水竜亭をすくえ!!
|
■ショートシナリオ&プロモート
担当:Urodora
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 31 C
参加人数:6人
サポート参加人数:2人
冒険期間:11月23日〜11月26日
リプレイ公開日:2006年12月02日
|
●オープニング
キエフの表通りから少し離れた場所、それほど人通りがないところに水竜を彫りこんだ木製の小さな看板がちょこんと顔をだしています。お昼は食堂、夜は酒場。
そんなよくあるお店の名前は「水竜亭」というようです。
チリン、チリン。
「いらっしゃいませ!」
扉の呼び鈴を聞いてパラの少年が急いでかけよってきました。
「ご注文は何にしますか?」
「いつもの」
そのお客さんはそういうと、お気に入りの席に座ってむっつりしています。どうやらお店の中にいるお客さんは、今来たおじいさん一人のようです。そろそろお昼だというのにさびしいかぎり、パラの少年は注文の品を運ぶと何もすることがなくなってしまいました。
「こら、さぼってるダノ」
ボーっとしている少年の後ろから何かの声がします。振り返るとふわふわと飛んできたシフール。
その手には大きなフォークをもっていて少年を突いてきました。
「いた、痛いよポチョン。さぼってるって他に誰もいないよ」
「うるさい、刺すのが娯楽ポ」
楽しそうに少年を突くシフールの名前はポチョン、いちおう自分では看板娘となのっていますが、本当はただのいそうろうです。
そして、わけの分からない理由で突かれている少年の名前はリュート、水竜亭の給仕さんになってそろそろ数ヶ月になります。
自分のお店のことだけれど、リュートは水竜亭の料理はおいしいと信じています。
それなのにお客さんが来ないのは、場所のせいもあるけれど何か? 看板料理などがたりないのではない気がする。いつもそう考えていました。
その話をマスターにしても、マスターは能天気な笑顔をあさっての方向に向け。
「新しいボルシチ? ノン。ボ・ー・シ。違いの分かる男になるんだよリュート君」
と、鍋ぶた片手に見当ちがいのことばかりいいます。
このままでは、水竜亭がつぶれてしまうの遠い日のことではなさそうです。
僕がなんとかしなきゃ。
そんな決意を固めたリュートは一つのことを思い出します。
表通りにある酒場、密かに憧れているキールさんの勤める酒場スィリブローには冒険者がたくさん来ていることを。
そうだ! 冒険者なら色々な国から来ているし、何か新しい料理やお店を繁盛させるヒントがあるかも。
そう思ったリュートは次の日、もらったばかりのお給金をにぎりしめ冒険者ギルドの門を叩いたのでした。
●リプレイ本文
●はじめに
こんにちはリュートです。僕の依頼に応じてやってきたのは四人の冒険者さんでした。
まずはじめに、その四人を紹介しますね。
シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)さんは、大人しい感じのするエルフの女の人です。
たまにぽけーっとお空をながめてそうな感じもする夢見がちの照れ屋さんですが、やる時はやる人だと感じました。
小丹(eb2235)さんは、つけ髭大好きなお爺さんとみせかけて、結構若いパラの男の人です。
華国出身の彼は、いつも諸国を旅をして回っているみたいです。
アルアル言葉が似合いそうな華国の商人風ドジョウ髭をつけていて怪しさ満点な感じ、面白い人だと思いました。
エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)さんは、照れ屋だけれど、どこか活発そうな感じのするハーフエルフの女の人です。
彼女は、記憶喪失なので自分の過去を知らないようですが、毎日を前向きに生きてるそうです。
ちょっと見習いたいな。
ギリアム・ギルガメッシュ(eb7388)さんはジャイアントの男の人です、大きいです。
いつもは武道大会に出場しているけれど、おいしい料理と聞いて飛んできたみたいです。
彼は、肉親をモンスターに殺された過去持っているみたいで、だから戦うことが大好きのなのかな、今日はうちの料理で満足してくれるといいな。
こうして、四人の冒険者さんが僕の前に集まりました。
これからどうなるのでしょうか。
「みなさん、ありがとうございます」
僕は挨拶をそこそこに、みんなの提案を聞きました。
彼らの意見はそれぞれ、良いとこもあり悪いところもある気がします、迷っている僕を見たポチョンが一言。
「全部やればいいポ、だめで元々隣のポポロンというのダ」
何をいいたいのかよく分からないけれど、ポチョンのいうことにも一理ある気がします 僕は、少し考えたあとこういいました。
「みなさんの提案を全部やってみようと思います。力を貸してください」
こうして、僕と冒険者さんの水竜亭再建計画が動き始めたのでした。
●理想のお・み・せ
そのテーブルでは、何やらシシルさんとエリヴィラさんが熱く語っているようです。
「やっぱり最初は看板や内装ですよね。目立つ看板をバーンとだしちゃいましょう」
「シシルさんもそう思う? 看板は大事だよね。ここは裏通りだし目立たないと。それとお店の照明も大事かな。料理だけ良くてもムードがないとね」
「そうですね。水竜亭独自の『ウリ』が必要です。さっそく看板を作っちゃいましょう」
「うんうん、そうしよう。あたしも手伝うね。はじめのつかみが肝心だし、そのあと装飾と料理について考えてもいいよね」
がっしり握手する二人。
どうやら、話がまとまったみたいです。うまくいくといいなあ。
●お料理教室
僕とマスターは、厨房で小丹さんから料理を教えてもらうことになりました。
お料理それなりクッキング♪
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
やってまいりましたお料理それなりクッキング。
今日のレシピは華国伝来の一品、切麺(チェンミェン)
先生は付け髭一筋うん十年、風来坊小丹(しゃおたん)先生です。
さあ、どんな技が見られるのか、レッツクッキング♪
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ほっほほ、よーく見てるんじゃぞ。リュートの坊ちゃん」
そういうと、小丹さんは小麦粉・卵・水を混ぜると練りこねます。
「少しするとボソボソになる。これを拳で殴って固めるのじゃ」
ガスガス、ドガドガ。
「そして、踏む、気合をいれて踏む。親の敵のように踏むのじゃ!」
固まった小麦粉の塊に布を巻いて、小丹さんは踏み始めます。
「ファンタスティック! 東洋の神秘デスネ。無常・大仏・トンボ切り」
パチパチ拍手するマスター。な、何か、違うよ。とりあえずメモメモと。
「よし、ここまで来たら、一時休止。何事も寝かせる時間が欲しいじゃろう。その間に湯を・・・・」
どうやら、まだまだ続くようです。ここはマスターに任せて、僕はちょっと席を外すことにしました。
●巨人喰らう
「なんかウマイもの、食わせてくれ。宣伝するなら、まずは味を知ることだ。食べずして味の宣伝は無理だ、さあ俺の舌を唸らせる料理をもってこい」
ギリアムさんが暴走・・・・じゃなくて、おいしいものを食べたいといっています。
「はぁーい、うち特製のボルシチを」
僕が皿をもっていくと、ぺろり。
(その味は軽く広がるメロディのようだ、そっと触れた瞬間、酸味と甘さがじんわり舌先広がり静かに消える。肉もほどよく柔らかく噛むとはらりと崩れ、付け合せも満足できる)
「うまい、だが足りん」
その後、色々とあって鍋が空になったあと
「おお、なかなかイケル食べものだった。これならバッチリじゃないか」
その言葉は嬉しいのだけど、鍋が空っぽなのは・・・・。
●計画発動
夕方。
僕は、シシルさんとエリヴィラさんが作ってくれた看板を表通りに立てかけてきました。
「よし、俺と小丹が客寄せをするぜ、任せろ」
「ほっほほ、切麺の奥義は伝授しておいた。あとは坊ちゃんたち次第じゃよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
宣伝に向かった二人を見送ると、シシルさんとエリヴィラさんが真面目な顔していいました。
「さて、ここからは料理の構成についてですね」
シシルさんの問いに
「そうだよね、新しいメニューは欲しいと思う」
エリヴィラさんは答えます。
「低価格路線なんて、私はおすすめかなと」
「ね、シシルさん。時間帯ごとのセットメニューとか良くないかな」
「いいですね、ランチセットを作れば仕入れも単純化できますし、そういえば例の件、準備できたでしょうか?」
「バッチリだよ、任せて。あとは夜を待つだけ」
二人の笑み。何かこれからあるのでしょうか?
そのころ、キエフの表通りに奇抜な二人組が現れた。
「水竜亭によってらっしゃい、見てらっしゃい。食事はうまいし姉ちゃんは綺麗・・・・」
「本日●×時から、パーティーがあるのじゃ、みんなこぞってくるのじゃぞ」
おっきいのとちっちゃいの、その不思議な格好をした二人組みは、風のように現れて、ビラを配ると去っていったという。
「水竜亭リニューアル記念パーティーへようこそ!」
並べられた皿、新メニューの数々。エリヴィラさんとシシルさんが企画していたのはこれのようです。お客さんにお披露目記念のパーティーなんて、やるじゃん。
二人とも可愛いなあ、でも僕にはキールさんが・・・・そんなバカなことを考えていると
「こら、リュート君。ちゃんと運ばないと駄目だよ。お客さんに対する気構えがなってない!」
エリヴィラさんに怒られてしまいました。
でも、今夜のパーティーは大成功に終わりそうです。
しかし、危機は違うところから迫っていたのでした・・・・。
●ばたんきゅー
エリヴィラさん驚きで次の日は始まりました。
「ええーー? お昼の部担当の人が風邪で倒れたの」
「はい」
仕込みの忙しい時に、それを伝えられました。
「じゃあ、リュート君一人?」
そうです一人です。昨日のパーティーのかいもあってお客さんが少しずつ入ってきたのに、お店を回せないんじゃ逃げてしまうかもしれません。
「あれだな、俺たちでどうにかしようぜ。食べるのなら任せておけ!」
ギリアムさん・・・・ギャグなのは分かるけど、このタイミングだと笑えないよ。
「簡単じゃよ、シシル&エリヴィラの嬢ちゃんが可愛いウエイトレスをやればいいのじゃ。それで新しい客層が寄り付くじゃろう」
それはいい考えのような・・・・でも、新しい客層って何なのだろう。
「そっかあ、そうだよね。シシルさんはどうする?」
「え、その・・・・はい。分かりましたやってみます」
数十分後、ウエイトレスに着替えた二人プラス
「ポチョンもー」
と、邪魔なの。ではなくて看板娘の姿をみたとき、みんなから溜息がもれました。
「猫に小判だな」
と、ギリアムさん。
「馬子にも衣装じゃ」
の小丹さん。
二人ともジャパンにも詳しいみたいだからジャパンの言葉みたいだけど、何か誉めてないような気がするのは気のせいなのかな。
「こういうのって、ちょっと照れるよね」
「そうですね」
エプロンをつけた二人は普段と違う感じがして新鮮です。家庭的な雰囲気で幸せな気分になりました。
「じゃいくか小丹。俺たちは宣伝の使命を・・・・」
「ほっほっほ。やる気じゃなギリアムの坊ちゃん」
通いあわす視線、二人の間に何か同士的なものが芽生えたのでしょうか。
「あ、小丹さん。ランチタイムに切麺・公開クッキングをするから帰ってきてください」
これは僕のアイディアです。
こうして、お昼時がやってきたのです。
「ランチ四つですね」
「ん、君可愛いねえ。うちにこない」
「そういえば聞いたか、あの話」
「あの、怪しい男が作っている切麺というものが食べたいのだが」
「ラスプーチンがさあ」
「今年もそろそろ終わりだな」
「ランチまだー、頼んで結構たつよ」
「いま、お持ちします」
「エリヴィラちゃんかあ、いい名前だねえ」
「エール一つ」
「シシルさんていうの、聖夜祭あいてない?」
「これ、安いわりにうまいぞ」
「ランチセット頼むよ」
「え、夜もやってるの。夜は鍋セットなのかい」
「申し訳ございません、ランチセットは売り切れました。新メニューのロシア風切麺はいかがでしょうか?」
嬉しい悲鳴です。予想よりお客さんがやってきました。
こんな日が来るなんて、この仕事をやっていた良かった。お客さんの笑顔を見て、僕は、僕は本当にそう思いました、ありがとう冒険者のみなさん。
●エピローグ
こうして水竜亭の名前は、キエフの人々にちょっとだけ知られるようになりました。
最後の日の夜、リュートは少し泣きそうでした。
自分一人の力では、あのままひっそりと水竜亭はきっと消えていったことでしょう。
みんなの力があったからこそ、今があるのです。
「また、食べに来る。それまで頑張れよ」
ギリアムはそういって手をふります。
「料理は、まだ色々あるぞリュートの坊ちゃん。縁があったらまた会えるじゃろう」
きっと小丹の切麺は、確実に水竜亭に根付くでしょう。
「店員は店の看板も一緒なんだから、ガンバるんだよ♪ たまに隠れて見にくるかもしれないよ」
エリヴィラの言葉をリュートは胸に刻み込みました。
「これからが、勝負です。気を抜かないで」
「シシルさん、みなさん。ありがとうございました」
冒険者は去っていきます。その姿を見送ったリュートはポツリとこぼしました。
「ね、ポチョン。僕たちだけでやってけるかな」
ポチョンはヒラヒラとリュートの周りを何度か飛び回るといつものようにいいました。
「リュートは、弱音を吐くのが仕事ポ。でも、どうなるかはリュートとポチョンたちの努力しだい」
「そうだね」
リュートは水竜亭の看板をしっかり見つめたあと、そっと扉を開いて中に入るのでした。
このお話はここで終りです。
水竜亭の未来は、これからどうなっていくのでしょうか?
それは、また機会があったらお話したいと思います。
了