♯少年冒険隊♭ マーチ♪

■ショートシナリオ&プロモート


担当:Urodora

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月30日〜12月05日

リプレイ公開日:2006年12月07日

●オープニング

●願いの後

 涙で別れたんだ。
 君との日々は短かったよね。
 悲しいけれど、もう泣かない。
 なにかを守るための強さ、まだわからないけれど
 きっとみつけたい。待ってて・・・・。今は

 少年は木製の短剣をぎゅっと握り空を見上げる。
 流れる運命のままに生きるのが弱さだとするなら、彼が見つけたものは道を照らす淡い輝きだろう。
 その小さな身体に背負った痛みと悲しみは誰のものでもなく、自分の中で癒すしかない。
 だから、走り出す。走り出した先にあるものに転んでも、何度でも起き上がるはずだ。
 それが未来を掴むということなのだから。

 キエフから少し離れた村に一人の少年が住んでいる。
 癖のある赤毛が特徴でどこか弱々しくて頼りない感じのする小柄な人間の少年だ。
 彼の名前は、アレクセイ。みんなからはアレクと呼ばれている。
 元々アレクの住んでいる村の近くの遺跡には、一匹の善良なオーガが住んでいて、そのオーガとアレクはとても仲の良い友達だった。けれど、その時間は突然破られることになる。
 村を訪れた一人の僧侶の扇動により、村人たちはオーガを退治することにしたのだ。
 それを聞いたアレクは、たった一つの希望である森に住むという魔女を頼る。
 なんとか魔女の助力を得、アレクはキエフの冒険者ギルドへ助けを求めた。その願い聞いて村を訪れたのは、八人の男女だった。彼らの活躍で最悪の結末は免れる。しかし、オーガとの別れがアレクを待っていた。

 伝えたいことがたくさんあっても、下を向いているだけでは語れない。
 いつかまたあえる時がきたら・・・・。
 アレクは、強くなろうと決めた。弱いことが悪いのではない。それでも何かを守る力。落ちる涙が乾く程度の力。それを欲しいと思ったから。

●プレリュード

 ある晴れた日のことだった。
 家の手伝いを終えたアレクは庭先で、いつものように手製の短剣を振っていた。
「よう、アレク」
「あれ、ジル。めずらしいね」
 訪れたのは、幼馴染でハーフエルフのジルだ。幼馴染といってもハーフエルフ、アレクよりもかなり長く生きている。
「様子を見にきた。冒険者になりたいんだって」
「うん」
 力強くうなずくアレクを見て、肩をすくめてジルは言う
「お前も変わり者だな。冒険者なんて、ようはつまはじきものだろう。荒事しか能がないからなるもんだよ」
 確かに、世間的に冒険者というのはそれほど良いイメージではない。都合の良いときは利用されるが、いらなくなれば白い眼で見られるもので、社会的に誉められた職ではないのが一般的な見方なのかもしれない。
「そんなことない! ボク助けてもらったもの。みんないい人たちだった」
 強い眼差し、疑うことを知らない瞳。ジルはその視線が苦手だった。
 綺麗事だけで生きていけるほど世の中甘くない。アレクを見るたび昔を思いだしてしまう。
 元々ジルはロシアの出身ではない。ハーフエルフである彼が他の国でどのような扱いを受けるか、想像の域をでないが幸せな生活ではなかっただろう。
 ジルはきっと気づいていない、彼がアレクに感じているのは憧れという名がつくと言うことを、いや嫉妬と言ったほうが正解だろうか? だからジルはアレクが気になる。失ってしまった自分の中にある何か、その鼓動がアレクに息づいてるから。
「まあ、らしいってば、らしいかな。で、その冒険者志望のアレク君に話がある」
 ジルが語りだしたのは、村の近くにある遺跡の側にある、魔女が住むという森の話だった。
「最近、森に大ねずみがでるんだってさ。魔女の森に近いせいなのか、あまり大人は近づかないらしいぜ。ちょうどいいじゃん。俺も手伝うから退治しよう。ニーナも誘おうぜ、あいつ一応魔法使いだし」
 ジルの言うニーナとは、村に住む変わり者の魔法使いの孫で、彼女も幼いながら魔法を使うこともできる、そしてそう言うジルもかなり腕のいい狩人だ。
「・・・・」
 アレクは迷う、踏み出す一歩。この一歩が正しいのか、分からなかった。
「いこうぜ、お前は冒険者になるんだろう? 突っ立てるだけでなれるもんでもないぞ」 
 そのジルの一言が後押しした。
「いこう!」
 夢を追いかけるのが少年の願いなら、決めるのは誰でもない彼。その握った拳の震えにアレクは胸の高鳴りを覚えていた。

●フォークロアの森

 森には魔女が住むという。だが、魔女が望まないものは会うことすらできず、彼女の存在はある意味伝説のようなものだ。過去、異端審問官が数度訪れたこともある。だが、誰一人魔女の元へたどり着けなかったという。
 その森に近くに遺跡がある。湖の中にぽっかりと浮かぶ島、そこに立つ遺跡には古代魔法語で何事か記された石碑が立っているとも聞く。
 アレクたちが向かったのは魔女の森の近くだった。
 そして一つの怪しい影が残る。かつてこの村に災いをもたらした僧侶、彼の行方が不明ということだ。
 その状況でアレクたちは冒険へと向かった。だが、それは彼らだけの問題ではなかったようだ。


●ギルドにて

 ギルドは最近特に忙しい、何やらきな臭い匂いがする依頼が続々と入ってきている気がする。
「しかし、ラスプーチンだか、なんだか知らないが暇な僧侶だな。僧侶なら大人しく祈ってればいいだろ・・・・」
 ギルドにも、ラスプーチンから王室顧問の名前でたまに依頼が来るせいか、ギルド員もその名前を結構見慣れているらしい。
「ウラジミール様も、あんなうさんくさい奴を野放しにしてる場合じゃない気がするよ」 
 そんな珍しく政治的独り言のギルド員の元を訪れたのは

「はあ、護衛の依頼?? それもガキのかい」
 依頼主は早口で話し始めた。
 村の近くに魔女が住むという森があって実際そこには魔女が住んでいる。その魔女に気に入られた少年の護衛をして欲しい。最近冒険と称してその少年を含む数人が、モンスターの出る森に入り浸っている。
「ようは、魔女が怖いということかい。その少年が傷ついたら、怒りに触れると? それは考えすぎじゃないのか」
 依頼主はさらに続ける。
 魔女の力は絶大だ、あなたの想像している比ではない。それにその森にはモンスターの他にも色々な危険がある。だから、影から護衛をして欲しい。
 ギルド員は少し思った。それなら、始めから少年が森に行くのを止めればいいのではないか? 
 とは言え、依頼は依頼だ。
「分かったよ、募集をかけてみよう」
 冒険者ギルドにこうして一つ依頼が掲示された。

●今回の参加者

 eb5076 シャリオラ・ハイアット(27歳・♀・クレリック・人間・ビザンチン帝国)
 eb5663 キール・マーガッヅ(33歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb5874 リディア・ヴィクトーリヤ(29歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb6810 マナトール・プラチナム(28歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb6993 サイーラ・イズ・ラハル(29歳・♀・バード・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb8684 イルコフスキー・ネフコス(36歳・♂・クレリック・パラ・ロシア王国)

●サポート参加者

ラッカー・マーガッヅ(eb5967

●リプレイ本文

●作戦会議

 村についた彼らは、一度遺跡で作戦を練る事にした。
 遺跡の内部には、誰も潜んでいる様子はない。 

 今、キール・マーガッヅ(eb5663)はイルコフスキー・ネフコス(eb8684)、マナトール・プラチナム(eb6810)、サイーラ・イズ・ラハル(eb6993)らに前回村で起こった出来事を話している。
「ということだ」
「魔女の他にも変わったやつがいるのね」
 マナトールの通訳を横で聞いて言うサイーラは、アメジストのような色の瞳をもつ色っぽい美女で、魔女でもある。そのサイーラを公私ともに支えているのが、友人であるマナトールだ。
「皆さん。サイーラともどもお世話になります」
 彼女は落ち着いた感じのする女性だ。
「よーし、おいらも頑張るよ」
 元気いっぱい、明るいパラは白クレリック。イルコフスキーは、みんなに笑顔。
 そして、傍らには二人の女性。
「まあ、やればどうにかなりますよ。さっさと行きましょう」
 素直でないけれど、根は・・・・のシャリオラ・ハイアット(eb5076)で黒クレリック。 
「それにしても、あの子も成長したというべきなのでしょうか」
 リディア・ヴィクトーリヤ(eb5874)は思い出す。一人の少年の姿を。
「冒険者の原点なんてきっとこんな感じですよ、ただ無茶しますね」
「と言っても、心配なのでしょう?」
「ち、違います。依頼は、依頼ですから」
 動揺するシャリオラを見て、リディアは笑顔で言った。
「あら、素直なほうが可愛いですよ」
 
 こうして彼らは森へと進む。 


●ネズミと決闘!

(聞こえるか? マナトール君)
(問題ありません)
(ターゲットは、森に進入。他のメンバーに報告頼む)
(了解)
(ネズミを発見。各自、ターゲットの誘導・掩護・周辺警備などの補助を頼む)
(了解)
「皆さん準備はいいですか? 打ち合わせ通りお願いします。枯れた木々などもありますから気をつけて」
 マナトールの言葉に頷くメンバー、かくしてネズミ退治? を彼らは見守ることとなった。

 ──その頃、森を進む冒険隊は

「たぬきーきつねぇーニャア♪」
「おい、ニーナ。遊びにいくわけじゃないぞ」
「えー? ニーナはあそぶのデス」
 ジルの声にぷいっと横向くのは、くしゃっとつぶれた三角帽をかぶり、ちょっとねじれた変な杖をぶんぶん振り回す、まんまるの瞳のちっちゃな女の子。名前はニーナ、エルフの魔法使いだ。
「ニーナは元気だよね。ボクも負けられない!」
 そんな前向き発言の赤毛が一人。名はアレク、騒動の中心人物ともいえる少年である。
 こいつら、冒険をピクニックか何かと勘違いしてないか? のんきな二人を見て頭が痛いのは、すっと背の高いハーフエルフの少年で、名はジル。
 彼はアレクを誘ったことが、正しいのか迷っていた。自分のつまらない感情に二人を巻き込んだのではないのか、そんな気もしていたから。
「ジルどうしたの?」
 不思議そうにジルを見つめるアレク。
「いや、なんでもない」 
 そう、なんでもないさ。きっと・・・・。
「アレク、ジル。何かいるデスよ?」
「どこ!」
 走る胸の高鳴り。何かがいる。その緊張を感じつつアレクの向けた視線にそれはいた。


(ほら、そこ。ああ。まったくじれったいわね)
 様子を伺うサイーラは、目の前で繰り広げられる不器用な戦いに痺れを切らしていた。 
 アレクたちは、おっきなねずみ一匹にかなり手こずっているようだが・・・・。
(よし、止めよ)
「うし!」
 ジルの放った矢が、ネズミ刺すと痛みに鳴き声あげたネズミは、森の奥へ逃げ込んでいった。嬉しそうに喜ぶ少年たち、その時だった

 『バキ』

 軋む何かの音。その音の向こうにいたのは・・・・。


●あーらら

「!? お姉ちゃんだ。シャリオラお姉ちゃんだよね」
 アレクの視線の先にあるのは、雪のなかに突っ伏しているシャリオラの姿である。
「こ、こんにちは、アレク君」
 雪をはらうと、何ごともなかったように言うシャリオラだが、当然、全身雪だらけである。
「でも、どうしたの今日は、もしかして冒険?」
 それを聞いた他のメンバーも思った、このまま隠すよりも
「私達は、とある依頼でここに来たんですよ」
 そのシャリオラの言葉に続いて
「久しぶりですね。アレク君」
「俺もいるぞ」
「リディアさんにキールさん! 二人も一緒なの?」
 現れたリディアとキールに驚くアレク、さらに
「おいらイルコフスキー。はじめまして」
「こっちはサイーラ、私はマナトールといいます」 
 こうして互いに挨拶を交わした。
「そういえば、みんな何の依頼できたの?」
 興味深そうなアレク、その目がシャリオラに向けられる。 
「内容は秘密です。冒険者は依頼内容を外へ漏らすわけにはいけません。秘密厳守です。いいですね」
「そうなの? シャリオラお姉ちゃん」
「そうです。けっして貴方たちが心配で様子を見に来たわけじゃありません」
 ・・・・広がる沈黙。リディアはそれを聞いて、なんとかフォローをする。
「アレク君。私たちは、周辺の調査の際、村に寄った時に、様子を見てくるように頼まれたのですよ」
「そうなんだ、うれしいな。みんなボクたちのことを心配して来てくれたんでしょ」
 嬉しそうなアレク。どうやら、その場はなんとかやりすごしたようだ。その後、今回の冒険談について話を続ける中。
「ん、どうしたアレク?」
 ジルは、アレクの様子がおかしいことに気づいた。
「え、そ、その」
 ? ジルが見た先にあったのは、サイーラの防寒着がちょっとはだけて、微妙なラインが見えそうで見えない感じである。
 ああ、あれか。へー、アレクも男だね。俺はあのリディアって人のほうが大きくていいな、やっぱり胸は大きさだよ。うん、うん。
(サイーラ、胸。はだけてるわよ)
(え、マナ)
(教育上悪い)
(いいじゃない、可愛い、抱いちゃえ)
 その後、真っ赤なアレク君が一匹誕生したのは言うまでも無い。

 その様子を見ていたイルコフスキーは、ふと思った。
 おいらには、大きいのって何が良いのか分からないや。


●それぞれの探索

 次の日、彼らはそれぞれの想いのままに、探索をはじめる。
 ジルは用事のようだが、アレクとニーナはついてくるらしい。


●遺跡周辺

 アレクたちは、ソリすべりなどをして楽しんでいるようだ。 
「イルイルー」
 イルコフスキーを杖でごつごつするニーナ、すっかり懐かれたようである。
「ニーナ、やめなよ」
「い、いたい。それよりおいら聞きたいことがあるんだ。冒険どうだった?」
 アレクはちょっと考えていたようだが
「・・・・やっぱり、こわかった」
「危ないこともあるとわかったかな?」
「うん。でも、ボクは・・・・それでも冒険者になる」
 やはり決意を秘めた眼差しは変わらないようだ。
「なら、おいらは止めない」
 神様。この子たちに祝福がありますように・・・・。
「イルイル、あそぼ♪」
 そして、引きずられるように雪だるまを作るのでした。


●遺跡内部

「門、竜、悪魔。なんでしょうこれは」
 リディアは、石碑の解読に勤しむ。
「そういえば、この前こんなものが」
 シャリオラは、前の依頼のさい見つけた木片の話をリディアにした。
「それは、きっと愚者のタロットカードですね。しかし、なぜこんなところに」
 謎はさらに深まるが、答えはいまだでないようだ。


●魔女の森

 入り口についた、サイーラとマナトール。
 サイーラはアレクに、魔女と会うのに必要。そう手渡されたヒイラギのリースを、教えられた場所へと掛ける。リースといっても、毒々しい色と飾りなので聖なる感じは全くしない。
 しばらく待つと、森の奥から歩み寄ってくる大きな獣の姿が一つ。
「ねえ、マナ。あのデカイのは何?」
「多分、狼」
「狼! もしかして、私たちを食べに来たわけ」
「サイーラ、会う気があるのなら、狼が迎えに来るって話よ」
「あら、そうだったかしら。それよりも呼んでない、あのデカイの」
「みたいね」
 二人は、狼に着いてゆく。
 しばらく進むと木々を抜け、ひらけた広場に建つ家が見えてきた。
 扉の前まで進み、ノックをしようとした瞬間。
「おはいり」
 とかけられる声、期待を胸に彼女たちは扉をくぐる。
 扉の先で彼女たちが驚いたのは、何よりも出迎えたオーガの姿だった。
「プースキン、お茶をもってきなさい」
 魔女といっても、みかけは四十を過ぎない。
 サイーラも色気があるほうだが、この魔女を前にしては遠く及ばない。
 手土産の蜜酒を喜んで受け取ると、サイーラの話を聞いた魔女は言った。
「あの坊やの客人のようだし、会ってはみたら同じ魔女だったとはね。あんたの言う恩師はあたしではないよ。ただ、そのネックレスは見覚えがあるかもしれない」
「どこでです?」
「忘れたよ。魔女なんて呼ばれる女は、身を隠すしかないものだからね。それよりもあんたたちはなんで、こんな村に?」
 話を聞いた魔女は。
「それはおかしいね。確かにあたしはあの坊やに力を貸したけれど、外界をどうこうしようなんて気はない。それによく考えてごらん、あの坊やを守るために、誰が依頼の報酬を支払うんだい? このへんは決して豊かとはいえないところだよ。坊やの親だとしても、ただの農民だ、ギルドへの報酬だって安くないだろ」
「どういうことかしら」
「さあね、あたしには分からない。ただ、早く仲間のところへお帰り。あんたにはそのリースを預けておく。あたしの気分しだいけれど、また会ってやってもいいさ」
 サイーラの直感が閃く、陰謀好きの彼女は思った。これは罠? しかし誰が、何のために。
「マナ、急ぎましょう」
「お待ち。ジラニィに乗ってゆくといい、出迎えた狼さ。歩くよりは早いだろう。仲間には連絡しておく。あの坊やを見捨てるのは忍びないからね」
 二人を乗せた黒い狼は駈けだす、それを見送った魔女は、さらさらと羊皮紙に何事か書くと
「ナジャール、これを遺跡に」
 灰色の狼はそれをくわえると走り出す。


●遺跡周辺

 イルコフスキーは、近づいてくる男に何か違和感を感じた。
 何かおかしいぞ、あの人・・・・。
「ついてきちゃだめだよ」
 彼は、聖なる結界で二人を包むと微笑んだ。
「大丈夫。きっと神様が守ってくれるから」
 アレクとニーナが前にでようとするのを止め、進む。
 こちらに来るのはどうやら男。連れているの一頭の獣?
「こんにちは、おいら」
「邪魔だ。命が惜しいならどけ」
「そんな」
 言葉を続ける前に、男の体が黒い輝きに包まれる、その黒光はすぐさまイルコフスキーを覆うが弾けて消えた。
「・・・・おじさんが怪しい僧侶なんだね。でもどうして? 神様はこんなことを望んじゃいないよ」
「そのいいぐさと格好。お前、セーラの犬か? 愛か、つまらんな。愛で救えるものなど無い。この世を動かすのは力だ。愛に生きるのならば、俺の憎しみをその身で受け、愛する神の元へいくがいい」
 可哀想。イルコフスキーはそれを聞いて思った。


●遺跡内部

 狼の姿に身構えたキール。だが、狼は何かを落とすと走り去っていった。
 それを拾ったキールは書かれた文字を見、遺跡に駆け寄り叫ぶ。
「リディア君、シャリオラ君。緊急事態だ!」
 差し出された羊皮紙を見てリディアも
「これは? アレク君たちは今どこに」
「イルコフスキー君と一緒だ。近くにいるはず」
 答えるキールの顔にも焦りがみえる。
「これでもし、あの僧侶あたりがいたら・・・・排除・粛清・抹殺です」
 羊皮紙を睨むと、真顔で言うシャリオラ。いつものひねりが感じられないあたり、本気のようだ。
「レギーナ。ブレスセンサーを」
 リディアは、お供のフェアリー、レギーナに命じる。
「ブレス、ブレス。あっちに何かがちょっといる」
「行きましょう。レギーナ、続けて」
 三人は駆け出した。


●遺跡周辺

 ボロボロだな、おいら。

「どけ」
「どかないよ。ここは」
 彼の法衣はところどころ破れている。
「セーラの名前を唱えるやつは同じだな。俺はそういう奴が大嫌いだ」
 強い、とても強い憎しみの瞳が向けられる。
「神様はちゃんと見ているよ」
「そうか、じゃあ・・・・逝け」
 振るわれる鞭、獣の牙。
 ここまでかな、ごめんよ。守れなくて・・・・。
 その時! 飛ぶ風の刃
「イルイルをいじめるな」
「あのときの? お前のせいで」
「きちゃ、だめだ」
 だが、イルコフスキーの前に立つ二人。
「ふん、生贄が増えただけだ。まとめて逝け」
 鞭のしなりに呼応して、飛ぶ獣。アレクは、それを見てはじめて本当の恐怖を感じた。
 怖い、怖い、逃げたい。でも・・・・ボクは、ボクは守るんだ! 握った剣はとても小さく、その力も弱い。
 それでも、少年は剣を振るった。
 振るった剣、飛び掛る獣、それが交錯した瞬間。

 火炎の爆音が辺りを包むと、アレクの意識は途絶えた。


●エピローグ

(アレク、アレク君)
 アレクが目を覚ますと、それは自分の家のベッドだった。
「良かった」
 リディアは、ほっと息をつく。
 あの後乱戦となったが、男は不利を悟ったのかまた逃げた。イルコフスキーに大事はなく、その傷を癒せる程度ですんだ。
 リディアは、目覚めたアレクにそっと諭す。
「アレク君、こんな言葉を聞いた事が有りますか? 力は心なりと」
「心?」
「私は、力とは心の強さの事だと思います。心無き力は暴力となり誰かを傷つけたり壊したりする事しか出来ません」
「リディア? さん」
「力を求める余りに道を踏み外してしまった人たちは大勢います。アレク君。心を強く持ってください、誰かを守りたい、困っている人たちの助けになりたい。その気持ちを大事にしてください」
「うん、分かった・・・・」
 疲れたのだろうか、アレクはまた眠りについた。


 それは送る帰り道。ジルは、キールに尋ねた。
「自由って何なのかな」
 ジルの問いに、キールは自らの思いに沈む。
 自由。
 その二文字は彼にも重い意味をもつ言葉。
「自由を求めるがゆえ冒険者になったものもいる。が、俺が正しく答えられるかどうか。分からない」
 キールの言葉を聞いたジルはうつむいて言う
「アレクはいい奴だ。でも、何も分かっちゃいない。弱いものは食い物にされて生きるしかない。今回のことだって! 誰も助けてくれなかった、だから母さんは・・・・自由になりたかった、全て捨てても。でもさ、逃げられないんだ。つまんないよね。ここまで来たのに」
 捨てたところで、刻まれた過去が消えるわけではない。アレクを見るたびジルは思い出す。臆病で、立ち向かうことから逃げた自分の姿を。
 ジルは思う。どうして、会ったばかりの人こんなことを話しているのだろうか、同じ何かを感じる。そのせいかもしれない。
 短い沈黙のあと、キールは言った。
「俺もそれほど君と変わらない。ただ」
「ただ?」
「泣きたい時は泣くといい」
 ・・・・雪の中。嗚咽が静かに響いていった。



●影

 その依頼主は、振り返るとこぼした

「ネズミ同士喰らいあえばいいものを」
 
 と。