借金トラブル〜ナンバーズ〜

■ショートシナリオ


担当:やなぎきいち

対応レベル:1〜4lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 80 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月04日〜02月14日

リプレイ公開日:2005年02月12日

●オープニング

●某日、ガードナー商会
 今日も今日とて仕事は尽きない、パリのガードナー商会。ヴォルフ・ガードナーは今日も注文書片手に積荷のチェックに余念がない。のんびりとした、けれどどこか心地良い緊張の走る商会倉庫──その緊張を吹き飛ばす程に素っ頓狂な声が倉庫に響いた。
「大変です、ヴォルフさんっ」
 重要な仕事を任せるのは、いつもこの部下だった。感情の起伏が激しいのが玉に瑕だが、ヴォルフの有能な右腕に違いなかった。
「どうした、ヅラがズレてるぞ?」
 笑いながら指摘するヴォルフに、右腕が爆弾発言をかました!!
「それどころじゃないんです! ジミィ・ガーランドが支払いを踏み倒しました!!」
「は? 踏み倒──‥‥何ぃぃッ!? アイツがか!?」
 ヴォルフは右腕に負けない大声を張り上げた。踏み倒されたことへの怒りと驚きよりも先に、踏み倒した根性に感嘆してしまう。
 ジミィ・ガーランドは、ヴォルフの知る限りでは最も気の弱い男だった。そして、とても堅実な男だった。とても、踏み倒すような気概があるとは思えない。
「何があったんだ?」
「いえ、研究中の遺跡に閉じこもってしまって──それも、遺跡にはモンスターがいて‥‥近付けないんです」
「じゃあ、冒険者ギルドに頼め! その分の金は、借金に上乗せしろ!!」

 ──豪快すぎです、ガードナーさん。

 それは誰の心の声だったのか。とりあえず、冒険者ギルドに依頼をすることにはなったのだが‥‥

●冒険者ギルドINパリ
「マミーですか!?」
 新米ギルド員は不謹慎にも目を輝かせながら、所定の羊皮紙に依頼内容を記載してゆく。
「はい、それが2体──いたと思います。それから、借金50Gの徴収をしてきていただきたいのです」
「ガードナー商会の方は、同行しないんですか?」
 新米ギルド員、敬語もいまいちなっていない。
「ええ、ちょっと仕事が立て込んでおりまして。必要なら同行しますけれど」
 ふむふむ、と条件を記入してゆく。報酬まできっちり記入し、依頼掲示板へ張り出すと、ラクス・キャンリーゼが興味を示した。
「面白そうな依頼だな。俺も行くぜ!!」
「ラクスさん、剣の練習をするんじゃなかったんですか?」
 確か、新米ギルド員の記憶では、最近はなんだか技の習得にこだわっていたような気がしていたのだが‥‥。
「スタッキングっていう技を覚えたんだ! でも使えないって、酒場でバカにされてな〜‥‥この依頼で見返してやるんだ!!」
「──え? マミーですよ?」
 スタッキング? マミーに??
「アンデッドだろう? ズゥンビとそんなに変わらないだろうしな!」
「いや、あの──が、頑張ってくださいね‥‥」
 受けるのは自由意志だと、先輩ギルド員に言い聞かせられていたのを思い出して、新米ギルド員は口を噤んだ。アンデッド知識がないのはラクスの問題であって、ギルドの問題ではないのだ。
「さぁ、どんな奴が来るかな‥‥」

●今回の参加者

 ea4817 ヴェリタス・ディエクエス(39歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7431 フィソス・テギア(29歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea7814 サトリィン・オーナス(43歳・♀・クレリック・人間・ビザンチン帝国)
 ea8586 音無 影音(31歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea8650 本多 風露(32歳・♀・鎧騎士・人間・ジャパン)
 ea9344 ウォルター・バイエルライン(32歳・♂・ナイト・エルフ・ノルマン王国)
 ea9855 ヒサメ・アルナイル(17歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 ea9909 フィーナ・アクトラス(35歳・♀・クレリック・人間・フランク王国)
 eb0031 ルシファー・パニッシュメント(32歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb0796 孔 蒼玄(39歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

「ええと、今回はよろしくお願いいたしますね」
「借りた物は返すのが常識だ。踏み倒すことは許されない。‥‥とは言え、そのジミィ殿とやらにも何か理由があるのかもしれぬ。直接会って事情を聴いてから判断した方が良いな」
「そうですね」
 ガードナー商会の男は、冒険者に頭を下げた。フィソス・テギア(ea7431)とルシファー・パニッシュメント(eb0031)、ヒサメ・アルナイル(ea9855)の希望でガードナー商会からヴォルフ・ガードナーの右腕というこの男、パンチュが同行することになったのだ。
『迷惑、かけて‥‥ごめんね』
 同行させる必要を感じていなかったメンバーもいたのだが、華国の武道家、孔 蒼玄(eb0796)と言葉が通じないため、通訳を兼ねて、今回の同行となったようだ。孔はすまなさそうに、男に軽く頭を下げた。──以下、右腕氏による自動通訳。
 そして、この男も同行をするようだ。
「ズゥンビもマミーも大して違わないだろ、俺に任せとけ!!」
 ラクス・キャンリーゼはそう言って無意味に胸を張る。マミーという名前に、ヒサメは居並ぶ冒険者を見回した。
「‥‥ところでマミーってどんなん? 悪ぃ、ズゥンビだったら黒魔法にも関係あるんだけどさぁ」
「外見は、全身を包帯で包んだカラカラに乾燥した死体──だったと思うけど」
 フィーナ・アクトラス(ea9909)はどこか自信なくそう口にする。射撃クレリック、クレリックとしてはまだまだ駆け出し──というか、どこかクレリックを捨てている。サトリィン・オーナス(ea7814)が苦笑しながら頷き、後を引き受けた。
「爪の攻撃を受けると病に侵されます。おおよそ一日で重体状態となり、1週間後に死に至るそうです──神聖騎士の方には基本的すぎるかしら?」
「そんなことはない。敵を知ることが叩き潰すことの第一歩だからな」
 サトリィンと目が合い、ルシファーが鼻で笑う。ヴェリタス・ディエクエス(ea4817)は生真面目な表情で頷いた。
「ああ、何事も大事なのは基本だろう。敵を侮るつもりはない、基本的なことから学び直しておくべきだ」
「そうね、基本が大事だと私も思うわ。特にラクスさん、猪突猛進、熱くなるのも悪くはないけど技を使う相手を見極めるのは大事よ」
 唐突に話題を振られ、ラクスは目を瞬いた──話を聞いていなかったのは誰の目にも明らかだ。
「えぇと、スタッキングの使いどころの話だったよな!」
「違う‥‥けど、なんでスタッキング‥‥。少し、教えようか?」
「ああ、頼む!! 影音は、確かスタッキング使ってたよな、あれは格好良かった!」
 ラクスは音無 影音(ea8586)のスタッキングを見て、その技を覚える気になったようだ。サトリィンのマミー講釈を他所に、目を輝かせるラクス。影音は道中、少しずつ教えることを約束した。
「まず、スタッキングを使う時は身軽になって置く事‥‥相手に阻止されてもすぐにフォロー出来るように‥‥」
 珍しく真摯に話を聞くラクスに、影音は丁寧にスタッキングの特性を教える。
「利点は相手の攻撃を邪魔出来る事‥‥なら、防御を怠らないのが大事‥‥私は、斬られるのが好きだから特別だけど‥‥そして、多対一の状況にはならないようにする‥‥スタッキングを同時に2人の相手には出来ないから‥‥」
「男らしくタイマン!! で、ロングソードを抜いて飛び込めばいいんだな!!」
「違いますーっ!!」

 ──スパァァァァン!!!!

「はぐぁっ!?」
 軽快すぎる、しかし大きな音を立てたのは本多 風露(ea8650)の持つハリセンだ! 大して痛くは無いはずだが、涙目になったラクスが恨みがましい目で風露を睨む。その瞬間。

 ──スパァァァァン!!!!

「きっちり聞いてくださいね、ラクスさん? そもそも、スタッキングを使う際には、間合いが狭くても使える武器を──」
「気合いがあればロングソードでも大丈夫だ!!」
 ──スパァァァァン!!!!
「自分が相手と同等かそれ以上に動き辛くなるなら、技を使う意味がありません。それこそ役立たずですよ」
「いや、だけどな、それしか持ってないし、ダガーってなんかカッコ悪‥‥」
「失敗する方が恥ずかしいですっ」
 ──スパァァァァン!!!!
 そんな二人のやりとりを見て、いや、正確には風露の振るうハリセンと張り倒されるラクスを見て、影音は羨ましそうに呟いた。
「痛そうな音‥‥いいな、ラクス‥‥」
 たまたま隣でその言葉が聞こえてしまったヒサメは、僅かに汗を浮かべ、自分を奮い立たせるように言った。
「ま、まあ!! さくさくマミー退治して明朗会計と行こうぜ」


 数日後、予定通りに遺跡に到着した。鬱蒼とした森の奥にひっそりと佇む古のその遺跡は、暗い口を開き、冒険者を待ち受けていた。
「ここを入ったら、マミーが出てきたんだ‥‥」
「そうか。ならば、マミーを探す手間が省ける。面倒がなくて良かった」
 ニヤリと不敵な笑みを浮かべたルシファーが、手馴れた様子でロングスピアを抜き、肩に担いだ。
 一方、フィーナとヒサメがラクスを挟んで煽てていた。
「新しい技で止めをよろしくね。やっぱり止めに使ったりしたら映えるでしょうし」
「ガッツリ退治して馬鹿にした奴見返してやろーじゃん、先輩♪」
 風露も、スタッキングがしやすいようにと手持ちのダガーをラクスに貸した。止めをさすという役割を与えることで、それ以前の無用な介入を防ぐ──という目的のものもいるようであるが。
「俺はそれ程腕っ節強ぇわけでもないし、パンチュの護衛メインな。俺らより下がってて貰うにしろ、マミーが流れてったらヤバイし。ヅラも」
「鬘は、今は関係ありませんっ!」
 ──スパァァァァン!!!!
「あ、すみません、つい‥‥」
 条件反射で繰り出した一撃はヒサメの後頭部を見事に直撃!!
 風露はすまなさそうに頭を下げた。
 ヅラと指摘され真っ赤になったパンチュを見て笑いをかみ殺しながらランタンに火をともそうとした影音を、孔がそっと止めた。
『必要ない‥‥来たわ』
 孔の視線を追った影音は、人の気配を察したのだろう、遺跡から姿を現したマミーに気付いた。
 愚鈍なズゥンビとは違う、人並みの動き──影音と孔、ルシファーは武器を構えて、ヒサメはパンチュを庇おうとするサトリィンごと守るように、位置を移動した。フィソスとヴェリタスは詠唱を開始し、そしてフィーナがいつもの得物を手にする。風露はいつでも仲間のフォローに回れるよう、立ち位置を移動する。
「──いっけぇぇぇぇ!!」

 ──ブンッッ!!!

 フィーナの投げ専用、マイ・ハンドアックスが放物線も描かずにマミーに襲い掛かった!!
 ハンドアックスを追うように、影音と孔、二人の東洋人とロングスピアを握るルシファーがマミーに駆け寄る!!
「──コアギュレイト!!」
 ヴェリタスの魔法が、影音がスタッキングを仕掛けたマミーの動きを止めた! ナイフを握った女浪人は、そのまま懐に入り込む!
「‥‥手加減、する余裕無いんだよね。ごめんね」
 スタッキングPAで、動きの止まったマミーを攻撃する!! 大きな一撃ではないが、確実にダメージを与える一撃だ。
 そして、フィーナの渾身のハンドアックスが突き立つマミーへ接敵した孔は、トリッピングで相手の体勢を崩しにかかる! マミーの注意が孔へ向いたところで、ルシファーがマミーの射程外からロングスピアのスマッシュで攻撃を仕掛ける!!
「その腕がなければ、俺たちの邪魔はできまい!」
 狙いはもちろん、その腕だ!!

 ──ガッッ!!

 一撃で腕を落とすことは出来なかったが、しかし腕を落とすことは不可能ではなさそうだ。
「──ピュアリファイ!!」
 サトリィンも、呪文で影音を援護する。白クレリックの繰り出すピュアリファイは、アンデッドのマミーに大きなダメージを与えているようだ。
「──レジストデビル!!」
 コアギュレイトを唱えたヴェリタスと、自身へレジストデビルの祝福を与えたフィソスも、遅れながらマミーとの戦いに加わった。
「助太刀しよう」
 ヴェリタスの言葉を雰囲気で理解したのだろう、そちらを見ずに孔は小さく頷いた。孔がバランスを崩させ、ルシファーとヴェリタスが腕を、足を狙って攻撃を仕掛ける!!
「──いっけぇぇ!!」
 フィーナが投じたダガーが、3人の間を縫ってマミーの眉間に突き刺さる!!
「よし、オッケー!」
 ぐっ、と手を握り──ダガーに結んであるロープを地道に巻き戻すフィーナ、ちょっと可愛い。
 影音と同じマミーに向き合ったフィソスは、ルシファーやヴェリタスと同様に腕を狙った攻撃を放つ!!
「その不浄な爪‥‥腕ごと叩き切ってくれる!!」
 クルスソード、十字架のついた聖なる剣でマミーの腕を攻撃する!! 数度にわたる影音の攻撃を受けていた右腕は、フィソスの攻撃で地面へと落下した!!
『GRRRR‥‥‥』
 コアギュレイトの呪縛から解かれたマミーが、影音へ残った腕を振るう!! ──受けきれない!!
「‥‥っ!!」
 大きな傷ではない、しかし爪で付けられた傷──
「影音さん、交代します」
 霞刀を抜いた風露が、影音と交代する。下がった影音へ、サトリィンがリカバーをかける。そして、ピュアリファイ。
「効果がないかもしれないけれど、無意味ではないと思うわ」
「応急手当はこんなもんだな。こーゆーのは得意なんだ♪ っと、もう一息じゃねーの? 頑張ろうぜ」
 手早く傷の手当をしたヒサメがニッと笑って影音を送り出した。
 しかし、そう間を置かずに孔、ルシファー、ヴェリタスとフィーナが攻撃をしていたマミーが、その活動を停止した。
 フィソスと風露はラクスを呼ぶ!!
「ラクスさん、止めは差させてあげます」
「ラクス殿、とどめは任せた! 新しい技とやらを見せてやるがいい!」
「おう!!」
 満を持して、風露に借りたダガーをしっかり握りしめたラクスが、片腕を落とされ、動きもかなり鈍ったマミーにスタッキングで接敵する!! そして、ダガーを振るう!!

 ──ザンッ!!
『GAAAAA!!!』
 胸に突き立てられたラクスの一撃で、二体目のマミーも、その活動を停止した。
「マミー相手にスタッキングか‥‥ラクス殿も影音殿も、ある意味つわものだな‥‥」
 剣を下ろしたフィソスが、やっと厳しい表情を解いて、苦い笑みを漏らした。
「マミーが出てきたタイミングが良すぎたから、なんか気になるのよね‥‥ああ、やっぱり」
 倒れたマミーにあるものがないかどうか調べていたフィーナは、目的のものを発見した。『81』『82』の2枚のプレートだ。
「ラクス、あなたズゥンビのプレート持っていたわよね。これも一緒に、預かっておいてくれない?」
 しっかりと目に焼きつけ、スタッキングの成功に浮かれるラクスへ、回収した2枚のプレートを預けた。


 パンチュから預かったランタンを掲げ、ヒサメは遺跡の通路を照らす。
「遺跡の中はどうなってんだろ、捜索開始〜。呼べば反応あったりしねぇかな? ジミィ!! いないならいないって言えー!!」
「そんなことで、反応があるわけがないだろう‥‥」
 ヴェリタスはこめかみを押さえた。そんなことで見つかれば、何も難しいことは──
『いません〜!』
「‥‥ラクス並みに、単純な人なのかも」
 50センチもの身長差のあるヴェリタスを見上げ、影音はそう漏らした。
「とりあえずジミィの言い分聞いてから交渉だな。どーせ逃げられやしねぇんだし、この状況じゃ。平和的解決と行こうぜ」
 ひょいと肩を竦めて、ヒサメは遺跡の中を進んでいった。

 ジミィ・ガーランドの潜伏している部屋はすぐに見つかった。怯えるジミィに、ヴェリタスとフィソス、二人の神聖騎士が同時に問いかける。
「なぜ、遺跡に閉じこもっていたのだ?」
「返済能力があるのならば直ぐに返した方が良いと思うぞ。ガードナー殿は大分豪快な性格の様だからな‥‥」
「遺跡を研究するのが仕事なんですよぅ! ガードナーさんの性格なんて、知りませんしっ!!」
 あわあわと必死になって自己弁護をするジミィに、愉しそうな哂いを浮かべる孔とルシファーが詰め寄る。
「返さないなら‥‥そうね、指の一本いただくってのがスジよね‥‥?」
 孔の言葉を肯定するように、ジミィにクルスソードを突きつけるルシファー。どこか邪悪な雰囲気を醸し出す微笑みを浮かべている。ジミィは、事の大きさに小刻みに震えだした。
 孔とルシファーを制し、そんなジミィへ、サトリィンが優しく諭すように尋ねた。
「そもそも借金の原因は何なのかしらね? 堅実な方なら、借金だってコツコツ頑張れば返せる筈よ?」
「原因というか、遺跡の研究費用です‥‥コツコツは、やっているつもりなんですけれど。あの領主へ、この遺跡の報告をすれば‥‥借金は返済できますし」
 気が緩んで涙目になっているジミィは、隠す気も無いのか、クレリックへ素直に答えた。
「あら‥‥では、なぜ今まで返済しなかったのかしら?」
「遺跡の研究途中なんですよ。パリに連れ戻されたら、また戻ってくるのも大変ですし」
「話の腰を折って悪いんだけど」
 サトリィンの様子を見ながら、フィーナは少し気になったことをジミィに尋ねることにしたようだ。
「もしかして、あれらのマミーは行商人から売られたものなのかしら?」
「‥‥そ、そんなことはありませんっ!! 遺跡に誰も入らなければ、邪魔もされないなんて‥‥」
「やっぱり、ラクス並みかも‥‥ね‥‥?」
 ヴェリタスを見上げ、影音は苦笑した。しかし、それ以上はどう問い詰めても、頑として口を割らなかった。
 そんな事に興味の無いルシファーに促され、ガーランド商会のパンチュはジミィと代金の支払いについて話し合う。程なくして、パンチュは彼なりの結論を導き出した。
「わかりました、私が責任を持って、その研究成果をお届けしましょう。そして、代金から50Gを引かせて頂きます。残りはガードナー商会でお預かりして、次のお取り引きに充てさせていただくか、パリに戻られたときにお返しする。それでよろしいですね?」
 遺跡に残れることにホッとしたのだろう、ぶんぶんと大きく首を縦に振り、ジミィは諾と返事を返したのだった。
 その返事で、風露は肩の荷が下りたのだろう。満足気な表情で微笑んだ。
「のんびりとお茶を飲んでゆっくりしたいものです」