武器、ポイ捨て禁止!!

■ショートシナリオ


担当:八神太陽

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 50 C

参加人数:5人

サポート参加人数:2人

冒険期間:02月12日〜02月17日

リプレイ公開日:2007年02月13日

●オープニング

 京都近隣の山の中、1人の男が住んでいました。名を憲三といいます。一流の鍛冶師を目指し冬の山の中に篭って日夜刀を鍛えていました。しかしなかなか思ったようなものはできません。なぜ自分にはいい武器が出来ないのか不満が溜まるばかりでした。
 ある日、憲三は手持ちの鉄が無くなった事に気付きました。使ってばかりなので無くなるのは仕方ないことです。そこで今までつくった刀を溶かそうとしました。
「おかしいな、この辺においといたのに」
 憲三の使っている山小屋は狭かったため、作った刀を保存できるような場所はありません。そこで外においていました。しかし今朝見ると無くなっているのでした。
「仕方ないか、一度町に下りるとしよう」
 こうして憲三は町へと一度戻ることにしました。
 3日後憲三は小屋に戻ってきました。せっかくですので鉄の他、食料等も買い込んで来ています。
 しかし小屋の付近で足跡を見つけます。雪が積もっていたため足跡がくっきりと残っていました。5,6人はいるでしょうか。
 憲三が窓から小屋の様子を覗くと中には熊鬼闘士の姿があります。しかも憲三が作った剣を装備しています。
「出来損ないの剣をモンスターに使われるなんて・・」
 小屋が奪われたことよりショックを受けたのでした。

●今回の参加者

 ea3610 ベェリー・ルルー(16歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea9700 楠木 礼子(40歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2408 眞薙 京一朗(38歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb3837 レナーテ・シュルツ(29歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

アル・アジット(ea8750)/ ビズ・ドノフ(eb0666

●リプレイ本文

「まずは現状確認と行きましょうか」
 冒険者達は小屋を視界に入れつつも木の陰に隠れていました。まずは宿奈芳純(eb5475)がテレスコープで状況の確認を行います。
「どうです?」
 楠木礼子(ea9700)が尋ねます。それに対し、宿奈は首を傾げてます。
「ちょっと数が多いですね。小屋の外に2匹、中に6匹の熊鬼戦士を確認。武器は‥全員所持してる模様です」
「5,6体という話ではなかったか?」 
 眞薙京一朗(eb2408)は思わず憲三を見ます。憲三はそばで小さくなっていました。
「雪が振る前に来てたのかもしれないよ〜。あるいは僕みたいに飛んだのかも〜」
 ベェリー・ルルー(ea3610)は眞薙の目の前まで飛び、華麗に1回転を決めます。
「熊鬼闘士は飛びませんよ」
 レナーテ・シュルツ(eb3837)は言いますが、ベェリーには気にした様子がありません。
「熊鬼だって、熊鬼闘士だって飛んでもいいじゃない〜。憲三ちゃんの刀で飛べるようになるかもしれないよ〜?」
 そんなことが出来たら超一流の鍛冶師です。憲三はベェリーの言葉に一瞬妄想の世界までトリップしてしまいました。
「いつか、僕も、きっと、そんな、刀を〜えへへ」
 見かねた楠木が憲三にでこぴん、現実世界へと連れ戻します。
「まずは刀を取り戻すのでしょう。刀に使えるような質の良い鉄を外に放り出すのはもったいないのじゃないかしら。錆びたらすごく拙いでしょうし。ま、優れた職人は優れた道具を使うという話だし、経済的にも意識の上でも覚悟を決めて建て増しするなり保管用の小屋でも建てたらどうかしら」
 我に返った憲三は、再び小さくなっていきます。そして更に小さな声で「はい、ごめんなさい」を繰り返しています。
「お説教はまた後にしましょう。私も言いたいことはありますし。まずは熊鬼闘士の中でも2体ほど大きなものがいます、それがリーダー格でしょう。その2体に話をつけてきます」
 宿奈はバックパックを担いで小屋に近づきます。
「私達も行きましょう。戦闘になる可能性もありますし」
 冒険者達はピクニックに行くような一部雰囲気を醸し出しつつも小屋を目指すのでした。

「‥というわけです。食料と毛布を渡しますので刀を返してもらえませんか?」
「そんなの置いて仲良く楽しもうよ〜」
 宿奈とベェリーが交渉を始めて早半刻が経過しようとしています。しかし2人は粘り強く交渉を続けていました。
 一方、近くの木陰では他の3人と憲三が宿奈とベェリーを応援しています。
「よくあれだけ交渉できますね・・」
「あなたのためでしょうが」
 憲三の発言に再び楠木はツッコミを入れます。しかし入れながらも自分では出来るだろうかと自問自答します。正直即答できることではありませんでした。
「しかしあながち的外れな発言でもなさそうだ。ベェリーは空に逃げることもできるが宿奈は完全な丸腰だからな」
 眞薙は言います。その目は純粋に関心しているようでした。
「動きがありましたよ」
 固唾を呑んで見守る3人の前で宿奈は自分のバックパックの中から大量の毛布と保存食を取り出します。そしてそれらを地面に置き、2人はその場から離れていきました。
 熊鬼闘士はしばらく2体で相談しているようでしたが、ほどなくして1体が小屋に戻り日本刀8本を携えて戻ってきました。

「これでいいか」
 熊鬼闘士2体は日本刀8本を持ったまま前進、毛布と保存食の置かれた所までやってきます。2体の内1体はしばらく保存食の中身を確かめるように匂いをかいだり、手にとって中身を確認したりしています。また残りの1体は、この隙に襲ってこないように宿奈とベェリーから目を離さないでいます。
 やがて2体は手にしていた日本刀を8本とも地面に突き刺し、空いた手で保存食と毛布を持って去っていくのでした。

「お疲れ様です」
 熊鬼闘士8体が出て行くのを確認した後、レナーテは宿奈とベェリーに労いの言葉をかけました。
「結構理解のある熊鬼さんたちでしたよ〜」
「そうですね。そのせいで保存食の数など細かいところの条件がいろいろと問題になりましたが、無事成功して何よりです」
 交渉役だった2人もようやく安堵の表情に包まれます。しかしベェリーはなぜだかうずうずしています。
「宿奈さんの仮面の下が気になるのです〜」
 声には出しませんが、何度も宿奈の方を見返しています。一方、宿奈はその視線に気付きながらも黙殺していました。
「まずは小屋の中で一息つきませんか?汚い所ですが」
 憲三が冒険者達を案内します。冒険者達は憲三の従われるまま小屋へと入っていきました。

 そこは戦場の後のようでした。食べ物のくずがあちこちに飛び散り、酒瓶が至る所に散乱し、獣の毛が所狭しと広がっています。とても休憩どころではありません。
「えーっと、あはは」
 憲三は思わず頭をかきむしります。
「まずは掃除、だな」
 いつの間にか箒を手にして眞薙がくずや毛を集め始めていました。それに真似て皆で掃除を始めます。
「掃除の依頼なんて初めてです〜」
「事後処理ということにしておきましょう。まずは髪をまとめておかないといけませんね」
 いろいろと言いたいことがありながらも冒険者達は小屋を片付けていきます。この様子を見ていた憲三は改めて感心してしまいました。
「みなさん、ありがとうございます。ついでに保管小屋も作ってくれませんか?」
「調子に乗るな」
 再び楠木が見事なツッコミを決めたのでした。
 
 その頃、熊鬼闘士達は手にした毛布で身を包み、保存食を貪っていました。始めは腹が満たされていくことに満足を感じていた彼らでしたが、やがてリーダー書くの2体があることに気付きました。
「あの人間を倒せば、さっきの武器と食料が手に入るんじゃないか?」
 リーダー格2体がお互いの意思を確認します。そして行動へと移しました。 

 始めに異変を感じたのは眞薙でした。小屋の窓見える景色に異変を感じたのです。
「どうしたの〜」
「何か獣のようなものなものが見えたもので」
 憲三だけはのんきなもので「ウサギか何かでしょう」と言っていますが、冒険者達は警戒を緩めません。
「先ほどの熊鬼闘士かもしれません」
 眞薙は冷たくも言い放ちました。
「そんな」
 憲三はへなへなとその場に倒れこみます。しかしレナーテがそっと元気付けます。
「第一目標だった日本刀は取り戻したのです。戦うにしても遠慮なく戦えますよ」
「そうですね。今度の目標は味を占めた保存食を奪うことか、この小屋が寂しくなったかのどちらかでしょう」
 宿奈は言うと同時に小屋を出ます。それに他の冒険者も続きます。
「この小屋を破壊されたらどうしようもないしね」
 楠木の頭の中にはこのまま小屋で待ち構えて、逆に奇襲をかけるという案も浮かんではいました。しかし、小屋が壊される可能性が高いため自ら破棄しました。
「でも何人かは小屋に残ったほうがいいんじゃない〜?陽動かもしれないし〜」
 ベェリーの意見も最もなので、宿奈とレナーテが小屋の外に出ることにしました。

 熊鬼闘士はこちらの予想通り2手に分かれて襲撃してきました。1匹は表から、もう1匹は裏口からです。しかし冒険者達の方が読みは上でした。
「交渉破棄なんて、外道のする道ですよ」
 自慢の髪が風になびいた瞬間、熊鬼闘士の左腕がレナーテのオーラパワーを纏う剣によって切り飛ばされていました。
「これは契約違反の罰というものです」
 レナーテの攻撃の間に宿奈は詠唱を完了、ムーンアローで急所を狙います。しかし、まだ熊鬼闘士は諦めません。レナーテめがけ残った右腕で攻撃してきます。
「さすがです。しかし甘い」
 熊鬼闘士の攻撃をオーラシールドで受け止め、そのままスマッシュEXでカウンターを繰り出します。熊鬼闘士は重傷、その場に倒れこみました。宿奈が念のためスリープをかけ、ロープで縛った上で2人は小屋へと向かいました。

 一方、小屋ではあらかじめ襲撃をよんでいたベェリーがシャドーフィールドで熊鬼闘士の視覚を奪うことに成功していました。あとは楠木の日本刀二刀流によるダブルアタックと眞薙の太刀によるバーストアタックの前には熊鬼闘士もなす術がありませんでした。
「こんなものかしら」
「こんなものだな」
 そう言って楠木と眞薙は辺りを見回します。小屋自体に影響は出てないものの、再び掃除することは免れないようです。
「1日2回も掃除する任務なんて初めてですよ〜」
 ベェリーが嘆いているところにレナーテと宿奈が帰ってきます。戦闘が終っていることに安心したものの、再び散らかった部屋を見て頭痛を覚えたのでした。

「ちゃんと保管用の小屋作るんだよ」
 掃除も終え、ささやかながら宴会での事、冒険者達はいろいろと憲三に注意していました。
「そうですよ。日本刀って店で売られてるのは高いんですよね。失敗作でも自分で作ったものは、大事にすべきかと」
 憲三は徐々に小さくなっていきます。そこにベェリーが杯を持って憲三に近づいてきます。
「お酒でも飲んで元気だしなよ〜。この銀世界も何だか寂しくみえちゃじゃないか〜」
 6人は任務の成功と美しい銀世界に乾杯したのでした。