●リプレイ本文
東雲八雲(eb8467)と大蔵南洋(ec0244)は寺田屋から大量の山鳥の焼肉を購入して老夫婦の下へやってきました。家の前ではラーズ・イスパル(eb3848)が李明華(ea4329)から肉の焼き方講習を受けています。
「これは随分おいしそうな匂いですね」
ラーズは自分の焼いた肉と匂い比べをしているようです。
「さらに美味にするために醤油も準備してあるぞ。念のため団扇も用意した」
「私は日本酒を持って来たぞ」
2人とも準備は万全のようです。
「ところで依頼人の夫婦は御在宅か?」
「はい。今東天殿、鳴滝殿、マーヤ殿と打ち合わせをされているようです」
ラーズは炭の様子を眺めつつ答えます。
「分かりました。ではおいしい肉を楽しみにしていますよ」
東天はラーズにねぎらいの言葉をかけ中に入っていきます。
「京都か、穏やかな都になれば綺麗なのに」
傍にいた李だけがラーズの言葉に「そうね」と答えたのでした。
東雲と大蔵が中に入るとちょうど東天旋風(eb5581)と鳴滝風流斎(eb7152)が席を立つところでした。
「おかえりなさい、お勤めご苦労様です」
東天が挨拶を済ませ、外へと出かけます。
「オークの動向など偵察に行ってくるでござる」
マーヤ・ウィズ(eb7343)は微笑で東天、鳴滝両名を送り出します。
「ところで首尾はどうだ?」
大蔵の言葉にマーヤの顔は再び引き締まります。
「近くに森があるらしいです。オークが5匹なのに対し私達の中で前衛に立てるのはラーズさん、東雲さん、大蔵さんの3名ですから各個撃破を狙うべきでしょうね。もっともオークが組織的に動くかどうかは分かりませんけど」
マーヤはモンスター知識を総動員させましたが、オークのことはわかりませんでした。
「逆に森がオークの棲家ということも考えられるな。藪蛇にならなきゃいいが」
依頼人の家を出た東天と鳴滝は子供達の集まっている広場と戦闘予定地の森を二手に分かれて偵察へと向かいます。
東天が広場、鳴滝が森へと向かいました。
広場ではイアンナ・ラジエル(eb7445)が子供達の世話と人数の確認をしています。
「イアンナさん、子供達の人数は大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。今日はまだオークはきていないですし」
泣いた子供をあやしながらイアンナは答えます。
「何かありましたらレザーさんに伝えてくれ。彼の駿馬の足は相当なものらしいからな」
レザー・エスペランサ(eb3556)は依頼人を始め、目撃者からオークの情報の聞き込みを行っています。今もこの近くにいることでしょう。
「分かりました。まだ子供達の生活の保障という根本的な問題は残っていますが、まずはオークという目の前の問題をかたずけないといけませんからね」
イアンナは子供達の隠れられそうな場所の確保と整理に向かうのでした。
一方森に向かった鳴滝は韋駄天の草履の性能を活かし、戦闘できそうな場所を見つけておいた。甲斐さくや(ea2482)も森の中を捜索してオークの住処らしい洞穴を見つけてきていた。
「一旦戻るでござる」
鳴滝が帰ろうとすると足音が聞こえてきました。枯れた草木を踏みしめる堂々とした足取り、鳴滝が耳をそばだてるとどうやら2体や3体じゃなさそうです。
鳴滝は足音を立てている者の確認、甲斐は東天のもとへと散っていきます。
甲斐から連絡を受けた東天は、そのまま甲斐に老夫婦の所にいる冒険者にも連絡を頼みます。その後子供達の整理をしていると鳴滝も戻ってきました。
「オークの襲撃か?」
東天は子供達を少人数ごとに何組かに分け移動の手はずを整えています。
「その通りでござる。数は5、体長は6尺5,6寸といったところでござろうか」
そこにちょうど聞き込みの終わったレジーもやってきます。今までの目撃からオークは斧と盾を装備しているようです。
「斧と盾でござるか‥拙者の1.4倍もあるのに厄介でござるな」
鳴滝はレジーに森で戦闘できそうな場所を伝え、老夫婦の家まで伝達を頼みます。
「では私達は早く子供達の誘導を行いましょう」
イアンナに前もって確保してもらっていた場所に子供達の誘導を行うのでした。
甲斐の話を受け、ラーズ、マーヤ、東雲、大蔵の4名は準備を始め、レジーの報告で出発しました。
ラーズは一通りマスターした肉の炭火焼を、マーヤは愛用のお茶を、東雲と大蔵は寺田屋やエチゴヤで購入していた山鳥の焼肉セットを携え広場へと向かいました。
広場では既に子供達が退避した後で冒険者以外には誰もいません。不気味なほどの静けさの中、足音だけが響き始めました。
「お客様の到着のようですね」
「歓迎できない客ですけどね」
「歓迎できないのであれば」
「帰ってもらうのみだ」
4人は戦闘ではなく先導準備を始めます。もちよった料理や飲み物をそれぞれ取り出し、客の到着を待ちます。
やがて大型の客5匹が御到着、犬のように鼻を引くつかせて涎を垂らしています。どうやら肉や酒の臭いにつられたようです。
団扇を盛大に扇いでいる大蔵の横で、マーヤの笑顔が引きつります。オークの群れがお茶に興味を示さないからです。
「オークにはお茶の素晴らしさが理解できないのですわね」
念のためインビジブルまで使っていたラーズは苦笑しますが、マーヤには見えませんでした。
4人は手はず通り森の方へとオークを連れて行きます。途中でマーヤは離脱、森へと先回りします。イアンナとも遭遇できたため簡単に情報交換を済ませ再び森へと向かいました。
イアンナに東天と鳴滝も合流、子供達に避難させている間に自立の手助けが出来るように鳴滝は簡単な罠の作成、設置の仕方を教えていました。
マーヤが森へと先行、ラーズ、東雲、大蔵がオークを誘導、オークの後方を東天、鳴滝、イアンナが続きます。
戦闘はマーヤのフォレストラビリンスを合図に開始しました。5匹の内4匹が見事に錯乱に陥りました。
抵抗した1匹はグラビティーキャノンの餌食となりました。転倒している間にラーズ、東雲、大蔵の3連撃であえなく昇天してしまいます。
「とりあえずは成功か」
同じ場所を右往左往している4匹のオークを見つつラーズは言いますが、顔は笑っていません。
「そうですね、ですがまだお茶を飲むには早そうですよ」
マーヤは次のオークに取り掛かります。
「違いない、住処もあるらしいしな」
「俺達の勝利は子供達の笑顔を取り戻したときだ」
マーヤに続き東雲、大蔵も攻撃を開始、2匹目も撃沈させます。
「問題ないですね、私達は住処の方を見てきます」
順調にオークを倒している様子を見て東天、鳴滝は次の行動へと移ります。
「では私も住処のほうにいきましょう。後方支援も必要でしょうし」
イアンナも東天、鳴滝に続きます。
オークの住処を事前に確認していた鳴滝が3人を案内します。
「この辺のはずでござる」
しばらくするとにぎやかな声が聞こえてきます。
「オークの言葉は分かりませんが、これは酒宴でしょうか?」
「まぁ間違いないでしょうね」
オークの住処である穴まで着いた3人はあまりの煩さに頭を痛めています。
「まずは先制攻撃といきましょうか」
穴めがけてイアンナはグラビティーキャノンを発射、穴の中は一瞬にして狂乱の宴と化しました。
そこに2発、3発とグラビティキャノンを連射、その後東天、鳴滝が突入しオークにスタンアタックを仕掛けます。
「どうやらお神酒も奪っていたようです。やはり酔っていたのでしょう」
「しかし子供には手出ししていなかったようでござるな。穴の中はオークと食料のみでござったよ」
3人がオーク5匹との戦闘場所まで戻ると、そちらも戦闘が終ったようです。
7人は揃って老夫婦の下へと戻ったのでした。
老夫婦の家では老夫婦の他に避難した子供達が待っていました。
「お帰りなさい、冒険者さん達」
「私達を救ってくれてありがとう」
冒険者の帰還を聞きつけた他の子供達も続々と集まってきました。
「活躍した話聞かせてよ」
「私も冒険者になれるでしょうか?」
そんな子供達の笑顔を見て、ラーズは自分達の守ったものを実感しました。
老夫婦の顔を認めたマーヤは2人に話しかけます。
「今回の件でお二人は罪の意識を感じられているのかもしれません。しかし行いが間違っているか等は受け取る側が決める事だと思いますわ。例え一時でも子供達は正月の気持ちをあじわえたのでしょう?オークが現れてもその行いは嬉しかったと思いますよ」
「そうですね、あなた方に頼んで正解でした」
そういうと夫婦は財布を取り出します。しかし何人かは辞退します。
加えてイアンナが提案します。
「少し子供の世話をしたいのですがよろしいでしょうか?奉公や小間使いとして口利きしてみたいと思うのですが」
「それはいいな」
東雲は思わず指を鳴らしました。
夫婦はもちろん他の冒険者も快く承諾。奉公や小間使いを希望する子供には礼儀作法を教え、狩猟など自立を求める子供には簡単な自衛方法や罠の設置の仕方を教えたのでした。