おみくじを売りさばけ
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■ショートシナリオ
担当:八神太陽
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月25日〜12月30日
リプレイ公開日:2006年12月28日
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●オープニング
「よいか皆の衆、それではいざ始めようぞ」
そう言うと、1人のおばばは熱心に水晶玉に念をこめ始めました。それに従うかのように他のおばば達もそれぞれ占いに入ります。一人は風水盤を、一人は星占盤を、一人はタロットを、一人は八卦を取り出しました。
5人のおばばは来年の運勢を占い、おみくじを作ろうということで集結したおばば軍団でありました。
「むむ、これは・・」
「どうしたんじゃ、水晶おばば?」
水晶おばばの呻きを聞いて、風水おばばは疑問の声を出します。
「なにやら不吉な相が出ておる。皆の衆はどうじゃ?」
「むむ・・」
「確かに・・」
「何やらこれは・・」
「不気味な感じじゃな・・」
それぞれのおばばが異口同音に同意を示しました。
「どうやら、我らの存在を脅かすものが出現するようじゃな」
「まさか・・寿命か?」
一堂に沈黙が走ります。
「ついに星占おばばがボケたか・・」
「しかし、ボケの具合がよくないようじゃが?」
「そうじゃな、寒気さえ感じたぞ」
「まぁ星占おばばじゃから仕方あるまい」
一同はおもむろに頷いた(1名除)
「それにしても来年はよろしくないようじゃな。皆の衆、気をつけようぞ」
そして5人はおみくじ作りに取り掛かりました。
5人がおみくじを作り始めて早3日、おばば達は寝食を忘れて作業へと没頭した。干からびてしまうんじゃないか、という野暮なツッコミさえ飛んできませんでした。
そしてついに千枚にも上るおみくじが完成しました。
「ふぉふぉふぉ、今年も無事完成したようじゃ。皆の衆ご苦労じゃった」
「いやなに、たまには飲まず食わずで占いをせねば身体がもたん」
「そうじゃな、これは私等の恒例行事のようなもんじゃ」
「確かに、このおみくじ作りをせねば年を越した気にもなれん」
「除夜の鐘、年越しそば、おみくじ作り、これが私等共通の使命なのじゃからな」
お互いがお互いの検討を称えあう、どこかほほえましい光景でありました。
この時までは・・
次の日、おばば軍団団長水晶おばばは千枚のおみくじを風呂敷に包み、懇意にしている神社へと向かいました。毎年同じ神社におみくじをおろしているのでした。
「神主様、今年もよろしゅうございます」
そう挨拶をすると、おばばは風呂敷を神主に渡そうとしました。しかし神主は受け取ろうとはしませんでした。
「おばば、申し訳ないが今年は受け取れないんだ」
「なんじゃと、誰かすでにおみくじを作ったのか」
「いや、そうじゃないんだ。いや、そうかもしれないけど・・」
なんともはっきりしません。おばばは業を煮やしました。
「どういう意味じゃ、はっきりせい」
「はっ、はい。えーっと実はおばばの作ったおみくじは好評ですぐ無くなったんですよ。それでしかた無く私達が作ったんです。するとおみくじする人が減ってしまって・・」
「それはつまり、おぬし達の占いが当たらんのが悪いんじゃろ?」
「それはそうなんですが、余っているのにおみくじを増やすというのはどうかという意見が出まして・・」
「それは私等に対する挑戦状と受け取るぞ?」
おばばは風呂敷を掴んで帰っていきました。
「ということじゃ」
再び占いおばば達は集合しました。今度はいかに自分達のおみくじを売りさばくかの討論会となりました。
しかし元々占い師、商売のノウハウを知っているはずがありません。案が出てくるわけではありません。他に相談できる知り合いもいませんでした。
冒険者に頼るしかありませんでした。
●リプレイ本文
マーヤ・ウィズ(eb7343)は西田神社に来ていました。この神社が去年までのおばばみくじ(略しておみくじ)を卸していた神社だそうです。
マーヤは神主と面会していました。
「貴殿が、この神社を取り仕切る者ですね。わたくしは今年のおみくじを捌くようにお姉様方に頼まれた冒険者、マーヤ・ウィズと申しますわ」
「お姉様方?おばば達のことですか?」
神主は視線をそらします。ちょうど通りかかった巫女にお茶を頼みました。
「お茶は結構です。あなたもお姉様方のおみくじを遠慮なさったのでしょう?」
「遠慮というのは言葉が悪い。多すぎても私達が対応できないからでして。そういえばいいりんごを貰ったんです、おひとついかがですか?」
「りんごも結構です。あなたがそういう態度をとるから神様もあなたを見放されたんじゃないですこと?」
「しかし私としては・・」
「しかしじゃありません。恥を知りなさい!お姉様方やおみくじを買いにくる方達を思うなら判りますわよね」
神主は弱々しく頷きました。
「お姉様方に素直に非を認めて謝れば、来年からといわずまたおみくじを卸してくれますわよ。今年は急がないとお仲間が全て売りさばいてしまいますわよ」
神主はやっと重い腰を上げるのでした。
久世沙紅良(eb1861)はギルドにおみくじ販売の交渉に来ていました。しかし受け付けも女の子もなかなか首を縦に振りません。
「ギルドが斡旋した仕事でしょう?少し手伝ってもらえないかな?」
受付嬢は困った顔をしています。
「ギルドは特定の個人や団体に協力することはできないんですよ。ごめんなさい」
「少しサービスしてくれるだけでいいんだよ?こちらもサービスするからさ」
「それじゃ・・あ、こんな依頼がありますよ」
久世が依頼内容を確認します。どうやらこの年末年始国に帰るため家を空けるから泥棒が入らないように見張りをして欲しいという依頼のようです。場所を確認するとギルドの近く、人通りはそれなりにありそうです。
「ありがとう。今度食事でも御一緒しましょう」
久世は依頼人と交渉し、依頼料をタダにする代わりに家を使わせてもらう約束をつけてきたのでした。
紅桜深緋(ea4258)、レディス・フォレストロード(ea5794)、瓜生ひむか(eb1872)の3人はおばば達に案内され仕事場に向かっていました。
「ここが仕事場・・ですか?」
一見普通の長屋だが、シワクチャー秘密基地と暖簾が下がっています。
紅桜は信じられないような顔をし、レディスと瓜生も目を見張っています。
「何を言う、いい名前じゃろうが」
5人のおばばは思い思いにポーズをとりました。
「「「「「おばば戦隊シワクチャー、参上」」」」」
どこからともなく拍手が聞こえてきそうな雰囲気です。
「そしてここがシワクチャー秘密基地、何かおかしいことでも?」
水晶おばば、もといシワクチャーレッドは秘密基地に3人を案内しました。
レディスが辺りを見渡すと近くに寺子屋がありました。
「主なお客様は子供さんですか?」
「そうとも言えんよ。迎えに来る親が立ち寄ることもあるし」
「しかしそれでも大した収入にはならないのではないですか?」
レディスとレッドの話に瓜生が口を挟みました。
「そこが問題じゃ。子供達の心をがっしり掴むためにシワクチャーを設立したわけじゃがどうも笑いダネにされとる気がするんじゃわい」
レッドはしきりに首を傾げます。今の状況に納得できないようです。紅桜、レディス、瓜生の3人は笑いを噛み殺していました。
「ま、まずは問題のおみくじを見せていただけますか? 」
やっと立ち直った紅桜がおばば達に聞きました。おばば達はシワクチャーが冒険者にもウケなかったことにがっかり肩を落としつつも長持からおみくじを取り出します。
「全部で1000枚じゃ」
「結構な量ですね」
瓜生はおみくじの山に多少気圧されながら香木を取り出しました。
「まずはおみくじに香を焚き染めようかと思います」
「いいね、こちらも売り場を確保してきましたよ」
久世が秘密基地改め寺子屋前売り場に現れたのでした。
久世はギルドから依頼を受けた物件に紅桜と風水、タロット、八卦の3おばばを案内していた。
中は綺麗に整理されており、いつでも使える状態になっていました。
「まずは看板を描かせて頂きましょうか」
久世は筆記用具を取り出し、絵を描き始めます。
「では私は籠の準備に入りますね」
紅桜は家の中で使えそうなものを探し始めます。
「それではわしらは掃除でもしていようかのぅ」
3おばばは何故か奥へと消えていきました。
「こんなものでしょうか」
久世の手には2枚の看板が握られていました。1枚は一富士二鷹三なすびや来年の干支である猪が描かれています。もう1枚は松竹梅を始めとする色とりどりの花々が描かれています。
「干支の方はおばば達の仕事場用です。子供にも分かりやすいと思いますし」
「それじゃもう1枚の方は大通り用ですね。色とりどりで御婦人達の人目を惹きつけそうです」
紅桜はすでに看板に見入っています。
「どうでしょう?なかなかの出来だと思いますが」
「なかなかなんてそんな・・こんなに素晴らしいじゃないですか」
「まだまだですよ、あなたの美しさの前ではかすんで見えます」
2人が見つめあいます。そして入りにくそうにレディスが忍び足で入ってきました。
「お邪魔・・していいかしら?」
「どこが邪魔なものでしょうか。私はいつでも歓迎しますよ」
久世はそういうと猪の方の看板を手渡します。
「さきほど完成しました。寺子屋売り場の方、よろしく頼みます」
久世の微笑に魂を奪われそうになりつつもレディスは看板を受け取り、香を焚き染めたおみくじを久世に渡しました。
「こちらも準備完了しました。お互いがんばりましょう」
2人は握手を交わし、お互いの健闘を誓い合いました。
レディスが寺子屋前売り場に戻ってきたときには、すでに行列が出来ていました。
「おぬしのペット、ニジマタといったかのう。あれを見かけた子供達がここに集まってきているのじゃ」
「そしてなかなか帰ってこない弟、妹を探しに年頃の娘さんたちがお香の香りに惹かれてさらに集まるという寸法じゃ」
ほくほく顔でおばば達が話している。そんなおばば達の隣ではマーヤがお茶に入れています。
「あら、茶柱が立っていますわ」
「縁起がいいですわね、それでは私も売り子に参加させていただきますわね」
「うむ、では看板は我らおばばが取り付けておこう」
レディスは一人奮闘している瓜生の方へと向かいます。
「遅いですよレディスさん。あ、お客さま、いらっしゃいませです。貴方の運を占ってみないですか」
いつのまにか瓜生は経験値を稼ぎ歴戦の売り子へと成長を遂げていた。
「お兄ちゃん、おみくじいりません?(首傾げ微笑)」
「お姉ちゃんの晴れ着、綺麗です。私、おみくじ売ってるんです。ちょっと覗いていきませんか」
「このお香ですか?おみくじを買うと分かりますよ」
しかしさすがに人が多くなりすぎたのか貧血気味です。
「ここは私が引き継ぎます。だから瓜生君は休憩を」
「分かりました。よろしくお願いします」
売り子瓜生はしばしの間、身を休めるのでした。
「霊験あらたかな、おみくじ、お1つ、いかがですか?」
紅桜の七色の声が大通りに響きます。異性だけではなく、同性も振り向いています。
振り向かせることさえ出来ればもう紅桜の勝利です。あとは近寄って
「おみくじなんですけど、1ついかがですか?」
上目遣いでお願いすると、いつの間にか籠の中は空っぽになっていました。
中には「可愛いお嬢さんのため」といいつつ2、3枚まとめて買う人さえいました。
紅桜がおみくじ補充に一旦売り場に戻ると、そこはいつしか女性の山でした。そして黒山の中心にいるのはやはり久世。
「ここのくじはよく当たるんだよ」
「『当たるくじ』の噂、その愛らしいくちびるで流してくれると嬉しいねぇ」
「この文字?『待ち人来る』だよ」
老若男女のうち、老若女を狙い撃ちした口撃におみくじが飛ぶように売れてゆきます。
紅桜が籠におみくじを入れると、もうほとんど残っていません。
1刻もかからずに売り切れとなりました。
大通りの方が完売したため、全員が寺子屋売り場に集合しました。
紅桜は人遁の術を使って男に変装。女性に受けるだけではなく真似をしたいと男性にも声をかけられます。
レディスは買いたいけど買う勇気が無いという人達に優しく声をかけていき、久世は相変わらず女性の中心になっています。
休憩明けの瓜生の下にはおみくじの香りの秘密を知りたいという人が集まっていました。
さらに、以前西田神社で売られていたおみくじだと嗅ぎつけた通が密かに集結していました。
おみくじは加速度的に無くなってゆきます。
そして夕刻、一人の青年が売り場に現れました。冒険者には目もくれず、おばばに声をかけます。
「来年のおみくじの売れ行きを占ってもらえませんか?」
神主姿の男性にマーヤはお茶を一啜りして答えました。
「占わなくても分かるでしょう?」
男性は最後のおみくじを購入し、帰って行きました。
「今日は手伝ってもらい感謝感謝じゃ」
水晶おばばがおばば達を代表して挨拶します。
「そしてこれがぼーなすじゃ」
おばば達1人1人が冒険者全員に紙を渡します。
「わしらが暇を見つけてじきじきに占ったおみくじじゃよ」
冒険者達はどことなく不気味な笑みを浮かべておみくじを開いたのでした。