【普通の冒険!】 スレイヴダンス α
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■ショートシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:1〜5lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 4 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月15日〜10月20日
リプレイ公開日:2007年10月24日
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●オープニング
●村
扉を開いた村人は、黒衣の男を見て驚いた。そこにいた男は嫌な空気をまとっていた。
暗い雰囲気に不気味さを感じつつも、村人は問う。
「こんな時間に何の用だい?」
聞いた黒衣の男は言った。
「目的は一つ・・・・・・命を頂こう」
言葉を続ける前に、喉から赤が迸った
●キエフ
惨劇の日。
訪れた黒衣の男によって村は一瞬にして滅んだ。
命からがら逃げ出した青年は、キエフに無事たどりつき、その足で叔父の元へと向かう。
話を聞いた叔父は、彼の無事を祝った。
──そしてしばらく経つ。
「俺は行くよ、忘れてきたものがある」
青年は、故郷にある物を忘れてきた。それがずっと心残りだった。
「話を聞く限り、誰も生きてはいまい」
叔父の問いかけに、青年は大きく息を吐いたあと、言った。
「分かってるよ、だから行くのさ」
「フランツ、お前一人で行くのは危険だ。もしもの時もある。冒険者を雇うといい」
叔父の言葉を聞き、彼は冒険者を雇うためにギルドへ向かった。
スレイヴダンス
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●目的
キエフから一日半程度にある開拓村が何者かの手により滅びました。
その時に身一つで逃げ出した青年が、村に帰るさいの護衛です。
目的地は、彼の家で、場所は村の中央のようです。
●注意点
村にどのような危険があるのかは、なんとなく推測しても構いません。
ただし、詳しい内容については知りません。
知りたい場合は、なんらかの手段が必要です。
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●リプレイ本文
──依頼人、フランツと名乗る青年である。忘れ物を取りに戻らねばならないと言う。忌わしき過去を乗り越え、一歩を踏み出すためにそれはきっと必要な事なのだろう。
彼の新たな人生に幸あらんことを―――――ハロルド記
フランツの前に立っていた冒険者達は、どことなく頼りなげにも見えた。
頼りないというのは失礼だと思いつつも、彼は挨拶した。
「よろしくお願いします。みなさん」
「やるだけのことはやるさね」
返されたチルレル・セゼル(ea9563)の挨拶を聞いて、フランツはさらに不安を感じた。
その近くには、無言でひたすら何かを書き込んでいる男もいる。
名をハロルド・ブックマン(ec3272)という、彼は先ほどから軽く会釈をしただけで何か書いていた。
「はじめまして医師の〜彩と申します〜。怪我や病気の際はすぐに仰ってくださいね〜。悪化する前にパパ〜っとナイフで切除しちゃいますので〜」
彩藤宮(ec3976)は、にこやかに挨拶した。
フランツの顔色は変わった。彼女は笑顔で言っているが、冗談には聞こえない。
フランツは残る三人へ期待の視線をやった。
「ミラン・アレテューズと申します。よろしく」
ミラン・アレテューズ(ec0720)は、まともに見える。
「フローネです、はじめまして」
フローネ・ラングフォード(ec2700)も、普通の人らしい。
「無事目的を果たしましょう」
ラファエル・シルフィード(ec0550)は常識人のようだ。
少し先行きについて安堵感を感じたフランツは、旅の準備を始めるため一時戻ると言い残すと、去っていった。
その間、フローネとハロルド、依頼書と情報の確認をしていた。そこには今回の依頼と目的地が同じと思われる依頼が掲示されていた。確認したフローネは仲間にそのことを告げるのだった。
ハロルドの調べていた情報については、どうやら目新しいことはなかったよう。
道中のことである。
「今回の目的はいったい何のなのでしょうか?」
フローネがフランツにそう訪ねた。
「私も興味があります。黒衣の男はいったい?」
フローネとラファエルの問いに、フランツは言葉を濁しつつ
「あの黒衣の男の目的はきっと、村人の命だと思います。女子供容赦なく手をかけていましたから。依頼の大事な忘れ物、過去の思い出を取りに戻ることです」
フランツはそう言うと黙った。
ハロルドは、自らの手記に
──依頼人フランツは、自らの過去の思い出を取り戻しにいく──
そう記した。
向かった冒険者が村の門に着いた。
ひんやりとした空気が彼らを包む。
不気味にまで静まり返った村に人の気配はない。
村が崩壊して、時は一月ほど経っているだろう、崩れかけた家屋が、当時何があったのかを静かに物語っている。
長い間訪れるものもなく、静寂と沈黙だけがここにあるようだった。
周囲に危険が無いことを探りながら、歩いていた彼らの前に現れたのは、変わり果てた村人の姿だった。
「やはり、アンデッドか?」
ミランがフランツを庇うように前に立つと言った。
「死んだあとも出歩くなんて、大変さね。さて、囲まれた。やるしか」
「ないようですね」
チルレルの言葉にラファエルは頷く、両者ともに詠唱を始めた。
フローネはフランツの傍らに控えると、彼を守るように立っている。ハロルドは攻撃よりも防御を念頭に置くことにした。
藤宮は動く死体を見て、何か妙に高揚しているようだが、ひとまずそれは置いておこう。
雷光と火炎が収束して弾けた。
進路を防いでいた死人は吹き飛ぶ、駆け出したミランは残る一匹に自らの体重をかけて穂先を突き刺すとそのまま力一杯槍ごと横に振る、死人は勢いよく傍らの木に叩きつけられると鈍い音をたて歪み潰れた。
「豪快ですね〜」
藤宮が感心して言った。
それを境に、どうやら一時的に敵の襲撃はやんだらしい。
安全を確認した後、フランツは目的の場所はこの道の奥だと言った。
─β─
傷ついたミランの治療に藤宮が立つ、その場に近づけぬよう火炎の罠で守るチルレル。近づけぬように、魔法を駆使したハロルドの検討で持ちこたえてはいたが敵の数と、少数の強力な個体を前に彼らは苦戦していた。
すでに精神力を使い果たしたラファエルをフローネが援護している。
そんな彼らの元にやって来たのは、依頼違いの冒険者達だった。
遅れて到着した他依頼の冒険者達は、アンデッド掃討が目的のようだ。
こちらに駆けてきた騎士は、一刀のもとに死人を斬り払うと、そのまま彼らの盾となった。
そして治療を終えたミランと共に騎士が前衛に立った。
戦いは続く、体勢を立て直し防御から攻撃に移ることにした冒険者達は、その勢いで残る前の敵を叩いた。
チルレルとハロルドの援護を受けたミランは、その場にいた最後の死人を葬るとフランツに言った。
「さあ、行きましょうか」
どうやら戦いは終わったらしい。
村を徘徊していたアンデッドは、ほぼ掃討されたようだ。
後の処理は、他の冒険者に任せ、彼らは本来の目的を果たすため現地に向かった。
目の前に扉がある。緊迫した空気がその場を支配していた。
彼女は戸口に立つと中の気配を探っていた。
「気配はない」
ミランは、いつになく真面目に表情で言った。
後ろに立つフランツに合図をすると、彼女は扉を開く。
開いた先にはすでに息絶えた死体があった。フランツの悲痛そうな表情からしてきっと彼の肉親なのかも知れない。
しばらくした後、フランツは目的を達し戻ってきた。
「無事取り戻しました、ありがとうございました」
「そういうお礼は無事返ってからするものさ。じゃ、とっとと帰る」
チルレルの悪びれた態度の中にも、フランツはそれとない優しさを感じた。
「良かったですね。大事なものは肌身離さず持っておきましょう」
ラファエルはそう答えた。
こうして、無事目的を達したのであった。
──依頼人、フランツは無事目的を達した。村にはすでに生きた者の証はない。灰は灰に土は土に戻るであろう。取り戻した過去が彼のこれからの未来に幸あらんことを―――――ハロルド記
帰り道。
村へ向かって黙祷を捧げていたフローネに、藤宮は不穏な言葉を発した。
「死体は、全部火葬にしちゃうんですって〜もったいないなあ。あ、研究です、好奇心」
なぜか、一人慌てている藤宮。
「もう一度惑うことのない処置だそうです。彼らの魂に安らぎがあるように祈りましょう」
「そうですね、無事依頼が成功して良かった」
二人は、それぞれの方法で祈りを捧げはじめた。
ラファエルはふと、フランツに聞いた。
「いったい、取り戻したかった物とは何なのですか?」
フランツは、少しの間迷っていたがラファエルに一枚の絵を差し出した。そこには家族の肖像画と思しきものが、描かれている。
「失ってしまっても、ここにはずっと残っているので・・・・・・」
寂しげに微笑むと、フランツは絵をしまい、ラファエルは何も言わず、碧の瞳を閉じた。
「じゃ、帰るよ〜帰ったら、ご馳走、ご馳走」
チルレルの声が響き、愛馬ノーラにまたがったミランが風を切って早駈けを始める。
──キエフに戻る。首謀者の痕跡はないようだ。目的は無差別な殺戮だったと推測される―――――ハロルド記
冒険者はキエフに向かって、ゆっくりと進みだした。
了