●リプレイ本文
●オープニング
そろそろ春。
暴れている死体さんたちも腐敗してくる頃。その退治を受けた冒険者たちは、集落の近所にあるという開拓村に向かっていた。
国内がなにやら色々きな臭い中、彼らは結構のほほんと歩いている。
ある意味平和だ。
いつもより人数が多いので、各自紹介している暇はなさそうだが、ひとまず村についた後活動している人たちをどうぞ。
河童と聞くと普通のタイプがあまりいない気がするが、それは緑色の宿命だろう。とはいえ、今のところ泡小麟(eb5797)は情報収集をするなど真っ当な感じだ。
「で、これが見取り図ですわん」
彼女の必殺技「ケリチョンパ」。頭文字を首にすると、さっぱりして楽しい気分だが、それは違う方面に物議を巻き起こすので、却下。
「そうか、これが地図。よし、頭に叩き込んだぜ!」
ラドルフスキー・ラッセン(ec1182)こと略称ラドラドは、地図を頭に叩き込んだ。マッピングすれば良い・・・・そんな突っ込みは受け付けない。ウィザードは頭を使うのが掟。
ミシェル・サラン(ec2332)はシフールである。シフールと聞くと、知的なタイプは絶滅したかのようにも、たまに言われるが、彼女は普通のようだ。
「そうなんですよ。ズゥンビと一緒に暴れていて、驚きましたよ」
「後のことは私達に任せておいて」
ミシェルは色々話を聞いて、偵察にでるらしいが、敵はズゥンビを引きつれ暴れているというよりも、遊んでいるような感じを受けないでもない。
他にも話を聞いている人員として
「ま、ここは任せてもらいましょう」
白クレリックのわりに、ちょっと冷めているというか暴力的なマイア・アルバトフ(eb8120)。婚期は気にして無いように見えて、内心少しあせっている感あり。ただいま花婿募集中。
「皆さん大変でしたね。気をおとさず、頑張ってください」
逃げて来た人々を慰める彼女。これぞ白クレリックなフェノセリア・ローアリノス(eb3338)。やはりクレリックというと優しげで清楚に限る。
いや・・・・別にマイアがそうでないとは一言も・・・・。比較、そう比較しただけだ。
「俺の絵は役に立ちましたか?」
ラッカー・マーガッヅ(eb5967)。冒険者というより、なんとなくお絵描き本業。恋人あり、うきゅうが口癖。
「ええ、役に立ちました。ラッカーさん」
イオタ・ファーレンハイト(ec2055)。あれ・・・・・・ちっさい。あまりその点に触れてはいけないような気がするが、ひとまず基本的ナイトの要素を兼ね備えた彼ともう一人の彼女クレア・サーディル(ec0865)は似た者同士なので組にしてしまおう。
「頼りにしています」
クレアの眼差しにイオタは無言で頷く。
という感じだ。他のメンバーは適当に過ごしているようだ。
さて、その頃。なぜかキエフ。
「じゃ、いこっかケイトっち」
「う、うむ」
軽いノリの女と黒づくめでデカイ女が食事に出かける光景が見られたらしい。
だからどうした・・・・そう言われてもあまり気にしてはいけない。
●集落へ
集落と言えば聞こえは良いが、どう見てもオンボロな家々が立ち並ぶそこに冒険者たちがやって来たのはお昼時であった。
ここで一首。
「五月雨の 白き渦の只中に 幽けき光あれは命か」
風流な詩吟をいきなり披露したのは尾上楓(ec1865)である。
どうやら今回は普通に冒険へやって来たようだが、下心あり。そして今回食料を忘れている、ひとまず道中で買ったので問題なし。そういう彼にはマイアあたりを紹介しようと思ったが・・・・食料を忘れているので、珍しく彼女が説教しそうなのでやめておこう。
「僕達は、開拓村周辺の集落にズゥンビの歴史について調査と退治にきました。それでは不思議発見!」
自称ミステリーハンターの彼、ズゥンビに歴史も何もあったものではないが、とりあえずこれで良い。
「あまり浮かれぬようにな、任務はまだ終ったわけではない」
尾上に声を掛けたルザリア・レイバーン(ec1621)は生真面目な女性である。経験的に神聖騎士は真面目人間が多い気もする。やはり神の騎士ということで、ぶっ飛んだ性格ではなれないのだろうか?
「では、わたくしが偵察に」
ミシェルが名乗りをあげた。それではさっそく偵察に行ってもらおう。
●変な二人
「この村も征服したわよ、ダーリン」
「いえい、おかげでオラも一国の主だよハニー!!」
集落の中央あたりにある大きな家あたりに、そいつらは居た。どうやらこの能天気な奴等が報告された黒塗りシフールと醜い小人らしい。どちらもなぜか黒で統一した装備やら服装をしている。何か意味があるのだろうか? ちなみにシフールがハニーで小人はダーリンである。
「これでアフー様の野望がまた一歩成功に近づいたわけね! ダーリン」
「あのお方こそ、黒の一族の総帥に相応しい」
この二人が何を言っているのかは、特に知らなくても良い問題なので省略。とにかく色々面倒そうなので、とっとと退治してしまおう。ちなみにズゥンビはいっぱいいる。墓でも荒らしてきたのだろうか?
もしかしたら軽快なテンポはフェイクで、村を襲ってはズゥンビ化して歩いている凶暴な奴等なのかも知れない。
さて、偵察の結果だが、見つかるも何も敵は油断して隙だらけ、何事もなく偵察を終えたミシェル、敵の様子をパーティーに告げた。
これより戦闘に入る。
の前に、今回の戦闘手順を手短に説明しよう。
「ぶっ飛ばす」
以上。
・・・・では、あまりにも簡易すぎるので、少しだけ。
ラクが変身し敵をひきつける間にミシェルが偵察ってもう偵察してるので、よし。その後ラクが着替えるようだが、覗いて欲しいらしい有志は見に行こう。そしてマイアとフェノセリア、ラクが後方支援、ラドラドが炎で焼き尽くす。尾上・ルザリア・クレア・イオタ・小麟は突撃でOK。
ということで、アンデッド退治はじまり、はじまり。
戦闘が始まり、冒険者達に気がついたブラックコンビは高らかに叫んだ。
「飛んで火にいる生き死体とはあんたちのことよ!」
「ハニー、あいつらはまだ生きているぜ」
「このさい、なんでもいいのよ・・・・・・とにかく、いけズゥンビ軍団!」
わらわらとやってくるアンデッド、集落は凄まじい匂いと這いよる物体の音が充満した。
「さすがに、これだけ居ると壮観だな」
ルザリアが剣を抜いた後、呆れて言った。
「とにかく、やるしかありませんね。不浄なる者を大地に返すのも騎士の役目です」
クレアが厳かに宣言した。その横にいるイオタは、彼女をやや上目遣いで見上げる、なぜならイオタのほうがちょっとだけ背が・・・・低い。
「身長なんて飾りに決まってる、男は中身だ!」
誰に言い訳しているのかは知らないが、とりあえず彼も剣を構えた。
「ハァ〜、戦いの舞☆」
くねくねしている河童。小麟独特の戦闘ポーズである。彼女はなぜか、不規則にからだをくねらせているようだ、その姿アホっぽさではなかなかのものである。それが戦闘にプラスになるのか? 回答に困るので聞かないで欲しい。
「柳生流初学の太刀、三学円之太刀の一つ。閃」
説明しよう、尾上の技である。とりあえずカウンターの呼び方とここでは考えよう。それが無難である。
その後方では、マイアが溜息をついていた。
「大丈夫なのかしら、あれで」
「きっと大丈夫ですよ、大いなる母の加護がありますから」
フェノセリアが微笑んだ。
各自、ズゥンビと戦闘続ける戦士達。その背後から現れたのはラドルフスキー。
「あの集結しているあたりにぶっ放してば、完了だな」
と、同時に火炎の柱がわらわらしているズゥンビに噴きあがる。ついでに腐肉がレアな感じに焼きあがる匂いもするが気にしてはいけない。
詠唱を終えたラドラドは、続けてまた詠唱をはじめた。
戦況は数が多いとはいえズゥンビはズゥンビ、冒険者たちが有利のようだ。それを見た例の二人は、
「何、こいつらやるじゃない。仕方ない奥の手発動。いきなさいダーリン」
「ふふふ、下等生物め。デビールの力を見せてやる」
どうやらダーリンはイオタの推測どおり、一応デビルのようだ。下等デビルでもデビルはデビル、結構強敵である。気をつけよう。
「ちっ、きりが無いな」
イオタはそろそろ10体ほどズゥンビを斬ったらしい、吐く息も荒い彼。そこに現れた黒小人さんは、イオタに向かって一言。
「カモーン、小人仲間」
イオタ・ファーレンハイトにとってそれは屈辱の一言である。
「貴様ー! 生きて返さんぞ」
「駄目です、こんなところで冷静さを失っては」
クレアの叫びも虚しく・・・・。
「あれは、もしかして狂化ですか?」
後方でイオタが暴走している姿を見たフェノセリアが感想をもらした。
「彼は人間だし。普通に切れてるだけじゃないのかしら」
多分、マイアの言う通りである。
イオタとクレアの連携が乱れ、孤立しはじめたのを見たラドルフスキーは、いつもよりニヒル目な笑みを浮かべ。
「やはり俺の力が必要なようだな」
と、またもや火炎の柱を噴き上げる。
「私が援護に向かう」
さらに、手薄にズゥンビ陣へ、ルザリアが切り込む。
「うきゅう。俺はどうしましょうか?」
「わたくしの支援に回ってください」
着替えが終って後方支援についたラクは、ミシェルが氷漬けにするために、ハニーに向かって黒ホーリーを飛ばしている。
その甲斐もあってか、しばらくした後。
「この恨み晴らさずにおくべきか!!」
カチカチカチコチン。何か後で色々怖いが、氷の柱が一つできたようだ。
「皐月の世 光りし氷室ぞ 墓標のごときかな」
尾上がその様子を見て今度は句を見立てた、彼は軽やかなにズゥンビの攻撃を避けては三学円之太刀で切り返している。
「ハ、ハニー。ゆ・る・さ・ん・ぞ、お前達」
相方が活動に不能に陥ったのを確認したダーリンが怒り心頭に達した。その前に立ちはだかる河童が一人。
「赤ズゥンビも、蒼ズゥンビも、中年太りズゥンビも、黒小人さんも全員私の必殺」
くねくね回転度数があがる、はぁくねくねくねくねくねくねくね。
「ケリチョンパ」
三段攻撃からなるケリチョンパ、流れるようなその連続、最後の蹴りが決まってダーリンは倒れる! はずだったが。
「効かんな、効かんぞ。お前の攻撃など見切った」
黒い輝きに包まれているダーリンは・・・・・・。
「エヴォリューションか、厄介ね。これだから悪魔は、悪魔なんて犬に食われて死んでしまえばいいのよ」
マイアが白クレリックのわりに不穏当な発言をした。
「マイアさん・・・・それにしてもズゥンビだけでも大変ですのに」
フェノセリアの言うように、ズゥンビもまだ少し残っている。
「こういう時こそ俺たち、クレリックの出番ですよー」
ラクが何やらガッツポーズを決めた。そう、まだクレリックのホーリー連打という素晴らしい手がある。邪悪なやつらは抵抗できないという効果つきだ。さすがに永遠ではない。
「じゃ、やっちゃおうか!」
「うきゅう」
かくして、マイアとラッカーによるホーリーナイト(ホーリー連打)が決行された。デビルのエボリューション効果と、クレリックのホーリーナイト、どちらが先に途切れるかといえば。
「くっ、デビルであったこと自体が不覚とは、なんという皮肉」
ホーリーナイトを受け、どうにもならない理由で倒れそうなダーリン。
「残念ね、二人まとめて氷の墓でお眠りなさい」
倒れる寸前のダーリン、飛んできたミシェルはそう囁くと、呪文の詠唱をはじめる。
彼女の詠唱が終った時、二つ目の墓標が出来上がった。
「夫婦花 儚き夢に散りけるも 春の匂いに眠りし陽炎」
またもや、尾上が風流な詩吟を・・・・・・。こういう人物像だったとは意外だ。はやく良い伴侶がみつかると良いのだが。
その後、ルザリア・イオタ・クレアの活躍により残ったズゥンビたちは一掃された。
勢いあまってケリチョンパをイエチョンパにしそうになった小麟などもいたが、ともかく動く死体は、動かない死体の山となったのであった。
●エンディング
「終ってみると無残なものだな」
ルザリアは積まれた死体を前にそう呟いた。
「すべてのズゥンビの埋葬は難しいでしょうけれど・・せめて安らかにお休み頂きたいですね」
フェノセリアがルザリアに向かって返した。
「それじゃやるぜ。準備は良いかい」
ラドルフスキーの唱える呪文にクレリックたちの祈りが重なり、独特の韻律をその場に作り出す。
「主よ、この魂に安息を・・・・」
フェノセリアの言葉の後。 火炎が巻き起こり、燃える死体からあがる煙が風に流れてゆく。
「それにしても、イオタさんが、ああいう感じだとは思いませんでした」
声に多少笑いを含んだ無表情なクレアの問いにイオタは恐縮している。
「特に気にしているつもりは無いのですが」
「でも、あんなに怒るなんて・・・・」
「俺は怒ったわけではありません。侮辱されたことに対して実力をもって返しだけです。騎士たるもの・・・・」
イオタが言葉を続けようとしたところ、マイアの、
「ほら、二人とも遊んでないで手伝いなさい。埋葬がまだあるのよ」
言葉が遮った。
「氷溶けないですわね」
「まだ寒いですし、多分簡単には溶けないかもしれませんねー」
ミシェルとラクの前に例の氷漬けがある。
「ほっときましょうか? 警備隊に引き渡すとか」
「ですねー、俺達は集落の安全を確保するのが仕事ですし」
「二人とも、手伝ってくださいですわん。勢いあまって扉にケリをいれちゃって」
小麟が大工道具のようなものを持って叫んでいる。
「じゃ、いきますかー」
「はい」
流れてゆく煙を眺め、尾上は自らの想いをふと重ねた。
彼はその何かを言葉にしようとして、じっと煙を見つめている。
いずれ、彼の詩が生まれる時。死んで行った数多き名も無き者たちの魂も少しだけ浮かばれるのかもしれない。
了