祭りのあと

■ショートシナリオ&プロモート


担当:Urodora

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月09日〜11月14日

リプレイ公開日:2006年11月16日

●オープニング

 秋は収穫祭の季節だ。
 皆それぞれ大地に感謝して、催し物を企画する。
 きっとこの北の地でも、金色の海をたなびく波、そのゆれる景色を肴に色々な祭りが行われただろう。
 そんな楽しい時期の直後だった。

「丘にある倉庫が襲われた!」

 ギルドに入ってくるなり、男はそう叫んだと聞く。
 依頼人の男がいうには、冬に向け備蓄していた食糧倉庫をコボルトの群れに襲われたらしい。

「頼む、事は一刻を争う」
 
 いつになくギルド員は真面目な表情で君たちにいう、彼の顔には緊張がみなぎっている。
 いつもの軽口を叩く様子などないようだ、その眼差しからは邪気を感じられない。
 今回の依頼は普通のコボルト退治らしい。

 コボルトは丘の上の倉庫をねぐらにしているという、早くしなければ残った食料も全て食い尽くされるかもしれない。数にして10数匹程度、楽勝というには遠く強敵というには物足らない。
 
 だが油断は禁物だろう。 

 なぜなら、彼らはコボルトなのだから。
 

●今回の参加者

 eb5626 ソーンツァ・ニエーバ(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5646 リョウ・アスカ(33歳・♂・エル・レオン・ジャイアント・ロシア王国)
 eb7876 マクシーム・ボスホロフ(39歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国)
 eb8007 ジュスタン・ガロワ(33歳・♂・レンジャー・ジャイアント・フランク王国)
 eb8686 シシリー・カンターネル(31歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

カイト・マクミラン(eb7721

●リプレイ本文

●歌

 旅立ちを前にカイト・マクミランは歌った。


 I seek strength, not to be greater than my brother,

 but to fight my greatest enemy Myself.

 Make me always ready to come to you with clean hands and straight eyes.

 So when life fades, as the fading sunset, my spirit may come to you without shame


 どこかで聞いた祈り、そして戦いのために勇者を送る祈り。
 かくして、彼らは旅立つ。


●承前

 丘の上から吹きつける風は冷たい。
 ロシアの大地にそろそろ冬がやって来るのを感じる。

 風に乱れた黒髪に手をやるとマクシーム・ボスホロフ(eb7876)は、依頼人から渡された地図を確認する。
 出入り口は二つ、中は二階建てで上にいくためにハシゴがかかってるよ。
 コボルトのやつらは外に見張りを立てているらしくて、ふつうに近づくと見つかるかもしれない。
 生意気にも弓を持ってるやつもいるらしい、気をつけたほうがいい。
 マクシームは、そんな依頼人の言葉を思い出した。
 弓か・・・・。
 彼も弓矢を操る。どうやら風向きはこちら側が風下のようである。
 少しまずいな。
 この場所からだと相手側が風上にいるうえ高い位置。
 こちらの弓の威力が削がれることになるかしれない。
 そう感じた彼は丘を見上げる。そこには、見張りとおぼしきコボルトが二匹がきょろきょろと辺りを見回す姿。
 冬の蓄えを狙われたとは、気の毒だ。
 ふぅ・・・・とはいえ、これはしんどいねぇ。さて、行くとするか。

 飛んで火に入る秋のコボルト。退治のはじまりである。 


●工作

 先に到着したマクシームから情報を聞いたジュスタン・ガロワ(eb8007)。
 彼ら二人は、今罠を作るべきか迷っていた。
 見張りのコボルトの死角に入り、罠を張れば戦闘はかなり楽になることは確かだ。
 だが、ここは見晴らしの良い丘である。隠れようにもそれらしい場所もない。
 そんな時、なにやら見張りの様子がおかしいことに気づいた。
 どうやら交代の時間らしく二匹が倉庫のほうに戻っていく。
 このチャンスを逃すほど、彼らもお人よしではない。急ぎ罠をつくりはじめる二人であったが・・・・。

 世の中、そんなに甘くなかったようだ。
 
 ジュスタンはジャイアントであり、その巨体が丘で作業をしていて気づかないほどコボルトも愚かではなかったようで、彼めがけて数匹ほど駆け下りてくる。


 とはいえ結果的にそれは、罠を作ったものにとって好都合な事態なのだが。


●斬撃

 やじりが、ソーンツァ・ニエーバ(eb5626)の頬をかすめた。
「くっ、毒ですか」
 油断したつもりはない、万全の準備を整えてここまできた。
 踏みこたえすぐさま襲い来るコボルトに剣を振ると、はぜる音は獣の鳴き声を断末魔に変えた。
 毒が回って痺れる体、新手がやってくる合間に取り出した解毒剤をあおると次に備えて盾を構える。
 錆びた剣の群れが彼をまた襲う、盾で受け流して上体をひねり回避したあと、返す刃で空を切ると虚空を見すえた命無き残骸は、血飛沫を散らし地に落ちる。
 
 彼に向かってきた数は五匹ほど、引きつけたのは全体の半数にみたない。
 その彼を丘に立つ数匹のコボルトたちが弓を向けて睨む。残ったコボルトたちは、どうやら丘を駆け下りたらしい。まず、ここを突破するほうが先。
 ソーンツァは、マントを翻し疾風のごとき剣さばきで、前方のコボルトに切りかかる。
 戦いはまだ始まったばかりだ。
  
 なし崩しとは言え、マクシームとジュスタンの罠は効果的に発動した。
 罠にかかったコボルトは見事転倒している。
 そこへ振られる斧になすすべもなく一撃を喰らうコボルト。
 コボルトたちは体勢を立て直すが、その前にジュスタンが立ちはだかった。
 マクシームはその後方で弓を備えているコボルトを狙っていた。
 距離的に問題はない、風の抵抗はあるとはいえこの程度なら支障ないだろう。黒塗りの弓、弦を引き絞るとマクシームは矢を放った。

 そのころ、ゴーレムを引き連れたシシリー・カンターネル(eb8686)が赤い瞳を丘の上に向けている。
 どうやらこちらに向かってくるのは四匹ほどのようだ。
「さあアマーン、頑張っていきましょー! 悪いことするコボルトに制裁ですわ」
 しかし、傍らの木製ゴーレムは突っ立ているだけである。
「何よつまらない。まあ、ゴーレムだから仕方ないかな。じゃあ、リョウさん突撃たのみます」
「了解」
 それを聞いたリョウ・アスカ(eb5646)は名剣ラングを抜くと面頬を下ろし、盾を構えて戦闘準備に入る。
 コボルト退治か・・・・よく考えるとこういう仕事は冒険者になってからはじめてのような。彼はなぜか駆け下りてくるコボルトを見、感慨深さを感じていた。

 吠える。
 走るそれは風よりは遅い。だが、駆ける勢いに分はある。
 それを見、シシリーは精神を集中する。
 放たれるのは重力の波動、大地を這い目標に向かって飛ぶグラビティーキャノンは寄ってくる一群を包んで消えた。
 続けてリョウは、魔法で転倒したコボルトに向かい、巨躯から強力な一撃を見舞う。
 ギギャー、終りの鳴き声のあと粉砕されたコボルトは一瞬で動かなくなるが、起きあがったコボルトが宙から二匹、盾で受けられなくて回避するが一瞬の油断。
 しまった!? リョウの視線の死角にいた一匹がシシリーに向かって走っていく。
 シシリーは、コボルトが近づいてくるのを余裕の表情でみつめていた。
「アマーン。命令です『私に近づくコボルトを攻撃』」
 クリエイトゴーレム。
 彼女の呪によりゴーレムは命令を遂行する。アマーンは敵を確認し歩みだす、木の拳を振り上げ闘うために。


●突破

 飛ぶ矢はコボルトを貫き、大地に転がる弓。
 マクシームの狙いさだめた矢が射手へ突き刺さる、そこへ横切りで胴払うソーンツァ。
 彼は、コボルトの前線を突破し倉庫の直前まで近づいていた。
 もはや、敵らしい敵はここにはいない。 
 だが、倉庫の中にコボルトがいる可能性もある。ソーンツァは、扉に向かい歩みよる。
 気配はしない、慎重に探り扉を開き、広い空間に歩んだとき。
 殺気。
 上か! 飛びかかってくる二体の影。
 しかし、ここで倒すわけにはいかない。一歩引き盾で打撃を受ける、続く連打に外へ後ずさるソーンツァ。
 コボルトの攻撃を受け流し、彼は頃合いを探り・・・・切った。


 閃光が一瞬走ると最後のコボルトも名剣ラングの錆へと消えた。
 リョウは、コボルトを倒すと周りを見回す。どうやら、戦況はそろそろ終局に向かってるようだ。
 同じジャイアントのジュスタンが斧を振るっている姿も見える。
 その彼が振り返ったときだった、思ってもみなかった光景をみたのは・・・・。
「ちょっと、アマーン!」
 叫ぶシシリーの声、確かにアマーンの手によってコボルトは無事退治された。
 しかし・・・・。
「それ、コボルトじゃないでしょー」
 ガゴン、振り返ったリョウをウッドゴーレムのゴーレムパンチがまっすぐ衝突した。
「ご、ごめんなさい。アマーン『その場で待機』しなさい!!」
 シシリーは顔中を真っ赤にして駆け寄りあやまっている。そんなシシリーをふらふらする視界にみつつ、リョウは意識が遠のくを感じていた。
 新しい命令に、動きを止めるゴーレム。
 と、同時にバタンと倒れるリョウ。
 リョウ・アスカ、どうやら今日は不運な日だったようだ。

●冬の匂い

 その後、戦闘は終息に向かっていく。
 コボルトは全滅まではいかなかったが、ほぼ壊滅状態のまま逃亡していった。

 その後毒を喰らった仲間の治療をおえたマクシームは、残党がいないか倉庫の内部を調べていた。コボルトたちが食いちらかした食糧の残骸があたりに散らばっている。
 このまま冬を迎えるのも大変だろう、そう感じる彼の汗ばんだ体が冷えてきた。そろそろ雪だろうか? そう思ったマクシームが外へでると・・・・。
 白い羽、ふわりと空を舞う一欠けら使者がゆっくりと降りた。
「雪だー雪ー」
 村の子供とおぼしき、遠く走り回っている。
 そう、ロシアの大地に厳しい冬がやってくるのだ。

 その後、村でささやかな宴会を催すということで彼らも招待された。

「ということは、シシリーさんのゴーレムにやられたのですか?」
 リカバーポーションをリョウに飲ませながら、ソーンツァはおかしさを隠せない。
「反省してます。はじめての依頼だったので・・・・」
 恥ずかしさのあまり真っ赤なシシリー。
 どうやら今回の暴走の原因は、彼女の言うことをきちんと聞くほどアマーンとの間に信頼関係が出来上がっていなかったせいらしい。
「だ、大丈夫です。コボルトよりゴーレムに気をつけたほうがよかったかな、はは」
 痛みをこらえつつリョウは、フォローする。
「もう少し、ゴーレムと仲良くなったほうが良いかもな」
 そういうジュスタンは、さきほどから甘いものも頬張っている。
 ジャイアントがケーキを口いっぱいにしてモゴモゴ食べている姿は、ちょっと可愛い感じがしないでもない。
「うー寒い。寒い」
 そんな中、マクシームは先ほどから寒気を憶えていた。風邪でも引いたかな、この寒さで薄着もそろそろ危険かもしれない。
 その様子をみた村人が、
「みなさん、そんな薄着では風邪を引きますよ。帰り道大変でしょう。予備ですけれど防寒着をどうぞ」
 と、みんなに防寒着をプレゼントしてくれた。
 ただ一人、防寒着を用意していたジュスタンには、村の子供たちが肩車でふわふわのファーマフラーを首にかけたという。
 なぜか、ちょっと照れているジュスタンの様子、それがみんな笑みを誘った。

 ロシアに冬将軍がやってくる。
 その寒さに凍える前に・・・・今は彼らの活躍に温もり感じ、冬へ備えることにしよう。


 終