桜の森の大宴会
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■ショートシナリオ
担当:若瀬諒
対応レベル:8〜14lv
難易度:易しい
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:04月08日〜04月13日
リプレイ公開日:2007年04月22日
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●オープニング
●遅刻した人々
「なぬっ? もうおわっとるのか?」
すっかり閉鎖されているお花見会場を目にして、天界人学者はそう口を開いた。
「忙しくて出遅れましたからねぇ。当然と言えば当然ですか」
お付きの青年が達観したように呟く。
「むぅ‥‥久方ぶりに桜を肴に酒を飲めると思ったのだが‥‥」
一升瓶を片手に、残念そうに言う学者。
天界から来落したときに持ってきたものだが、ちびちびと飲み続けてもはや五分の一ほどしか残ってない秘蔵の酒だ。
「ああ、でも別に桜ってわけじゃなかったみたいですよ」
「なんだと! それでは花見と言わんではないか!」
「そう言われても‥‥。そもそもソメイヨシノは、遺伝学的には全て、たった一本の木から出来たクローンですからねぇ。桜が丸ごと来落でもしてない限り、『あの桜』はこの地ではお目にかかれないんじゃないかと‥‥」
学者も判っているだろう事をわざわざくり返すのは、安全策である。先に釘を刺しておかないと、何を言い出すか――
「探すぞ!」
「‥‥またですか」
糠に釘。のれんに腕押し。馬の耳に念仏。
とっさに青年の脳裏に浮かんだ言葉はそんなところだ。
「なに。メイは広いしきっとある!」
「こちらの話、聞いてなかったでしょう?」
呆れた様子で額を抑える青年に、学者が力説する。
「他の国は知らんが、どういうわけかこの国には日本やジャパン出身の天界人が多い。であれば、可能性は無いとは言えん。また、この時期に桜で花見をしたいという者が現れるのは必定! 既に我々より先に桜を探している者もきっとおるだろう」
意外にまともな論理に、おや、と青年が顔を上げた。
「つまり、片っ端から和風っぽい顔に聞きまくればきっと桜は見つかる!」
「‥‥期待した自分が馬鹿でしたよ」
●桜見物護衛依頼
「ところが、結構あっさり見つけてしまった……ってわけね」
「まあ、ソメイヨシノじゃないらしいんですが。桜の雰囲気と風情を楽しむのには十分なくらい似ているらしいので、もう張り切ってまして。止めて一人で突っ走られるよりは、と」
冒険者ギルド。
青年が話す相手は、依頼で何度かお世話になっている仲介人、ローザである。
桜らしいものが咲き誇っている場所が存在する、との情報が飛び込んできたのはいい。問題は場所である。
「ダイラテルの近く……完全にリザベ領じゃない」
「そうなんですよ。で、出来れば護衛をお願いしたいんですが、実はこっちも心許なくて」
薄い財布をひらひらと振って、青年が語る。
「なんとかローザさんのお力で、お金持ってる人巻き込んでちょっとした宴会みたいなノリに仕上げてもらえませんか?」
さらりと無茶を言う青年である。
「無茶言うわねぇ。けど、桜での花見は私も興味あったし……あの辺なら今、リバス砦関連でカーチス卿が常駐しているはずだし……」
ぶつぶつと呟きながらさらさらと青図を書き上げていくローザ。
「う……ん、なんとかなる、かな。やりましょうか。但し一定以上は命の保証しないわよ」
こうして、リバス砦のお膝元に近い森での宴会が行われることとなった。
護衛役として冒険者を募集するが、仮にもカオスの地に近い場所である。
桜の森の満開の下――埋められた死体役にならないことを切に望みたい。
●リプレイ本文
●アルバートに花束を
「じゃあ、行ってくる。土産に桜とやらを一枝‥‥あ、いや‥‥土産話でも持ち帰るよ」
「楽しみにしてるよ。俺の分も楽しんできてくれ」
冒険者街の主、アルバートは軽く手を挙げてツヴァイ・イクス(eb7879)を見送った。
土産に桜を止めたのは智賢だろう。『怪奇!一夜にして桜の森が枯れる!?』などという瓦版が出回ることが避けられたのだから。――多分。
‥‥いや、まあ、ジンクスは避けたくなるのが冒険者。この行動は冒険者として正しい。例えそれが根拠のない噂であっても。
●出航は騒がしさと共に
「敷物と外套持ってきたよ」
「酒はこれくらいでいいかな」
「おおう、助かったぞい。これだけあれば十分じゃい」
友人達が準備した品をバンバンと叩きつつ、御多々良 岩鉄斎(eb4598)が笑顔で言った。
「それでは行ってくるとしようかのう。ぬわーっはっはぁ」
友人達に手を振って、ゴーレムシップへのタラップを渡る岩鉄斎。‥‥多分、一人で三人分くらいの音量をばらまいている気がする。
「やっぱり来てたか」
風 烈(ea1587)は、彼女の姿を見て苦笑を浮かべた。
「なによ。来てちゃ悪い?」
「いや、来なかったら誘うつもりだったしな。問題ない、が‥‥ちゃんとモラット公に了承取ってあるんだろうな?」
「そんなわけないじゃない」
彼女――クレヨ・モラットは無意味に胸を張って言った。屋敷を抜け出してへっぽこ盗賊団の頭に収まったりしたこともある、じゃじゃ馬お嬢様である。
「私は今、誘拐され中よ!」
「‥‥は?」
「誘拐犯はポチ。そういうことで」
「‥‥らしいです‥‥しくしく」
隣でさめざめと泣く美少女メイド。――いや、少女じゃなく少年なのだが‥‥なんか、以前より女装が板に付いてきた観がある。こんなお嬢様に人生狂わされた彼(彼女?)の未来が、他人事ながら心配である。
「お花見って、花を愛でるパーティなのかしら? よく判らないけど‥‥」
「なんと、花見を知らぬのであるか!」
ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)の独り言に反応したのは虚無僧。もとい、アルフォンス・ニカイドウ(eb0746)である。
「花見はいいものであるぞ。そもそも花見とは――」
「‥‥また始まったわ」
「あ、あはは‥‥」
額に指を当ててしかめっ面をするローザとミゥの冒険者ギルド仲介人コンビ。彼女らは興奮気味のアルフォンスに花見の説明を受けた最初の被害者である。一度始まるとしばらく止まらないが‥‥まあ、ジャクリーンには頑張って欲しい。
「なに、気にするな獣耳少女! 俺達も丁度力が有り余っていたところだ!」
「その通りだ、獣耳少女! 他にも何かあればどんどん命令してくれ!」
「出来ればもう少し強めに命令してくれ! 獣耳少女!」
「本音を言うと少女よりもお姉様系の方が好みだが、俺はこれでも満足だ! 獣耳少女!」
妙に嬉しそうに答えるシットー達。かなり偏った趣味が見え隠れしているが、気にしないほうがいいだろう。
「‥‥出来ればもうちょっと別の呼び方がいいなぁ‥‥?」
彼らを呼んだリアレス・アルシェル(eb9700)は、そう苦笑した。
●桜の森の新奉行
ごつごつと曲がりくねった、葉の一枚もない枝。
枯れているのかとさえ思うその樹々に咲く、花、花、花――
「これは‥‥見事だにゃあ‥‥」
「ほんとに。綺麗ですねぇ」
カロ・カイリ・コートン(eb8962)とソフィア・ファーリーフ(ea3972)が、周囲を見渡してため息をつく。
一面、桜の森が広がるそこは、まるで桃源郷のようである。
他の面々もしばらく、その光景に圧倒され‥‥
「さてさて、大宴会ですともさー! テンション上げ上げでいきますよー!」
ソフィアの声で、我に返ったように動き始めた。
「う♪ 準備準備〜。麗玲さん、リアレスさん〜」
「うー、攻撃力低い料理は苦手アルよ〜」
「はーい。あ、シットーの皆、荷物運ぶの手伝ってくれないかな?」
「よしきた獣耳少女! どんどん命令してくれ!」
フォーレ・ネーヴ(eb2093)が二人と共に料理の準備にかかる。
「うわぁ‥‥」
リトルフライで森の上に浮かび上がったティス・カマーラ(eb7898)は思わず声を上げた。
桜色の絨毯が一帯を染め上げている。
梢の下から見る風景も綺麗だが、上から見下ろす景色も圧巻であった。
「でも、これじゃあまり警備の役に立たないかなぁ?」
何故かスコップを持ちながら、ティスはふわふわと森の上を漂いだした。
「ぬわーはっはっは。どうじゃ学者殿も、一杯!」
「おお! どぶろくではないか! お主、わかっておるな。花見と来れば桜、そして日本酒だということを!」
どっかりと座り込んだ岩鉄斎の勧めに、学者がノった。が――
「むむ! お二方、甘いですぞ! 早速ざっと見て回った拙者の見立てでは、花見に最適な場所はここではなく――あそこである!」
びしぃっ!と大仰な身振りで森の奥を示すアルフォンス。
「そして調理場所はあそこ! 荷物置き場はそこ! 馬はここ!」
アルフォンスの勢いに、思わず皆、従ってしまう。
――鍋奉行ならぬ花見奉行の出現であった。
●桜ダンサーズ
「う〜、お酒、お酒‥‥いやいや、でも我慢ですともさー。飲めない方、特製ハーブティーなどいかがですかー? 花びら浮かべるとあら不思議、周囲はいつの間にか花満開ですともさー」
「いや、浮かべなくても普通に満開なんだがな」
ソフィアの言葉にツヴァイが冷静にツッコミを入れる。
「たとえ飲むのはお茶でシラフでも、日頃鍛えた酔いどれで陽気に騒いじゃうもんねー」
「お花見とは、お酒を飲まないで酔うパーティ‥‥いえ、違いますわね、きっと」
未だに花見を理解してないジャクリーン。花見奉行アルフォンスの説明は聞き流したのだろうきっと。正解である。
そんなことをしている間に料理も揃い、本格的に宴会が始まった。
「一番っ、ソフィア・ファーリーフ&ミリー、いっきまーす。桜ダンサーズですともさー」
ソフィアがミリーを連れ出して踊り出す。コントロールプラントで桜がゆらゆらと――
ゆらゆら‥‥ひらひら‥‥
「おお‥‥これまた風流だな」
舞い散る花びらを見上げて、烈が隣のクレヨに話しかける。
「そうね。‥‥ポチ、あの二人が飲んでるのは何かしら?」
「ボ、ボス。あれはお酒ですから、その‥‥止めた方が」
「ボスは止めなさいって言ったでしょう?」
「は、はいっ。お嬢様!」
「それになに? 私がお酒を飲めないって言いたいの?」
「そういうわけじゃ‥‥ただ、ボ、お嬢様は酔うと脱――」
「さー、クライマックスですともさー!」
「ともさーともさー!」
ゆらゆら‥‥ざわざわ‥‥ひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひらひら‥‥
「やめんかー! 花が全部散ってしまうわー!」
「あうっ!」
「‥‥珍しくまともなことを言ってるな」
「あの御仁が人の役に立ってるところは、初めて見るにゃあ」
「たしかに」
少し離れた場所で互いに酒を酌み交わしていたツヴァイとカロが顔を見合わせて小さく笑う。そして、もう一人。
「役に立っているうちに埋めておきます?」
「樹々の栄養に?」
「あっはっはっは。‥‥止めておきましょう。枯れても困りますし」
「‥‥学者殿を案じて止めるわけじゃないところがにゃあ‥‥」
黒い。黒すぎる。ツヴァイもだが。
「貴方にふさわしい名前を進呈しよう。クロス・ギールというのはどうだ?」
「それでは貴女達メイの女性戦士がたに、オーキス・ギールと」
「ふふ‥‥ふふふふ‥‥」
「あはははは」
よく判らない笑いと共に、がっちりと握手を交わす二人。
「なんだかよう解らんがちゃ、ギール一族が勝手に増殖しそうにゃあ」
ボウソウシス・ギールとか、何名が当てはまるやら‥‥
●満開、ときどき来訪者
「オーガが出たぞー!」
その声と共に思わず冒険者の何名かが立ち上がった。が――
「あ、やっぱりゴフーさん」
「おっ? おめーはあのときの。いやー懐かしいなー!」
ソフィアの操る桜の木に絡みつかれ、逆さ吊り状態でゴフーは言った。
「ゴフーさんが来るかと思ってケーキを用意して来たんだけど、食べる?」
「あのぅんめー食いもんか? 食べる。食べるぞっ!」
「えーっと‥‥大丈夫なんです?」
どう扱っていいか迷いつつ、くるん、とゴフーを一回転させるソフィア。
「お? なんかおもしれーな! これ」
‥‥なんか喜ばれているが。
「ういいいいいん。オチャヲドウゾ」
「ほほぅ。それは『ろぼっと』とかいう天界のゴーレムだな?」
リアレスのロボット着ぐるみに反応したのは烈だ。
「天界の品なら俺もいくつか持ってきてるぞ」
そういうと、烈はごそごそと荷物袋を漁りだした。
「ん♪ 飛び入り参加で楽しくなってきたねー‥‥あれ?」
フォーレが振り返るのと、『そいつ』が突っ込んできたのはほぼ同時だった
「冒険者、かくごー! ――ぷぎゃっ」
そいつはティスの掘った落とし穴とも言えぬ凹みに盛大に脚を引っかけ、盛大に転がりながら酒盛りの輪の中に突っ込んだ。
「おや。これはいつかのちびっ子であるな」
「ちびっ子言うなー! って、ま、また『変なの』がいるぅ〜っ!」
花びらまみれで立ち上がった幼女は、言うまでもなくかおすにゃんこと、カオスニアンのアルゥ。ちなみに『変なの』扱いされたのは虚無僧姿の花見奉行氏である。
「あら、今日は恐獣はいないのね」
「おさんぽの途中だっ! 悪いかー!」
ジャクリーンの問いに答えるアルゥ。
「悪くはないと思うけど‥‥」
「なら、しょおぶだー!」
「ぬわーはっはっは! 元気のいいちびっ子じゃ。酒宴の席で勝負と言えばやはり酒じゃの? 我が輩も参加させてもらうぞ」
「え? ちょ、ちょっとなんだそれっ! しょおぶと言えば決闘だろーっ!」
いきなり酒宴のノリに巻き込まれて混乱する幼女に、アルフォンスが禁断の一言を発した。
「うむ。酒も飲めぬちみっこには、どだい無理な話であったなぁ。はっはっはっ」
――ぴしっ。
「‥‥やる!」
大人の勝ち、であった。
「ん♪ 残念〜」
出番を逃した対襲撃用兵器『どらごんのぬいぐるみ』は、もうしばらくフォーレの手元に残るようである。
「さあさあお立ち会い。ここに取り出したるは天界渡りの舶来品。その中身を共に解き明かそうとする、勇者はおらぬかな?」
岩鉄斎が顔に似合わぬ上手い似顔絵を描いたり、フォーレが皆の声真似をしたりと盛り上がる中、烈が取り出したのは缶コーヒーや缶ジュース、缶詰といった品々であった。天界ではありきたりの品だが、メイやジ・アースの民にとってはこの上ない珍し――
――訂正。天界でも『ある意味』珍しいかもしれない。
「マッ○スコーヒー、メッ○ール、おで○缶、ドク○ーペッパー‥‥これはなんとも‥‥いえ、面白そうだから何も言わずにおきますか」
黒ス・ギール青年が小さく呟く。
「せっかくだから、あたしはこの赤青銀の缶を選ぶぜよ!」
「あ、私これ貰っていい?」
「あんた、開けずにガメるつもりだろ?」
「‥‥ばれてますよ、ボ‥‥クレヨお嬢様」
「ういいいいいん。ハイドウゾ」
「うおおおっ! 獣耳少女からプレゼントを受け取ったぞー!」
一本は半ば強制的にシットーの元へ。
「残念だが獣耳少女はお前に譲ろう。俺たちは新しい道に目覚めたのだ! かおすにゃん萌えという新しい道にッ!」
「かおすにゃんって言うなーっ!」
「ぐふぅぅっ、ちっこい身体でなんて強烈なパンチ‥‥がはっ」
「無茶しやがって‥‥」
開ける前から既にカオスである。
「ある意味、これもカオスの浸食かな? あ、ゴフーさんも一緒に参加してみない? きっと楽しいよ」
闇鍋状態の場に、更にカオスな具を追加するティス。
結果は‥‥ご想像通りである。
「こ、これはまた‥‥珍妙な味ぜよ‥‥」
「あ、甘すぎる‥‥自分で手に入れておいてなんだが、なんだこれは‥‥」
死屍累々。
天界の食べ物に関する新たな偏見が、この日、産まれたという。
●そして伝説へ‥‥
「また、あんたも変なところにいるにゃあ」
日が暮れて宴もたけなわ。野営の準備も万端に整えて、騒ぎは続く。
「こういう場に目上の者がいては堅苦しくなる。‥‥だろう?」
皆から少し離れた場所で静かに飲むカーチスを見つけ、カロが声をかける。
「あんまり関係ないと思うがにゃあ」
「色々、妙なのも来てるからな。俺の立場じゃあ、あまり関わるわけにも、な」
ちらりと見やる先には、黒き子供と角の生えた亜人。
「あー、あれに騒いでおるのはどこぞの子供らじゃろ。ちょいと色黒の」
「君らが言うならそうだろう。ただの色黒の子供だ。‥‥おかしい、酔ったかな。増えてる気がするが」
いや、実際に増えている。‥‥まあ、今日くらいはいいだろう。
「そうそう、ツヴァイがあんたに会いたがってたぜよ。資金提供者に挨拶を、ってにゃあ」
「わかった。後で声をかけておこう」
こうして夜は更けていく。
夜の訪れと共に、どんちゃん騒ぎが収まり、代わりに静かな時が流れる。
夜が明ければ、また血で血を洗う日々が始まる。
吟遊詩人が静かに歌う。多少脚色混じりの希望の詩を。
虎の爪を沈めし 戦友と共に
虎の目を狩りし 青騎士は
羽を得たが如く 舞い上がり
メイの空を飛んだという
蒼い風となったという
いずこと知らぬ 青騎士は
今もカオスを 狩ると聞く
●終幕
「寒いな‥‥」
春とはいえ、夜は冷え込む。
誰かの呟きが天に消える中、湯気のたった鍋を持ってリアレスが現れた。
「ういいいいいん。皆さん、とっておきの宴会料理ですよ〜」
「ほお。鍋であるか」
酔いつぶれてない者達がぞろぞろと集まってくる。
「へぇ、おいしそうだね」
「天界で、桜の木の下で宴会をする際に必ず作られる由緒正しい料理だって、天界人のお友達が教えてくれたの」
「いったいなんの鍋なの?」
ティスの問いに、リアレスは笑顔で答えた
「その名も、『桜鍋』って言うんだよ〜」
「桜鍋か〜おいしそうだねぇ。‥‥あれ? 二人とも、どうしたの?」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
固まるアルフォンスと岩鉄斎は、そーっと『とある方向』を振り返る。
リアレスが連れてきたペットのノーマルホースがどこへ行ったか?
その行方は、誰も知らない。
ああ、大いなる勘違いの犠牲者に合掌。