ドキッ!!ふんどしだらけの寒中水泳大会

■ショートシナリオ


担当:八神太陽

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 55 C

参加人数:4人

サポート参加人数:1人

冒険期間:02月25日〜03月02日

リプレイ公開日:2007年03月03日

●オープニング

 居並ぶ男達、眼前に見据えるは鴨川の流れ、身を切り裂く北風、己を守るは布一枚。
「ふんどしこそ男の象徴、寒中水泳こそ冬の華ではありませんか」
 男はギルドの受付で1人熱く語っています。
「真剣勝負に横槍は不要、不正行為等はもっての他。あなただってそう思うでしょう?」
 受付嬢はかなりひいています。しかし男はますますノリ始めました。
「はじけ飛ぶ水飛沫、白熱するデッドヒート、汗握る展開、最高じゃないですか」
 ついに男は受付の机に足を乗せ、身を乗り出しました。受付嬢は逃走準備を始めます。
「そこで冒険者の方々に警備をお願いしたいのですよ」
 男はやっと声のトーンを落とし、今まで中を彷徨っていた視線を受付嬢に戻します。受付嬢もプロ根性を見せ、即座に笑顔で返します。
「寒中水泳大会の警備ですね。主に不正行為をしないように監視するということでよろしいでしょうか?」
「そうですね。あと観客の乱入も防いで欲しいのですよ。前回は酔っ払いの親父や泳ぎ自慢の河童が途中参加しようとして騒動になってしまいました」
 受付嬢は男を刺激しないように相槌を打ちます。
「おーっと申し送れました。私、実行委員長を務めさせていただいております柳助六と申します。以後お見知りおきを」
 柳は仰々しく頭を下げ、颯爽とギルドを去っていくのでした。

●今回の参加者

 ea0321 天城 月夜(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4141 鷹波 穂狼(36歳・♀・志士・ジャイアント・ジャパン)
 ea6264 アイーダ・ノースフィールド(40歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb5249 磯城弥 魁厳(32歳・♂・忍者・河童・ジャパン)

●サポート参加者

リリル・シージェニ(ea7119

●リプレイ本文

「みなさま、本日はお日柄もよく・・」
「どこがいいんだよ!」
 柳の開会スピーチに速攻の野次が飛びます。風が強く雪が降っているので当然かもしれません。
「鴨川の水も皆さんのふんどし姿を称えているようでございます」
「単に風で水面が揺れているだけだけどな」
 鷹波穂狼(ea4141)は既に警備艇に乗り込み、棄権者用の汁物を作っています。隣では磯城弥魁厳(eb5249)が準備運動をしながら羨ましそうに見つめていました。
「旨そうじゃのう。仕事が終ったらいただきたいものじゃ」
「余ったらな。主賓は参加者達だし」
 長い主催者挨拶を終え、注意事項へと話が進みます。
「不正行為は厳禁です。魔法は自分を対象とし、自分を強化するもののみ使用可能です。もし不正使用者がいればこうなります」
 柳が懐からふんどしを取り出します。すると風を切る音が聞こえ、矢が飛んできました。矢は見事ふんどしに命中、そしてばらばらにしてしまいます。
「私の腕前はご覧のとおり。怪我をさせるつもりは無いから安心して。けど、褌やお皿が壊れても文句は言わせないわよ。『褌クラッシャー』という称号を聞けば、ただの脅しじゃないって分かってもらえるかしら?」
 アイーダ・ノースフィールド(ea6264)が姿を現します。褌からの距離は30丈、この距離から褌のみを正確に射抜く正確性に選手達は感心するやら恐怖するやら様々な様子を見せます。
「他にも空と水上からも監視してもらいます。不正もですが、棄権する人も申し出てください」
 ペットのペガサス、白夜に跨り天城月夜(ea0321)は手を振ります。初めてペガサスを見た人も多いのか、観客からは歓声が上がります。しかし天城がチェーンホイップを取り出すと、選手達がひきます。
「別に皆さんに危害を加えるつもりは無いので心配ござらんよ」
 そう言うと、選手達も多少安心したようです。
「だっらしないねぇ。たかが鎖の鞭ぐらいに一喜一憂してどうするんじゃん」
 鷹波が選手達に檄を飛ばします。
「もしやばかったら言うんだぜ。俺特性の汁喰わせてやっからよ」
 選手達から歓声が上がります。
「厳禁なものじゃ。人間の本能かもしれんがの」
 まもなくスタートの時間となります。

 選手達が半纏などを脱ぎ始めて、褌をあらわにします。観客も空気を感じたのか静まり始めました。
 選手達がスタート位置に並びます。柳が一歩前へ、手には笛を持っています。
「それでは開始です」
 柳の笛と同時に選手達が泳ぎ始めます。しかし1人だけ何かの立ったままです。
「魔法かしら?」
 4人とも疑問に思いましたが、一部の魔法は使用が許可されています。競技の展開を見守ることにしました。
「なんだ、あれは〜」
 初めに叫んだのは観客でした。4人が振り向くと、先ほど詠唱していた参加者が褌を風になびかせ水の上を走っているではありませんか。
「ウォーターウォーキングですか」
「選手が水の上を走っております。これでは寒中水泳になりません」
 どうやら実況も兼ねている柳が反則だと判断したようです。4人は走っている選手を追いました。
 走っているとなると、船や泳ぎでは追いつけそうにもません。鷹波と磯城弥が全力をあげて追いかけていますが、ジリジリ離されていきます。
 アイーダは急いで矢を番えました。走っている相手の褌を狙うには多少無理と判断、他の選手にも気をつけながら威嚇射撃をします。
「今でござる」
 天城は白夜と共に急降下、チェーンホイップが選手の足を捕らえます。
「裸に鞭は効くでござろう」
 天馬に吊るされる褌選手、一瞬の捕り物に観客から惜しみない拍手が送られました。

「しっかし随分堂々とした不正行為だぜ。あれじゃ捕まえてくれって言っているようなもんじゃん」
 鷹波は棄権する選手を引き上げつつ呟きます。いきなりの不正行為に、何人かの選手は頭を踏まれ沈められたためでした。
「じゃが、撹乱が目的じゃとすると充分じゃな」
 磯城弥も選手救出を助けながら答えます。
「ってことは、まだ一波乱あると?」
「予想じゃよ。根拠なにもござらん」
 しかし予想はすぐに現実になります。今度は霧が現れました。

「ミストフィールドですか・・」
 アイーダは忌々しそうに呟きます。これでは褌クラッシュどころではありません。
「何か組織単位で動いているのかもしれませんね」
 アイーダが急いで鴨川に近付きます。そこで見たものは炎上した鴨川でした。

「ミストの上からファイアウォールでござるか。随分好戦的な輩がおるようじゃのう」
 天城は救出を優先させるべきか一瞬考えましたが、鷹波と磯城弥にそちらを任せ、自分は犯人探しに専念しました。

「おーっと、突然の霧というアクシデントの中、2名が無事脱出に成功。これである程度順位が決まるかもしれません」
 実況の柳は霧を事故として観客に発表、無事抜け出した2名を称えます。
「柳殿、やるようじゃのう」
 磯城弥は素直に実況を感心しました。実況のおかげで観客の混乱は随分防がれているようです。幸か不幸か霧のため炎の壁も観客には見えていないのもあるのでしょう。
「更に1名が霧から脱出、前に行く2名を猛追します」
 柳の実況の声が聞こえますが、姿は相変わらず見えません。棄権する選手達を救助することに専念します。大半の選手が棄権してしまいました。
「これでは競技にならないじゃねーか」
 鷹波は憤りを隠そうとしません。一方磯城弥は救助しつつも、この霧の必要性を考えずにはいられません。
「なんで霧が必要なんじゃろうか?」
「そりゃ・・なんでだろうな」
 一抹の不安が消せないまま、霧だけがやがて消えていきました。

 ミストフィールドとファイアーウォールの使用者は天城によって捕まえられました。あまりに悪質だったためスタンアタックのオマケつきです。
 そしてレースは終盤へと差し掛かります。霧を先に抜けた2名と追いかける1名、計3名のみが今鴨川の冷たい水を分けて進んでいました。
「1位争いはどうやら3名に絞られた模様、この内誰に勝利の女神は微笑むのでしょうかぁぁぁ」
 実況にも熱が篭っています。しかし傍から見ていれば、追いかける1名が明らかに早いです。ラストスパートでしょうか?
「追いかける赤褌がやや優勢でしょうか、底抜けのスタミナです。一体どこに追いかける体力があったのでしょう」
 霧を抜け、炎を抜け、そして今前を行く2人を抜いていく。まるで何かの英雄譚のようです。
「でも怪しいのよね」
 アイーダは急いで手紙を書き、鷹波の船目掛けて矢文を放ちます。そして自分は先頭の赤褌をぴったりマークしていきます。

 一方鷹波は先ほどの霧と炎のせいで人員整理に追われていました。不正監視が出来ない状況になってきたので、磯城弥に監視を任せました。
「ほら並んで並んで。汁は沢山あるから心配すんな」
 しかし矢文が届いてからは1人1人の気配に注意を払います。
「人数を確認して欲しい」
 矢文の真意は測りかねますが気にはなります。天城にも応援を頼み、参加者が逃げたり増えたりしないように見張ってもらいました。

 磯城弥が再び監視に戻ったとき、磯城弥の目にもゴールがはっきり見えていました。先頭3人も見えているのでしょう、しかし1人白褌に丸松の文字の男がジリジリと離されていきます。
 磯城弥の目には丸松褌の男の近くにいくつか泡が出ているように見えます。アイーダとアイコンタクトを取り潜ってみると、丸松男の足を河童が引っ張っているではありませんか。
 ペットの忍犬ナラヅケ、ヤツハシとともに河童を剥がしにかかります。しかしその間に他の2名、赤褌、青褌がゴールしていました。

 磯城弥は順位に不満を訴えます。河童の邪魔がなければ丸松褌が1位だった可能性もあるのです。しかしそれを証明する手段がありません。不正を行った方を失格にしても、もう1人との勝負は分からないのです。
「まずは犯人を割り出しましょう。河童さんに聞けばわかるでしょうし」
 アイーダはどこから取り出したのか、1本のきゅうりを持っています。
「河童さん、誰に頼まれたのかしら?」
 きゅうりを差し出すや否や、河童は青褌だと話してくれました。
「後の問題は赤褌と丸松褌じゃのう」
「それなら問題無いぜ」
 人員整理が終ったのか、鷹波がやってきていました。後ろには天城がチェーンホイップで1人の男を捕まえています。赤褌の男とよく似ています。
「これは替え玉ということじゃろうか?」
 磯城弥の言葉にアイーダが頷きました。
「ミストフィールドの混乱に乗じて入れ替わったんじゃないかしら?」
「その通りです」
 赤褌2人が犯行を認めます。
「でもどこで分かったんですか?」
 1人の赤褌がありえないものを見るような目つきでアイーダを見ます。
「褌の結び目よ。褌クラッシャーの名前は伊達じゃないの」
 2人の赤褌は力なくうなだれるのでした。 

「これは俺からの商品だ」
 鷹波は柳に預けておいた鮭を丸松褌に渡します。
「そしてこっちはオマケだ」
 鮭の上に紙を置きます。果たし状と書いてありました。
「来年は俺が勝つからな」
「逃げたらチェーンホイップで絡め取っておきますよ」
 こうして無事鴨川寒中水泳大会が幕を下ろしたのでした。