合同合宿 冬の陣

■ショートシナリオ&プロモート


担当:Urodora

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:12月09日〜12月13日

リプレイ公開日:2006年12月18日

●オープニング

●講習会

 ギルド員はあくびをかみ殺していた。

「最近、我が冒険者ギルドに登録する冒険者が増えているわけです。これは喜ばしいことですがその反面弊害も出ている。例えば、駆け出し冒険者の依頼放棄です。依頼放棄は依頼の達成に大きく関係します。そこで我々冒険者ギルドでも対策の一環として、新たに登録された冒険者へ向けて講習を行うことと決定しました」

 はぁ、大変だな。俺は別に依頼が達成しようがしまいが、給料さえもらえりゃいいや。
 ギルド員は上役が急病のため、珍しくギルドの会合に顔を出しているようだ。
 話の内容からすると、何やら駆け出し冒険者へ向けてイベントをするらしい。

「では、整理します。みなさんに注意してほしいのは・・・・」

 ギルドの偉そうな人が語ったことをまとめると

 まず、冒険者登録したら、自分が活躍できると思う依頼をギルドで探すように指示。
 キエフには他にも色々な施設がある。少し迷いやすいけれど、城にある図書館と通りにある酒場は一度見て回るように勧める。そして自分の請けたい依頼が見つかったら、仲間に挨拶を忘れず、現地に着く前に一度早めに記録係と話をするようにさりげなく注意。

「ということです、といっても説明するだけで分からないもの。そこでベテランと新人冒険者合同の合宿をします。ん、そこのあなた。そう、居眠りしてるあなたです」
 思わず寝入ってしまったギルド員は、いきなり声をかけられて飛び起きた。
「うへ、は、はい」
「・・・・なかなか良い根性をしていますね。あなたに今回の責任者になってもらいます。覚悟はよろしいですか」
「え? え?」
 何の覚悟はよく分からないけれど、こうして晴れてギルド員は合宿の責任者になったそうだ。

●合宿募集


 告知
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 来たる××日から●×日にキエフ近所の洞窟で探検合宿を行います。
 新人冒険者の皆さん、ぜひご参加ください。
 新人を指導してくれるベテランの方も大歓迎です。
 当ギルドからも係の者が参加しますので、何か質問がある方は、遠慮なくぶつけてください。
 答えられる限りできっと答えてくれるはずです。
 洞窟はそれほど複雑ではありませんが、罠など色々用意してまっております。

 おやつは30Cまでです、大きいペットは危険なので持ち込まないように
 炊事洗濯はみんなでやります。料理が得意な人も大募集。 
 防寒着が無い方には一時貸し出します。
                             
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――    

 おやつって、やはりプリャニキあたりが妥当かな。人数分のテントと毛布も必要だな。
 思ったよりもギルド員は乗り気のようだが、こうしてギルドに合宿募集が張り出された。
 

             ★★★ 


【注 ここから下は、新人さんの他は読まなくてもよいと思います】

 新人の皆さん、はじめまして。そうでない方はこんにちは。
 ここからは、ギルド専属記録係の一人である私が冒険を始める上で
 注意する点をいくつかお話します。これからの冒険者生活に役立ててもらえれば幸いです。

●技能について

 始めに何を覚えたらいいの?

 ロシアはゲルマン語文化圏ですので、まずゲルマン語を取得することをおすすめします。
 それがないと会話できませんので、もしくは現代語を幅広くでもよいですが、技能を向上するのが大変ですのでお好みで選びましょう。
 
 何も分からないどうしよう?

 そういう場合「調べなさい」と言いたいところですが、ぶっつけ本番。
 依頼を請けて、他の人に聞いても良いと思います。もしくは、酒場に行くと初心者に優しい人が飲んだくれているときがありますので、そのテーブルを訪ねてみるとよいですよ。
 ただ忙しい人も多いので、冷たくされたからってしょげないでくださいね。
 記録係はあなたの味方ですから、頑張って依頼を遂行しましょう。    
 
 では、次に依頼に参加する流れを

 ★依頼参加チャート★

 1、依頼に参加しました。依頼の開始日(締め切り)をチェック。

 2、挨拶しましょう♪

 3、時間が取れる人は、仲間と依頼解決について相談してみるのもよいですよ。

 4、依頼を解決するために自分ができそうなことをまとめましょう(プレイング)。 
   はじめに、「頑張るぞ」や自分がどんな人なのか紹介する程度でも良いので
   送っておきましょうね。
   私は記録係なので、どこからどうやって出すかなどは分かりません
   調べたり、周りに聞いてみてください。

 5、そろそろ出発のようです。今回やりたいことをまとめて送ります。

 6、依頼で起こったことが物語として記録係から報告されます。
   遅刻や病気で依頼に参加できないよう気をつけましょう。
   せっかく参加したのですから。

●キエフガイドマップ

 ここキエフには冒険者ギルドの他にも色々な施設があります。
 ちょっと迷いやすいですけれど、いくつかおすすめのポイントを紹介しますね。
 
 ・マリンスキー城 宮廷図書館

 たいていの情報はここにあるといいます。
 何か疑問があったら一度訪ねてみましょう。

 ・冒険者酒場「スィリブロー」 

 キエフの冒険者たちが、たくさん集まる酒場です。
 有益な情報があったりコミュニケーションがとれるところです、ただし礼節を忘れてはいけませんよ。冒険者とはいえ最低限の礼儀は必要ですから。

 他にも、エチゴヤ、武闘大会を開催しているコロッセオなどもありますので、ぜひ訪ねてみてください。

 それでは、皆さんのキエフでの生活が有意義なものになることを祈りつつ、このへんで話を終りとさせていただきます。

●今回の参加者

 eb5604 皇 茗花(25歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb5612 キリル・ファミーリヤ(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5885 ルンルン・フレール(24歳・♀・忍者・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb7780 クリスティン・バルツァー(32歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb7876 マクシーム・ボスホロフ(39歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国)
 eb8202 闇織 零(25歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 eb9400 ベアトリス・イアサント(19歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

ファラ・アリステリア(eb2712

●リプレイ本文

●合宿その前に


「これでいいかな、おやつはどれにしよう」
 独り言を呟きながら、なにやら準備をしているパラの少年、彼の名前は闇織零(eb8202)
「じゃ、頑張るぞ!」
 色々準備したあと、ギルドへ向けて出発する彼。
 こうして、七人の冒険者による合同合宿がはじまります。


 ということで、今日は冒険合宿に参加するみんながギルドでミーティングをする日。
 お昼ごろ、合宿に参加する人たちが集まってきました。
「よーし、荷物チェックするぞ」
 合宿を指導をするのは、浮気大好き中年ギルド員。
 そろそろ奥さんに愛想つかされそうで大変な中、合宿の指導員として同行します。
 そのギルド員の横に、新人のA君とB君が立っています。
 え、手抜きじゃないかって? 細かいこと気にしちゃだめです。
 そして、新人さんに声をかける先輩が一人。

「ほら、A殿。そんなに荷物をたくさんもっては、動けないだろう」
 彼女の名前は、皇茗花(eb5604)華国出身の僧兵のようです。ロシアだと僧兵ってめったにみないですよね。
 ちょっとクールで偉そうにみえますが、根はきっと優しい人なのでしょう。かいがいしくA君の荷物チェックなどをしています。

「探検合宿かー楽しそうでいいじゃん。ってかさ、そのデカイ袋なんなの?」
 そう言う彼女の名前は、ベアトリス・イアサント(eb9400)は、ちょっと荒くれーなしゃべりが特徴のクレリックです。その彼女が話しかけた相手はルンルン・フレール(eb5885)。彼女は、おっきな袋をもってきています。

「おやつは30Cまでだけど、家にあったのはお金使ってないよね。だから入れてもってきちゃった、てへ」
 てへって、無邪気にかわいく舌を出してる場合じゃないですよ。みんなに分けないと動くの大変そうです。
 このさい一緒におやつチェックしてもらいましょう。

「あれだな。この私が冒険者の心得など一晩で教えてやろう、よく聞くのだぞ」
 その横で、B君に早速説教をはじめた、見た目お子様なあの子は、クリスティン・バルツァー(eb7780)嬢です。ギルド員丸秘メモによるとその冒険回数いまだ二回・・・・フ。ちなみにお子様ではなくて、じつは結構歳いってるみたいです。

「どうやら、闇織さんがゲルマン語を習得されていないようなので、できれば通訳の方をつけていただきたいのですが‥‥ダメでしょうか?」
 ギルド員に問いかける彼は、キリル・ファミーリヤ(eb5612)とても面倒見がよさそうな青年です。
「ああ、俺こう見えても、語学万能だよ。闇織ってのは、そこできょろきょろしてる坊やのことかい?」
 ギルド員の先に、こちらの様子を伺っているニンジャルック、彼が闇織君ですね。
 しかし、ギルド員が語学ができるとは、人は見かけによらないものです。
 ということで、ここからは同時通訳で参ります。

「それよりもだギルド員。大きいペットは禁止と聞いたがこのゴーレムはどうかな?」
 新人さんの荷物チェックを終えた、茗花の問いにギルド員は迷いました。さすがに大蛇やらロック鳥、巨大爬虫類に比べるとこの程度たいしたことないような気もします。
「まあ、今回は置いていくということで」
「そうかでは置いていこう」
 A君もそれを見て、なにやらメモをしているようです。
 そろそろ、出発準備はだいたい揃いました。

 その様子を見ている男性が一人、このパーティーの中では比較的真面目に講習を受けるつもりのマクシーム・ボスホロフ(eb7876)。彼は思いました。
 ここまで見よう見真似でやってきた。だから講習を受けるつもりだったが・・・・なんというか来る場所を間違えたような気もする。

 そんなマクシームの心配は、まだまだ続くのでした。


●夜は宴会 

 さて、キエフ郊外の洞窟の前についたの夜のことです。  
 野営の準備をしたパーティーは、合宿の楽しみの一つ宴会? を始めています。

 食事当番は、ギルド員とルンルン、そしてマクシーム。その他雑用はキリルが受け持っている中、食事の用意を始めたみんなを前にルンルンクッキングが炸裂しました。
「うごぁ、お嬢ちゃん。そ、それは」
「ル、ルンルンさん。その真っ黒な物体はなんですか?」
 キリルの驚きの先にあるのは、真っ黒な元食料です。
「私、頑張って作りました!」
 差し出した黒焼きは精がつきそうです、多分。
「努力はみとめますが、これなら僕が作ったほうが良かったかな」
「・・・・なんというか、言葉もでないな」
 マクシームもそれを見て嘆息します。真っ黒焦げそれは、なかなかいい感じに苦いです。
 味見をした彼が言うのだから間違いないでしょう。
「よし、お嬢ちゃん。俺が手取り足取り料理を教えてやろう」
 さすがギルド員、オヤジです。
「ほんとですか? 私ドラゴンのステーキが美味しいって聞いた事あるんだけど、あれはホントなのかな?」
「お嬢ちゃん・・・・命は大事にな」
 美味しいかどうか以前に、そのステーキ。材料取りにいくの大変そうですよね。
「んじゃ、そこの下町育ちっぽい男。一緒に料理をするぞ」
「お、俺か」
 ということで、調理器具を預けられたマクシームは料理をすることになるのでした。

 一方そのころ。

「飲め、私の酒が飲めないのか」

 ・・・・・・見ないほうが良いような気がしてきました。でも、仕事です。

 焚き火の周りで、ベアトリス&クリスティンが、A・B・闇織らに持参した酒をしきりにすすめています。すでに二人とも酔っているようです。
「いいか、冒険者とは、退かぬ、媚びぬ、省みぬ! だが、しかし。いざというときは逃げることも必要だぞ」
「いいこというじゃん、ほらお前たちも飲めよ、土産のハーブワイン」
「俺、まだ子供だから飲めないよ」
 闇織君の必死の抵抗など、よっぱらいには聞きません。
「酒を愛さぬものは人生の愚者だ。子供だから呑めない? かまわんかまわん、どうせここならちょっとくらい呑んでみてもバレはせん」
 言ってることと、見た目のギャップが素敵ですねクリスティン。
「二人とも、ほどほどにな。明日は洞窟探索がある」
 といいつつも、茗花もちょっと頬が赤いような。
 そこへ。
「みんな、ご飯できました♪」
 ルンルンの運んできた食事、食事会がはじまりました。


 ──さて、夜も更けたころ。

 
 暗闇の中に燃える炎、どこか幻想的で懐かしい空気があたりを包みます。
 闇の温もりと炎の揺らぎ、焚き火を囲んでいたメンバーたちも不思議と穏やかな気分になりました。
 傍らで寝息を立てているA・Bを横目にギルド員は炎にあたりながら、ふと聞きました

「そういや、お前たち。なんで冒険者やってるの?」
 ギルド員の視線の先には、闇織君がいます。彼はちょっと考えていたようですが
「なんでだろう、分からないや」
 と、返します。
「そういえば、なぜでしょうね」
 カップに入れたお茶を飲みながら、キリルも炎を見つめていいました。
「楽しいからなのかな」
「だが、危険も隣り合わせだな」
 ルンルンと茗花も続けます。
「俺はギルド員だし、お前らは飯の種だからな。でもまあ、好き好んで死地に赴くなんて普通は選ばないもんだよ。偉いっていえば偉いが、物好きだよな」
「そこに冒険があるから。かもな」
「お、かっこいいこと言うね。下町」
「マクシームだ」
「ま、いいじゃん。たまに考えるけどさ、簡単に答えがでるもんじゃねえよ」
 冗談めかしているけれど、ベアトリスも色々考えているようです。
「あれだ、私の前に道があり、私の後ろに道ができる。どっちにしろ私を中心に世界は進むのだ」
 胸張って物凄いことを言ってますけど、もしかしてまだ酔ってるんですか? クリスティン。
「さて、皆さん明日もあります。とりあえず、そろそろ寝ましょうか」
 キリルはそう言ったあと、ふと思いました。僕はもしかしたら、世話焼きと苦労性がこうじて冒険者になったのかもしれないのかな、と。

●探検

 洞窟といっても、元々新人向け設定であり、たいしたところではありません。
 隊列を組み、各々の役割を決めた彼ら。
 駆け出しといっても、そろそろ中堅に足を踏み入れるかどうかのパーティーメンバーもいる中、それほど障害にもなりませんでした。

「何か発見!」
 ルンルンのスクロール、ブレスセンサーによって、生物の位置を把握したあと、A・Bに微笑みかけます。
「人それぞれ冒険のスタイルがあるから、自分に合ったの見つけるとやりやすいですよ。私は巻物に頼っちゃう事も多いけど」
 でも・・・・スクロールってお金持ちアイテムのような気も。
「右斜め30度に岩、そして、奥にスイッチ」
「お、やるじゃん」
「当然だ。私の目からは誰も逃れられはせん、なんてな」
 クリスティンはインフラビジョンで、内部の把握をしています。
 その横でべアトリスも、地味に道に迷わないように仕掛けを施すなど、口調のわりに頭は切れるようですね。
「ちょ、ちょっと助けてよ」
 あら、どうやらうろちょろしていた闇織君が見事トラップにかかったようです。
「さっき注意したのだが・・・・仕方ない、解除するか」
 この洞窟の罠は、初歩的なもののようで、マクシームにとっては発見も解除も意外と簡単のようです。
「たまにはこういうのも良いですね」
「そうかキリル殿。私はもう少し危険があるのかと思っていたぞ」
 のんびりマッピングしつつ進む茗花は、キリルにそう返しました。
「まあ、新人が冒険気分を味うってのが、今回の趣旨だからな。そんなに危険な罠はないと思うぞ。ただ、俺も詳しいこと知らされてない・・・・って、おい!」

 ギルド員の視線の先に、なにやら大きな岩が転がってくる様子。
 追われているのはA・B。
「うわ、あいつら何やったわけ。ここ一本道だろ。お前ら、逃げるぞ」

 ゴロゴロゴロゴロ。逃げるパーティー、追う岩。
 
「愚かな岩め、私の前に立ちふさがるとは。今こそ神の裁きをうけろ!」
 ・・・・岩に向かって、かっこよさげなセリフとともに、ファイヤーボムをぶつけるクリスティン。いつから神になったのかは知りません、多分朝から飲んでるのでしょう。
 ただ効果はあったようです。岩にも味方にも。
「ゲホっ、んな無駄なことしてる場合じゃねーよ、ほら逃げるぞ」
 ベアトリスが手を引っ張って、走り出します。
 
 岩、衝突、寸前。
 横道に飛び込んだパーティーの面々、轟音とともに道を走り去った岩は、どうやら壁に激突して止まったようです。ちなみに実は外側だけ岩の張りぼてです。

「・・・・講習であのような罠を仕掛けるとは、ギルドもやる気なのだな」
「僕も正直驚きました」
 茗花とキリルが顔を見合わせる中。
「あ、これって、もしかして宝箱かな?」
 ルンルンの指した先にあったもの・・・・。
 それは宝箱でした。

●合宿の終り

 宝箱を無事発見したパーティー。
 合宿もそろそろ終りの時間のようです。
「今回、ご苦労だった。ということで参加したメンバーでおやつ交換会をする」
 ワイワイガヤガヤ、おやつの交換をはじめる彼ら、微笑ましい時間が過ぎていきます。
「そろそろ頃合いだな、お前ら円陣を組め。解散の儀式だ」
 ギルド員の掛け声とともに、なぜか円陣を組む彼ら
「合宿、オー!!」
 こうして、ちょっとテンションの高い集団のお祭り騒ぎが終わりを告げたのでした。


 ギルドについたあと、ギルド員は一言。
「家につくまでが合宿だ、みんな気をつけて帰れよ」
 手を振る彼を前にメンバーは帰っていきます。

「では、皆さん。もし依頼でご一緒したさいは宜しくお願いします」 
 爽やかな笑顔で去っていくキリル、苦労性頑張ってください。

「まーとりあえず、また会ったらよろしくな」
 あらくれーなべアトリス、思ったよりも知的な人でしたね。

「私の説話が聞きたいのなら、いつでも来るが良い」
 クリスティンはいつもの態度ですね。

「俺も結構ためになったし、楽しかったよ!」
 闇織君、とりあえず冒険の前にゲルマン語を憶えましょう。

「合宿はお祭りみたいで楽しかった。ちょっとお料理失敗しちゃったけど」
 狙いは最初からそれのような気もするルンルン。次はシチューの練習をしましょうね。

 皆がそれぞれ帰っていく中、ギルド員が何かを持ってマクシームに近寄ってきました。

「下町、お前に譲るものがある」
 なんだか、真剣なギルド員がマクシームに差し出したのは
「それは、俺の調理器具セットだ。これからはお前が使うといい。野営料理の道は深い」
 はた迷惑とはいえ、とりあえず押し付けられた器具をマクシームはもらうことになってしまいました。
「それじゃ、俺も帰るよ」
「ああ、精進しろよ」



 冷たさが頬にしみる。
 去る仲間の姿を見送ったあと、茗花は新人である彼らに言った。
「これから色々あるかもしれない。けれど、負けないようにな」
 彼女がどのような道を進み、ロシアにやってきたかは定かではない。 
 しかし、決して平坦ではなかったろう。
「ありがとうございます。俺たち頑張ります」
 希望に溢れる新人の姿、たいしたことではない、彼女はそっとその魔法をかけた。
 歩みはじめたばかりの君たち、その進む道に幸運がありますように。

 『グットラック』


 了