【JAM SESSION】 SEPTETTE#SKY

■ショートシナリオ


担当:Urodora

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:4

参加人数:7人

サポート参加人数:3人

冒険期間:07月17日〜07月24日

リプレイ公開日:2007年07月24日

●オープニング

●Summer

 路地裏を駆け抜け少年は言った。

「つまんないなら、おもしろくすればいいだけなのに」

 吹く風は肌に心地よい。汗をぬぐい陽のまぶしさに目をほそめ、少年は子犬とじゃれている。
 賑わう人込みの中の上、湿った大気が忍び寄る時。

 ──夏。
 熱い陽射し背に受けてどこかへ旅にでよう。
 君の行く手には、地平線の彼方どこまでも大地が広がっている。

 さあ、旅立つ準備はできたかい。 

 胸に手を当て、進む道を探そうぜ。

 悩んでいる暇なんてない、冒険へでかけよう!


JAM SESSION
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 以下の場所・地域への移動と、関係した人物と遭遇することができます。
 目的は皆さん次第ですが、情報収集としても利用できると思います。
 初対面でも、報告書なりを読んで知識としてあれば探すことは可能です。
 興味のある誰かを、見つけてみるのも楽しいかもしれませんね。

●場所

 移動距離(片道) 主な場所

 キエフ内  「水竜亭」「冒険者ギルド」「銀狐兵団兵舎」「ナタリーの教会」
 郊外    「まるごとハウス」
 3日弱圏内 「悪魔の門の村」 「幻影の洞窟の村」


●関連NPC

 それぞれの関係場所にいるようです。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea0639 菊川 響(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea9114 フィニィ・フォルテン(23歳・♀・バード・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb5375 フォックス・ブリッド(34歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb9405 クロエ・アズナヴール(33歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec1023 ヤグラ・マーガッヅ(27歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ec1182 ラドルフスキー・ラッセン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec1621 ルザリア・レイバーン(33歳・♀・神聖騎士・人間・ロシア王国)

●サポート参加者

ゴールド・ストーム(ea3785)/ エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)/ ジリヤ・フロロヴァ(ec3063

●リプレイ本文

 歩く街並、通りの向こう側では果物売りの掛け声がする。
 石畳みに照り返される陽の光。息づく街角を歩むと熱気が走り抜け、乾いた空気が道を吹きぬけた。
 再度訪れたこの大地は異国。
 自らの生まれ故郷とは違う匂いがするここへ、遠き海の彼方より足を踏み入れ、また帰っていく明日を前に菊川響(ea0639)は、ある建物を目指していた。
 家屋が立ち並ぶキエフの中心部を通り過ぎ、郊外に建つその小屋に彼がたどりついたのは、夕刻を間近にした頃だった。
 久しぶりに訪れたことに、響は多少緊張しつつ扉を叩いた。
「はぁい、ちょっとまってね」
 聞き覚えのある声の後、極北の地とはいえ暑さがやって来ている中、なぜか熊の着ぐるみを着た少女が戸口に現れた。
「久しぶり、書記長」
 ふらりと立ち寄った風、軽く手をあげて挨拶する響に熊の少女は、一瞬驚いた。だが彼女はもこもこした右手を窮屈そうに伸ばして、汗をかきつつ笑顔で言う。
「あ、ひっさしぶりー! ねぎかも元気してた?」
「いや、俺は葱じゃなくて鴨が本分だ」
 葱と鴨、そこに何の意味があるかのか? 鴨葱についてはあえてここで語る必要はないだろう。きっと色々な浪漫がある・・・・・・気もする。
 鴨と葱。それはある調和する二つの点なのだ。
 ということで、ひとまずまるごとハウスの中に通された響、そんな彼の前には先客であるフィニィ・フォルテン(ea9114)が天使の着ぐるみを来つつ、職人タロウの手伝いをしている姿、まるごとオーガを着込み見守っているだけのゴールドもいる。
 今日も、まるごとハウスは熱気むんむんである。
 どうやら伝説のまるごと、まるごとゆうしゃは完成間近のようだ。まるごとゆうしゃさえあれば、きっと魔王にも勝てる? と信じよう。
 タロウのお手伝いをしているフィニィは忙しそうだ。その横をパタパタと飛んでいるフェアリー、名をリュミィという。彼女はフィニィのお友達だ。
 リュミィは、さきほどから買ってきたお菓子に目を奪われているようで、落ち着きがちょっとない。
 けれど「おやつは、おもに夕食後」という掟がまるごとハウスにはあるらしい。
 そのせいで、来る途中フィニィと一緒にお買い物してきたお菓子、それを食べられないリュミィは、フィニィの顔色をうかがい、お菓子に時々接近するのだが
「つまみぐいはだめです」『メ・・・・・・です』
 という会話を何度か繰り返しているのだった。
「まるごとの奇跡。伝説のまるごとは、それでいつ頃完成?」
 休息時間中、フィニィの淹れてくれたハーブティーのカップを片手に、織られているまるごとゆうしゃに響は視線をやった。
「もうちょっとです」『です♪』
 一休みということで、おやつを少し食べたリュミィは機嫌が良いようだ。
「これで、ついに全世界の征服を。大いなるまるごとの力を今こそみせる時、愚民どもよひざまずけ! 夏の暑さの前にひれ伏せ!」
 暑苦しい内部、もっとも暑苦しい男、部長は寝言・戯言を叫んだ。
「妄想はここだけにしてね。私たちは、いちおー正義の味方なんだから、そういうのは悪の組織にまかせーよーねー」
 書記長に腕を引かれ退場していく部長。本当に彼に、まるごと世界の平和を任せて大丈夫なのだろうか? 
 そう思った響とフィニィは、お互い顔を見合わせた後、お茶をすする。
 そのうちに、茶を飲み終わった響は、一つの疑問が口にしてみた。
「そういえば、部長と書記長殿って普段何してるのだろう?」
 問われたフィニィは少し考えていたが
「きっと、会報などをつくってると思います」
 先ほど版画のようなものを見たような気がする、響は周囲を見回した。
「てっきり、普段は普通に仕事をしてるのかと思ったのにな」
「まるごとを世界に広めるのが仕事です」『です♪』
 どこからか資金援助がされているのかもしれない。そうでなければやっていけるわけがない。
 響は、ふとそう思うのだった。  


「あれ、クロエさん? でしたっけ」
 開店直後、店の扉をくぐって来た黒髪の女。
 その姿を、どこかで見かけたような気がしてリュートは声をかけた。
「ええ、名前を憶えているとは感心ですね」
 そう返すとクロエ・アズナヴール(eb9405)は奥の方、やや影に隠れる席に着き、朝食を頼んだ。
「一度来て頂いた方は、だいたい憶えてるんですよ。お飲み物はどうしますか?」
「酒・・・・・・というわけにはいきませんね、朝です。それに、これから人を訪ねる予定がある」
「それなら、おいしい水はどうですか? 近くの洞窟で採取した天然水ですよ。さっぱりとした喉ごしが朝の目覚めに最適です」
「水ですか、たまにはそれも良いでしょう」
 こうして、朝のひと時をクロエは水竜亭で過ごした。


 ナタリーは、いつものように起きて礼拝の後、家事を始めた。
 短い間に色々な事があった。今という平穏があるのは、きっと神のおかげだろう。
 彼女は心のうちでそう思いつつも、どこか不安な感情を感じてもいた。
「ナタリー」
 呼ばれた彼女は、神父に客の来訪を告げられた。

「いやっほー! 今日はアクティブにいくぜ」
 何か、教会に似つかわしくない声が響いた気がする。とりあえずフォックス・ブリッド(eb5375)のようだ。いつものクールさはどこに捨てたのだろう・・・・・・。
「これ以上、君をナタリーに近づけるわけにはいきません。来るというなら抜きなさい」
 壊れかけのフォックスの前に、先にやって来ていたクロエが立ちはだかる。
 なにやら、戦争勃発か?
「それで、料理は上手くなりましたか?」
 背後で繰り広げられている雰囲気など気にもせず、ヤグラ・マーガッヅ(ec1023)は、微笑みナタリーと談笑を始めた。
 ナタリーは戸惑っていたが、
「ちょっとだけ」
 頷く。
「ええい、アルルカン! そこをどけ」
「どかぬ、道化は主人のために踊るもの。これ以上進むというなら切れぬ糸を切ってみせよ」
「何でしょう、後ろが騒がしいですね。新しい劇の練習でしょうか? とにかく料理というのは腕もですが、心ですよ」 
「私、がんばります」
「そういえば、ナタリーさんはノルマンの出身と聞きました」
「はい、父がノルマンの出身だったらしいです」
「そうですか、自分が生まれたのは、ノルマンのパリからいくらか離れた村だったそうです。両親の事情で、物心付いてからはずっとキエフにいましたから、実際に生まれ故郷の記憶というものはないのですけどね 」
「私、故郷の記憶というもの、ないです」
「そうですか、もし興味があるのでしたら、その辺もいつか詳しく話して欲しいですね」
 ヤグラはそう言うと、ナタリーの好物であるお菓子の話題に移した。
 背後では相変わらずクロエとフォックスが遊んでいる? ようだ。
 それを見たナタリー二人に近づくと
「お茶、淹れましょうか?」
 おずおずとそう切り出した。
 ナタリーのその言葉を聞いたクロエは、無言で剣を収めると教会の方へ歩いて行く。
 フォクスも何事かナタリーに言おうと思うが、本人を前にするといつもの彼に戻り、やはり教会に向かって進んで行った。
「ヤグラさんも」
「行きましょうか」
 そして、二人も庭先から教会へ歩んでいった。

 
 ラドルフスキー・ラッセン(ec1182)は市場にいる。
「まるごとは、今の時期って売ってないのだな・・・・・・」
 確かに、夏にあの特殊な防寒着を売っている店は、かなりの天邪鬼かつ記念店ものだ。
 しかし、彼の真の狙いはとある少女に似合うまるごとを探すという使命。
 その達成がこのままでは不可能。よって彼が最後に目指したのは、まるごとの聖地。
 名を
「ま・る・ご・と・ハ・ウ・ス」
 多分、既出である。
 どうやら、まるごと集うキエフ郊外に建つオンボロ小屋。まるごとハウスをラドルフスキーは目指しているようだ。

 その頃。
 まるごとハウスの先客、響とフィニィの二人は、部長のクレイジーさについていけなくなった書記長と協力して彼を庭に縛りつけ、みんなで平和なひと時を満喫していた。
「この放送は、まるごとを愛する皆に送信されています♪ それじゃまたらいしゅー」
「また来週です」『です♪』
「葱もよろしく!」
 いつものように、まるごと電波の送信を終えた書記長は、夕食をどうするかお客と話し合っていた。
「そりゃ鴨葱鍋だよ」
 響は彼にとって当然の意見をのべた。
「鍋ですか?」『ですか?』
「この暑いのに、鍋って我慢パーティーなの?」
 書記長はげんなりして言った。暑いならまるごとを脱げば良いと思うのだが、それについて触れるのはどうやら禁句らしい。なぜか、ハウス内では誰もそのことを口にしない。
 その時だった・・・・・・。彼が現れたのは。
「ここだな、まるごとハウスは」
 訪れたラドルフスキーは、内部の熱気に驚愕した。
「あぢい」
 まるごと愛好家にとって、この暑さは普通の状態。だが、ラドルフスキーはまるごと愛好家ではない一般人、耐えられるわけがない。
「で、出直してくるよ」
 逃げるようにまるごとハウスを後にするラドルフスキー。途中何事か怪しく叫んでいるまるごとがいたが、見てみないふりをして通り過ぎる。
「グッキーに何か服でも着せてみるか」 
 帰る夜道、一人納得しているラドルフスキー。彼の言うグッキーとは、熊の形をした恐怖ぬいぐるみのことだ。
 丸っこい感じ、耳と鼻が熊であることを主張している。けれどこれを熊といってしまうのは、熊に対して失礼というものだろう。一説には持っていると運が下がるという迷信もある。といっても形式上は単に熊のぬいぐるみなので、特殊な効果はない。
 ひとまずラドルフスキーは、キエフの市街地に戻って行った。

 ナタリーと楽しい? ひと時を過ごした三人は夜ということでそろそろ帰るようだ。各自物足りなさも感じてはいたが、それほど無理をする必要もないだろう。
 帰り際、フォックスが何気なく質問した。
「誕生日はいつ?」
 聞いたナタリーは少し考えていたが
「3月15日だと思います」
 そう答えた。
 意外にも簡単に答えをもらったフォックスは、嬉しい気分だ。
 けれど、クロエが警戒して目を光らせているため、不用意にナタリーへ近づくことはできない。
「それでは、ナタリー。また来ます、何事もないと思いますが気をつけて」
「クロエさん・・・・・・。私、待ってます」
 ナタリーの言葉と視線を受け、クロエは一度だけ頷くと振り返らずに道を先に進む。
 その素っ気ない姿にナタリーは首を傾げる。
 ヤグラは足早に立ち去っていくクロエの後姿をにこにこと見送り、ナタリーに言った。
「彼女は、ああ見えて照れ屋な気もします。面と向かっていわれると恥ずかしい事もあるものです。自分もまた来ますね。それとカピタンは放置しておくと大変そうなので、連れて行きます」
「む・ね・ん」
 ということで、フォックスもヤグラに強制連行され教会を後にするのだった。


 その頃。
 まるごとハウスでは、灼熱の鍋パーティーが行われていた。
「書記長、せめてこの扇で涼をとって・・・・・・」
「何、いってるの! 鍋っていったのは、かもねぎ君でしょう」
 響の善意は、この状況では悪意に近いものを書記長に与えたようだ。
「リュミィ、熱いですね」『で・す』
 リュミィの表情は虚ろだ、そろそろ危険な気もする。
「ジャパンに帰る前にいい思い出ができたよ、ありがとうみんな」
 とにかく、響は満足したようだ。周りは返事をする気力もないようにも見えるが、とりあえず、めでたし、めでたし?
 そんなハウスの外では、叫び声が響いていた。ただ、それについて触れるものはいない。
「私がゆうしゃだ! 私こそが」
 そんな叫びが木霊していたというが、定かではない。

 後日談

 その夜、水竜亭で大暴れしたハーフエルフがいた。
 なにやら気味の悪い人形を胸に抱き、いわゆるハーフエルフ特有の狂化という現象を起こしていた彼。
 マスターの一撃により気絶し、警備などのお世話にはならなくてすんだようだ。
 名前はあえて公表しないが誰であるかは、本人は分かっているだろう。
 ともかく、お酒は飲んでも飲まれるな。

 
 了