青銅の騎士、闇夜の梟
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■ショートシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:14 G 11 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月24日〜01月01日
リプレイ公開日:2009年01月05日
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●オープニング
夜、 雪が雨に変わった。
「一手」
彼は言った。
天幕の中、ランタンの灯に照らされ、一連の動作を続ける彼。
地図を指して石を打つ。
傍らに控えるの巨躯、人型にして巨大な身の丈、人ではない、他の何かであろう。
錆びた茶と緑の帷子に覆われ物体に彼は語りかける、
「行け、露払いの栄誉をやろう」
物体は頷くと巨躯に見合うだけの鉄塊を手にして無言のまま歩みだす。
雨音だけが天を叩き続ける。
しばらく地図を見入っていた彼は独り、
「招かれざる者の帰還、だ」
そう、呟いた。
●先触れ
暗い森の奥、襲われた男は飛び回る影を見る。
闇に舞う姿の美しさに男が見とれた瞬間。
背後、振り下ろされた槌が鈍い音ともに男の生に終わりを与え、それが戦いの始まりとなる。
ウラル山脈方面で哨戒を続けていた辺境警備隊の前に現れたのは、デビルと蛮族を率いた謎の部隊だった。
一報を聞いた国王ウラジミールは昨今の事情を踏まえ、討伐を兼ねた小規模の調査隊を銀狐兵団より派遣する。
小隊も満たぬそれを軍と呼ぶのかは難しい。が、現在の国内の混乱ではその程度の兵力しか振り分けられなかったのも実情である。
討伐は順調には・・・・・・いかなかった。懸念どおり、迎撃に向かった軍はあっさりと壊走し、拠点に逃げ込んだ。
一方、各地で暗躍を続けるデビルの襲撃により混雑している冒険者ギルドに女が現れ、告げる。
「あなた達に定めを告げに来た。聞きなさい」
四方より来たる闇は僧侶と手を組み、砦を囲む。
砦に住まう主は、混ざり合う泥濘に落ちるだろう。
選民よ、いまこそ償え
狂気と血の定めに従う、愚かな国の民草よ、混沌の前に膝を屈するがいい。
それこそが救われる唯一の道。
最後、甲高い声で叫散らすぶ女は、周囲の制止を振り切るといづこかへと去る。
城からの使者が無理な課題を携えてギルドにやってきたのは、その時、
「敗走した軍の残存兵を救出し、並びに侵攻してくる蛮族を壊滅せよ」
依頼書には短くそう書いてあるだけだった。
●初期情報
・拠点
駐屯地としている村には集会所があります。怪我をした兵と村人は指示をしなければ
戦闘時ここに逃げ込むようです。
・出入口
天然の要害とまではいきませんが、それなりに堅固。
敵の侵攻方向に門が一つ、キエフ方面に一つ。
周囲は柵に覆われています。周りは森、時期的に枯れています。
・残存兵力
銀狐兵団・主に戦士の集団、生存者は十人足らず、戦闘できるのは半数。
冒険者の行動を制約しない反面、簡単に言う事も聞きません。
・日数
馬車で送迎されます。片道二〜三日程度。
・敵
部隊の隊長らしきものは、巨大な槌を使うようです。
話に聞くと鎧ごと弾けたとも・・・・・・。
襲撃された銀狐の兵は息を先取る前に、
「夜闇に気をつけろ」
という言葉を残していますが、なぜかは分かりません。
どうやら今回の部隊は先遣隊のようです、数は二十〜三十程度。
ただ、無駄に時間を掛けて粘っても本隊が到着すれば、危険だと考えて良いです。
●リプレイ本文
部屋がある。
どこか気品溢れる雰囲気の部屋だ。
女がいる。女は追われるような想いを抱きつつ旅の準備を始めた。
急ぎ荷物を詰め込む彼女が見据えた先、あるのは無骨な造りの一振りの太刀、凛とした雰囲気を保つ女と野蛮な太刀はどこか対照的だった。
女がなぜ旅にでるのか目的は分からない。
冒険があるから進む。それだけのことなのかもしれない。
手にした太刀を腰に差し、準備を終えた女は部屋を出ると階下につながる階段を降りる、最後の段に足をかけ踏み終えた時
「お嬢様、お出かけですか?」
かけられる声、音の方へと振り向くと
「すぐ戻る、留守を頼むわ」
表情を変えぬままに返した。
「では、温かいお飲み物を用意してお待ちしております」
無愛想な態度を全く気にしない初老の執事の目じりが綻ぶ。
キエフに建つ私邸を後にした女は約束の場所に歩きだす。外は雪、舞う冷たさが肩に積もる。伸びた髪と一緒に積もった雪を払うと共に飛び散り、両者は銀に輝いた。
「寒い」
呟き道を睨む。
誰かを待っているのだろう。しばらくすると雪道を駆けてくる人影がある。
手を振り、走り寄って来る影の主は、見るものに快活な印象を感じさせる少女だった。
「ごめん、待ったよね? って」
少女は厚い胸に手をやって呼吸がおさまる息を何度か、女の前に立つと、
「じゃ、い、はぐぅ」
言葉を運ぶ途中、綺麗に転び見事に雪の塊に突っ込んだ。
その光景を見たアーデルハイト・シュトラウス(eb5856)は冷ややかだ。
エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)を視線で射、一言、
「つまらない喜劇ね」
放った。
雪だまりに突っ伏していた少女、エリヴィラは、立ち上がると
「ひどいなあ、ハイジさん。せっかく迎えにきたのに」
「ハイジ?」
「あ、アーデルハイトさんの聞き間違いだよ」
エリヴィラは慌てた。
なぜ慌てたのかは分からない。ハイジに特別な意味があったのかもしれない。
そのまま口ごもってしまうエリヴィラ、語句に秘められた意味は謎のままだ、空耳だったのかもしれない。
ともかく、エリヴィラはアーデルハイトを迎えに来たようだ。
「そう、それならいいわ。時間が無い、早く行きましょう」
先に歩き出すアーデルハイト、
「淡白・・・・・・」
「何か言った? 寄り道してる暇、無いわよ」
「迎えに来たのはあたしなのに」
ぶつぶつと何事か繰り返しつつ、残念そうな表情を浮かべるエリヴィラ。
彼女が案内するのは、今回冒険を供にする者の元だった。
──エリヴィラ達の向かう集合場所に話を移そう。
「遅い、遅い、遅い、遅い、おそーい!」
苛立ちを隠していない者が一名いる。名をシャリオラ・ハイアット(eb5076)と言う、
「シャリオラさん、落ち着いたらどうですか? エリヴィラさん、さっき出かけたばかりじゃないですか」
先ほどから苛立つシャリオラを宥めていたセシリア・ティレット(eb4721)が、少しばかり呆れた様子で声かけた。
「いやです。落ち着きたくありません、もう待てません、だいたいみんな色気づいて、なんですか貴方も髪なんか伸ばして、戦闘の邪魔でしょう」
「ああいえばこういう、駄々っ子ですか。そろそろ良いお年頃ですよね」
「そうです、お年頃の美しい駄々っ子です。だいたい、私は待たすとは良い度胸」
「それなら、自分で迎えに行ったらよかったのに、寒いから行かないって」
シャリオラの態度に呆れたイルコフスキー・ネフコス(eb8684)も、また言った。
しかし、
「なにい、そこの白いの勝負! 白のやつらなんてぶっ飛ばす」
「負けないぞ、おいら」
なぜか興奮する二人、セシリアはなだめてみたのだが
「二人とも、クレリックなんだから、おちついて、おついて」
しかし戦いは始まったばかりなのだ。
「黒の聖なる裁きをうけよ! ブラックホーリー」
「神様の名において、そんなものは効かない。ホーリーフィールド」
神器無きドンパチが始まる。
遠くのほうで、なにやら楽しそうな二人を見ていた馬若飛(ec3237)は
「それにしても、あいつら何をやっているのですかね、隊長」
ルカ・インテリジェンス(eb5195)に聞いてみた。
「拳と拳で会話というやつでしょう、怪我さえしなければ、放置して問題ない。士気も高まる。ともかく急ぐから先行くわよ」
「あの状態を放置して一人だけ出発ですか?」
「それじゃ」
「・・・・・・お気をつけて」
さらに遠くからハロルド・ブックマン(ec3272)がいつものようにハロルド日誌をつけていた。
12月24日
例年は聖夜祭で賑わう季節、今年は違う意味で賑わっている。
デビルからすれば最も気に食わないイベントの一つとも言えるのだろうか。
最も聖夜祭に関係なくギルドで依頼を受けているのは私にとっては例年通りの事。
これについて悲観等する事は何も無い。それでいいのか、悪いのか
中略
隊長の言う、拳と拳ではなく、魔法と魔法であろう。
―――――ハロルド書記
どこか満足気なハロルド、ルカを見送った馬は
「たまに話したらどうだハロルド」
聞くが、
──嫌だ―――――ハロルド書記
「面倒な奴」
集った冒険者は一路、目的地へと向う。
手にある情報は少なく、起きた事態が何なのかを知るものはいない。
●駐屯地
退却した銀狐の部隊は、高くはないがそれなりの士気を保っていた。
彼らに増援の連絡は無い。あるのは、撤退支援のために傭兵を雇ったという報だけだ。
報がもたらされた後、やって来た少数の冒険者を見て、銀狐の団員は驚きと同時に無念さを顔に滲ませる。
不審と嫌悪を態度に出された冒険者たちだったが、ほとんどの者は素直に受け入れた。
約一名をのぞいて、
「後は私達に任せてこのままキエフへ帰ってもらっても良いですよ。あ、でも非戦闘員やキエフを守るのが仕事でしたっけ? ど、どうしてもって言うんなら一緒に戦ってあげなくもないんだからね!」
シャリオラは説得をしているのか、挑発しているのか、媚びているのか、よく分からない言葉をかける。銀狐の団員はそれによって怒気・・・・・・までは行かなかったが、ある程度発奮したようだ。
結果、冒険者を多少敵視する結果になるのだが、仕方ない。シャリオラのシはシャーナイねのシだ、魅力? ないわけではないのだが、何かが足りない
「怪我人がいるのなら、おいらがなんとかするよ。だからそんな怖い目で睨まないで欲しいな、今は一人より二人だよね」
イルコフスキーは頭に血が昇っている銀狐の隊員を諭し、怪我を治療するように申し出た。
その申し出を断るほど彼らも馬鹿ではない。
治療の間、セシリアとエリヴィラは懐柔を狙い、料理を始める。その手際を馬若飛がみつめている。
彼はいかつい風貌とは裏腹に料理が得意らしい。
エリヴィラはさておき、セシリアより馬若飛は上手い、少々危なっかしいセシリアの手つきを見て、手を貸そうか馬若飛は迷った。
だが、
「野郎が作るよりはな」
一人納得して、多少心残りながらも立ち去る。
「セ、セシリーさん鍋、鍋」
「え、あれ、ごめんなさい」
セシリアが鍋を焦がしたのはその後、漂う独特の香ばしさが馬若飛に自慢の腕を振るわせることとなった。
「貴方って、元々そういう性格?」
アーデルハイトが、ふとシャリオラに尋ねた。
「色々あってこうなりました。ち、違います」
「そう」
「クールなのはいいですけど、その性格損しますよ」
「お互い様」
そう、お互い様だ。
エリヴィラが殺伐な新婚生活を悔やみながら炊き出しを行っている頃、ルカは周囲の偵察に向かう。
彼女は連れてきた鷹のメッセを空に放った。結果、空を旋回しているメッセは何者か姿を見つける。
「二つ、か」
どうやら部隊は一つではないようだ。
挟撃するつもりか? すでに本隊が到着しているのか? それとも、他に伏せていたのか? 答えはでない。距離から見て襲撃までに選択する時間はまだある。
ひとまずその情報を持ってルカは陣に戻る。
出された料理を食べ終えた頃、足早にルカが陣に戻ってきた。
偵察に出たルカから話を聞き、エリヴィラが続けて確認に出ると提案した。
グリフォンを使った案は、確かに良案のようにも見える。
しかしこれ以上情報を知りたい場合、敵部隊に対してさらに接近する必要があり、危険が大きすぎる。
そのため二つの部隊に対してどう対処するかに絞られた。
夜間の戦闘は危険という結論は出ている。そして夜まではまだかなり時がある。
当初よりやや少数だが予定どおり奇襲が行う、勝てればよし、負けそうならば、即退却。
これによって敵の正体を探る目的もある。
仮に全体の情勢が不利であるなら、駐屯地で合流、退路を切り開き、キエフへ退却するのも手だ。
結果、奇襲は冒険者が担う事となった。
銀狐の団員はいまだに友好的とはいえないが協力は惜しまない、駐屯地は彼らも守る。
戦いの準備は整った。
選択は二つに一つ。
夜の足音はゆっくりと近づいて来る。
●青銅の騎士
陽は斜めに傾きつつある。
夜はやって来ていない。
奇襲をかけるべく進むセシリア・ルカ・馬・ハロルド、銀狐の戦士の一部は、敵と遭遇した。
夜間の戦闘を想定していたセシリアの策は、奇襲の意味で使われた。
作られた兵は敵の虚をつく、ハロルドが呪文を唱えると暴風が走り抜けていく途中、動揺する隊に彼らは見た。
巌のような塊を。
身の丈は人より頭一つ分程度高い、包むは緑青、猛る兜には角の装飾、光る篭手に掴む槌の柄は、己の背より遥かに長く、重厚だ。
ハロルドが放った渦、荒ぶる凍風を受けた周り兵の幾人か巻き込まれ後方へと吹き飛ぶ中で巨鎧は身じろぎもせず立つ。
白の世界、緑がゆっくりと動いた。
「止まれ!」
ルカが叫んだ。
取り出した矢をつがえたままの格好で馬は固まる。一本しかない虎の子を使ってしまっては意味がない。
ルカはその違和感が何なのか、よく分からない、直感だ。
次の呪文を唱えていたハロルドは間に合わず水球を放ち、セシリアも剣を握り駆け出している、囮はすでに意味を成していない。
ルカは感じる不安が何なのか分からぬまま、戦場を見つめている。
馬は矢を戻すと投槍に切り替え、次の指示、答えを待つが返らない。
鳴く風の音が止む。
襲撃に備え残ったものが陣にいる。
銀狐の兵の一部とエリヴィラ・アーデルハイト・イルコフスキー・シャリオラの四人だ。例え奇襲が成功しても、陣地を失っては意味がない。
ルカは敵の襲撃まではそれなりの時間があると予測していた。
余裕はある。しかし陽はすでに南天を降り、紅に染まり始めている。
けれど先発の奇襲部隊はなかなか戻ってこない。
「遅いわね」
アーデルハイトが呟いた。
その言葉が連れてきたのかは分からない。遠くからやって来る人影が見えた。
「帰ってきた!」
皆思った瞬間、空から落ちる矢が予測の裏切りを告げる。
「予想の範囲内ですね、私は後方に」
シャリオラは、後方に下がった得意のブラックホーリーを撃つ準備をする。
「おいらは治療と援護を、みんな頑張って」
イルコフスキーは負傷者の治療に専念する。
アーデルハイトとエリヴィラは互いに顔を見合わせて駆け出す。
敵は側面から門に向かって進軍してくるようだ。
銀狐の兵は一方の門に集中し、戦士の二人を中心としてもう片方の門を固めた。
敵の数はそれほど多くはないはずだ。
戦闘開始。
対する敵の数は多くない、蛮族が主体のようだ。
戦う中で、エリヴィラもまた違和感を覚えている。
敵が柔すぎる。
アーデルハイトとエリヴィラの二人はかなりの腕を持つ戦士であるが、それにしても弱すぎる。
力任せに振り下ろした剣を戻し、エリヴィラは言った。
「ハイジさん、おかしく」
その時だった。
アーデルハイトの様子がおかしいことにエリヴィラは気づいた。
すでに周囲の敵は掃討している。だが、アーデルハイトは身動き一つしない。
変だ。
エリヴィラがアーデルハイトに歩み寄る。
変だ。
シャリオラはその様子を見ていた。死体から影が飛ぶ。
「後ろです! 早く」
シャリオラの声に振り返ったエリヴィラの視線に影が入った。
羽ばたいている姿、どこかで見たことがあるものだ。彼女の記憶にはそれは愛らしさの象徴として記憶されている。
「シフール?」
小さな妖精を模した何かは笑った。
(毒だ!)
直感的に彼女は悟る、握っていた剣を投げ、拳で殴りつけると鈍い衝撃が伝わった。
陽が落ちかけている。
「やられた」
ルカは嘆息した。
あの後、前線が暗闇に包まれた。後方にいたルカ達には被害はないが、前線にいたセシリアや銀狐の兵士たちは視界を一瞬だが奪われ、その隙に事態は悪化していた。
「ルカ隊長、どうしますか?」
馬が聞いた。
「逃げる。なるべく迅速に被害を最小限・・・・・・ってあの様子じゃね」
逃げるためには戦うしかない、しかし下手に攻撃もできない。
「今日も大成功ーあとはガツンと破壊、破壊! フールスイング」
砕けた剣のまま、痺れた体は動けない。
巨鎧の肩にその場に不釣合いなほど明るい声で騒ぐ妖精を模した生物がとまり。
地に伏したセシリアと棒立ちの銀狐の戦士達を見つめている。
鎧が微動する。
ハロルドは迷う。
射線上に銀狐の兵士。
槌を持つ手に動く。
ハロルドは迷う。
その時、空が夜闇に覆われる。
鈍い音は・・・・・・しない。
太陽は、西にまだ居る。それでは空の闇は、
「絶体絶命? あぶないところだったね、大将はこいつ?」
エリヴィラだったった
彼女は構えた剣で相手を指すと、何かをルカに向けて投げてよこす。
「何なの、この子?」
突然現れた敵に動揺する敵。
その隙に馬、ハロルドは周囲にいる残る雑魚を地味に倒し、動けないセシリア達を救ったのは、ルカだ。
「治療薬ならあります」
戦闘が終わったあと、エリヴィラに目の前に立つカインという村の青年はそう言った。
アーデルハイトはそれによって回復し、エリヴィラは治療薬を持参して向かう。
しかし戦闘はそこまでだった。
急を脱したといえ、セシリアたちを治療せずにこのままにしておくのは危険だ。
拠点に戻ることを優先した彼ら、敵はなぜか追ってこない。
到着したあと、本隊がいつやって来るの分からない。
敵の情報も分かった、退却が無難。
ルカが言った。
負傷兵を治療し終えたイルコフスキーも頷いた。
ハロルドはスクロールを取り出すと、あえて一時的に悪天候とする事を告げた。
時間を稼ぐつもりらしい。
退却してどれだけ時が経ったろう。
遠方に煙が昇った。
敵の本隊が到着したのかもしれない。
負けたわけではない。
村人も近隣へ逃げるよう促した。
銀狐の死者も出していない。
だが、重苦しさはキエフに辿りつくまでずっと続いた。
了