海より帰還する力

■ショートシナリオ


担当:若瀬諒

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月22日〜01月27日

リプレイ公開日:2007年01月30日

●オープニング

●沈んだ希望
 ゴーレム開発初期のこと。
 モナルコス初期型の開発、及び試験運用が終わっていざ実戦配備という時期に、とある事件が起こった。
 嵐の中、メイディアからリザベ領の最前線へ、戦況を一気に変えうる力を持つ最新兵器を搭載して航行中の大型船――シーハリオン号が、突然姿を消したのだ。
 最新兵器の名は、ゴーレム。
 量産を開始したばかりのモナルコス、実に三騎である。
 大規模な捜索が行われたが、沈没したにしても位置の特定が難しく、また海流の強い地域でもあり、遂に発見出来ずに終わった。
 当時は、バの国の海賊船によって奪われたのではないかという推測も飛び交い、騒然とした状況に陥った。一昨年のことである。

●台風一過
 季節外れの大きな嵐から数週間後――
 ステライド領ナイアドの南に位置する小島に『それ』が打ち上げられているのが発見された。
 ボロボロに傷ついたその船の船腹には紛れもなくシーハリオン号の文字。
 消息を絶ったとされていた海域から実に400kmも離れた地での発見である。
 この報せに、最近の激しい戦闘でのゴーレム損傷率の高さにてんてこまいだったゴーレム工房で、目を光らせた人物がいたという。
 ――運が良ければ、使えるモナルコスが残っているかもしれない。
 彼がどう思ったかは定かではないが、すぐさま調査隊が出されることとなった。
 のだが――
「報告が遅いのよ!」
 ガンッ、と机に拳を叩き付けて、その女性――ローザ・ニースは吼えた。冒険者ギルドでも中堅クラスの仲介人である。
「これが何を意味するか、判らない貴女でもないでしょう? 危険度が跳ね上がるのよ! 調査隊は出発した後! 大した危険もないと思ったから戦闘員なんてそこらの貨物船並みなのよ!」
「ご、ごめんなさい」
「はぁ‥‥もういいわ」
 叱られて小さくなってる仲介人見習いの少女を見やって、ローザはため息をつく。新人に当たり散らしても仕方ない。
 半ば海中に沈んだ船体から伸びるメインマストのように巨大な触手を見た、との情報が届けられたのはまさに今。
 調査隊は一昨日出発し、早ければ既に現地に到着していてもおかしくない頃だ。
 向こうの編成は船員の他、ゴーレムニスト、水ウィザード、天界人学者とその弟子。調査に的を絞って選抜したため、戦闘能力はからっきしだ。
 彼女の頭の中で素早く状況が整理されていく。
「調査隊からの報告は早くて三日後‥‥待ってるわけにはいかないわね。遭難を想定してすぐに捜索隊を編成! 恐らく実質は討伐隊になるわ。モンスター退治に長けた冒険者を揃えて。ゴーレムの手配も必要ね。出来る?」
「が、がんばります」
「じゃあいってらっしゃい。時間との勝負よ」
 少女を送り出して、彼女は一息ついた。
 簡単な依頼だと、大したチェックもせず彼女に任せた自分の責任もある。
 ぱらぱらと資料を見直す。打ち上げられたと書かれているが、実質は海岸から50メートルほどの海底に座礁しているらしい。船首部分が海上に突き出していると言うが、潮の満ち引きや海底の地形、船のサイズを考慮すれば、モナルコスが頭まで沈む深さでの戦闘も十分ありえる。船が安定して着底しているかも不明だ。
 水中戦の可能性も高いが、早々、水魔法に長けたウィザードが集まるとも限らない。冒険者に任せきらず、最低限のウォーターダイブやウォーターウォークが使えるウィザードの手配も必要になる。
「少し、手伝ってあげるかな‥‥」
 見習いの少女にそこまで手が回るとは思えない。
 呟くと、ローザは迅速に行動を開始した。

●今回の参加者

 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0439 アリオス・エルスリード(35歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea3641 アハメス・パミ(45歳・♀・ファイター・人間・エジプト)
 ea3972 ソフィア・ファーリーフ(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb0754 フォーリィ・クライト(21歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb4157 グレイ・マリガン(39歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb8174 シルビア・オルテーンシア(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 eb8475 フィオレンティナ・ロンロン(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8962 カロ・カイリ・コートン(34歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)

●リプレイ本文

●島影
「そろそろ‥‥だな」
 遠くに島影を認め、アリオス・エルスリード(ea0439)が呟く。
「調査隊の人達、無事かしら?」
「どちらにしろ、俺は俺のやれることを確実にこなすまでだ。極めるにはまだ遠いと気付かされたからな」
 フォーリィ・クライト(eb0754)の声に、アリオスが応える。
「『力が足らぬはなお磨け!』ってかにゃあ。あんたですらそうなら、あたしなんかはあんた以上に腕を磨く必要があるぜよ」
「向上心がある若者はいいねぇ。ただ、忘れるんじゃないよ。『力』だけを求めても勝てない敵がいるってことを。今のあたしらに必要なのは、格上に勝つための『工夫』さね」
 二人の元へカロ・カイリ・コートン(eb8962)とパトリアンナ・ケイジ(ea0353)が集まってくる。
 皆、前回の依頼を共にし、鮮血の虎に手ひどくやられた面々だ。
 フォーリィとアリオスが交互に口を開く。
「工夫‥‥かぁ。あたしは考えるより身体を動かす方が好きなんだけどな〜」
「今回は巨大な触手を持つモンスターだったな」
 船、触手共に近海を漁場とする漁師が発見したものだ。
「大蛸か大烏賊か、はたまた大ローパーかっ、さて何かな」
「こはは想像以上に大きい生物が多いからな。何が出てきても不思議ではないが」
「今度のバケモノは以前のバケモノほど頭が回ることはないだろうからね。遠慮なく、気ままに、思う存分! 溜まった鬱屈を晴らさせて貰うとするさね」
「違いないにゃあ!」
「‥‥『工夫』はどうした」
 端で聞いてて、思わず突っ込むグレイ・マリガン(eb4157)である。
 まあ、『今は難しいことを考えずひたすら身体を動かしたい』、彼らがそんな思いでこの依頼に参加していることが判っているだけに、深く追求するのは酷というものだろう。
「しかし、今回もモナルコスで戦えない可能性が高いな。まあ、国を捨てた愛国主義者には似合いの境遇か」
 ――自分はこの国を祖国と思うことが出来るのか。潮風に揉まれながら、グレイはふと、そんな事を考えた。

「これがシーハリオン号の図面ですか」
「うわぁ‥‥大きいねぇ!」
 場所は変わって船室。
 に拡げられた図面を見てソフィア・ファーリーフ(ea3972)とフィオレンティナ・ロンロン(eb8475)が声を上げる。
「ちなみに調査船はこの船の同型艦だそうです」
 図面を借りてきたアハメス・パミ(ea3641)が皆に告げる。
 甲板の面々と、ペガサスに騎乗して偵察に出ているランディ・マクファーレン(ea1702)を除いた全員がここに集まっていた。
「モナルコスが置かれているのは‥‥ずいぶんと船底近くですね」
 図面を見てシルビア・オルテーンシア(eb8174)が呟く。
 報告通りなら、完全に海面下の可能性が高い。
「底に穴が空いてたら、海のどこかに落っことして来ちゃってるかも?」
「可能性はありそうですね」
 フィオレンティナの言葉にアハメスが頷き、ふと何かを思いついたように言葉を継ぐ。
「船が座礁しているという岩?自体も、また別の巨大怪物というのも、楽しいですね」
「可能性はありそうだね!」
「ありません」
 フィオレンティナの言葉にシルビアからすかさず突っ込みが入る。
「あ、でも‥‥ローバーの更に凄く大きいのがいて、それに捕まって座礁してたりしたらありえるかも‥‥?」
 そんなのがいてほしい、という探検家としての願望も詰まってそうなソフィアのフォローにフィオレンティナの顔が歪む。
「触手うぞうぞ巨大磯巾着‥‥キモいよ!」
「‥‥それ、いいですね(うっとり)」
「えっ?!」
 突然妙なことを言い出したシルビアに皆の視線が集まる。
「どうかしました?」
「う、ううんっ。なんでも!」
 きょとんとして聞き返すシルビアに、ぶんぶんと大きく首を振るフィオレンティナ。
 常日頃のまともな言動に隠されているが、実は結構シルビアも妖しい人である。‥‥被虐趣味があったりとか。
「それでモンスターですけど、私が知る限り、可能性が高いのはやはり――」
 立ち直ったソフィアが、探検家として知る限りの知識を皆に伝えていく。

●調査船
 ――一方。
「いやー、まいったまいった。舵がやられちゃってねぇ」
 明るく言うのは誰であろう、調査船に同行していた水ウィザードである。
 調査船は、傷ついた姿を陽光の下に晒して停泊していた。沈没船からそう遠くない。停泊したという体裁を取ってはいるが、もはや自力での航行は不可能だろう。
 ランディが近づいてみたが人の姿はなく、代わりにほど近い海岸にたき火の煙。近づいてみれば、果たして調査隊の面々であった。
「触手からは何とか逃げおおせたんだが、帰れずに困っていたんだ。助かったよ」
「そうか。ここにいるので全員なのか?」
 そっけなく応じて問いを続けるランディ。
「いやぁ‥‥それがねぇ‥‥」
 苦笑いを浮かべて水ウィザードが呟いた。
「『ゴーレムがあれば追い払える』って言って聞かない人がいてなぁ。天界人二名とゴーレムニストの合わせて三名、いっちまったきり、さ。あの学者さんは命いらんのかね?」
 「やっぱりにゃあ」の声がどこからともなく聞こえてきそうだった。

●救出×探索×戦闘
「これで水ウィザードが二人。ソルフの実は使わなくても良さそうですね」
 ランディが連れてきた水ウィザードに、どこかほっとした様子でソフィアが呟く。
「多少の修正はあるけど、基本的には変わらないわね」
「ええ、打ち合わせ通りに行きましょう」
 シルビアとアハメスの発言に皆が頷く。

 今回の作戦、各人の役割を大まかに分けると3つになる。
 潜水救出班:アハメス、ソフィア、フォーリィ
 潜水探索班:グレイ、カロ、ランディ
 戦闘班:パトリアンナ(水上)、アリオス(バリスタ)、フィオレンティナ(モナルコス)、シルビア(グライダー)
 である。役割を兼任している者も多い。

●作戦開始
(うわっ、冷たっ)
 ざぶん、と冬の海に飛び込んだフォーリィは思わず口走った。
 水柱と共に飛び込んでくる5つの人影をみとめ、素早く周囲の状況を確認する。
 場所は沈没船のすぐ側。
 ウォーターダイブをかけてもらい、魔法の絨毯で一気に沈没船の側まで移動、飛び込んだばかりで、まだ五分以上の持続時間がある。
 敵の気配は今のところ無し。水深はこの辺は浅くて3m、けれど船尾に視線を移すに従ってどんどん深くなって船尾付近で6m近く。更に先で海底が大きく落ち込み、崖のようになっている。
 一瞬でそこまで把握すると、ソフィアの提案で事前に決めてあった指の形で周りの五人に出発の合図を伝え、船体中央に空いた巨大な穴から内部へと侵入していった。

●船首
「ぷはっ、ちゃんと空気があるところもあるんですね」
 船首部分へと向かったのはアハメス、ソフィア、フォーリィの3人である。
「む‥‥なんじゃおぬしら?」
「た、たすかったぁー」
「これも夢なんです。きっと夢なんです。どうせ私達死ぬだけなんですよー」
 暗い船内、通路の奥から人の声が聞こえてくる。
「あれ? あっさり正解?」
「船首部分以外は水没してますから、ここ以外にいたら水死していますし」
「それもそっか」
 アハメスの応えにフォーリィが頷く。
「皆さん、助けに来ましたよ〜。慌てず騒がずゆっくり‥‥離れてくださいね?」
「え?」
 きょとん、と見返す二人に、ソフィアはにっこり笑って数メートルほど先の通路の隅を示した。
「見えづらいかも知れませんけど、縮こまったローバーが3匹ほど。お願いできますか?」
「‥‥承知した」
 しゃらり、とハルバードとライトソードを構えるアハメスとフォーリィ。
 熟練した彼女たちにとって、それを肉塊に変えるのにさしたる時間はかからなかった。

●探索
(これは‥‥やっぱりアレかにゃあ?)
(多分な)
 船底へと向かおうとしたランディ、グレイ、カロの三人はいきなり巨大な壁にぶち当たっていた。うねうねと蠢く巨大な軟体の壁だ。
 正直、圧倒される。モナルコスが直立できるほどの空間を丸々占拠する壁、壁、壁。水中であり見通しが利かないということが、余計にその圧倒的な存在感、重量感を伝えてくる。
 その壁がぐるりと移動したかと思うと、突然、ぎょろりと巨大な目玉が三人を睨んだ。何を考えているのか想像も出来ない目玉に見つめられて、三人の動きが硬直する。
(どうする?)
(やるしかないだろ)
 グレイの問いにランディが『下がれ』のサインを出す。
 迷ってる時間はない。モナルコスが存在するとすれば、この巨体のまさに真下なのだ。
(オーラショット!!)
 ランディの身体が淡いピンクの光に包まれた直後、光の塊が巨大な目玉にぶち当たる。
 グォォォォォ‥‥
 直後、船体が揺れ動いた。
 慌てて船外へと泳ぎ出るランディの背後から巨大な触手が迫る。物陰に隠れたグレイとカロの目の前を巨大な影が通り過ぎ、耳には船体がきしむ嫌な音が伝わってくる。
(や、やばいんじゃないかにゃあ?)
 流石に二人は死を覚悟した。

●脱出
「で、でたーっ! バケモノだー!」
(救出班はまだなのか‥‥?)
 海面から突き出た巨大な触手へとバリスタの照準をぴたりと合わせて、アリオスは独り呟く。
 何かあったのか――
 海面には時折ランディのオーラと思われる光が瞬き、空ではシルビアがグライダーを飛ばして触手の気を引いている。だが、ほぼ無傷の相手に彼らの行動は限界がある。運はそう長くは続かな――
「ぐあぁぁ‥‥っ!」
 アリオスの懸念が現実になるのにそう時間はかからなかった。ランディが触手に捕まり、宙高くつり上げられる。
「く‥‥っ!!」
 今撃てば、十分なダメージを与えられる自信がある。だが同時に、痛みに悶えるバケモノの動きは今とは比較にならない激しさになるだろう。
 遠目に見ているからこそ判る、かのモンスターの巨大さ。触手だけでも優に10m。足を拡げれば20mを超える巨大な蛸――クラーケン。
 ――暴れられたら、船ごと砕ける。
 だが、ランディもこのままでは。
(救出班はまだか――ッ!)
 この依頼も‥‥守りきれないのか?
 平静な表情の奥で、アリオスはぎりっと歯を食いしばった。

「アリオス! あたしは行かせて貰うよ!」
 ウォーターウォークを付与され、海面に降り立ったパトリアンナが駆けながら叫ぶ。
「あんた‥‥見殺しにする気か?」
「仲間の腕を信じるのも、あたしらには必要なことだろう? さっさと撃ちな! あいつらは自力で帰ってくる。あたしも、ランディを助けに行くんじゃない。バケモノを倒しに行くのさ!」

 パトリアンナの言葉の直後――ランディが触手から自力で脱出する。海面へと叩き付けられる直前に、シルビアのグライダーがランディを掬い上げた。

 同時に、船首の朽ちた甲板が一枚、爆発したように内側から吹っ飛んだ。
「けほっ、けほっ‥‥煙いですね」
「脱出成功〜」
「なんとか間に合いましたね」
 ソフィア、フォーリィ、アハメスの三人と、調査隊の三人が顔を覗かせる。
「まったく、冒険者という奴はなんでこう荒っぽいんじゃ」
「そう思うなら荒っぽいことされないように大人しくしてくださればいいんですけどね」
「精霊界ってなんでこんなに埃っぽいんですか!? 私死んだのになんで目が痛いんですか!?」
 上から天界人学者、その助手、ゴーレムニストの発言である。そのまま置いて帰りたいところだが、そうもいかない。
「生きてるかい?! そいつはよかった、早く安全圏まで下がりな!」
 近づいてきた触手をブラッドアックスで切り裂き、パトリアンナが退路を確保する。
「あんたらもさっさと魔法かけ直してもらっといで! その間はあたしが引き受けた!」
『それは少し出番を取りすぎぜよ』
『‥‥まったくだ』
 海を割って鎧をまとった巨人が二体現れる。
『武器もなく、魔法もそろそろ切れそうだが‥‥』
『ここで活躍しないで、なんの大海獣決戦! 暴れるぜよ〜っ!』
『そういうことだ』
 大破と小破。動いているのが奇跡のモナルコスを動かし、吼えるカロと頷くグレイ。
 その背後を狙う触手を、アリオスのバリスタがちぎり飛ばす。
「まったく‥‥あまり心配させないで貰いたいな」
 苦笑いを浮かべながらも、アリオスは安堵した声で呟いた。

●バケモノ退治
「ごめんなさーい! 遅れました&ただいま&魔法下さい&いってきまーす!」
「待て待て嬢ちゃん、まだウォーターダイブかけてねーぞ!」
 魔法の絨毯で海岸へ戻ってきて、即モナルコスで出ようとするフィオレンティナを慌てて呼び止める。
「早く早く! 干潮まで待つと思ったらみんな乗り気なんだもん! 出番無くなるッ!」
「よしっ、おら!いってこーい!」
『はーい! フィオレンティナ、いっきまーす!』

「誘導お疲れ様です。後は下がっていても平気ですよ」
「これぐらい、すぐ治る」
 ランディの身体が淡いピンク色の光に包まれたかと思うと、全ての傷が癒えていく。オーラリカバーだ。
「すごいですね」
「‥‥このまま攻撃に戻る。あんた、俺の言うとおりに動かせるか?」
「えぇ、可能な範囲でしたらやってみますわ」
 シルビアもすぐに気を切り替え、こくりと頷きを返した。

「あーもう! みんなずるいの駆けつけスマッシュ+ソニックブーム+ソードボンバー〜っ!!」
 フォーリィの一撃が触手を根元から斬り落とす。

「くっ、触手の一本や二本、絡みつけれようが捌いてやるさね! 今日は叩っ切りレンジャーだ!」
「――危ない!」
 背後からパトリアンナに迫った触手をアハメスのサンソードが斬り落とす。

「みんな〜。海上だから真下や背後からの攻撃にも気をつけて。絡み付かれないよう注意してね〜!」

『海面下はあたしらが引き受けるぜよ!』
『カロの一番壊れてるんだから私に任せて! 持ち上げるよ! どっせーい!』
『攻撃しないなら武器は借りるぞ。――でやぁぁっ!』

「もっと低く、触手の下をすり抜けるぞ!」
「地面効果って‥‥知らないですよね。スレスレは難しいんですよ!」

「時々モナルコスがジャンプしてるのは、あれって」
「息が続かないんだろうな。まったく‥‥馬鹿ばっかりだ」
 水ウィザードの台詞に苦笑いで応えつつ、アリオスはクラーケンに止めの一撃を叩き込んだ。

●結末
「怪我人はいるかい? ポーションあるよ。後で代金は請求するがな! 足が出る!」
「三体目のモナルコス? ああ、無かったな。恐らくどこかの海底だろう」
「はいはい。びしょ濡れの皆さんはまずたき火に当たって下さいね」
「あ、あんた何こんなところで脱いで――」
「え? あ、この下は天界の水着ってのだから♪」
「それでも駄目です。殿方はみんな回れ右! あなたもですランディ」
「興味ない」
「狂化とけてないあたしに首の骨折られたいなら向かなくていいけど?」
「この蛸、焼いたら食えるかにゃあ‥‥?」
「余力があればもう一度魔法をお願いできますか? 乗員の方々の遺品が探せればと」

‥‥まあ、楽しそうで何よりである。