水竜亭はオヤスミ
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■ショートシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:5人
サポート参加人数:3人
冒険期間:09月03日〜09月08日
リプレイ公開日:2008年09月11日
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●オープニング
キエフの表通りから少し離れた場所、それほど人通りがないところに水竜を彫りこんだ木製の小さな看板がちょこんと顔をだしています。お昼は食堂、夜は酒場。
そんなよくあるお店の名前は「水竜亭」というようです。
チリン、チリン。
「いらっしゃいませ!」
扉の呼び鈴を聞いてパラの少年が急いでかけよってきました。
「ご注文は何にしますか?」
「いつもの」
そのお客さんはそういうと、お気に入りの席に座ってむっつりしています。
今来たおじいさんはいつもの常連さんです。お昼の忙しい時間を前にいつも決まってこの空いた頃にやってくるようです。
「まーたー、さぼってるダノ」
なんとなく窓をながめボーっとしている少年の後ろから何かの声がします。振り返るとふわふわと飛んできたシフール。
その手には大きなスプーンもっていて少年をたたいてきました。
「いた、痛いよポチョン。さぼってるって他に誰もいないよ」
「うるさい、叩くのが娯楽ポ」
楽しそうに少年を叩くシフールの名前はポチョン、いちおう自分では看板娘となのっていますが、本当はただのいそうろうです。
そして、わけの分からない理由で叩かれている少年の名前はリュート、水竜亭の給仕さんになってそろそろ数ヶ月になります。
それはさておき、先日まで閑古鳥の鳴くお店だったここ水竜亭も、リュートがギルドで募集した依頼、それを見て訪れた冒険者たちによって、今では普通に繁盛するお店になりました。
そんなある日、忙しい毎日を過ごしていたリュートがキエフの表通りを歩いている変な人たちがぶつぶついいながら、あるいています。
「もはや、我々も忘れられた存在だな書記長」
「世界平和に貢献したのに、この扱い、何、何なの! 不公平。、これも全部デビルの仕業ね、まるごとハウスも壊れたし、旅にでようよ部長」
夏の終わりのあつーい時期に着ぐるみをきて歩いているホットな二人組み、あやしい。
リュートはとっさに、みてはいけない、めをそらしました。
しかし、彼らはおぼえていたのです。
「君は、あの龍水ドウとかいう食堂にいる坊やではないかね! そうだ、そうにちがいない」
汗ばんだほえーるが、にじりよってきます。
「リュート君だよ! リュート君」
ぴんくのクマがすりよってきた!
(げげーみつかった。つかまった、やヴぁい)
あやうしリュート、彼の運命は? |NEXT
まあ、それはそれとして、宿命の再会を果たした三人。
まるごとの絆と栄光を背負った部長と書記長の二人はついに、諸国漫遊の旅に出るといいだしはじめます。
それを聞いて送別会をマスターがどうやら開くらしいようです。
ってことなので。
OK? はっちゃけちゃってね。
●リプレイ本文
●電波でデンパ
もともと水竜亭という絵巻物は、元を正せば由緒あるナニカ、のしあがるストーリーの顕示欲だったわけである。しかし、いったいどこで道を間違ったか、楽しい着ぐるみワールドぽくなったらしい。
だが、それが必然、神の啓示だというなら、甘んじて受けるじゃすてぃす!
まあ、そんなヘンテコワールドもついにエンディングを迎えることにあいなった。
これもそれも、全て、いや──皆まで言うな、言ったらアカン。
ともかく、今回のゲストはこの二人、鯨と熊の変なやつら、
「部長だ」
「書記長よ」
二人合わせて、B&C、だからどうした? 聞くまでもない、聞いたところで答えはでない。
とりあえずこれで最後ゆえに、いってみよう、やってみよう、とことんとん。
「ボクと」
「キミの」
まるごとアワー!
今日のセッションリーダーは、ナタリートルネードでおなじみの、何者だナターシャさん。
それでは、水竜亭のラスト・ステージへテレパシーをむけてみよう!
ウラウラウラウラー、ウラウラウラウラー、ウラウラウラウラー!
・・・・・・かなり奇声が迸っているが、それでこそまるごと。
最近鳴りを潜めていたが、まれごとのマは、マジャシャンズ・アローのマ、まったく関連がない気にしない。それでいい、それがいい、いつものこと。
さて、話をすすめよう。
ということで、ここは水竜亭に開設された「変なやつらを送る会」の会場でリアル。
「こ、こんにちは」
ナタリーという少女か今回の司会だ。不運、不運すぎる。
だいたいこういう場合お約束で、フィニィ・フォルテン(ea9114)とお友達リュミィ♪ちゃんがスタンバッテイルはずなの。
ダガ!
今回は障害としてトンデルシフールシャリン・シャラン(eb3232)とそのお友達のフレアちゃんが立ちはだかった。
あれ・・・・・・なんだこの同じ立ち位置、いや、気にしてはいけない、そういうことも。
「ありますよね」「すよね♪」
「そうよ、気にしない☆」「しない☆」
そういうものか、そういうものだろう。
──乱入者あり!──
突然ですが、乱入者におきをつけください。
つうしんちゅう・・・・・・。
突然の乱入だが、記録係Aだ。
連コインはほどほどに、積まれた山は悪意の証──ではない。
記録係としてはこの車輪・車乱とかいう、小生意気なしふーるには煮え湯を飲まされた数々の体験がある。ここで新たに羽にたいして復讐の誓いを──
「却下、話の都合上却下です。モモラ部長にお礼参りが今回の目的なのです」
ミィナ・コヅツミ(ea9128)こと失恋トナカイにだめだしをされた、モモラ? 色々あるのだろう指先を見よ。
さて、恋の女神は彼女に微笑まなかった。もうこのさい人生をやりなおすんだミィナ、それがきっといい。
「そんなこと言われる筋合いはないですよ」
いけず。それではナタリーさんに司会をお返しします。
ドロン。
「えーと、その」
ナタリーはとまどっている。
ナタリー的な危機的状況を救うため、セシリア・ティレット(eb4721)は手を差し伸べる。
「こういう時は、笑うといいですよ」
アプローチが違う、この女性はどこか天然だ。
「まったく、やっぱりあたしがいないとだめなんだから、リュート君・ポチョン・マスター、フルパワーでこの場を繕うわよ!」
エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)が陣頭指揮をとる。ふるぱわーで、何を繕うのだろうか、エネルギッシュだ。
奥様の名前はエリヴィラ
そして料理する彼の名前はマスター。
極普通ではない二人は極普通の戦略的事情から、極普通のアシスト関係になりました
でもただ一つ違っていたのは奥様がMMOだったのです
「いくわよ、みんな! もう時間もないから、速攻で店を繁盛させるぞ、がんばろー」
思い切ってエリヴィラをなんだか明後日のほうに飛ばしてみたが、それも一興、水竜亭の将来は彼女に委ねられた。
がんばれ奥様はMMO。
ネタが古い? 分からない。というより話が破綻している。
全て計画通り。一度やってみたかったものだ。気にしない。
「カオスですね、でも嫌いじゃない」
セシリーが言った。
「こういう空気、あたし待っていたんです」
ミィナはねっからそういうタイプだ。
で、なんだったけ。ひとまずまたもや一旦ナタリーにお返しします。
──水竜亭送迎会・会場、ナタリー。
「水竜亭特設ステージでは、部長さんが、その、あの」
ナタリーは混乱している。
「あー、あーオレが部長だ!!!! 今日は素晴らしい歓迎会をありがとう」
何か一人でのさばっている部長、態度はデカイ。
「質問があります部長」
そこにやや普通になったセシリーが疑問をぶつけたことから、この出来事は始まる。
「なんだね、ひろいん」
「MMOはなぜまるごとを普及していたんですか? それにMMOはどこへ行くですか? 」
セシリーの質問に部長は三秒ほど黙ったあと、
「そこにまるごとがあるから。そしてMMOは君たちの心と供に歩む、永遠だ」
分かったような、分からないようなことを言い放つ。こういう場合、後は何を聞いても沈黙を通すのがお約束だ。
それを悟ったセシリーは、とりあえず納得したようだ。
さて、今日のプログラムです。
出演
歌「フィニィ・フォルテン」
バックコーラス&ダンス「シャリン・シャラン」
ダンス「ミィナ・コヅツミ」
1曲目:ミンナまるごと/ふぇれっと
「最初はやっぱりこのナンバー、ミンナまるごといきますよ〜♪」『ますよ〜♪』
2曲目:みんなまるごと Side-M/ぎんこ
「Side-Mいっくよ〜♪」『いっくよ〜♪』
3曲目:まるごと哀歌/えんじぇる
「次はしっとりバラードです♪」『です♪』
4曲目:まるごとふぉ〜えば〜/ハトさん
「最後に新曲です♪ まるごとふぉ〜えば〜♪」『ふぉ〜えば〜♪』
ひとまず、途中経過はふっとばす。
フォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーエバー!!!!!
曲が終わった。
アンコール・アンコール・アンコールの歓呼だ。後ろに下がったフィニィと仲間達がまるごとを脱いで再度現れる。
フィニィは一礼したあと、
「もう一曲聞いてください」『ください』
フィニィが言った。
「いくわよーーーーーーーーーーーーーーーー!」『わよ☆』
シャリンとフレアも歌い始める。
「GO! GO!」
ミィナが失恋を癒すために激しく踊り始めた。
それではラストを飾る曲は普通のようですが、どうぞ。
【actors love】
今日も歩いて さがしてみた
みえない だから聞くけれど
必ずうつると キミはいう
それでもボクはみつけれない
うつるかどうかもわからない
みたいときにはどこにもない
はなしてはしってとぎれてきえる
二人の影を白幕に追うだけ
確定した背景と 決定していく愛情表現
黒幕走るボクとキミ 映し出される複雑さ
対処できない ムズカシサ
actors love
フィニィが歌い終える。
沈黙が場に浸透してゆく、そのあと──ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち、強い拍手の渦が巻き起こった!
「フィニィ、あーんど、シャリン、そしてミィナさんでした。拍手ーー!」
さらに拍手が強まった。やっとナタリーが司会らしい仕事をした瞬間である。
こうしてラスト・ステージも終わりを告げた。
今度は、次のフェスタを期待しよう・・・・・・いや、そんなものはない。
「いいステージだったね、うん。こういうテンションでこれからもお店を運営していけば大丈夫だよ」
奥様はエリヴィラ率いるお店なんとか隊も、なんとなったようだ。
そろそろ彼女も、家庭に入るらしい。身重で剣を振るのだけはやめたほうが良いだろう、やりそうなタイプだ。
「さて、我々もそろそろお暇しよう、その前に」
部長が言った。
「うん、分かってるよ部長、皆さん、私たち部長と書記長は、普通の人になります!」
衝撃の告白。
「まるごとを脱ぐ」
じゃーん。まあ、そういう風にするのが良いというか、そういうものだ。
「そうですか、部長。お疲れさまでした」
セシリーが部長の肩を叩いた。その手には古いメダルがある。
「それは、勲章かね」
「はい、今までの悪事の数々を記念です」
周囲が思いっきりその意見に同調してうなずいている。
「そんなに褒めなくてもいいぞ。では、さらば、まるごと。さらば、キエフ。さあ書記長」
「部長!」
二人は脱まるごとを・・・・・・果たした!
その後、元部長はミィナをなぜか呼び出した。
「ミィナ君、私は君に言わなければならないことがある」
「は、はい」
着ぐるみを脱いだ部長はダンディズムの権化のような男のようだ。
妙なオーラに威圧されたミィナは緊張した。
「じつは」
元部長が問う、
「じつは?」
元部長は伏せ目がち、上目遣いでミィナの瞳を見つめたあと、
「ずっと、コダイコだと思っていたよ」
・・・・・・。
「こあぎゅれいと」
冷えた空気か流れた。ついでに元部長もかたまった。
いったい、彼はこれからどのような人生を歩むのであろう。
去っていく、美少女化した書記長が手をふった。
「みんな今までありがとう!」
見送って・・・・・・というか、口論しているのは、
「そこの羽、俺は忘れたわけではないぞ、記録係チョップ、チョップ」
グシャ。ベキ。
「痛いわね、あんたもとっとと、どっかにいきなさいよ」『さいよ☆』
シャリンかと記録係Aの関係も相変わらずのようだ。ちなみに私はBだ。
セシリーが最後の最後、この状況下でも微動にしない常連のおじいさんに訪ねる。
「それにしても、名前のないおじいさん」
「あが?」
「いつも思うのですけれど、MMOって何の略なのでしょうか?」
セシリーの問いに老人は言い切った。
「モラル・モラル・オーバー、モラルを超えるものじゃよ」
かくして、予定とはかなり違ったが、水竜亭にも平和が訪れた
リュート・ポチョン・マスターはこのままキエフで店を切り盛りしていくのだろう。
部長と書記長はまるごとを脱いだ。
もはやただの人となった彼らを追うものはいない。
時間というものは、かくかくしかじかなもので、えーと、まあいいや。
それじゃ、みんな、元気でくらせ!
そうそう言い忘れた。
部長からお土産として役に立たないものが進呈された。
もうどうにもならないので、家にでも飾るしかないだろう。
飾っても仕方ないものであるが──。
それでは、まるごとよ永遠に!
水竜亭もずっとオヤスミ。
完