河童の瞳が恋してる

■ショートシナリオ


担当:八神太陽

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:02月23日〜02月28日

リプレイ公開日:2007年02月28日

●オープニング

 ある晴れた日のことでした。河童の花子は天気が良かったため日向ぼっこをしていたのです。陽気なお天気、風に流れる雲、冬にもかかわらずぽかぽかと暖かい気温。三拍子揃った日向ぼっこ日和に花子はノックアウト、いつの間にか眠ってしまっていました。

「もう食べられません〜」
 その時花子は寝返りを打ち、頭を石にぶつけてしまいました。その拍子で目が覚めてしまいます。その時、辺りはすでに暗くなり始めていました。
「これはひょっとしてまずいのではないのでしょうか」
 多分拙いのでしょう、彼女は走って棲家に戻ろうとします。しかしうまく身体が言うことを聞いてくれません。
「まさか私の美貌をねたんで、誰かが毒を盛ったとか・・」
 真剣に考えますが、寝ている間に何かを食べた記憶はありません。夢の中でなら満腹になったのですが、現実ではお腹が鳴っています。
「となると、誰かの呪い?美人はつらいのですね」
 人ではないので美河童と呼ぶべきでしょうが、ここでは誰もツッコんでくれません。
「真面目な話、何だか調子がおかしいですね」
 花子は髪を触ります。すると皿が乾燥をはじめているではありませんか。
「なんですとー誰かが私を殺そうとしているのでございますね」
 花子は水場へ猛ダッシュ。しかし足元フラフラ、目元もフラフラ、水場が離れていくようにさえ感じます。
「水〜誰か水を〜」
 花子の意識はそこで途切れました。

 次に気付いた時、花子はすっかり元気になっていました。
「これが天国でございますか、暗くて殺風景なところですな」
 花子が起き上がると、頭から全身に水をかけられました。いくら今日が天気が良かったとはいえ、夜は冷え込みます。水をかけられれば寒さは倍増、花子の怒りも倍増です。
「こぅらぁ〜誰が水かけとんじゃい?」
 何故か妙な訛り言葉で花子は水をかけた奴を探します。するとすぐ背後から声がしました。
「それだけ元気があればもう大丈夫だな」
 声をかけたのは男でした。身長は6尺強、痩せ型で凛々しい顔立ち。帯刀していますが、身なりが粗末なところをみると浪人とみるべきでしょうか。
「私に何をした!!」
「見てのとおり水をかけただけだ。寒い思いさせてすまなかったな」
 去っていく男の背中を眺め、花子は全てを悟りました。この男が私を救ってくれたと、命の恩人だと、そして愛すべき人だと。
「ま、まってください。せめてお名前を・・」
「名乗るほどの者じゃないさ。高雅、いくぞ」
 男はペットのグリフォンに呼びかけ、跨ります。そして名乗ることなく去っていくのでした。
「あぁ、待って。残された私は何をすればいいの・・」
 花子は腕を伸ばしますが、男に届くはずがありません。小さくなっていく背中をただ延々を見守り続けるのでした。 

●今回の参加者

 ea2480 グラス・ライン(13歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 ea2557 南天 輝(44歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3827 ウォル・レヴィン(19歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea9507 クゥエヘリ・ライ(35歳・♀・レンジャー・エルフ・インドゥーラ国)
 eb2196 八城 兵衛(39歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb3556 レジー・エスペランサ(31歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ec0997 志摩 千歳(36歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)

●サポート参加者

陸堂 明士郎(eb0712

●リプレイ本文

 それぞれが自分の考えのもと情報収集に向かう中、南天輝(ea2557)と志摩千歳(ec0997)は花子に激励の言葉をかけて行きました。
「クスッ、俺のような奴が他にもいようとはな。俺は応援するぜ、そうだな恋愛成就のお守りをやろう。直には恋人にはなれないかも知れないがお守りで勇気を得られるだろ」
 恋愛成就のお守りとともに残してくれた南天の言葉、花子はお守りを握り締めながら任務の成功を祈ります。
 一方、志摩は花子に自分の姿を写しています。
「そう、ただ黙って待っているだけでは幸せはやってきませんわ!花子さん、恋はどんな結果が待っているとしても進まなくてはなりません!そうでないと・・ふふ、うふふふふ・・あの裏切り者・・駆落ちしようって約束・・・・」
 志摩の二の舞にだけはなりたくない、花子は密かに決心するのでした。

「グリフォンですか?」
 レジー・エスペランサ(eb3556)は江戸へと向かう道中にある1軒の茶屋に入りました。
「あとお団子と水貰えるか?ヒューベリオンにも飲ませたいので桶でもらえるとありがたいが」
 レジーの横ではペットの駿馬が手持ち無沙汰そうに歩いています。
「それは構いませんが・・グリフォンって何です?」
 レジーは自分の失態に気付きました。グリフォンはまだペットとしても珍しい生き物、冒険者でもないものが見ることはまだまだ少ないでしょう。その上名前まで知っている一般人は数える程度にしか居ないかもしれません。
「前半身が鷲で後ろ半身が獅子の生き物なんだが」
「何かの妖怪です?」
 予想通りの返答が返ってきました。悩むレジー、そんなところに神の使いかグラス・ライン(ea2480)とクゥエヘリ・ライ(ea9507)が1頭の白馬にまたがってきます。
「助かった、グリフォンの説明をしてもらえるか?」
 グラスとクゥエヘリは思わず顔を見合わせます。次の瞬間忍び笑いを始めました。
「人の顔を見て笑うとは失礼だな」
 レジーは怒りますが、クゥエヘリはグラスの微笑みを見続けています。一方グラスは上空に向かって手をたたきました。するとペットのヒポグリフ志姫が降りてきます。
「実は私達もグリフォンを知らないと言われて志姫に助けてもらっているのよ」
 今日1日上空に舞ったり降りたりの繰り返しで志姫は多少機嫌が悪そうです。着地に砂煙を上げてしまいました。
「志姫〜もうちょっとだから辛抱して〜」
 グラスが志姫に抱きついてあやします。いきなりのヒポグリフの登場に茶娘は驚いていましたが、グラスが抱きついたのを見て多少安心したようです。
「あれが・・グリフォン・・」
「本当はちょっと違うのだが、似たような生物だ」
 レジーはグリフォンとヒポグリフの説明を敢えて省きます。それでも茶娘は何か思い当たるものがあったのか軽く手を叩きました。
「ではグリフォンという生き物も空を飛ぶんですね」
「そうね、見ての通りよ」
 レザーに代わりクゥエヘリが答えます。
「早そうですね」
「早いわよ、ね?」
 クゥエヘリはグラスを見ます。グラスはクゥエヘリに頼られたのが嬉しいのか笑顔で大きく頷きます。
「でしたら私が見てなくとも仕方ないですよね」
 レザーは思わず天を見上げます。クゥエヘリは溜め息をつきました。
「とりあえずお団子お持ちしますね」
「追加であと2つ宜しく」
 レザーの言葉を受け茶娘は笑顔で店に入るのでした。

 八城兵衛(eb2196)は街道筋の宿屋を中心に聞き込みをしていました。冒険者を相手にすることもあってかグリフォンの名前ぐらいは聞いたことがあるようです。しかし見たという話はありませんでした。
「となると空を飛んで行ったのか・・」
 そうなると手がかりが少なくなります。少しでも手がかりが無いものかと高台に上りますが、グリフォンらしき影は見当たりませんでした。
「やはり遠くへ行ったか・・となると辛いな」
 そこでふと気付きます。グリフォンの飛んだ方向に江戸の町があることを。
「江戸に用があるとは限らんが、立ち寄った可能性なら十分あるな」
 八城はひとまず街道での情報収集組と合流し、江戸へと向かいました。

「一番の手がかりはグリフォンだな。名前も分かっているし、何とかなるだろ」
 ウォル・レヴィン(ea3827)は気楽に言います。見つけてからの大変さに気がついていないのでしょう。冒険者だと当たりを付け、ギルドに駆けつけました。
「高雅という名のグリフォンを知らないか?多分この近くに住んでいると思うのだが」
 ギルドに着くや否や受付に尋ねます。受付はしばらく考えた上、他の職員とも聞いて答えます。
「名前はわかりませんが、グリフォンに乗って京都から度々やってくる浪人が居るそうです。江戸に用事があるようですよ」
 となると江戸にまだ居る可能性がある、ウォルはグリフォンを預かっている店を探すことにしました。

 八城の元に1通の手紙が届きます。サポートの陸堂明士郎(eb0712)からのシフール便です。
「何が書いてあります?」
 後から追いついた志摩と南天が覗き込みます。
「目的と思われる男は江戸の酒屋を回っているとのことだ。何でも新しい酒の宣伝をしているらしい」
「他には?」
「それ以外は書いてないな。名前がわかればありがたかったが仕方ないな」
 とはいうものの1歩前進に違いはありません。とりあえず酒屋を回れば見つかる可能性はあります。
「ライ、今度はお酒屋さん回るん?」
「そうね、でもお酒飲んじゃダメよ」
「なんでなん?」
「大人になればわかるよ」
 グラスは納得していないようですがクゥエヘリは微笑んでいます。
「ところで花子は酒が飲めるのか?」
 レジーが全員に問いかけます。酒が飲めればこちらも一歩前進ですが、それには誰も答えられませんでした。

 冒険者ギルドで確実な情報が得られなかったウォルは次にエチゴヤへと向かいます。江戸において冒険者ギルドについで冒険者の情報が集まる場所といえるでしょう。
 ウォルはいつも通りに店に入り、辺りに聞こえる程度の声でグリフォンの餌などの話を聞きます。店員は不審な顔をしますが、ウォルは当たりを釣り上げたようです。
「あんたもグリフォン飼って居るのか。良かったら狩場を教えて貰えるか?」
「いいよ。俺はウォル、グリフォンの方はクレスって名前だ」
「いい名だな。俺は高崎総一郎、グリフォンは高雅だ」
 ウォルは心の中でガッツポーズをしました。

 2人はグリフォン談義に花を咲かせます。そして徐々に仲間が集まってきました。
「江戸にはどんな用なんだ?」
「京都の方で新しい酒蔵が出来たんだ、それの紹介だな。グリフォンで持ってきた。飲むか?」
「わざわざグリフォンで持ってこなくとも遷移の腕輪を使えば楽だろうに」
 杯を受け取りつつウォルが尋ねます。他の冒険者も耳をそばだてます。答え次第では遠距離恋愛となりかねません。
「運ぶ途中で揺れるのが酒にとっていいらしいんだ。遷移の腕輪をもってないのは事実だがな」
 高橋は笑います。しかしウォルは笑う気にはなれませんでした。最後の希望をかけて高橋に問います。
「その酒蔵は君1人でやっているのではないだろう?奥さんとでもやっているのか」
 冒険者7人の心が一致します。全員でNOの返事を祈ります。
「俺は独り身だよ。でなきゃ江戸京都の往復なんて仕事なんてできんよ」
「やったぁ」
 グラスが思わずガッツポーズをします。高橋は驚いてグラスを見ますが、クゥエヘリが機転を利かせます。
「まだ任務の途中でしょ。喜ぶのは終ってからよ」
 グラスはクゥエヘリに連れられ退店、クゥエヘリはウォルとアイコンタクトを交わして退店しました。

 クゥエヘリはエチゴヤを出た後、グラスとともに駿馬の白を飛ばして花子の下へ向かいました。
「ひとまず目的の人の名前はわかったわ。高橋総一郎さんよ」
「ちなみに独身さんや。問題は京都住まいってことやけど」
「京都・・」
 花子は考え込んでいるようです。その間にクゥエヘリはグラスに白の面倒を見てくれるように頼みました。
「うち等、エルフには他種族と契って忌み子として種族的には酷い目にあっている人も多いんですよ。異種族と付き合うのは相手にもかなり勇気の必要な行為だと思いますわ。遠距離恋愛ということもあります。よく考えてくださいね」
 しばらくして八城、レジーをつれてグラスが戻ってきました。
「グリフォンの餌の狩場を案内するということでウォルさんが高橋さんを連れ出そうとしている」
「ここから北に1里と行ったところだ。花子、どうする?」
 花子は目を閉じて考えています。喉から搾り出すように声を出します。
「しばらく考えさせて下さい」
「もうすぐ南天さんと志摩さんが来ます。それが移動の合図です」

「なるほど悪くない」
 グリフォンの背に跨りながら高橋は満足そうに言います。
「だが近くに河童の住む場所があるらしい。それだけは気をつけろよ」
「河童か・・」
 高橋は河童という言葉に反応します。
「そういえば江戸に来る途中河童を1人助けたよ。気持ちよさそうに寝ていたな」
 ウォルは好機と見てついに本題を切り出します。
「その河童が君に会いたがっている。京都に戻る前に一度会ってはくれないか?」
 一度ウォルの方を見て高橋は溜め息をつきます。
「・・そういうことか。まぁ今回はウォルの顔を立てよう」
 2人は予定地まで向かいました。

 予定地では花子が1人お守りを握り締めて立っています。
 高橋はグリフォンの背を降り、待機させます。皆が2人の言動に注目しました。
 高橋はおもむろに杯を取り出します。
「飲めるか?」
「多少なら・・」
「せっかくだから君の意見も聞きたい。河童の味覚に合った酒も面白そうだ」
 冒険者達は複雑そうな顔をしますが、花子は嬉しそうです。
「あとはお二人の問題よ。頑張って行って下さいね」
 とりあえず一歩前進の二人の仲に志摩が言葉を贈ったのでした。