MMO放送局 IN 水竜亭
|
■ショートシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:11月03日〜11月08日
リプレイ公開日:2007年11月12日
|
●オープニング
キエフの表通りから少し離れた場所、それほど人通りがないところに水竜を彫りこんだ木製の小さな看板がちょこんと顔をだしています。お昼は食堂、夜は酒場。
そんなよくあるお店の名前は「水竜亭」というようです。
チリン、チリン。
「いらっしゃいませ!」
扉の呼び鈴を聞いてパラの少年が急いでかけよってきました。
「ご注文は何にしますか?」
「いつもの」
そのお客さんはそういうと、お気に入りの席に座ってむっつりしています。
今来たおじいさんはいつもの常連さんですが、なぜか熊の着ぐるみを着ています。
「まーたー、さぼってるダノ」
窓をながめボーっとしている少年の後ろから何かの声がします。振り返るとふわふわと飛んできたシフール。
その手には大きなスプーンもっていて少年をたたいてきました。
「いた、痛いよポチョン。さぼってるってクマしかいないよ」
「うるさい、叩くのがお約束だポ」
楽しそうに少年を叩くシフールの名前はポチョン、いちおう自分では看板娘となのっていますが、今日着ている服は着ぐるみです。
そして、相変わらずわけの分からない理由で叩かれている少年の名前はリュート、水竜亭の給仕さんになってそろそろ一年近くになります。
え、そのわりに出てくる回数が少ない? きっと語りべの都合です。
それはさておき、先日まで閑古鳥の鳴くお店だったここ水竜亭も、リュートがギルドで募集した依頼を見て訪れた冒険者たちによって、今ではかなり繁盛するお店になりました。
そんなある日の事、忙しい毎日を過ごしていたリュートがキエフの表通りを歩いていると張り紙が。
「収穫祭だよMMO! 会場提供よろしく! MMO部長」
それを見たリュートは、良くない直感を感じましたが、歩いて店に戻りました。
リュートが、店の扉を開けるなり。
「リュート! イベントだぽ」
ポチョンが満面の笑みで飛んできます。リュートは予感しました。
何か起きる・・・・・・と。
こうして、水竜亭を占拠。ではなく間借りしたMMOによる、スペシャルLIVEイベントが幕をあげるのでした。
MMO放送局 IN 水竜亭
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
MMOと水竜亭について説明すると長くなるので、知らない方は
MMO&水竜亭印の報告書を読んで情報を手に入れてください。
基本的になんでもありです。
筋書きのないドラマの筋書きをみんなで作ってください。
普通に観覧しにきても良いですし、積極的に暴れても構いません。
まるごとを着たい方は、MMOから貸し出しします。
無理にまるごとを着る必要もありません。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●リプレイ本文
●毎度のことですが小芝居
冬がジリ足でやってくる頃。
キエフの町並み、その一画を歩く二体の着ぐるみの姿はあった。
『われらMMO、ただいま参上!』
そんな文字が刺繍された鉢巻のようなものをつけたMMO部長は、書記長を引連れキエフの表通りを闊歩している。
「部長、いよいよ私たちの出番ね」
書記長は、自分専用に改造したまるごと赤リボンクマを装着している。だからといって特殊な能力はない、
「寒さこそ、天恵」
返事をする部長は、蒼いほえーるだ。
「それにしても、ごみごみした街よねー」
書記長は何気になく町を見渡すと不自然な姿、はねの生えた着ぐるみがいる。にわとり型のその生物は、ピコピコと音をたてて歩いているようにも見える。書記長の脳裏に、一瞬過去の残像が浮んでは消えた。
「? どこかでみたことのあるような・・・・・・」
「あれは! 伝説のまるごと師、TEBUKURO(左)この街に戻ってきていたのか」
オーバーアクションで驚く部長に、書記長が訳知り顔で返す。
「かつてキエフに、まるごとファッションの潮流を作ったと噂される、レジェンドまるごと師ジュラ・オ・コネル(eb5763)。最近、旅に出たと聞いたのに」
「あの姿からそこまで看破するとは、すごい推理力だな」
「女の勘よ」
「もうじき冬だから帰って来たのだろう、昔から突飛な行動の目立つ女だった」
部長は、傍らに控えていた記録係から手渡された調書を読みながら答える、
「え、今回も記録係が出てくるの?」
「記録係をご指名の方がいるようだからな、ひとまず存在を提示しておいた」
「そうなんだ。とにかく、はじめよー!」
ってなことで、収穫祭だよMMO。
はじまり・はじまり
●水竜亭
キエフの表通りから少し離れた場所、それほど人通りがないところに水竜を彫りこんだ木製の小さな看板がちょこんと顔をだしています。お昼は食堂、夜は酒場。そんなよくあるお店の名前は「水竜亭」というようです。
こんなフリから始まる、水竜亭。今日はいつもより、妙に混雑しているらしい。
「ひさしぶりじゃな」
水竜亭の扉を叩く男がいる。約一年ほどぶりに訪れた男、名を小丹(eb2235)。髭だ。
髭といえば聞こえはいいが、髭だ。特にその説明に意味はない。
チリン・チリン。
さっそく扉を開いて中に入った小丹は、中を見て驚愕した。
(着ぐるみが蠢いておる)
その光景、最初に目に入ったのは張られた大きな看板。
「MMO放送局 お外でテレパシー みんなと一緒」
という、キャッチフレーズ。
ここで良い子のみんなに注意。
MMO放送局とは、まるごとを愛する世界のみんなに無作為・無意味に発信するテレパシーで送られるもの。その放送は、心の声伝承であるため、聞きたいものには聞こえたような気がするのだ。
よって、余計な突っ込みをされても、
『だって心の声ですから、あなたと私のお約束』
という一言で、全て打ち砕かれる。
無粋なまねをしないように。
──話を戻そう。
今回イベントに名乗り出た、着ぐるみマスターたち。いまだ、宴に名前の出ていない人たちは以下。
シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)
シャリン・シャラン(eb3232)
リマ・ミューシア(eb3746)
セシリア・ティレット(eb4721)
ラッカー・マーガッヅ(eb5967)
エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)
イルコフスキー・ネフコス(eb8684)
ジリヤ・フロロヴァ(ec3063)
彼らは彼らなりに、着ぐるみの王道を進むつもりらしい。
さて、急遽設置されたMMOイベント本部では、まるごとを必要とするものたちに、それぞれ貸し出しを始めていた。
「歳末といえば募金ですよね」
獣耳をつけたひろいんセシリーが抽選会用のアイテムを預けたあといった。ゆうしゃは今回お外で訓練をしているらしく、かなり遅れるようだ。
歳末と募金に何の関係があるのか分からないが、とにかく今回のイベント企画にかなり募金した太っ腹がいる。
『歳末MMO募金をよろしくお願いします』
そんな銘が刻まれた樽に、勢いよく金貨を流し込んで頷いたのはリマだ。
「これだけあれば、きっと楽しいイベントになるはずよね」
彼女は、羽のはえた猫的まるごと、ぐりまるきんを着用している。胸を強調した仕様、せくしぃさをアピールしているようだ。誰に向かってアピールしているのかは・・・・・・わからない。
「独りぼっち、独りぼっち。そんなことめげずに登場よ。寒さの到来したキエフに希望の灯明を燈す雪蝋燭エリヴィラ参上!」
ポーズを決めて登場したエリヴィラは、雪だるま蝋燭なので早速すっころんだ。
もがいているが想定の範囲内、何かをふっきたのだろうか笑顔は爽やか、
「エリたん、立派になって。私もここまで一緒に冒険してきたかいがあります」
シシルが感涙にむせぶ、そのシシルにハンカチを差し出したラッカーは、
「うきゅぅ。これで、アルトゥール家の未来も明るいです」
・・・・・・明るいのだろうか? エリヴィラのクールな彼氏はついてこなかったようだ。
「ポチョンとキャラかぶりますよね、シャリンさん」
飛んでいる二体のシフールに向かって、リュートがいった。
「そういうときは、脇役が消えるにきまってるのよ」
「うるさいぽ、ここはポチョンの店だぽ」
確かに、似たような性格のような気はする。
だが、シャリン・シャランは大いなる野望を抱き! この店にやってきたのだ。
あ、それについては、もう少しあとね。
イルコフスキーこと、イルイルは、その性格と職業上、壊れる必然性があまりないためまともである。しかしここはMMO領域。暴走させるのは一興というか、日常。だが色々諸般の事情が絡むため、大人しくまるごとえんじぇる着せて、神父役をやることになった。
「よし、おいらは、これでいいや」
神の御心のままに。
ということで、これから最初に執り行われるのは、ジリヤと愉快なネズミたちという劇である。
──何か題名が違う。
そう、ねずみの討ち入り。
今は昔、伝説の魔女がすむカウンターに討ち入りし、凱旋する独身ネズミの話。
筋書きが変わっているが、気のせいだ。間がもちそうもないので確変がきっと起きたのかもしれない。
「むかーし、むかーしのことじゃった。独身ネズミが伝説の魔女がすむというカウンターに旅に出たときのこと。途中、色々なまるごとに会ったそうじゃ」
なぜか、小丹が語り部になっている。多分、料理の合間にやっているのだろう。
要約すると。
ラッカーが扮する独身ネズミが、お嫁さんを探して魔女のいるカウンターに討ち入りというするという、シンプルなストーリーである。
ちなみに、魔女というのは、カウンターに座っている。
「そういえば、うなぎある? あとノリス元気? いや、モリスだっけ? 今年の冬もまた出兵があるトカ ないトカ」
とぼけているジュラ、トカいう魔女だ。
「いきなりの急展開ね」
抽選会の準備をしつつ、リマがジリヤにいった。ちなみにジリヤは少女だけど少年に見える女の子。まるごとクマを着ている。
「このあと結婚式ですよね、上手くいくといいなあ」
のほほんとした二人、和む。
討ち入りについては、詳しくあれやこれや書いていると、あっというまにさよならになりそうなので、近況のみかいつまみ、もうクライマックスだ。
魔法少女の枝でジュラを指し彼女は断言した。
「魔女、覚悟! って、やっぱりこうなるのねー」
ネズミーのお伴蝋燭雪だるまは、突撃というより転がってジタバタしている。
「うきゅぅ──魔女め、よくも仲間を」
「特に何もしてないのだけど」
魔女ジュラの感想のとおり、蝋燭は自爆しただけにもみえる。きっとそれが蝋燭雪だるまの役割なのだ。
「とにかく、ネズミの筆をくらえー!!」
必殺ネズミの絵描きが炸裂した。魔女の顔に落書きが完成した。
「ヤラレタ、ぐふ」
魔女はこうして倒れ、カウンターに平和が戻ったのだった。
「なにか、ご都合主義だなあ」
「こういうのも、たまにはいいですよ」
リマとジリヤは、あいかわらずのんびりと抽選会の準備をしている。その背後では復讐に燃えるシフールが占いの館シャランを準備していた。
(あとは、罠にかかるのを待つだけ)
・・・・・・果たして、そう簡単にいくのだろうか。
●聖なる抽選会
凱旋したネズミーを出迎えたのは、隣の家に住むシシル扮する、花嫁だ。
「おかえりなさいラクさん」
「ただいま」
ぎこちないシシルの笑みにラクが答えた時だった。
──部長が現れた。
「それでは、これより予定されていた結婚式をおっぱじめます。いでよ、イルイルえんじぇる」
イルイルえんじぇるが召喚された。
「新郎、新婦は整列。汝は彼女を愛することを誓いますか?」
えんじぇるの、言葉にラクとシシルは顔を見合わせて・・・・・・。
「お姉ちゃん、今ついたよ」
まるごとゆうしゃがやって来た。
「遅いです」
「ごめんなさい、あれ? 結婚式」
「そうですよ、これから誓い。あ、ブーケ」
「よーし、籤は作り終わった」
詰め物なので、リマの胸が妙な形になっている。
「それじゃ抽選会ですね」
「ブーケは誰にも渡さないわよ」
「僕もほしいなあ」
この二人も戦線復帰のようだ。
その頃。
まるごとウメさんを装備した小丹は、マスターとお祝い料理の準備をしていた。
「今回は、子豚の丸焼きに挑戦じゃ!」
見開いた目、炎が浮ぶ、料理人魂が炸裂したらしい。
「ンー。お祝いですねーノンノン」
「料理の秘訣は、パリパリの皮じゃ」
厨房で二人は料理を始めた。
式は進む。
イルコフスキーの問いに、二人は答える。
その返事は、あえてここでは語らない。それは自らが伝えることで、誰かが語るものではないから、ヴェールをまとったシシルの手をひき、ラクは壇上より進む。
拍手に包まれたその場、籤をひいたエリヴィラは自らの提供した物が当たったことに気付く。
握った銀色のスプーンには幸運の名がつく、その輝きを見て、エリヴィラは自らの想いを内に秘める。空にかざしてみると陽を受けて、スプーンはきらきらと光った。
シシルがブーケを投げる。
手を伸ばす未来の花嫁たちを尻目に・・・・・・空飛ぶポチョンに奪われた。
後日の話。
用意された籤、その景品アイテムのほとんどを奪い、部長が高飛びした。
憤慨した書記長をリーダーとする追跡団が結成され、熾烈な追いかけっこが始まる。
ジリヤクマと書記長のクマのコンビ。
えんじぇる・こあくま・ゆうしゃの三匹の大活躍などもあり、部長は捕まった。
しかし、すでにアイテムは売り払われ、部長の遊行費に使われていたのだ。
部長は、蝋燭だるまに、色々ご想像にお任せする懲罰を受けたようだが、とにかく平和はやって来た。
なお、追跡団に参加したものには金一封が贈られたという。
これをMMO部の歴史における
「部長結婚式の乱」と呼ぶ。
●おまけ
「良かったらあんたも占ってあげるわよ、しふしふ占い♪」
記録係を呼び止めたシャリン、
「占い? いや、間に合ってます」
「とにかく、占いなさいよ」
記録係はしぶしぶその席についた。ゆうしゃとの協議により、すでに落とし穴をセッティングしていたシャリンは、心の中でほくそえんだ。
その後ろのほうでは、ブーケをとれなかったリマが大暴れしているようだ。
「もう、やってられないわ、たおしてごらんよ、ゆうしゃさま」
「うー、年上のお姉さんは苦手」
「じゃ、僕と遊ぼうよ」
「おいらも一緒にあそぶよ」
その後、ジリヤとゆうしゃとイルイルは仲良く遊んだそうだ。ひろいんは後片付けが忙しくて、今回は構っている暇がなかったらしい。
このことから、ゆうしゃは色気のある年上異性は、実は結構苦手なことが判明した。ということはひろいんは色気が・・・・・・なのだろうか。
では、占いに戻ろう。
「しふしふしふー。みえた、あなたはこれからとんでもない目にあうわよ」
「とんでもない目?」
「そうよ、あたいを羽よばわりした罰よ、これを回避するには」
「ふふふ、ははは。羽さん、詰めが甘いよ。記録係には必殺技がある」
「な、なによ」
「必殺、ペン置き」
記録係は記録するのをやめた。
その後なにが起きたのかは、正式な記録には残されていない。
「卑怯さに磨きをかけたわね」
──プツン。
放送終了