おねえちゃん感謝祭−SP

■ショートシナリオ


担当:Urodora

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:4

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月15日〜02月20日

リプレイ公開日:2008年02月25日

●オープニング

「暇だ」
 中年ギルド員こと中年は、あいもかわらずサボっていた。
 彼にとってサボることがライフワークであり、働く事が余暇のようなものだ。
 しかし、多忙の中でサボることに意味があるわけで、最初から暇なのはサボる以前の問題ともいえる。
 よって、今まさに・・・・・・彼は仕事を来るのを待ち望んでいた。
 そこへやって来たのはセシリア・ティレット(eb4721)である。
「ん、パーティーをやりたい? って」
「はい、日ごろお世話になっている人たちへ感謝を込めて」
 どうやら、セシリアはプレゼント交換会を依頼しにきたようだ。
「ギルドにパーティー依頼か・・・・・・よし乗った! 司会は任せろ」
 別に彼を指定したわけでもないが、やる気になっているのだし、このさい彼に決めてしまおう。
「それでは、よろしくお願いしますね」

 
「暇だー」
 赤毛のちびっ子ことアレクは、黒衣の僧侶の居場所について報告が来るのを待っていた。
 彼にとってMr・AFこと、黒い奴と決着をつけるのが今の至上命題であって、おやすみは付録のようなものだ。
「冬だから仕方ないだろう。さみー真冬に遊びたがるのは、お前んちだけじゃないか? リナちゃんもすっかり感化されてるし」
 何気なくやって来ていたジルの視線が、アレク家の面々へと向けられた。
 新入りのリナを筆頭に、母親からアレクまで、なぜかみんな防寒着を着込んでいる。
「ジル君、良い子は外で遊びなさい」
「アレク母、俺はもう良い子って歳じゃないぜ、なんだったら試してみるかい」
 軽口を叩くジル、何も学習しない男である。
「周りに子供がいるのに、そういう発言は精神衛生上悪い」
「それを言うなら、環境不適合とか言ってくださいよ」
 この人たちはいったい何の会話をしている? とりあえずよく分からない。
 何を試すのだろう? まあいい。
 さて、暇をもてあましていたアレク達に朗報をもたらしたのは、三角帽子のニーナであった。
「アレク・ジル! 祭りー祭り」

 
「駒だ」
「それを言うなら、暇でしょ部長」
 MMO・・・・・・以下略。


 エロフ・・・・・撲滅。


 こうして、会場はそこらへん、ちょうど近くにあった水竜亭にて『おねえちゃん感謝祭』が、開催される事となったのだった。

●今回の参加者

 eb0516 ケイト・フォーミル(35歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb4721 セシリア・ティレット(26歳・♀・神聖騎士・人間・フランク王国)
 eb5076 シャリオラ・ハイアット(27歳・♀・クレリック・人間・ビザンチン帝国)
 eb5663 キール・マーガッヅ(33歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb7760 リン・シュトラウス(28歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec1182 ラドルフスキー・ラッセン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

「祟りじゃ! これは全て、クマガミ様の祟りッポ!」
 騒ぐポチョン、彼女はマスコット。
 のっけから理解するのにきつい展開だが、記録している本人も理解していない。
 ここは確か水竜亭という、知る人ぞ知る名店だったはずなのだが、
「こんな日に、感謝祭なんてするから・・・・・」
 ウェイターのリュートが悲しそうな瞳を参加者に向けるとぽつりと言った。
 今日は楽しい感謝祭。良い子がみんなでのほほんとする日。
 甘い、甘い、甘い。そんな風に平和になるわけがない。
 なぜなら、司会が
「わたくし、生まれも育ちもキエフは裏町。サボりと啖呵を切らせればテンション一番、貴方の心のお友達、中年ギルド員こと、中年でございます」
 いや別に彼とこの事象の関係はない。なんとなく台詞を言いたかっただけのようだ。
 このままだと色々長くなりそうなので、初めに今回の参加者を紹介しておこう。

ケイト・フォーミル(eb0516)
「はたして、無事お母さんになれるでしょうか!」

セシリア・ティレット(eb4721)
「大人しい? それきっと仮面」

シャリオラ・ハイアット(eb5076)
「性格の悪さは、照れ隠しだね」

キール・マーガッヅ(eb5663)
「君は昔、無口だった」

リン・シュトラウス(eb7760)
「垢抜けた。いや、弾けた?」

ラドルフスキー・ラッセン(ec1182)
「幼女・・・・・・ではないよね」


 寸評は、独断と偏見でついております。
 細かい事を気にしないほうが精神衛生上良いでしょう。


 それでここまでは、あれ何の話? そうだ巻き戻し、巻き戻し。


 ──ちょっと前。

「ケーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキ!!!!!!!!!!!!」
「な、なにか、も、ものすごい、反応だな。ニーナ」
 ケイトがケーキという産物をこれから製造すると宣言した瞬間、ニーナ・ニームの気分は最高潮に達した。
 ニーナにとって、ケーキとは感慨深いもので、ケーキという言葉を聞くとお姫様だっこという単語と同レベルの興奮が彼女の脳内を迸るのだった。
「・・・・・・私は生まれ変わりました。食べる人から創る人に! さあ、今日は誰も・・・・・・逃がしませんよ」
 リンも妙にうきうき? 気分で料理をすると言い出した。しかしリンと料理という言葉はあまり似合わない。
 やや、というより、かなりの偏見に満ちているのだが、厨房に向かうリンを見届けたジルは、真っ黒く怪しい物体が速やかに出来上がるのを想像し、隣でぼんやりしているキールに囁いた。
「まじすか? あのリンさんが料理なんて、何かこえー」
「・・・・・・人は変わるものだ」
 確かに変わるものだが、必ず良いほうに変わると保障されているわけではない。
「消し炭を食べるの、俺嫌ですよ」
「それも一つの修行だろう」
 キールの言い方からすると彼もその可能性を考慮に入れているらしい。失礼、というよりも冷静な判断である。

 とにかく、ひとまずケーキという代物やら料理を製作する事になった。
 途中、ニーナとケイトはケーキを作りに悪戦苦闘したあげく、不器用さん一発で、小麦粉をかぶって真っ白になったもするわけだが・・・・・・いや、今は捨ておく。

 その頃、ぶらぶらと店内を歩いていたシャリオラの前に現れたのは、見たこともない生物だった。その生物はシャリオラを見つけると、獲物を選ぶように近寄り、しわがれた声で爽やかに挨拶を発した。
「今日は招待ありがとう! おねえたん」
「おねえたんって・・・・・・誰も変な着ぐるみを呼んでませんよ」
「ひどいな、僕だよ、僕。まるごとゆうしゃだよ」
 いちいち説明するのが面倒なので、真相を話そう。
 まるごとゆうしゃは、アレクがたまに着せられるまるごとである。それをMMO部長が装着してやってきた。いや、誰も呼んでいないのだが、部長は地獄耳なのだ。

「あれ、部長さん? 今日は珍しいのを着ていますね、元気でなによりです。でも無理して着ると壊れちゃいますよ」
 ぱんぱんに膨らんでいるまるごと生物にセシリーが気づいて声をかける。
 部長物は動揺した。彼は正体がバレルとは考えていなかったのだ。
 動揺する生物を見、浅はかさにシャリオラは意味もなくほくそえむと
(愚かものには神の裁きを! 中途半端な黒さは怪我の元)
 などと思った。わけではないが、心境を勝手に代筆してみた。
「セシリーさんは、この生物を知っているのですか」
 シャリオラが聞いた。
「はい、お世話になっているMMOの部長さんです。姿かたちと態度は変ですけれど、良い方です」
 部長の動きが止まった。何気に結構きついことを言っている気もする。
「そうですか、変わった友達がいますね」
 確かに、だがシャリオラも・・・・・・十分。
「乙女心は複雑怪奇ー」
 厨房のほうで誰かが歌っている。多分リンだろう。
 という感じで、パーティーの準備はされている。

 隅のほうで、赤毛と顔色の悪い魔術師も話しているので、記録しておこう。

「ラドラド、相変わらず顔色悪いね」
「顔色の悪さも、大人の特権だ。アレク」
 アレクが子供らしい残酷さ? を込めてラドルフスキーに言った。
 聞いたラドルフスキーは、人差し指と中指を揃えて額にまばらにかかった前髪を漉く、その行動に何の意味があるかというと、格好つけているだけなのだが、あまりここでそれを・・・・・・は、書いてしまった。
「そうなんだ、顔色悪くなるなら大人にはなりたくないなあ」
 ラドルフスキーの気色の悪さは、彼の標準仕様という奴なので、年齢は関係ないとラドルフスキー本人も思うのだが、あえてここで子供の夢を壊す事もないと悟った彼は、アレクに聞いた。
「それよりニーナは最近どうだ?」
「あーラドラド、ニーナのことが気になるの」
 ラドルフスキーが黙った。誰でも自分以外のことはよく見えるものである。


 その頃。
 ニーナ・ニームとケーキ作り隊は、壮絶なバトルを厨房で繰り広げていた。

「セシリー! 小麦粉が顔につくと面白いデス」
「ニーナさん、小麦粉は顔につけるものではありませんよ」
「う、うむ。小麦粉はこうやってかき混ぜる、もの、もの、って、なに?」
 ケイトの顔にも勢い余って白い化粧が施された。ケイト、それでは力いっぱいすぎる。
「ケイトさん!」
 セシリーが慌てて、ケイトの顔を拭いた。
「だ、誰にでも失敗はある、次に成功すれば」
「ケイト、ドジデス」
 ニーナはきつい一言を浴びせた。そういうニーナの顔はすでに真っ白だ。
「ほら、顔につけてないで、だ、だめだぞ」
「そうですより、ニーナさん、食べ物を粗末にしてはいけません」
「やデス」
 逃げ出したニーナ、追う二人。
「乙女心は複雑怪奇ー、らんらんらん、お鍋コトコト」
 状況にまったく動じず歌うリン。そのフレーズがかなり気に入ったのだろう。ずっと口ずさんでいるようだ。 

 それ以後・・・・・・。

「あんぎゃー」
「むんぎゃー」
「はききゅーん」

 などという、叫び声が聞こえたか知らないが、かなり白熱している厨房。
 そちらに視線を向けた、食べる係の男たちの胸には不安がよぎる。

「まともに食べられるものが出てくるんですよね」
 ジルがキールに尋ねた。しかしキールは無言のままだ。
「だ、だいじょうぶだよ。きっと」
 アレクの動揺した瞳がラドルフスキーに向けられる、それを受けたラドルフスキーは優しげに、
「食べても死ななければ、問題ないさ」
 いや、生死という文字が関わっている事自体、かなりの問題があると思う。
「ふふ、楽しくなってきましたね」
 唯一調理に参加してない女シャリオラ。彼女はこの騒動を見て、楽しんでいる。やはり性格の悪さにかけては、なかなかのものらしい。


 さて、この料理がまともだったか?
 

 それは──。

「祟りじゃ! これは全て、クマガミ様の祟りッポ!」
 騒ぐポチョン、彼女はマスコット。
 理解するのにきつい展開だが、記録している本人も理解していない。
 ここは確か水竜亭という、知る人ぞ知る名店だったはずなのだが、
「こんな日に、感謝祭なんてするから・・・・・」
 ウェイターのリュートが悲しそうな瞳を倒れている赤毛の少年Aに向けて言った。
「アレク、俺をかばって、こんなことに」
 ジルが笑いこらえながら言う。アレクは・・・・・・どうやらニーナ作のケーキ毒見係を引き受けたようだ。
「クマガミ様はお怒りっポ! 呪いを解くには」
 っていうか、クマガミって何なの? という質問が出るわけだが、勢いでポチョンが叫んでいるだけなので、細かいことは気にしなくい良い、前フリというやつだ。
「呪いを解くには!」
 一同の視線がポチョンに集まる。
「お姫様のキスっポ」
 ベタな展開だな。誰もがそう思った。すると
「セシリー! 王子様を目覚めさせるときです」
 リンが強い口調、有無も言わせない勢いでセシリーに迫った。
「え? はい」
 さて、さて、さて、この先どうなったか? っと、ちょうどインクが切れる、か・れ・ア・セ・・・・・・。


 ────・・・・・・・・。
 
 プレゼント交換会はこうして無事終わった。
 何かとても大事なところが抜けているような気がするが、世の中上手くいかないこのほうが多い。
 

 今回、ケイトはニーナに子猫をあげようとした。
「ニ、ニーナ。これで寂しくないぞ、ぞ」
「嬉しいデス。でも、ケイトのお家で一緒に飼います」
 と、笑顔で返された。
 それ以後、ニーナはケイトの家に遊びに行くようになるのだが、ケイトの家の中はものすごいことになっているため、ニーナは喜び大暴れしたという。

 リンはジルを裏庭に呼び出した。
「お、リンさん告白ですか? 俺は胸が大きいほうが」
「ジル君、ムードってものがあるでしょう!」
 そのあまりのお調子者っぷりに、リンはジルをぶっとばした。ちなみにリンの料理は成功したようだ。 
「いてー、キールさん。リンさんがひどいっす」
 帰り道、ジルはキールに先ほどのことを話したようだ。さすがに呆れてキールは言った。
「ジル・・・・・・お前を弟子にするのは考え直したほうが良いかもしれないな」
「ひどい。みんなでいたいけな青少年をいじめる」
 とりあえず、プレゼントは無事渡されたので、バンザイ。

「ニーナ」
「ラドラド、相変わらず真っ白いデス」
 ・・・・・・そういう言い方はないだろうと内心思ったが、ニーナはそういう性格であるためラドルフスキーも慣れている。
「今日は、その、プレゼントというか」
「なに?」
 ラドルフスキーは、

「ナイトミスト=密に編まれた黒色のレースを用いて作られた、柔らかな雰囲気の夜会用ドレス。スカートと肩口の広がる姿は夜に漂う霧のように見える」
 結構、エロティックな代物をあげたようだ。何かを狙っているのだろう、多分二十年後あたりだろうか?
「ふわふわ、ふわふわ」
 喜ぶニーナ見て、空想に浸るラドルフスキーであった。 

 シャリオラは、夕日を眺めていた。
「坊やたち、お姉さんが、今日はレクチャーしてあげる」
 珍しく、色っぽい口調で、坊やたちに彼女は話しかける。
「いい、ジル『D戦法その4、女性は可愛いものに弱い』よ。これを着けてイケイケしなさい」
「まじすか? っていうか、これが伝説のウサギスタイル!」
 うさぎ耳をつけたジルが言った。間抜けである。
「そして、アレク。大事な人へのプレゼントは2人っきりの時に渡しなさい。これが鉄則です」
「二人っきり?」
「そう、ムードが大事なのよ、そこのウサギみたいな色物になっちゃだめ」
 シャリオラの物言いに、
「俺って・・・・・・いったい」
 ジルは、自分の立場を思い知るのだった。
 

 
 いつのまにかに完成していた、ジャパンで言うかまくら。キールが人知れず作成していたものの中にシャリオラが言うように、アレクはセシリーと二人きりだ。
「お姉ちゃん! ありがとう」
「いえ、アレクさん、そのこういう歌を知っていますか」 

 止むことを知らずに夜空舞い落ちる
 寒空ほど星のまたたきは綺麗で
 キミと近づいて歩ける季節が好き
 白く続く歩幅を合わせて残す足跡
 繋いだ手のぬくもりで幸せが溢れている

「誰の歌?」
「あ、私のです」
「すごいね!」
 それからしばらく話をした後、セシリーは何気なく、アレクの手を取った。
「まだあのときの約束を覚えていますか・・・?」
 温もりを感じて言葉を続けるが、アレクは疲れたのだろう、眠い目をこすりながら返す。
「いつの? 約束」
「大人になったら、その」
 一瞬、何を続ければ、迷った後
「アレクさん、好き・・・」
 沈黙が訪れた。しばらくして、動き出した時に響いた応えは、
「僕も」
 そう、聞こえたような気がした。けれど、言葉の続きは、降る雪の静けさと寝息の中に消えてしまい、真実なのかどうなのかは冬の夜が知るのみだった。


 

 番外編

 ──雪合戦、やれねーよ! やってやるぜ! in 水竜亭──

「ここ、水竜亭スーパー庭先には出場者が続々と集まっております。それでは実況は私実況と」
「解説の中年だ、よろしく」
「中年さん、今回の試合をどうみますか」
「ジャイアントケイトが強そうだ、とにかくでかい」
「雪合戦と体大きさに何の関係が?」
「勘だ」
「ジル&キールのタッグなどはどうでしょうか」
「師弟かつ遠距離攻撃が得意、コンビネーションアタックの切れ味は怖いな」
「シャドウ・シャリオラの黒さも捨てがたいと思いますが」
「だが、対抗馬の(仮)ホワイト・セシリーがいるからな」
「その(仮)に意味があるんでしょうか」
「あれは仮面だ。俺には分かる、あの時もそうだった」
 中年は大分前に行った聖誕祭のレースを回想した。そう、あの時もセシリーは一着だった。
「侮ってはいけない。顔に似合わずやるぞ、彼女は」
「リンリンリン、鐘が鳴るもいます」
「その呼び名はどうかと思うが」
「ランランラン、鐘が鳴るでもいいですけど」
「どっちでもいい」
「さて、最後に入場したのは白面の魔術師ラドルフスキーです」
「その名前は良いな。頂いた」
 
 さあ、ゴング? は鳴った!
 打ち放たれる雪球、交わす汗と汗。果たしてこの修羅場を勝ち残るのは・・・・・・。
 と、いうところでお時間のため、ここ水竜亭スーパー庭先からの実況を終わらせていただきます。
 それでは、また機会があったら、よろしくな。


 なお、雪合戦、やれねーよ! やってやるぜ! の参加者には特別な保存食が配られたのは秘密である。

 こうして感謝祭は終わった。
 リンの希望であった、魔女・エフェミアとその仲間達だが、彼女は今のところ動けないため、今回は欠席となったようだ。

 了