小鬼神風特攻隊

■ショートシナリオ


担当:八神太陽

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 55 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:01月25日〜01月30日

リプレイ公開日:2007年02月01日

●オープニング

 京都郊外の山麓の村で雪崩が確認されました、いや厳密には雪崩ではありません。
「雪玉だ、雪玉が襲ってくるぞ」
 10個ほどの雪玉が京都めがけて襲う、もとい転がってきます。
「段々大きくなっていくぞ」
 雪玉はあたりの雪を巻き込み、徐々に大きさを増しています。しかし通った経路が違うのか、大小ばらばらです。大きなものは直径10尺近くあります。小さなものでも6尺といったところでしょうか。
「ある意味雪崩より厄介かもしれんな」
 今まで雪崩には経験があるものの、無数の雪玉が襲ってきたという経験がないからです。
「それとも誰か雪合戦でもしているのか?」
 良く見ると雪玉達の群れの先には鎧を纏った小鬼がはしゃいでいます。
「奴らは俺達に雪合戦でも申し込むつもりなのか!!」
「返り討ちにしてやる!!」
 しばらくすると雪玉の後ろを走っていた鎧の小鬼が転倒、雪玉へと変化していきます。
「奴ら、特攻をしかけてきたのか。しかしなんとしてでも防いでみせる」
 小鬼+雪玉が坂の上から攻撃してくるのに対し、こちらは準備不足かつ人手不足です。
「至急京都に応援を頼め、こちらは壁を作り少しでも相手の勢いを殺してみせる」
 隊長と思しき人が部下に手短に説明します。
「わかりました。隊長も御無事で」
 部下は一心不乱で京の町へと向かうのでした。

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea2454 御堂 鼎(38歳・♀・武道家・人間・ジャパン)
 eb0334 太 丹(30歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 eb2284 アルバート・オズボーン(27歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb2483 南雲 紫(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb5249 磯城弥 魁厳(32歳・♂・忍者・河童・ジャパン)

●サポート参加者

テスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)/ 若宮 天鐘(eb2156)/ 小 丹(eb2235)/ 慧神 やゆよ(eb2295

●リプレイ本文

  冒険者が村に着くと同時に土壁の補強と敵の現在状況の把握(隙あらば強襲)に乗り出しました。今回は村はずれと言うこともありペット達もやる気です。
「まずは土壁を補強しましょう。木の棒の先を削って先を鋭くし、壁に固定しますね」
 月詠葵(ea0020)、ゼルス・ウィンディ(ea1661)、御堂鼎(ea2454)、太丹(eb0334)の4名が土壁補強に回ります。
「木を削るならこれっす、鬼神ノ小柄」
 4次元ポケットのようにバックパックから小柄を取り出す太丹、何者かに取り付かれたかのように棒を削っていきます。
 一方御堂は村人にかんじきを借りられないか尋ねています。
「足場が悪いからね、草履で戦えるかつつうの」
 寒いのか、手元にはどぶろくが置かれています。しかし作業には遅れがありません。
 やがて武装土壁が完成します。即興で作った割にはなかなかの出来です。
「質より量と思ってたけど、なかなかの出来だね」
「それじゃゼルスお願いね」
「早くお願いするっす、自分の両手両足にも限界がするっす」
 太丹は志願ではありますが身体を張って4人で削った棒を支えています。
「了解、少々お待ちを」
 ゼルスが懐からアイスコフィンの巻物を取り出し念じ始めます。すると土壁が端から一気に凍っていきます。
「太丹さん、手を離して大丈夫ですよ」
 ゼルスに言われて太丹が手を離します。触ったままだったので魔法抵抗をしてしまったのでしょう、巻き込まれたような感覚さえあります。
 その後4人は、村人からかんじきを借り受け、前線へと踊りだすのでした。
 
 一方偵察に向かった天城烈閃(ea0629)、アルバート・オズボーン(eb2284)、南雲紫(eb2483)、磯城弥魁厳(eb5249)はペットの背に乗り上空から接近を試みます。
「自らを雪玉としての強襲とは、小鬼にしては上手く考えたものだと感心する。もっとも、いつまでも好き勝手にさせる気はないがな」
 天城はロック鳥の背に乗り、一気に敵の中心を狙います。しかし同乗者の南雲はまだ剣を抜かずに助言します。
「でも足元には気をつけてね、私達も雪玉になってしまうよ」
 まだかんじきを借り受けていない偵察組は下手をすると小鬼と一緒に雪玉入りにされます。
「では役割分担といこう。私と磯城弥で数を減らしにかかるから、そちらは中央で組織系統のかく乱を頼む」
 アルバートの提案に天城、南雲は了承。磯城弥も同意はしましたが、一抹の不安はぬぐえません。
「雪玉と化した小鬼どもに方向感覚や指示に従う能力があるのでございましょうか?」
 それには誰も答えられませんでした。

「派手にやっているようですね」
 ゼルスは思わず声を上げます。山のふもとからでもロック鳥と2匹のグリフォンの縦横無尽に飛び交う様ははっきりと見えます。
「うちらもペットに遅れをとってはいられないねぇ」
 御堂は口に含んだどぶろくを愛用の斧に拭きかけ清めます。
「そうっすよ。自分の合体魔法の出番っす」
 太丹は右手にホーリーナックル、左手にホーリーナックルを装備しますが合体魔法は発動しません。どうやら第3の目が足りないのでしょう。いそいそと槍に持ち替えます。
「合体魔法はともかく、かんじきとは合体しませんとね」
 月詠は偵察組4人分のかんじきを抱えています。これから磯城弥と合流する予定です。
 しばらくすると鳴弦の弓の音と高速で迫るグリフォン、そしてそれを追いかけるように雪玉が迫ってきます。
「来たようですね」
 ゼルスの言葉にゼルス、御堂、太丹は構え、月詠は坂を全力で疾走します。そしてグリフォンとの間合いを計りながら月詠は跳躍、磯城弥が無事受け止めました。
「よろしいでしょうか」
「はい、いきましょう」
 グリフォンは再び坂の上へと疾走します。
「上をよろしく頼むねぇ」
 御堂の言葉に月詠は手を振って答えるのでした。

「せっかくの雪景色がもったいないですね」
 白い絨毯の上に無数の溝ができてしまっています。
「美しい世界を取り戻すためにも早く敵を倒すのでございましょう」
 グリフォンの背に乗りながら月詠と磯城弥がそんな会話をしているとアルバートがペットのグリフォン、塗坊と連携をとりつつ皆で作った土壁から外れそうになった雪玉を破壊していきます。
「かんじきです、お使い下さい」
「ありがたい」
 月詠がかんじきを投げるとアルバートは見事キャッチ、すぐに装着します。
「これで随分楽になったぞ」
 アルバートはグリフォンから降り、さっそくかんじきを試します。初めて使うかんじきですが、持ち前の運動神経の良さですぐにコツをマスターしました。
「それではよろしく頼みます」
 アルバートは再び塗坊が受け止めた雪玉を破壊しつつ応えました。

「次は敵の中心でございますな」
 敵の中心では天城と南雲が戦っています。苦戦とまではいかないもののやはり雪に足をとられているようです。上空ではロック鳥とスモールホルスがどことなく楽しげに飛んでいます。
「お二方かんじきです、お使い下さい」
 月詠の投げたかんじきを天城、南雲もキャッチ。すぐに装着します。
「これで形勢逆転だ」
「そしてオサラバね」
 天城のシューティングPAが大将と思われる小鬼戦士の鎧の隙間に命中、敵の動きが一瞬止まったところに抜刀している南雲の刹華が炸裂しました。次の瞬間には首と胴が切り離されています。
「あとは掃討戦だけね」
 8人は今だ転がり続ける雪玉を殲滅していくのでした。 

「上のほうは片付いたみたいですね」
 グリフォンの鳴き声が聞こえます。勝ち鬨のようです。
「それじゃ後片付けといきますか」
 ウインドスラッシュが雪を切り裂き、金時の鉞が小鬼を捕らえ、十字鎌槍が小鬼を飛ばします。
「そ〜らを自由には飛べないっすけど♪はい飛んでくっす!」
 太丹は雪かきでもしているかのように小鬼を投げ飛ばしていきます。
 転がってくるものの中には黒こげの小鬼戦士もいました。おそらくエシュロンのファイアーウォールを進行方向上に縦に詠唱されたのでしょう。
「みごとな丸焼きですね。景色を壊した罰ですわ」
 ゼルスのララディに誘導され、スモールシェルドラゴンに受け止められた小鬼戦士は白目をむいたまま絶命しています。

 やがて上のほうから偵察強襲隊も帰ってきます。念のため小鬼や小鬼戦士の死体も持ち帰っています。
「放置するのが汚らわしいということもあるが、見せしめにも使えるかと思ってな」
 グリフォンの背から降りつつ、アルバートは答えます。
 念のため全員で生死を確認、敵はすべて絶命していました。
「小鬼相手となると手加減するのも難しいですね」
 ゼルスは少々残念そうですが、こればかりは仕方ありません。
 その後冒険者達は村へ招き入れられました。
 
 その日の夜、村長の家でささやかながら宴会が開かれました。
「このたびはありがとうございました」
 村の村長と警備隊隊長が謝辞を述べます。
「大変申し訳ないのですが、あと2つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
 村長は言いにくそうにしています。南雲が話しを促しました。
「なんだいなんだい、酒の席でそんな顔をするもんじゃないよ」
 刀を納めているためか南雲は落ち着いています。そんな彼女の様子を見て村長も話しを続けました。
「まず1つ目ですが、今回の1件は村の者には内密でお願いしたいのです」
 冒険者達は納得しました。たかが小鬼といえど雪玉で強襲されたと民に余計な不安を与えたくは無いのでしょう。
「分かりました。あの土壁もとい氷壁があれば大丈夫でしょう」
 ゼルスは自ら唱えたアイスコフィンの強度に自信を持っています。1つ目の願いを聞き入れることにしました。
「もう1つの願いというのは何でございましょうか?」
 1つ目があまり難しい内容ではなかったため、次の願いの話に移ります。
「もうひとつは整地をお願いしたいのです」
 隊長が言います。しかし整地という表現はピンと来ません。
「整地とは?」
 天城が聞き返します。
「今回の件で雪が随分と偏ってしまいました。これでは雪崩が起きる可能性があるのです」
 冒険者達も納得しました。確かに雪崩があっては元も子もありません。
「なるほど、それは重要っす。了解したっす」
 太丹が即答します。月詠、御堂も答えました。
「雪崩が起こったら確かに問題ですしね」
「もう一暴れできるのなら喜んで」
 思案顔だったアルバートも了解しました。
「雪の下を小鬼どもの墓標にするか」
 こうしてペットも総出で雪山を整地。その後、村名物の鍋で冒険者達は冷えた身体を温めたのでした。