【普通の冒険!】 ゴルビー君と遺跡

■ショートシナリオ


担当:Urodora

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月12日〜05月17日

リプレイ公開日:2008年05月20日

●オープニング

「僕ってなにか影薄いよね」

 ギルドに現れた小柄な男は溜息をついた。
 なぜか気分的に頬擦りしたくなる彼の名は、ミハイル・セルゲイビッチ・ゴルバチョフ、愛称ゴルビー君。
 能力値は計測不能、職業その日暮らし、年齢は多分若い。
 普通遺跡という遺跡を探索することを生甲斐とする青い瞳の純粋な青年だ。
 そのゴルビー君は、今日もまた物憂げでやる気のなさそうなギルド員が、背後で欠伸をしているのを聞きながら、とある遺跡についての依頼を眺めていた。

「リドルか」

 普通遺跡。
 またの名を不思議遺跡MK-II。
 その探索に向かった前任の冒険者たちの前にあらわれたのは、盗掘兄妹という遺跡荒らしと地下への階段。
 そして謎の石版であった。
 盗掘兄妹により荒らされた遺跡。
 しかし地下二階は、今のところ手を出された形跡がない。
 発見された石版には、なぞなぞ。いわゆるリドルが記してある。
 盗掘兄妹では、きっと解読が無理だったのだろう。
 

 謎の石版にはこうある。

 デビルの沙汰も銭しだい、銭しだい。
 右は守銭奴、左は貧民。
 物ほしそうに手招いた。
 左右の泉に金貨を投げて泡がたったら大正解。不正解は天罰下る。
 拾ったあとは金の鬣。
 突っ込み回して、左にグルグルグル。
 目が回って驚くとドラゴン出てきて焼け焦げた。
 
 これのどこがリドルなのか、書いた本人もきっと悩むところだ。
 適当に何かがあるのを示しているつもりなのだろう。 


「意味不明、僕じゃ分からないよ」

 ということで、ゴルビー君は自分の知力と武力の限界を悟り、イカシタ冒険野郎たちを仲間にしようと試みるため受付へと向かうのであった。

●今回の参加者

 eb7693 フォン・イエツェラー(20歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb8120 マイア・アルバトフ(32歳・♀・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ec1182 ラドルフスキー・ラッセン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec3559 ローラ・アイバーン(34歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●君は遺跡に向かう、僕達は遺跡にいる


 春という季節は気分の良いもので、どこか浮かれた気分になるものだ。
 冒険者といっても、やはり普通の感性を持ち合わせているものが大半だろう。
 晴れた空、白い雲を期待して旅立ったもののその日、天気は悪かった。

 遺跡に向かう道中。
 フォン・イエツェラー(eb7693)は、多少鬱々とした気持ちを抱えつつも、爽やかな笑顔を浮かべている。
「曇りですか、いい天気ですね」
 見上げた空は灰色だ。
 皮肉なのか、本気なのか分からないが、彼は彼なりに矛盾したものを抱えているらしいだ。
(さて、今回は狂化するのでしょうか)
 フォンは内心そう思った。
 自らの暗黒面を自覚するのが目的なのかは分からない。しかし、彼は自ら暗闇に向かう選択を選ぶ、なかなか面白い男のようだ。
 マイア・アルバトフ(eb8120)は人妻だ。
 人妻という響きはある種の人間にとって、悩ましい響きを持つものだが、彼女はどちらかというと悪妻の部類に入る・・・・・・のだろうか、家庭の事情はひとそれぞれである。
 現状マイアは多少生活費に困窮しているというより、将来設計のためにお金が必要のようだ。彼女の夫の稼ぎは、あまり期待できない気もする。
 マイアは空に視線をやったあと影が薄いというよりも、今回はあまり必要のないゴルビー君に向かって言った。
「キャラは、自分で作るものよ、望まないものに勝利はやってこない」
 マイアは何かを悟ったように頷くと、ゴルビーへ向かって諭す。
 だが彼は困惑した。
 そんなことを言われても困る。
「キャラ立て難しいですよ」 
「なんでもいいの、とにかく目立つことよ。例えば彼のように」
 マイアが指差した先には、無意味やたらと炎を操る男がいる。
 なぜか彼は火をつけては消している。
 そこに意味があるかというと、特に無い。きっと自己主張だろう。
「今日もいい炎日和だぜ」
 いつからこんなキャラになったのかは本人も知らない。
 元々知的で影のあるタイプだったような気もする彼は、ラドルフスキー・ラッセン(ec1182)
 ちょっとネクラな魔法使い。
 最近はボケが目立つが、気晴らしで誰かがそういう方向に持っていっているだけだ。

 残る一人ローラ・アイバーン(ec3559)は比較的普通なのだろう。
 普通という定義をどこにおくのかは見る側の価値観であるため、細かいことを説明するのは難しい。
 普通に描写するのならば・・・・・・。
 女がいる。
 それと見て分かるほど、胸部は豊かな女だ。
 褐色の肌に映える青の瞳が美しい。 
 だが、その瞳はどこか冷たい。
 直接的な冷たさというよりも淡々とした感じ、素っ気無さと同時に凛とした雰囲気を保つ女だった。
 以下、面倒になった・・・・・・彼女はローラ。
 ローラは話し出した。
「ミッション・コンプリート。今回の任務は苦戦したであります」
 なぜか遠くを見つつ、ローラはそう言った。
「任務、まだ終わっていませんが」
 フォンが触らないで良いところで触ってしまった。
 ローラはフォンへ視線を移したあと、
「今日も、いい天気」
 天を仰ぐ。
 なお、今日は曇り。

 ────。

「あいかわらず、変わった人しかこないわね」
 マイアが言った。自分が変わっている自覚はあるらしい。
「まあ、今回も実際無かった事になるはずだったからな」
 ラドルフスキーが意味深なことを言った。
「きっと、神が逃げることを許さなかった。だからあたしがここにいる」
「因果ってやつか、恐ろしいぜ」
 無意味に渋さを決めつつラドルフスキーが答えた。
 その後、なぜか浸っている二人を見たローラがフォンに聞いた。
「あの二人は、なぜシリアスな顔をしつつ話をしているでありますか?」
 フォンは何事か考えていたが、 
「あまり気にしないほうが良いと思いますよ。きっと色々余裕があるので遊んでいるだけですから」
 笑顔のフォン。
 彼の言葉は、ある意味で真実をついているが、それは偶然から発したものである。


 ここからは、リドルについての解説。

 
 ●リドル

「デビルの沙汰も銭しだい、銭しだい。
 右は守銭奴、左は貧民。
 物ほしそうに手招いた。
 左右の泉に金貨を投げて泡がたったら大正解。不正解は天罰下る。
 拾ったあとは金の鬣。
 突っ込み回して、左にグルグルグルグル。
 目が回って驚くとドラゴン出てきて焼け焦げた」


 ●ラドルフスキーの意見

 リドルは、守銭奴と貧民だと直接お金をほしがるのは、守銭奴。
 貧民の場合は、お金よりも食べ物、もしくは継続してお金を得られる仕事を
 望む。
 貧民は宝を持っているとは思えない。
 守銭奴は、溜め込んだお宝を持っている。
 結果、右が正解じゃないかと思う。
 お金を金貨、銅貨などを投げ入れて、反応を見る。

 拾うというのが何かはわからない。
 拾った後は、獅子の中に手を突っ込んで、何かをする。
 文面どおりに、すると、何かとんでもないことが起きるようだ。
 押したり引っ張ったりして、反応を見る。
 反対回しも出来ないようなら、あきらめて、左に三回転させるしかないのかな。
 獅子に突っ込むのは、すぐに逃げられる人にやってもらう。


 ●マイアの意見

・左右の道

 とりあえず右の守銭奴。
 貧乏人は清く正しく生きるイメージが強い。
 金にがめついなら守銭奴、地獄の沙汰も金次第。

・泉
 やっぱり金貨を投げ入れてみるしかない。
 
・金の獣

 ローラさんも言ってるけど獅子。
 口の中っていうと舌でもまわすこと。
 左じゃなくて右に回すのが正解っぽい。
 それと投げ込んだ金貨はやっぱり回収するべき?
 泉自体が何かありそうで怖い、もし回収する必要がある時は注意。

 ●ローラの意見 

 このリドル最大の難関は右か左。
 個人的には守銭奴と貧民、金貨を与えるなら後者。  
 即ち、金貨を与えて泡立つのはどちらか?
 拾う物? 金貨などの可能性。
 金の鬣は獣の象の事。
 入れるのは、自分の腕か、拾った物か、両方か。
 どちらに回すか? 左に回すとドラゴンが出て来て焼き焦げてしまう。
 ここは右に回すのが良い。


 ●フォンはリドルについてはお休みです


 最初の道についてローラは実行した結果、正答が出たほうが
 答えという意見である。よって右から始めて左に移る。


 【盗掘兄妹の動き】

 ローラとラドルフスキーによるトラップが設置された遺跡にやってきた二人は。
「アニジャー?」
「なんだ、モンジャ?」
「こんなものが」
 二人の名前だ。アニジャが兄貴で下がモンジャらしい。
 入口に張り紙をみた彼らは
「わかるようでわかんないよ、読めないよーアニジャ」
「読めないな、モンジャ」
 このトラップ達には最大の弱点があった。
 彼ら字があまり読めなかった! かなり致命的な気もする。
「いこうよ、いけばわかるよアニジャ」
「いけばわかるな、あの先には何かあるぜ」 
 いきあたりばったりな、二人。
 よく今まで生き残って来られたものだ。
 地下二階にはお腹が空いたから行かなかったあたりの理由だろう。
 色々な意味でゴルビー君と良い勝負である。
 こうして彼らは、地下二階へ侵入した。


【右、守銭奴の泉】

 ということで、泉に直接行動する実験体として・・・・・・ではなく、すぐ逃げられる人としてめでたく選ばれたのは!
「わ、私ですか?」
 狂化は、まだしていないフォンだった。
 外見が女性的など色々あれ、職業上一番頑丈そうなのは確かである。
「回復は任せて」
 マイアが胸を張った。
「火消しは任せろ」
 ラドルフスキーが言った。
「黙認は任せろであります」
 ローラは呟いた
 それでいいのだろうか?
 こうして、フォンは貧乏くじを引いた。正直それがないと真面目に役目がないというのもある。
 がんばれフォン。

 ──その頃、

【左、貧民の泉】

 例の二人は
「これは!」
「ワンワンだよ、アニジャ」
「すげーこんなところに犬が住んでるなんて」
「すごい、すごい。でも、なんでこんなに涎が」
「腹が減ってるンだよ、モンジャご飯だ」
「分かったよアニジャー」
 いえ、きっとそれはライオンの置物です。
 ということで、ワンワンにご飯をあげてしまいました。
 ブクブクブク。泡が立っている。

【右、守銭奴の泉】
  
「何も起りませんね」
 金貨を泉に投げると、泡は立たなかったが、底のほうに何かあるのが見えた。
 それは何かボタンのようなものだった。
 フォンはゆっくりとボタンを押すと、ライオン像の口が少し開いた。
 どうやら、ライオン像の口の中にはハンドルのようなものがあるようだった。
 ひとまず左に三回転させたフォン。
 その結果の台詞が上である。
「期待外れね」
 回復する気だったマイアが、なぜか残念そうに言った。
「プットアウトの準備が無駄だったぜ」
 いっそのこと自分で火をつけて消そうかとラドルフスキー思った。
「戦略的撤退ならいつでも可能。右も引き続き行うであります」
 犠牲になるのは自分ではないローラは、冒険を軍事ロマンチシズムで染める。
 ・・・・・・この人達はいったい。フォンは思わず暗闇に独り走り出しそうになった。
 そうすればめでたく違う世界の住人になれる。衝動が彼を襲う、このまま駆け出してしまえば、楽になれる。
 心の中の悪魔が囁いた。
「いってしまえ」
 しかし、そんなフォンの迷いを断ち切ったのは、
「あんぎゃー!!!」
 隣側の通路から聞こえた叫びであった。
「やはり楽に返してはもらえないらしいわね」
 マイアは肩をすくめた。
「やっと出番か燃えし尽くしてやるぜ」
 ラドルフスキーが帽子を被りなおした。
「戦闘任務開始であります」
 ローラが淡々と言った。

 まあ、そういうことで彼らは隣に行く事になる。
 そこで出くわした光景は、焼け焦げて真っ黒二人が走ってくる姿。

「ここは抹消するのが任務としては最善であります」
 ローラはおもむろにスクロールを取り出して、氷の輪を指で回しだした。
「倒す必要はないでしょ、どうみても虫の息」
 マイアの言うとおり、
「やれやれ、あれは! ついに俺の出番だ」
 ラドルフスキーの視線の先にあったのは、燃えさかる炎であった。
 こうして、盗掘兄妹は見事に自爆した。
 ということは、最初の右の泉が正答だったということ?

 
【右、守銭奴の泉】

 その頃だった。
「暗い、暗い、暗い。触る、な私にさ、わ、るな、この・・・・・・」
 どうやら、フォンが行ってしまったようだ。
 その後暴れだしたフォンを取り押さえるのに、ローラがアイバーン・レミエラナインの力を駆使して本気モードで戦闘をはじめ、そのさいローラをマイアが回復しようとしたが無意味で悲しくなるなど。
 ラドルフスキーが留めを刺して行動不能にしたところをマイアが回復してフォンを元に戻したなど、長いようで短い出来事のあと。
 彼らは、ハンドルの向こうにあった。お宝の山(実勢価格8G程度)を入手した。
 かなり安い。仕方ない世の中色々あるのだ。
 まあ、そういうことで一見落着、落着。
 今回も、ゴルビー君の存在は無意味だったことにきづく。
 なお、リドルについては、総合するとほぼ正答を得ていた。
 ただ一ついうなら、ハンドルはライオンが向いている側を前面とするため。
 左右逆になる程度のことである。

 

●奥の手

 どうも、やる気のないギルド員です。
 今回の奥の手を発表します。

「盗掘兄妹に正答らしきものを直接伝授して、彼らが頑張ってお宝を奪取した後、遺跡の入口で罠なり伏せるなりして、奇襲して強奪! うはうは」

 あたりも一つの答えです。

 他にも色々ありますが、これがもっともスマートかつ楽。
 後ろ指さされる手段となります。

 え、卑怯?
 そういう手段もありますよ。だから、奥の手なのです。
 冒険者だから冒険しないとダメなんて神様が決めたわけじゃないもん。
 世の中正攻法だけでやっていると人生遠回りな時もあります。
 たまには策士になって策を弄して自爆してみましょう。
 あなたも今日からGnshi!
 以上、奥の手のコーナーでした。

 ながらくご愛顧いただいた【普通の冒険】はこれで終了です。
 今後ともキエフギルドをよろしく。
 それでは、またどこかでお会いしましょう。


 終