年の瀬の嫁入り
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■ショートシナリオ
担当:八神太陽
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月30日〜01月04日
リプレイ公開日:2007年01月05日
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●オープニング
京都から少し離れた村での出来事です。
離れたといっても暦が変わることは無く、年の瀬が押し迫った忙しい時期が到来していました。
そんな時期にもかかわらず、1組の男女が結婚を決意しました。名を清十郎とおよねといいます。
もちろん親同士が進めてきた仲でもありましたし、本人達も乗り気なのですから結婚に否定的な意見はでません。
しかし問題なのは時期です。なにもこの忙しい時期に結婚する必要があるのだろうか?まわりのものは疑問を抱えました。
しかし花嫁は強いものです。一言で疑問を解消させました。
「新年を新しい家で迎えたいのです」
この一言に花婿、花嫁の親類関係はもちろん村中のものがやる気を出しました。
何とか幸せになってもらいたい、それがみんなの願いとなりました。
しかし各家年末年始の準備があります。どうしても人の手が足りません。そこで花婿自身が猟に出て獲物を狩って来る事にしました。
「大丈夫?」
およねは心配しますが、清十郎は「大物を仕留めて帰ってくるから」とだけ言葉を残し森へと入っていきます。
気がかりな花嫁は友人2人に頼み、清十郎の後を追ってもらいました。
3日後清十郎は村へと帰ってきました。なんと猪を仕留めています。「来年の干支だし縁起もいいだろう」と上機嫌です。
足取り軽くおよねの待っているはずの家へと行って見ると、そこはお通夜のように静まり返っています。
「清十郎さん・・ごめんなさい」
それがおよねの母の第一声でした。
よくよく話を聞いてみると、山賊に襲われたそうです。どうやら沢山の料理や着物を準備していたのを狙われたとのことでした。しかもおよねを人質にとって身代金要求の書置きまでしています。
「そんなやつに払う金などない!!」
清十郎は書置きを破りそのまま出て行こうとしましたが、周りのものが何とか止めます。
「とりあえず一旦冷静になろう。幸いまだ時間はあるのだから」
何とか思いとどまった清十郎は冒険者を雇うことを提案したのでした。
●リプレイ本文
「第1目標はおよねさんの奪還、第2に身代金の確保、ここまではいい。しかし山賊の巣穴に殲滅に行くのは賛成できない」
鷹翔刀華(ea0480)は念を押しました。
「誰も掃討までは言っていません。しかし山賊がおよねさんを交渉の場まで連れてこなければ行くしかないでしょう」
東天旋風(eb5581)と鷹翔は微妙に意見が食い違っていました。東天自身は役所に通報したほうがいいのではという意見を持ってはいますが、この年末年始では迅速な対応が望めないという現実もありました。
「まずは現状でている被害を確認した方がいいのではないの?」
それがマーヤ・ウィズ(eb7343)の意見でした。過去に村が同様の被害が出ているのなら掃討すべきという意見です。
「確かに被害は出ています。しかし山賊のおかげで助かっている場面もあります」
「どういうことでしょう?」
清十郎は一度目を閉じてゆっくりと話し始めました。
「今いる山賊は結構強力らしいのですよ。だから他の山賊からの侵略を守っているという話を聞いています」
「迂闊に手出しできないということですね」
間宮美香(eb9572)もどことなく沈痛な面持ちです。今回の作戦の微妙さに気付いていながらも手の打ち様があまりないという現実のせいでしょう。
「敵の数、本拠地の場所、装備その他の情報もない。しかも待ち合わせは視界の不明瞭な森。せめて第2目標まで万全に出来る話をしませんか?」
話し合いの結果、鷹翔が交渉指定の場から少しはなれたところ、東天・マーヤが清十郎のそば、間宮が身代金運搬に使う荷馬車の下に隠れることにしました。
冒険者4人と清十郎は指定時間より前に到着し、冒険者は自分の隠れる場所を確認しています。
荷馬車下に隠れた間宮は早速バイブレーションセンサーを詠唱します。
「距離10丈、数・・20?」
距離10丈といっても分散しています。
「包囲するつもりでしょうか?」
間宮はそれとなく全員に伝えます。しかし一番遠くに潜んでいた鷹翔にまで伝わるのは時間がかかります。
その間に山賊が距離を詰めてきました。
「距離10丈で数が20?」
木の陰に隠れていた鷹翔に伝聞が伝わったとき、上から気配を感じます。
「上から・・奇襲か」
次の瞬間、鷹翔は昏倒していた。
「約束どおり100Gある。妻を返して欲しい」
清十郎が荷馬車を指差します。結婚資金と村の者達から借りた本物のお金です。わずかでも時間が稼げるように布がかぶせてあります。
「わかった、ではまず確認させてもらおう」
「先に妻を確認させてもらいたい」
頭領とおぼしき人物と清十郎は互角の交渉をこなします。
頭領が部下に指図します。すると仮面をした女性が連れてこられました。
「なんだそれは?それでは妻とは確認できないではないか」
清十郎は仮面に納得できません。
「そちらも同じようなものでしょう?」
頭領は布が気に入らないようです。
「では私達がこの女性から離れると同時に、そちらもその場所から離れていただきましょう」
清十郎は東天とマーヤの方を見ます。
2人が頷くのを確認し、清十郎は提案を承諾。頭領はおよねに何か伝え、提案どおりに場所を離れました。
その後お金を確認し、山賊はその場を離れようとします。
マーヤはその隙を見逃しません。フォレストラビリンスを詠唱したのでした。
「フォレストラビリンスか、優秀な冒険者を雇ったもんだ」
頭領は皮肉交じりに言い捨てます。
「しかし魔法を使うのは冒険者の専売特許ではないぞ」
頭領が何やら唱えると淡い光に包まれ始めます。
「これはまずいわね」
マーヤは錯覚に襲われます。他の人達も錯覚に襲われているようです。
「今の内にこちらは後退させていただこう」
頭領は部下に荷馬車を移動させる様に命じて後退を始めます。
「そろそろ動いていいぞ」
頭領が背を向けたまま誰かに声をかけました。
「了解」
動いたのはおよねでした。清十郎の喉下にクナイを突きつけています。
「お前、およねじゃないな。本物のおよねはどこだ?」
「それは君の知ったことじゃない」
頭領はそのまま森の中へと消えていきます。どうやらフォレストラビリンスに抵抗していたようです。
「人遁の術まで使われた?」
東天は舌打ちしながら姿を現しました。偽およねと対峙しています。
「人遁の術を知っているものがいるとは驚きだよ。あんたも忍びの者だね」
偽およねはどこか楽しげに言います。
「しかし忍びにしちゃ間抜け過ぎないかい?こうもあっさり人質をとられて・・」
「そこまでです」
東天が疾風の術を使い、偽およねのクナイを短刀で打ち落とし、そのまま背後を取ります。
「やるね、アンタ。ウチの山賊団に入らない?」
「すみませんが、それほど仕事に困ってはいません」
東天はそのまま偽およねを亡き者にしたのでした。
偽およねの戦闘を見て身代金運び役の部下も逃走しようとしました。
しかしその前にマーヤのグラビティーキャノンが発動。転倒した部下に間宮が襲い掛かります。
戦闘装備にしたため移動力が普段より上がっているのが幸いしました。
「本物のおよねさんの居所はどこですか?」
間宮は日本刀を突きつけますが、部下は口を割る様子はありません。
「掟を破るなら死を選ぶ」
東天は密かに感心します。山賊の割にはよく教育されているようです。
しかし今は掟を破って貰わなければなりません。
マーヤは再びグラビティーキャノンを発動させます。
「話したほうが楽ですよ?」
極上の微笑を部下に向けます。あまりの微笑に部下は恐怖し、舌を噛んで絶命しました。
「あらあら、困りましたね」
「どうやって脱出しましょう?」
「半刻もあれば魔法は解けるはずですが」
「その前に山賊はアジトに戻っているでしょうね」
冒険者3人と清十郎は話し合います。しかしこの話し合いの途中でも山賊はアジトへと歩を進めています。4人に次第に焦燥に狩られます。
「バイブレーションセンサーでもはっきりとした場所までは特定できませんからね」
「だったら私が案内しよう」
出てきたのは今まで行方不明だった鷹翔でした。
「あなた、今まで一体今までどこに・・」
東天の言葉には怒りが混じっています。鷹翔は東天の言葉を遮って答えます。
「敵に捕まってた。私が単身離れていたせいだ。そのことに関しては謝る」
鷹翔は一度言葉を区切り、4人を見渡します。
「しかし山賊の巣穴の場所は大体分かる。あたしを捕らえた奴らが調子に乗って話してくれたからね」
「あなたを捕らえていた山賊はどうしたの?」
「何か魔法を喰らって錯乱していたから、ついでに眠ってもらったよ」
鷹翔はさも当然のように話します。
「まず敵のフォレストラビリンスの範囲から脱出しましょ。あとは鷹翔さんと間宮さんのバイブレーションセンサーでアジトを発見、一番足の速い東天さんが偵察ということでどうかしら?」
マーヤの提案に皆が賛成した。
「身代金はどうします?」
清十郎が尋ねます。
「これからはお金の問題をではありません。お金は大事にしましょ。お若い夫婦の結婚資金は大切ですものね」
マーヤの微笑に従って清十郎は村へと戻ることにしました。
冒険者4人は気を引き締め山賊アジトへ向かいます。
東天は疾風の術を最大限に活用し山賊アジトを目指していました。
鷹翔の話では付近の山の中腹の横穴をアジトに使っているとのこと。間宮の話ではここから数4が逃げているとのことでした。おそらく4人の中に頭領がいるでしょう。
「頭領の足さえ止められれば」
それが東天の考えです。距離を詰め一気に敵中心に侵入、竜巻の術で敵を巻き上げます。そして再び山賊の死角へと移ります。
「ちっ、やる」
竜巻の術そのものにはそれほど威力はありません。しかしかく乱には適しています。
そして頭領達が東天を探している間に鷹翔、マーヤ、間宮も距離を詰めました。
「フォレストラビリンスのお返し、させてもらいますよ」
マーヤの顔は笑っていますが、目は本気です。
「それはこちらもだ、君の魔法でまだ何人も錯乱中だよ」
頭領も同じく目だけ本気です。2人同時にグラビティーキャノンの詠唱に入ります。
「目の前で詠唱なんてさせないよ」
鷹翔、東天、間宮が間合いを詰めます。部下3人がそれぞれの前に立ちふさがりますが、スタンアタックと間宮の剣の前に退けられます。
冒険者3人に詰め寄られた頭領は詠唱を中断しクナイを手にしますが、その時にはマーヤの詠唱が完了していました。
「フォレストラビリンスに抵抗したのを後悔してもらいますよ」
マーヤのグラビティーキャノンが頭領に直撃、転倒した頭領はあえなく3人に取り押さえられます。
「およねさんはどこですか?」
間宮の脅迫に頭領は素直に答えます。
「俺達のアジトで飯を作ってもらっている」
人質を給仕に使っているというのは驚きだが、生存しているのはありがたいことです。
頭領を縄びょうで縛り、そのままアジトへと連行させます。
さすがに頭領を捕まえられたとあっては山賊団も素直になります。それでも一部抵抗するものもありましたが、マーヤと間宮のダブルグラビティーキャノンで威嚇し鎮圧していきます。
そして無事およねさん救出に成功したのでした。
「およね」
「清十郎」
新婚の二人は再会を祝して抱き合います。
「お金も無事戻りましたし、これで万事解決ですね」
間宮も人心地ついたようです。
「そうですね。頭領も役所の方に手配しましたし、もう大丈夫でしょう」
マーヤは新婚夫婦を嬉しそうに眺めつつお茶を飲んでいます。
「そうだな。私達も京都へ戻るとしよう」
鷹翔がそう促すと、東天は新婚夫婦の前に歩みよります。
「此度の事は悪い夢であった、悪い夢を喰うこれを祝いに「夢杭獏」受け取って欲しい、良い夢をこの先に見れるように」