【普通の冒険!】 不思議遺跡
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■ショートシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 18 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月17日〜07月23日
リプレイ公開日:2007年07月26日
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●オープニング
●冒険者ギルド
「ここは冒険者ギルド。あまり難しい説明はすまい。モンスターがいて、依頼が来る。そう、それだけのことだ」
そんな意味深ギルド員は、今日もギルド内の掃除をしている。ミステリアスな口調と雰囲気のわりにやることは細かい男のようだ。
そこへやってきたのは、一人の青年であった。
「貴方の名前を記しなさい」
それを聞いた男は困ったように言う。
「字が書けません、名前はユーリーです」
「致し方あるまい、依頼内容を口頭で述べなさい」
「村の近くにある遺跡にモンスターが住み着いたようです。被害が出る前に退治してください」
「またもや、よくある話だな」
「それが、どうやらその遺跡は不思議な遺跡のようで、なにやら呪いの間というものがあるそうです・・・・・・
」
「呪いか、悪趣味極まりないな」
そう言うと意味深ギルド員は、意味も無く指を鳴らした。
「造った人の性格の悪さが伺えますね」
「気にしてはいけない。呪いといっても、どんな呪いなのだろう」
「さあ? アイテムに関係した呪いという噂もありますね」
「どっちにしろ、ひねた奴が作った遺跡なのだろうな、トラップも色々ありそうだ」
ということで、不思議遺跡に住むモンスター退治がギルドに掲示されたのであった。
今回の冒険について
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キエフから徒歩で二日程度の距離にある開拓村。
その近くにある不思議遺跡に住むというモンスター退治です。
今回の大きな特徴は【呪いの間】と呼ばれている広間があるようです。
何の呪いなのか? 以下生還した冒険者の証言から推測してください。
「愛刀が棒切れと同じになりやがった」
「急に鎧が重くなって、動けなくなったのです」
「別に、なんともなかったよ。武器は買ったばかりのロングソードだったけどさ」
「私は普段とても不運なのですが、なぜかあの広間ではラッキーだったような気がします」
呪いは恣意的な判断ですので、細かい突っ込みは受付け不能です。
その他に
○トラップが色々あるようです。解除技術や読解技術がない場合は破壊して進むことになります。
あえてトラップを無視して、爆裂覇道毒蝮を歩むのも楽しいかもしれませんね。
○この手のエグイ遺跡には、たいてい普通の武器では倒せない敵や倒しにくい敵や変わった敵が
「よく来たね、待ってたよ」そんな感じで配置されていたりするものです。
○奥にいるのはでかいモンスターのようです。しかしそれが何なのかは見ないと分かりません。
これらの情報を元にして、遺跡のモンスターを退治してくださいね。
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●リプレイ本文
●やってきました
ひどく暑い。
ここは北の大地のはずだ。なのに暑い。
そんな暑さを行進してきた彼らは、涼を求めているようだ。
「モンスターうんぬんよりも、涼しさに限りますね」
どこからどう見ても狐目の男は、遺跡の周辺に生えてる大樹の影に走りこんだ。
名をニーシュ・ド・アポリネール(ec1053)。細かい説明を省くが、ノルマン出身の自称伊達男らしい。百戦錬磨ならぬ百戦敗退のナンパ歴をもつ彼は、女性優先に全て動くはずなのだが・・・・・・。
現状、自分一人で木陰にいるあたり、さすがの彼も熱気の前には、ぐったりのようだ。
「あついにゃー。冒険する前にぶったおれそう」
女がいる。胸はない。名をルイーザ・ベルディーニ(ec0854)と呼ぶ。
「あ、あつい。と、と、と、とける」
またもや女がいる。壁はない。名をケイト・フォーミル(eb0516)。背はでかい。
「神様、おいらに氷を」
パラが来た、この暑さでも正装らしい。クレリックもそれはそれで大変な稼業である。彼はイルコフスキー・ネフコス(eb8684)という名前だ。
「真面目に生きるなんてバカらしいぜ!」
不真面目を真面目に生きる女ベアトリス・イアサント(eb9400)。だからといって不良でもない、一応クレリックだ。
そして、二大無愛想男たちがやってきた。
「騒がしいな」
ロイ・ファクト(eb5887)。そっけない。
「・・・・・・」
キール・マーガッヅ(eb5663)。しゃべりもしない。
そんな仲間たちの個性的な様子を見た、リン・シュトラウス(eb7760)は思った。
(確か、普通の冒険だったはずなのに)
冒険とは一緒に行くメンバーによって決まるもの。普通になるのかどうか? それはまだ誰も知らない未来のことなのだ。
●ふっしぎないせき
ということで、不思議遺跡を目指すメンバー。
道中の雰囲気からすると冒険というよりピクニックに来たような感じする。
ルイーザとケイトが妙に親しいのを見たニーシュがやっかみ、無意味にちょっかいをかけた結果、キリモミケイトキックを喰らうなどの恒例行事からはじまる。
そして、白というより黒クレリックぽい僧侶の一人ベアトリス、久しぶりに見たのでどういう行動をするのか予測がつかない。
彼女は今のところ、キリモミの直撃を受け地面に倒れたニーシュを見て、楽しそうに踏みつける程度。どうやら酒宴がないため、ちょっと大人しいようだ。
正統派白クレリックのイルコフスキーは、比較的まとも。けれどケイトに向かって
「ケイトさん、壁にかくれないの?」
と、その質問が何を意図しているのか、普通の人には分からないようなことを聞いた。
ケイトは、ケイトで
「か、壁がなければ、木にかくれるぞ」
そう答える。
そこまでしてかくれる必要もないと思うのだが、それは本能というものかもしれない。
周辺にいる無愛想な二人組は、やはり無愛想なままである。
あの二人が並ぶと空気がちょっと冷たくなる気もする。しかし、本人たちはそれが心地よいのか、何も言わず暴れている仲間をみつめているだけだ。
「陽が暮れる」
キールが言った。
「そうだな」
ロイが返す。
道中、二人が交わした会話はそんなものだ。
途中寄った集落で、妙に可愛い年の頃「少年」がいた。
それを見たリンは、一緒につれて行きたい衝動に駆られたが、あえてここでそれを強調する必要もない。
ただでさえ、黒百合もいる。その勢いで全ての嗜好を網羅させられても困るのは天だ。
なごりおしそうなリンは、少年の手を握ると去っていくだった。
こんな風に語り始めると冒険をしていたのか、遊びに行っていたのかよく分からなくなってしまうので、ひとまず先に進もう。
細かいことは飛ばして、遺跡の内部を歩んでいる彼ら、途中キールは罠について注意をしようと思った。だが、彼は説明するのが苦手、よって。
「危険だ、進むな」
など、急に注意するため、みんな困っていた。
とはいえ、キールにルイーザのように明るくなれといっても無理である。
「人生、生きてればなんとかなるって!」
明るいといえば明るいルイーザ。
所持しているクドラクという武器からして不幸の徴なのだが、きっと不幸という状態がちょっとだけ好きなのかもしれない。
キールの態度に微妙な親近感を感じているロイは別として、他のメンバーは彼の言動に神経を集中して歩いていた。
遺跡の内部はひんやりとして心地よい。
「呪いって何なのかにゃー」
不幸という理由によって胸のない自分について、前向きに納得しているルイーザは、呪いに興味があるようだ。
「うむ、じ、自分も呪いにかかれば、壁にかくれる必要がなくなるかも」
ケイトは壁にかくれつつ言った。
「でも、呪いですから」
リンは、やや低成長気味のスタイルの向上を考えてみたが、それは呪いではなくて祝福のような気もする。
「油断するな、敵はどこからやってくるか分からない」
ロイの言うとおり、敵はやってきた。
衝撃に身を翻し、抜いた両の手の剣を保ち斬り付ける女、交差した刃の刀身は赤、その赤き魔は命を吸い・・・・・・って、あれ?
「ノン、この交戦真っ最中にすっころんでる場合ですか! それも敵に頭から突っ込むなんて」
直後、ニーシュの足元にはルイーザが倒れている。
「不幸、不幸の神が舞い降りたよ」
突っ伏したままのルイーザがぼやいている、危険だ。
「早く連れて行け」
うなりをあげて振り下ろされる拳を篭手で受けたロイが切り返す、ケイトはルイーザの足を引っ張り、ずり下げた。
「いたい、いたいケイトちん」
「だ、黙って治療をうけるのだ。あとは頼んだぞ」
後衛の味方にルイーザを預けると前衛に戻っていた。
「それにしても、戦闘中に転ぶなんて災難だったね」
イルコフスキーがルイーザを治療している。
「日頃の行ないもきっとあるぜ! となると、私はバッチリ神の加護だな」
ベアトリスに限ってそれはない。
「呪いの前に、不幸に呪い殺されちゃいますね」
リンは冗談のようで冗談に聞こえないことを言うのだった。
敵はどうやら、弱めのガーディアン・ゴーレムだったらしく。転んで衝突したルイーザの他怪我らしい怪我もなく終った。
「うう、呪いにゃ、呪いだけがこの不幸というでぃすてぃにーを逆転できるはず。その他に方法はきっとない、ないに決まってるー!」
力強く拳を握るルイーザ。
本人の不幸度もあるとしても、七割はそのダガーが原因の気もする。
そんな感じで、ことあるごとにルイーザが敵に突撃したり、ルイーザが敵に強烈な一撃を喰らったり、ルイーザが何もないところで転んで罠を発動させたり、大変だ。
真面目に呪い殺されそうな勢いの不幸が、彼女と仲間を襲っている。
「ルイーザ、あまり自分と離れたら駄目だぞ」
そういって付き添ったケイトにも不幸は容赦なくやってきた! そう不幸は仲間も容赦しない。みんな一緒に罠の矢を浴びたり、ファイヤートラップでパーティー全員が焼け焦げになるなど、まさに罠の祭典。
「これは、神の試練。マドモワゼルをお守りする事こそ男子の本懐!」
そういうとニーシュは一人、なぜか発動しつつある罠の中に飛び込んでいき本懐をとげた。真っ黒な彼は満足そうな笑みをうかべ倒れた。
「治療するだけで大変だよ」
イルコフスキーは忙しい。
「まあ、役にたってるからいいじゃねーの、回復しないとさ、いてもいなくても同じみたいなもんだぜ」
ベアトリスは適当に回復している。
その傍らで、キールは一人自分の仕事を黙々とこなし、ロイは何事か考えているようだ。もしかして置いてきた恋人のことかもしれない。
「あ、そろそろ、終点だと思います」
マッピングをしていたリンがなぜかそう言った。根拠はない、女の勘のようだった。
●ざ・カース
みなぎる力に女はそれを感じた。
「勝てる、勝てるぞ。今までの不幸を万倍に返してやろう、あたしの名はルイーザ、不幸の使徒にして暗き底に住む女王、さあクドラクの贄になるのは誰ぞ」
先ほどまでとふんいきが全く違う気がするが、ルイーザらしい。
「さすがね、ルイーザ。自分にも、怖いものなどない。そう、これがパワー。壁などもういらない」
自信溢れるケイト。
「神様今までの不幸をお許しください、これからは私は改心して勤めを無事に果たします」
敬虔なベアトリス。
「ああ、神がなんだってんだ。欲望こそが全てだろう、おいらは金、金があれば満足なんだよ」
俗世的なイルコフスキー。
「呪いなんてさこんなものだよね、とっと倒していこうぜ、うん。ほら、俺って結構モテルし」
軽いロイ。
「もう人生に疲れたよ、ママン。どうせ、駄目、駄目なんだよ、助けてよママン」
マザコン気味のニーシュ。
広間に入った彼を待ち受けていたのは、どうやら普段よりも強烈な呪いだったようだ。
「な、なんなのこれ」
リンは仲間達の急変に驚いた。
どうやら、広間に入っていないのは、彼女とキールだけである。
「呪いだな」
キールが返した。
「嫌な呪いですね」
「呪いだからな」
「それよりも、奥のほうに敵らしい姿が見えます」
リンの言うとおり、広間の奥のほうにゴブリンのような生物がいる。
「あれがデカイ生物なのか?」
それでは、視点をここで広間のルイーザに移す。
「巨大、巨大なドラゴンめ。おのれ、このルイーザ様が負けるわけには、いかぬ」
それでは、広間の外のリンたちに戻す
「推測ですけれど、この部屋自体が、何かの幻覚を見せている気がします」
リンの意見にキールは同意した。
「どこかに似たような洞窟もあった気がする」
「あのゴブリンが、変な装置を操ってるように私には見えるのですけど」
広間にいるゴブリンは、一生懸命ボタンのようなものを押しているようだ。
「矢を放とう、その前にこのままで射てない、君の歌でなんとかしてくれ」
「分かりました」
リンはリュートを構え眠りの歌を奏でる。
待つことのできない幼子は
明日という時がくるのを待ち続ける
儚き一夜は戯れのようで纏う衣柔らかさに
昨日という世界を夢を見つつ身体を丸める
眠れ眠れよ眠り子よ
ただ今を忘れるために
声は響く、眠りが訪れる広間、いつしか動くものは誰もない。
止んだ音、塞いだ耳から手を離した射手、その放った矢が風を切る音が次に鳴った。
●もどりましょー
気がついた彼らは夢見心地だった。
お互い先ほど起きた出来事を憶えていないわけではないが、
「夢ですよ、夢」
そうリンに言われ、夢であることを信じたらしい。
「あたしは、このまま不幸なままかにゃー」
ルイーザは落胆しつつ、何気なく自分の胸を見た。
「あれ」
心なしか大きくなっているように気がする。
「ケイトちん、ほら触って、触ってみてよ」
「・・・・・・な、なにをいきなり急に」
大胆なルイーザの行動にケイトは驚いている。
「それでは、僭越ながらこの私が」
ここぞとばかりニーシュが出張ってきたが
「こ、懲りないな! 次はス、スープレックス。の、脳天直撃だ」
ニーシュが捕まった。
「ちょ、ちょっと、冗談です。たすけて」
ニーシュがそれからどうなったかは、想像にお任せする。
「みんな楽しそう。おいらも幸せだな」
「あれが仲が良いのか? それにしても呪いって結局なんだったんだ」
ベアトリスの問いに、イルコフスキーは首を傾げるだけだ。
「相変わらず騒がしいな」
ロイが言った。
「無事でなによりだ」
キールが返す。
そんなメンバーの様子を見て、リンは静かに微笑んだ。
外の陽射しは強い。
きっと帰り道も暑くなるだろう。
了