♯少年冒険隊♭ ジグ♪

■ショートシナリオ


担当:Urodora

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:06月04日〜06月09日

リプレイ公開日:2007年06月12日

●オープニング

●空

 忘れたくない。
 そんな想い出さえ、いつか忘れてしまうかもしれない。
 それでも、今を生きる子供達に後悔は似合わない。大空はいつでも果てしないほど彼方。無邪気な彼らは翼羽ばたかせ、空の向こうにある何かを探し、架かる橋を目指して歩む。 
 忘れてしまいたい。
 色褪せてしまった過去の風景をみつめ、力を手に入れるため男は、苦痛に満ちた時をあえて歩む。それしか生きる術がなかった。けれど選んだのは彼自身。血塗られた道、もはや戻る場所はどこにも無い。
 天駆ける鳥を仰ぎ見て、地這う獣は何を想いその影を見るのだろうか?
 夢は叶えたいと願わない限り、叶わない。掴みたいと思わない限り、その手に掴めない。
 憎しみは忘れえぬ証、だが砕けた欠片は戻らない。堕ちた希望、その断末を背負い宙を掴む。
 空は蒼い。
 空は紅い。
 二色は重なり光の向きを変え、譲れない気持ちと過ぎ去った残影を照らすだろう。
 映し出された二つの手のひらは、お互い夢見た世界を掴む事を願い、無垢と憎悪に彩られた楽章の新たなページをめくる。
 例え。この空が何色に染まろうとも、もう一度だけ思うがまま。自由に飛び立つため。
 ──手を伸ばそう。

●プレリュード

 朝。
 部屋で出発の準備をしてボクを母さんが呼んだ。
「アリョーシャ、ジル君が迎えに来てるわよ」
「はーい、今行くよ」
 あわてて荷物をまとめて表に出るとジルがまっていた。ハーフエルフの自称・由緒正しき青少年? ボクの仲間だ。
「よう、アレク。相変わらず呆けた顔してんな」
「よう、ジル。あいかわらず口だけは一人前だね」
 いつもの憎まれ口を叩くジルの様子を見たボクはどこか安心した。この前おきたある出来事から、かなりの時間がたったけれど、その間ジルはジルなりに思うところがあったらしくて、あまり顔を見せなかったから。
 返事を聞いたジルは、ぼさぼさのボクの髪を、さらにくしゃくしゃにした後、片目をつむって笑い、指を軽く鳴らして。
「言うねえ。ま、それでこそアレク君。それより準備OK?」
「うん、冒険! 冒険! ってニーナは?」
 まわりを見回したけれど、そこにいつもいるはずのニーナの姿は無い。
「ニーナは、どうせギルドで遊んでるんだろ。ありゃそのうち摘みだされるぞ」
 ジルが呆れたように言う。ニーナというのはボクの仲間であり、先日ギルドで大暴れした子。えーと、ぬいぐるみがほしくて泣いて、そのさい魔法を・・・・・・たいしたことじゃ無いよね、きっと、多分。
「それなら、ギルドに行こうよ」
「子供は元気だね、お兄さん羨ましい。じゃ行きますか」
 こうして、ボクたちはギルドにむかった。

「来たか三馬鹿残り。おまけが暴れて困ってるぞ。ギルドは子供の遊び場じゃないんだよ」
 ギルドに入るといつもの中年ギルド員さんが、こわい顔してボクたちをでむかえた。
「ご、ごめんなさい」
「どうせ、いつもさぼってんだしさ、子供の一人や二人面倒みたら、どう?」
 ジルはえらそうだ。母さんがいうには、大人ぶりたい歳ごろなんだって、そういうものなのかな? 
「坊や、あれは自主休暇って言うのさ」
「同じじゃん」
「そこらはセンスは問題だ」
「サボリにセンスも何も無いでしょ」
 びみょうな空気な二人。
「そんなことよりも、このちっちゃいのをなんとかしろ、泣き喚いてうるさい」
 ギルド員さんの指さした先には三角ぼうしの女の子が
「アレク、ジル。遅い、遅いデス。もうお弁当たべました」
 口のまわりをベタベタにして、こっちを向いた。
「おいおい、食べたって、それ俺のだろ。久しぶりに娘に作ってもらった物を・・・・・・」
 かなりショックをうけているギルド員さん、なにか悪いことをした気がする。
「ま、日頃の行いってやつだよねー。それより、仕事の話をしようぜ」
 落ち込んでいるギルド員さんを残し、ボクたちは依頼の話をするのだった。

 かえり道。
「お前らさ、なんで俺の両手ふさがってるわけ?」
 ボクとニーナはジルと手をつないで歩いていた。
「だって仲間だもん」
「仲間デス」 
「やれやれ、これが綺麗なおねーさんなら幸せなのに、お子様のお守りとは」
「もてない男はつらいデスね」
「ニーナ・・・・・・おやつ抜きな」
「ひどい。無駄な権力の行使は民衆に対する暴力になるのデス」
「難しいこと言って誤魔化そうとしてもダメなものはダメ」
 しょんぼりするニーナ。それにしても
「だいじょうかな、依頼?」
「問題ないだろ、俺らだけでも出来なくもない。念のため仲間募集したし」
「そうだよね」
 その言葉聞いたボクは、少しだけ強くジルの手を握った。  
 
 空に浮かぶ虹の向こう。
 今だ陽炎のような光景を目指し、繋いだ手を絆に歩みだす彼ら。
 それぞれ描く形は違うとしても、きっとそれは──未来への架け橋。
 

 冒険へGO
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●目的

 少年冒険隊と森に出たゴブリン退治をします。
 彼らが正式に冒険隊として初めて受けた依頼のようなので、駆け出しさんも
 一緒になって頑張ってください。 

●場所

 ゴブリンの出る森は、徒歩で一日半程度の村の近くにあります。
 ちっちゃなゴブリンだけではなくて、おっきな奴も数匹いるようです。

●用意したほうが良いもの

 近くに村がありますので、忘れ物をしても補充できますが、冒険用品は
 なるべく揃えましょう。

●その他

 冒険隊は、彼らの性格に応じて動きます。何か特別やってほしい事、
 気をつけてもらいたい事がある場合はアレクに言ってください。
 
 ※登場人物 「少年冒険隊」

 ■アレクセイ・マシモノフ 人・12歳・♂ 

 駆け出しファイター。一応冒険隊のリーダー。
  人を疑うことをあまり知りません。素直で直情型のわりに優柔不断で決断力は低い。 
  だいぶ大人になりましたが、やっぱり根は子供です。年上の異性にちょっと弱い。
  
 ■ジル・ベルティーニ  ハーフエルフ・16歳・♂ 

  かなりの腕前をもつレンジャー。
  深刻な感情を内に秘めていますが、最近はそれを含めて肯定的です。
  二枚目半から三枚目の立ち位置でまとめ役。異性の嗜好は胸の大きさにこだわりがあるらしい。

 ■ニーナ・ニーム エルフ・10歳・♀ 

  風魔法使いの女の子。ウインドスラッシュ・レジストコールド
 「ビリビリどっかーん」が使えます。どうやら、ライトニングサンダーボルトの事らしい。
  脳内は、比較的まともなお花畑のようだ・・・・。少し寂しがりやさん、ムードメーカーです。

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●今回の参加者

 eb2782 セシェラム・マーガッヅ(34歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb4859 イリスフィーナ・ファフニール(17歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb8120 マイア・アルバトフ(32歳・♀・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ec1182 ラドルフスキー・ラッセン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec1223 王 冬華(26歳・♀・ナイト・人間・華仙教大国)
 ec2055 イオタ・ファーレンハイト(33歳・♂・ナイト・人間・ロシア王国)

●サポート参加者

メアリ・テューダー(eb2205)/ セシリア・ティレット(eb4721)/ キール・マーガッヅ(eb5663

●リプレイ本文

●オーヴァーチュア

 誰しもいつか、その旅路は終わりを迎える。歩む道のりが語られるに相応しい道を得るかは分からずとも、ただ歩き出すことに意味がある。
 後悔という名のまどろみに眠るのも人の夢ならば、それに型を成すのも意思。
 子供もいずれ大人になるだろう。だからこそ、今という日々の輝きも、また美しい。

 冒険に行く前、セシリーお姉ちゃんがやって来た。
「アレクさん。お、お弁当」
「ありがとう! お姉ちゃん」
 最近みょうに、お姉ちゃんはボクによくしてくれるけど? 何かあったのかな。
「おうおう、アレク君。手作りのお弁当とは、まったく羨ましいことですね」
「なんで? ジルもいっしょに食べようよ」
「・・・・・・お子様め。とりあえず行ってきますセシリーさん。お子様の保護は任せてください」
 なんだか二人とも様子がおかしいけど、ボク何かしたのかな?
「はい、いってらっしゃい。二人とも無事帰ってきてくださいね」
「うん、またねーお姉ちゃん」
 ちょっとがっかりしてるようなセシリーお姉ちゃんを後にして、ボクたちはギルドに向かった。

「皆さんこんにちは、俺はジル、ジル・ベルティーニ。そして残りはお子様コンビです。今回は、よろしく!」
 いつもより元気なジルが言った。
「ジル君、彼がいないからって羽を伸ばしてるわね」
「マ、マイアさん!? 来てたんですか? 」
「あたしがいると何か不都合でもあるのかしら?」
 おどろいたジルの前にいるのは、マイア・アルバトフ(eb8120)さん。マイアさんは、白クレリックなんだけど、それっぽくない人だ。たぶん怒るとこわい気がする。
「告げ口は無しですよ、無し」
「告げ口って言うか、彼そこにいるわよ」
 マイアさんの言うとおり、そこには。
「ジル」
「キ、キールさん」
「まあ・・・・・・無理はするな」
「が、頑張ります」
「私がいるから大丈夫だろう、いつも弟と遊んでくれてありがとう」
 セシェラム・マーガッヅ(eb2782)さんだ。なぜか知らないけど、牛の着ぐるみを着て眼帯をしている。ちょっと変わった人かもしれない。
「なんていうか、素晴らしいお兄様ですね。キールさん」
「それについては、深く聞くな」
 そしてキールさんは、セシェラムさんに何事か言うと帰ったみたい。

「初めまして! 王冬華(ec1223)です」
「はじめまして、アレクです。こっちは」
「☆チェッーーーーーーーーーーーーーーーク!!」
「ジ、ジル。ど、どうしたの?」
 武道家の王さんの胸あたりをジルがじっと見たあとに言った。 
「思わず癖が・・・・・・初めましてジルです。いや王さんですか? 良い物をお持ちで」
 なにか、ジルが変だ。普段のジルはいったい何をやってるのか気になるけれど、あまり聞きたくないような。
「へー君が、ジル君かぁ。ほら、お楽しみは後でね」
 意味ありげな微笑みを浮かべる王さん。
「!? よく分からないが、やる気が満ちてきたぜ、あの流星にかけて俺はやる」
 ジルってこういう人だったんだ、びっくりした。。
「お仲間バンザイは、それくらいにして、私の紹介もしなさいよ」
 そう言ったのは、イリスフィーナ・ファフニール(eb4859)さん。でも、ボクと同じくらいの歳に見えるので、さんは変かな。
「はじめましてボク、アレクです」
「アレク。殊勝な心がけね、自分から挨拶してくるなんて、私はイリスよ、よろしく」
 え・・・・・・自分から話しかけてきたような。
「あ、うん。イリスもウィザードなんだね。ボクたちの仲間にも、いるよ」
 ボクがそう言って、ちっちゃい女の子を指差そうとした時
「ラドラド、熊のぬいぐるが欲しいー! エチゴヤから奪ってくるデス」
「ニーナ、あの店に害を成すと、口では言えない様な事が起こるって噂だから危険だ」
「欲しい、欲しい、欲しい、欲しいデス。皆でエチゴヤ襲撃計画を立てるの」
「無理を言わない」
「やだ、やだ」
「やれやれ、まだまだお勉強が必要だな」
 ラドルフスキー・ラッセン(ec1182)さんことラドラドは、ニーナをそう言ってなだめている。
「あの、ちっこいのが私と同じ? ありえないわ」
 そういえば、ボクはさっきから思っていたことを聞いた。
「ね、イリスって性格悪いの?」
 それを聞くと、やっぱりにらまれた。
「何、ずいぶんとはっきり言うのね。私は性格が悪いんじゃなくて、優しさに飢えているのよ!」
 ボクはそれを聞いて。
「イリスはかわいそうな女の子なんだね、ボクかんちがいしてたよ」
「な、なによ。同情されるほど落ちぶれていないわよ、男は皆、私の虜なんだから」
 ・・・・・・また、変な人がやってきたみたいだ。ボクの周りには普通の人があんまりいない気がする。
「ほら、そこの子供軍団、遊んでないで準備をしなさい。冒険はすでに始まっている」 
 みんなの中で、一番真面目そうなイオタ・ファーレンハイト(ec2055)さんが言った。騎士さんだ。かっこいいけど、ボクとあんまり背が変わらないみたい。
「はーい、イオタさん。じゃそろそろ冒険の準備・・・・・・ニーナ?」
 って、ラドラドとニーナが追いかけっこをしている。
「一人でも襲撃するデス。新たに会得した必殺技で悪のエチゴヤをたおす! それが夢なの」
「こら、そんなことをしたら牢獄行きだろう、ニーナ待て、まいったな」
 ・・・・・・。ま、いつものことだし、そのうちおさまるよね。それじゃ出発だ。
 こうして、ボク達は冒険へと出かけたのでした。

 
●ゴブ×ゴブ
 
 ゴブリンがいる森へとやってきたボクたち。
 ジルと王さんが偵察にいったみたいなのだけど、帰ってきたジルは上機嫌だ。
「いや、これが青春ってやつデスカ」
「何かあったの?」
「別に、それよりも牛さんは元気」
 牛さんって、セシェラムさんの事みたい。
「今、マイアさんとご飯つくってるよ」
「じゃ、手伝いにいこうぜ。報告もあるしな」
 ということで、牛さんたちのところへとボクたち向かった。
「それにしても暑くないの? 着ぐるみを着ていて」
「別に、普段着、いや制服だからな」
 マイアさんと牛さんは料理しているようだ。ボクはマイアさんも料理がしている事におどろいた。
「ジル君、さっきは」
「あ、事故ですよ、事故。でもよい手触りだったかなーとか」
 王さんがジルに声をかける。さっきって? 何なのだろう、まあいいや。
「アレク、私一人じゃつまらない。相手をしなさい」
「イリス。さっきもニーナと一緒に相手をしたよ」
「私の退屈を紛らわすのも大事な仕事でしょう」
 ・・・・・・そういうものかな。
「それよりも。ゴブリンはどうだった?」
 イオタさんがまともな事を言った。頼りになる気がする。ジルたちの偵察の結果、ゴブリンは10匹くらいで、少し大きなゴブリンもいるらしい。
 それを聞いたボクは退治するのが本当は嫌だった、モンスターにも悪いのばかりでは無いことを知っていたから。だから、すぐに行こうとは言えなかった。
 でも、すぐ日が落ちて、夜は危険だから明日の朝に退治することが決まったのでほっとした。
 そんな夜、ボクは見張りの時間たき火に当たっていた。
「ふー」
「まだ、溜息を着く歳でもないだろうに」
 炎の向かい側からイオタさんが言った。
「ねえ、イオタさん? モンスターってやっぱり悪いやつらなの」
 イオタさんは、少し考えていたみたいだったけど
「確かに彼らにも命がある。きっとあちらから見れば我々が悪なのかも知れない」
「でも、ボクたちはたおすのが仕事だよね」
「そうだな、私達はそれを殺すことで日々の糧を得ていることを誤魔化してはいけない。その事実を真摯に受け止めた上で人々の生活を守って戦っているのだから」
 イオタさんがだまったので、ボクもだまった。しばらくした後
「・・・・・剣を抜くという事は何かを傷つけるという事。だから私達は無闇に剣を抜いてはいけない。大切な人まで傷つけてしまわない為に」
 そう言ったイオタさんは、自分にいい聞かせるようにもボクには見えた。

 次の日、森へ出かけたボクたちはゴブリンとそうぐうした。
 戦うのはこれが初めてじゃないし、ゴブリンなんかよりも怖いやつの相手もした。だからふるえことはなかった。
 イオタさんとボクは前で剣をふった。王さんと牛さんが近くでゴブリンを色々さそってくれていたので楽だった。後ろほうからラドラドの炎とニーナの電撃とジルの矢が飛んでいた。それとたまに回復係のマイアさんが倒れたゴブリンを蹴っていたみたいだ。
「大きいね」
「油断をするな。まず下がって俺の戦い方をよく見ているんだ」
 大きいなゴブリンが出てきたのでボクは下がって、イオタさんが戦った。イリスが氷に閉じ込めたのもいたみたい。イリスも口だけじゃなかったんだね。後でほめないと。
 戦いはそれほど苦戦もしなかった。全ておわったあと、焼けこげたゴブリンを見ていたボクにラドラドが言った。
「アレク、炎は破壊と再生をつかさどる。どんなものでも壊れてしまうから新たなものになるんだ。今は悩みが大きいかもしれないが、それが糧となって大きな存在となるものだ」
「ラドラドは、モンスター退治はしていて嫌にならないの?」
 ボクの質問にラドラドはちょっと困ったように答えた。
「難しい問題だな。だが、その答えを探すためにも前に進む必要があると俺は思うぜ」
 ラドラドはそう言うと、ニーナの方へと歩いて行った。ボクはマイアさんにこの事を聞こうと思ったのだけれど、イリスがやって来たので聞くのを忘れてしまった。
「あ、イリス」
「何よ」
「頑張ったよね、えらいよ」
 ボクはイリスの手を握ってそう言った。
「ちょ、ちょっと。そうね、アレクのわりには良くやったわ、私もほめてあげる」
「うん、ありがとう。ね、牛さんのご飯をたべに行こうよ」
 ボクは牛さんに会いに行った。牛さんはキールさんの言付け? を実行しているところだった。
「これは、キールから託されたものだ。受け取りなさい」
 牛さんはジルに重そうな弓をわたした。そういえばジルの誕生日だった気がする。そう思っているうちにマイアさんがジルに歩みよって、
「お誕生日おめでとう。この世に生まれてこなくて悪かった人はいない。勿論キミも例外なく。キミは望まれてここにいる。そんなキミがまた一つ歳を重ねるのはとても喜ばしいことよ。だから、これからまた一年キミにとっていい日々が続くことを祈るわ」
 ジルが照れていた。なんとなくマイアさんがお母さんのように見えた。いつもはと違う気もするけれど、本当は優しい人なのが分かった。
 その後で王さんがジルに耳打ちしたのをボクは聞いた。
「特別に今日一日ぐらいなら初依頼のご褒美でいいわよ」
 それを聞いたジルが喜んでいた姿が何かほほえましかった。デート? なのかな。そういえばセシリーお姉ちゃんともデートしたような気がする。楽しかったから次も行きたいな。
「ジル、アレク。依頼も完了したので、エチゴ・・・・・・」
 あらら、ニーナはまだ諦めていなかったようだ。
「ニーナ、いいかげん。諦めなさい」
「ラドラド邪魔をするなら、ビリビリです」
「なら、俺のブローで受けてたつぜ」
 いつもどおりの二人、ここはふつうに平和のようだ。
 ゴブリンもいないことを確認したボクたちは、ジルの誕生日を祝うためキエフに戻る。
 その帰り道、王さんにボクは聞いた。
「そういえば、あの時ジルと何があったの?」
 王さんは、笑顔で言った。
「秘密にしておいたほうが楽しいこともあるんだよ、アレクくん。それと女の子には優しくね」
 ? 秘密にしなくてもいいと思うけどな。
 それと牛さんに気になっていたことがあったので聞いてみた。
「牛さんってキールさんのお兄さんなんでしょ?」
「そうだが」
「キールさんの家ってなんであんなに人がいっぱいいるの?」
 ボクの質問に牛さんは困っていたようだ。
「まあ、その。はずみというやつだな」
「はずみなんだ。牛さんの子供にボクどこかであってるかもね」
「多分な」
 牛さんはボクのお父さんとは違う感じがするけれど、やっぱりお父さんだった。

 キエフに着く直前、ボクはあの事思い出した。
「マイアさん!」
 振り返ったマイアさんにボクは聞いた。
「モンスターって、悪いヤツラなの?」
 マイアさんは、いつになく真剣な顔でボクに答えた。
「その答えは、きっとあたしも分からないかもしれない。神の教え給うのならば悪、実際危害を加えてくるものも多い。だからといって、それが全て悪と言い切れるほどあたしは驕ってもいない」
「でも、神様がそう言うならそうなんじゃないの?」
「かもしれないわね。だからこそモンスターを退治する。でもね、アレク君」
「何?」
「教えというものは誰かによって作られるもの。もしかして本当は神様はそんなこと思っていないのかも知れないわよ。って、白クレリックらしくないわね、神は確かにいて、また悪魔もいるのだから」
「よく分からないや」
「分かる必要は無いのよ、神の息吹を感じることこそがクレリックの仕事なの」
 マイアさんの言ったことはボクには難しくてよく分からなかった。
 けれど、なんとなく言いたかったことを感じることはできた。だってボクはプースキンは悪いやつではないこと知っているもの。
 そしてキエフの街が見えてきた。きっとセシリーお姉ちゃんが待っている。お姉ちゃんはこのことに何て言うのだろうか? でもすぐにその事をボクは忘れてしまった。
 なにより、ジルの誕生日を祝うほうが先だったから。


 了