、代わりに答えるとエリヴィラが赤面している。まったく恋する乙女というものは無敵である。
「あらら、結構やるもんだね。エリヴィラ嬢も」
そう言う柳は、いまだに独り身なのだろうか。
「見知った顔ばかりね、お願いするわ」
アーデルハイト・シュトラウス(eb5856)は、ちょっと軽快な場の雰囲気に流されることも無く、にこりともせずにそう言う。相変わらずクールさが売りである。
その後ろの方で、叫ぶ男が一人。
「だから、間違えたの分かる? 誰でも間違いってやつはあるよね」
どうやら、マナウスは部屋数やらを少し間違えて発注していたらしい。もしかして、なかなかのお茶目さんかもしれない、
彼は確か、生活用品を全部忘れて冒険に行った。そんな伝説も小耳にはさんだ気もする事実なのだろうか? 事実ならちょっとした忘れ物王者だ。
ということで、これからの動きについてそれぞれ話し合うことになるわけだが、心持ちこのメンバーに一抹の不安を感じているのは、きっとボリスの気の迷いだろう。
●情報収集
「そんじゃま、一丁行きますかね」
そんな掛け声のあと、一丁目的地にマナウスは着いた。
彼の目指した目的地は銀狐兵団、銀狐はロシア王国の一翼を担う軍である。そんじょそこらの適当な貴族の私兵とは格が違うため、それなりに規律なども厳しい。
「そこのお前何のようだ」
早速、マナウスは衛兵に捕まったようだ。彼は物見遊山の観光客を装ったようだが、よく考えると観光客が軍の兵舎の内部に来るというのは、ちょっと怪しい。怪しいというより、たいてい軍の兵舎などは重要な区域にあるもので、コネや許可証が無いと簡単に入れるわけが無い気もする。しかし入っている。ということは?
「侵入者だ!」
の声とともに、なんとか逃げ出した彼。
とりあえず軍に来る時は、始めにボリスをきちんと通しましょう。
シシルの質問にボリスは答えた。
「隊長によると、最近参謀殿の様子がおかしかったらしいのです。妙にふさぎ込んでいて、言動にもそれは表れていたというか。ヴォルニについては、起きた事件全て彼の地の領地内での出来事のため、国として不干渉という話のようです。あ、そういえばどうしてシシルさん、姉がいるのを知っているのですか? 最近家に戻ってきて・・・・暴れてるんですよね。早くどっか行かないかなあ」
ボリスは本気で姉の行動を嫌がっているようだ。いったいどんな姉なのだろう。
柳は、参謀宅周辺で聞き込み。和服は目立つ。
「そこの嬢、ちょっと聞きたいことがあるのだけど」
なぜ、女にしか声をかけないのか不明だが、柳はさきほどから道行く女性に楽器の話を聞きまわっている。
その背後には、柳の女好き・・・・ではなくて、情報収集の目的があるようだ。
「変わったことね、そう言えば、最近この家の子供さんを見ないわね」
調査を続けているうちに、いかにも怪しい情報掴んだ柳、これはもって帰る必要があるだろう。
「それより、ボリスさんに自慢しないとね」
柳がボリスにナンパをアピールしているのは、丸分かりである。ボリスもいつになったら落ち着くのだろう。
多分無理。
「そう、イヴァンが逃げたのね。大人しく捕縛されていれば、二度狩られることも無いものを」
「という噂ですよ。それもあって、上層部で最近おかしい人を調査しているわけです」
アーデルハイトは、ボリスからイヴァン逃亡の噂を聞いていた。あの時と違って今の彼女なら、イヴァンに引けをとるこは無いだろう。アーデルハイトは無言で自らの剣を握り締めた。
エリヴィラは、なぜか楽しい気分でお買い物をしている。もう新婚気分なのだろうか? と、そんなわけではなくて、聞き込みのようだ。
「エリヴィラさん、妙に嬉しそうですね」
着いてきたボリスに、エリヴィラはうきうき気分で答えた。
「そ、そうかなあ。そんなことより 理想の人とめぐり合えました?」
「いや、最近仕事ばっかりで」
「駄目ですよ! ちゃんと出会いは探さないと。待ってるだけじゃ何もないですよ」
「な、何か余裕ですね。エリヴィラさん、最近ちょうど良い年上・・・・が」
きっと勝者の余裕という奴だろう。ちなみにエリヴィラの情報収集で分かったことは、食料を買う量が減ったということと、とある場所に食料を運んでいるということだ。
デュランは、かなり知的な行動に出た。いわゆる偽装工作という奴である。色々語りだすと長くなるので、詳しいことは次ということで。
●革命前夜
「何、その急展開は?」
マナウスが驚くの無理もない、なぜならデュランがもたらした報は、国王襲撃計画についての一端を明確に示すもので、それは3日の夜にも行われるという話だからだ。
その他のメンバーの調査を加味して、参謀が計画の実行者であることは動きようの無い事実、そして参謀は何かしらの弱みを握られているという推測が立った。
「きっと、いまから、参謀を抑えても間に合いませんよね」
シシルの言うとおりだ、水竜亭でウェイトレスをしていた彼女は、その格好のままここにやってきている、事は一刻を争うだろう早く着替えたほうが良い・・・・ではなくて、このまま調査を続行して悠長に彼を改心させている暇など無い。
なぜなら国王の貴族邸訪問は3日である、その3日とは今日のことなのだ・・・・そして今は夕方。
「襲うとしたら、やっぱり夜か、深夜だろうね」
「あたしも、そう思う」
マナウスの意見に、エリヴィラが同意した。それが何を意味をしているのかは、簡単な帰結だろう。
「俺は軍に戻ってこの報を伝えておきます。皆さんは、一足先に国王様の護衛に向かってください」
ボリスはそう言い残すと、駆け出す。
「国王に貸しを作るいいチャンスだな。このデュランの名前をロシアに轟かす絶好のチャンス」
デュランはいつもの通りのようで、安心した。
「知らないうちに、結構凄いことに巻き込まれているようだね」
そんな柳の言葉に、アーデルハイトは
「そうね、でも私はいつもように戦うだけよ」
「アーデル嬢らしいね」
柳はそう言うと、アーデルハイトに微笑んだ。
いつの間にか国家規模の陰謀に巻き込まれているメンバー。
果たして、彼らは無事ギルドの土を踏むことはできるのだろうか?
●革命の舞踏
3日深夜
国王ウラジミールが親国王派の邸宅を訪問中に蜂起は起こった。
護衛の炎狐騎士団は、とある筋の介入により数がなぜか少数規模に抑えられている。その間隙を縫って、反王派の諸勢力を結集した銀狐兵団参謀ヴィトゲフトの指揮の下、周囲を完全に包囲した叛徒達は、国王を抹殺し国家体制を転覆するため進攻を始める。
本来防備に向かない貴族邸である上、実力差があるとはいえ、護衛の数も少ない現状では王側の劣勢は否めない。
そして、進行してくる叛徒の先頭には、大剣を操る巨躯の男の姿がある。
第一次攻防戦により国王側の防衛線は、ほぼ崩壊。建物内に進入するのも時間の問題となった頃・・・・彼らが到着した。
4日未明
集団戦闘を、それほど得手とはしない冒険者たちではあるが、デュランとシシルという二人のウィザードの魔法攻撃は、かなりの効果を及ぼした。
つづいて、マナウス・エリヴィラ・アーデルハイトら戦士が突撃を開始する。相手は兵士とはいえ、個々にされほど技量をもつ者たちではない、一端は戦線を押し返しすかにもみえた。
しかし、敵方から魔法攻撃が始まったのを見たシシルの指示により、後方に退却後、柳の補助を受ける。
乱戦となりつつある中、
「あの時の女じゃねえか、まだ生きてやがったか」
イヴァンは、アーデルハイト、エリヴィラに下卑た視線を向けて言った。返す言葉もなく剣を振るう二人、イヴァンの大剣が空切ると戦いは始まった。
4日早朝
その声が聞こえたのは、どこからだったろう
「国王死亡、国王死亡」
そのざわめきは、戦場を駆け抜けた。士気が一挙に上がる叛徒とは別に、敗北を確信した国王軍。
だが・・・・
「国王陛下は無事、負傷、負傷」
その報に多少なりとも、士気が戻る国王軍。
「いっそのこと、私が国王というのも・・・・よいかもな」
デュランが、本気なのか嘘なのか分からない言葉を呟きつつ、雑魚を吹き飛ばした時だった。
「そんな冗談言ってるなら、まだ大丈夫かな」
血だらけの槍を構えたマナウスがデュランに向けて言った。
情勢的には、いまだ国王側が不利ではある。しかし、すでに大局決したも同然だ、なぜならば援軍は、もうすぐそこに来ているからだ。
朝日が昇る頃、ブラーギン率いる銀狐兵団、その他警備軍が場に到着する。
敵の残存兵力は、残ってはいたが、すで散り散りになり逃げ始め、軍としての体裁をなしてはいない。
残されたのは参謀ヴィトゲフトと、エリヴィラの剣の前に倒れたイヴァンの姿のみだった。
●革命の終わり
参謀ヴィトゲフトの捕縛により、国王抹殺は失敗に終った。しかし、国王は中傷という結果である。あと少し遅ければ、その命も危うかったかもしれない。
今回の計画の裏に何が居たのかは、冒険者の情報によってヴィトゲフトが脅されていた原因、誘拐された家族を銀狐が保護した結果、彼の口より語られた。
どうやら、王室顧問と関わりの深い有力貴族が、ヴィトゲフトを脅迫し計画を主導させたということらしい。
その報を聞いたウラジミールは、しばらくの間無言であったとも言われている。
どちらにせよ、これにより王室顧問ラスプーチンの立場はかなり悪化した。
いまだ俎上に上がってはいないとはいえ、この事実を覆す何かが無い限り、王国内での彼の立場は非常に危ういもの、そうなったといえるかもしれない。
かくして、国王襲撃事件は、ここに幕を下ろしたのであった。
だが、国王襲撃を防衛した裏で活躍した六人冒険者がいた事は、正史に記されていない。
●羽ばたく者
それは直接的な介入せず見守っていた。ここは街の中だ。もし高位の実力者がいれば例えそれであっても無傷ではすまないだろう。だから間接的に争いを助長することで満足することに決めた。
この地で活動することはすでに許しを得た。後は自らがもっとも動きやすい場所を探したほうが無難だろう。
それは、一声叫ぶと人から獣に姿を変え、夜闇に向かって飛んで行った。
了