巨大蜂の襲撃

■ショートシナリオ


担当:八神太陽

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 55 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月16日〜06月21日

リプレイ公開日:2007年06月23日

●オープニング

 神聖暦千二年もすでに文月、梅雨の長雨の間には強い日が差し、湿気のためか日陰に隠れても蒸し暑さが伝わってきました。それでも多くの人々は農業、商業、日頃の鍛錬を怠ることなく汗を流していました。しかし中には暑さを嫌い、家の中で惰眠を貪る者もいました。銀二もその1人です。

 銀二は大工を生業にしていましたが、雨の多い梅雨の時期には仕事にならないことが多く、また木材も反りやすいので自主休業を決め込んでいました。同僚は働くように促していましたが無視を決め込んでいました。
「どうせこの時期にろくなもんは作れん」
 それが銀二の弁でした。

 そんなある日、銀二が昼寝を決め込んでいると虫の羽音が聞こえます。
「また蚊か」
 銀二は寝返りをうち、相変わらず惰眠を貪ります。しかし羽音が止むことはありません。耳を押さえても静寂が訪れることはありませんでした。
「うるさい」
 銀二はついに立ち上がり、蚊の退治に乗り出します。手元にあった団扇を武器にゆっくりと羽音の方へと近付いていきました。
 やがて羽音が止まります。どこかに止まったと判断した銀二は一気に距離を詰めようと、蚊を視界の中に捕らえました。
「・・・・」
 銀二の前にいたのは蚊ではありませんでした。1尺はあろうかと思う巨大な蜂、それが3匹です。銀二は手にしていた団扇を投げ出し、一目散に冒険者ギルドへと駆け込んでいきました。

●今回の参加者

 ea1057 氷雨 鳳(37歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea3610 ベェリー・ルルー(16歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea4183 空漸司 影華(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb0132 円 周(20歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3824 備前 響耶(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

リチャード・ジョナサン(eb2237)/ 烈 九虎(eb5503

●リプレイ本文

 雲行きの怪しくなってきた京都の街、冒険者達は依頼人である銀ニとともに目的地である家へ向かっていました。何人か顔見知りもあるらしく、依頼人である銀二は頼もしく感じています。
「凰さんはお久しぶり。元気そうで何よりだね?蒼牙さんと響耶さんは…お仕事では初めて…かな?今日はよろしくね」
 空漸司影華(ea4183)が気さくに挨拶を交わします。声をかけられた氷雨鳳(ea1057)、鋼蒼牙(ea3167)、備前響耶(eb3824)はそれぞれ違った表情を見せます。新撰組としての誇り、人としての尊厳、見廻組としての仕事、想う所は異なりますが、事態の早期終結を望む心に変わりはありません。とはいえ今回の敵が蜂だということが気になっていることも確かです。
「蜂かー。巨大蜂かー。・・・・普通のモンスターより嫌だな、気分的に」
「ボクが刺されたら・・一発ですぅ・・」
 鋼とベェリー・ルルー(ea3610)がうっかり本音を漏らす様子を円周(eb0132)は沈痛な表情で見つめていました。以前戦闘経験のある円にとって巨大蜂はかなり手ごわい敵、特にベェリーにとってはほぼ同じ大きさの敏捷性の高い敵だと言うことを身をもって体験しているからです。
「毒もありますからね」
 毒持ちの敵に対して狭い室内で逃がさないように退治する、それなりに難易度の高い任務だと備前は判断しています。
「入ってすぐに竃があり奥に作業部屋と寝室、以外に広いな」
 備前は銀二に起してもらった地図を眺めつつ長屋の内部と周囲を確認します。
「食糧になりそうなものはあるか?」
「竃には米櫃に漬物が少々あるかな」
 確かに食糧に違いはありませんが、何となくピンとこない部分もあります。備前は地図にもういちど目を落としました。
「作業部屋というのは具体的にどのようなものが?」
「ミノや墨壺だな、大工の七つ道具ってやつだ。あとは多少木材もあるな」
 疑問を感じたベェリーが会話に参加します。
「そういえばスズメバチというのは樹液を餌にするよね?」
 土地感(森林)をもっており、薬草採集にもいく彼女は以前スズメバチが木に群がっているのを見たことがありました。
「冬は木の中で過ごすとも聞いたことがあります」
 円は以前の冒険の時にスズメバチの生態を聞いた事を思い出します。
「・・となると一番怪しそうなのは作業部屋でござるな」
 氷雨も身を乗り出し地図を確認します。六畳の部屋に大工道具や作業机が置かれ、実質四畳半といったところのようです。
「雨降らせて正解だろうね」
 もともと梅雨の時期、天気はそれほど良くはなかったので雨を降らせることもそれほど難しくはなかったようです。
 万全の準備を整え、冒険者一行は目的地である銀二の家へと向かいました。
 
 やがて目的地でもある銀二の長屋が見えてきました。特に目立つところもなくいたって普通の長屋です。
「特におかしいところは見当たりませんね」
 鋼が空漸司と備前の武器にオーラパワー(達人)を付与、氷雨にオーラエリベイション(達人)を付与した後、自らにもオーラエリベイション(専門)を発動させました。その間ベェリーが周囲を確認、近くには巣は無さそうです。
「あとは家の中の可能性か」
「蜂はこの時期に巣を作るようです。巣作りに銀二様の家に入り込んだ可能性も確かにあります」
 一同に緊張が走ります。室内に巣まであるとなると尚更戦闘がしにくくなるからです。
「中でショット撃てないってことだな。闘気は全部使ったし、いい仕事したな!」
 鋼が後ろを向くと空漸司と目が合います。
「・・炎の加護を・・!!」
 フレイムエリベイションを発動させた空漸司がゆっくり刀に手を掛けると、鋼は溜め息混じりに回れ右しました。
「腕に十種の神宝!蛇の比礼、蜂の比礼、品々の比礼・・」
 円が祈りを捧げます。一同が顔を見合わせ意志を確認しました。
    
 扉を開けると、一匹の巨大蜂が外に出たがっていたのか直に冒険者に襲い掛かってきました。
「御用だ、御用だ。‥‥いや蜂に言っても意味無いが」
 慎重に扉を開けるいきなり襲ってくる巨大蜂、しかし円の蜂比礼の効果の前に脱出を阻まれました。
「奇襲とは卑怯です」
「こっちも奇襲だけどな」
 スリープを詠唱するベェリー、詠唱完了まで空漸司が空漸司流暗殺剣・烈閃斬(カウンターアタック)を中心にしてベェリーを守るように蜂と対峙します。氷雨、鋼、備前の三人も空漸司と対峙する蜂に注意を払いつつも、中の様子を確認しました。何かに隠れているのか他の蜂は姿を見せない、三人は警戒しつつも空漸司の前の蜂に再び視界を戻しました。蜂はスリープに抵抗、しかも二回も烈閃斬を受けつつも未だに空を飛び続け、一方の空漸司も毒攻撃を一発喰らってしまいました。
「今度こそ」
 ベェリーの二度目のスリープ、蜂は抵抗に失敗したようで地面へと落ちていきました。
「本当に手ごわいわね」
 空漸司は手早くヒーリングポーションと解毒剤を使いつつも、戦闘前の円の話を思い出していました。
「オーラパワー込みの私の烈閃斬を二発も耐えるなんてね」
 念のため蜂に止めを刺して空漸司、ベェリーも再び捜索に参加しました。

 冒険者が作業部屋へと足を踏み入れると、一匹の蜂が畳の上に止まっていた。しきり顎を動かしているように見える。奥には木材の置かれている場所にもう一匹、こちらは樹液目当てのようだ。
「こちらに気付いてはいないようだ、奇襲をかける」
 木材は基本的に廃材しか置いていないため銀二からは壊しても構わないと言われています。一方畳は出来る限り壊さない方がいいと判断した冒険者達は一撃のある空漸司、備前を木材の蜂に回し、氷雨、鋼、ベェリーが畳の蜂へと分担しました。

 木材置き場では備前が忍び歩きを駆使しての奇襲のポイントアタック、蜘蛛切り丸が的確に蜂の頭部と胴の繋ぎ目を狙います。傷の影響か動きの鈍ったところを空漸司が通常の斬りを繰り出しますが、それでも蜂は動きを止めません。鈍い動きながらも攻撃を仕掛けてきます。
「聞いた話通り、恐ろしいまでのしぶとさだな。だがこれで終わりだ」
 再度唸る備前の蜘蛛切り丸、今度は頭と胴を完全に切り離しました。
「あと一匹のはずね」
「だといいがな」
 他にも蜂がいる可能性も否定できないため、二人は再び捜索に入ります。
 
 一方の畳の蜂は相変わらず顎をしきりに動かしています。
「何が目的なのでござろうか?」
 小声で話す氷雨、やがて一つの可能性に思い当たります。
「巣を作ろうとしているのでござろうか?」
 慌てて鋼とベェリーが上を見上げると確かに作りかけの陶器のようなものが天井にぶら下がっているように見えます。その時、蜂も冒険者の気配を察したのか氷雨に襲い掛かってきました。
「蜂にてこずったとなれば新撰組の皆に顔向けできん、推してかかる」
 氷雨がブラインドアタック、鋼がブリトヴェンで蜂の攻撃を防ぎつつ、ベェリーがスリープを狙います。3度のスリープの後、眠った蜂を集中攻撃でついに仕留めました。

「結局侵入路は木材の中ってことみたいね」
 周囲には一寸の蜂が通り抜けられそうな穴は見つかりませんでした。冒険者達は作りかけとなっている巣を破壊、念のためベェリーがムーンアローで他の巣も探しましたが、矢はベェリーの元へと戻ってきました。
「あとはこの死骸を焼くだけね」
 とはいえ近くで焼くわけにもいかないので、郊外まで死骸を運びそこで火をつけました。

「ん〜…今度は…戦闘以外のお仕事でも受けたいかなぁ」
 立ち上る煙を見つめながら空漸司は呟きます。
「それならば近々御所で会議が行われることになっている。参加してみるといいかもしれん」
 答える備前の視線は自然と御所の方向に向かっていました。
「会議ですか、あっしにも関係あるんですかねぇ」
 銀二は荷物の中から木片を取り出し、彫り始めました。
「それは?」
「墓標ですな。今回の一件はあっしの責任のようですから」