冒険者って便利屋さん?−拷問−

■ショートシナリオ


担当:やなぎきいち

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 20 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:06月05日〜06月12日

リプレイ公開日:2007年06月15日

●オープニング

●冒険者ギルドINキエフ

 広大な森林を有するこの国は、数年前より国王ウラジミール一世の国策で大規模な開拓を行っている。
 自称王室顧問のラスプーチンの提案によると言われるこの政策は、ラスプーチンの企てたクーデターが潰え、彼がデビノマニと化した後も‥‥皮肉なことに、国民の希望となり支えとなり続けていた。
 けれど希望だけではどうにもならないことが多いのも事実──特に、反逆の徒ラスプーチンが姿を消した『暗黒の国』とも呼ばれる広大な森の開拓は、そこに潜む膨大で強大なデビルの片鱗を見せた今、従前から森に棲んでいたモノたちとの衝突以上の恐怖を伴うこととなった。
 そして、不穏な気配を感じた人々による冒険者への依頼も増え、皮肉なことに冒険者ギルドは今日も活気に溢れていた。
 もっとも、夫婦喧嘩の仲裁や、失せ物探し、紛争の戦力要請など種々多様な依頼が並ぶ状況に変わりは無いのだが──‥‥


 ギルドのカウンターに陣取った少女が二人。椅子ではなく陣取っているのはカウンター。つまり、シフールの少女が二人、である。鏡に映したように瓜二つの赤毛のシフールたちは、一方がキキ、もう一方がリリと名乗った。そして貧乏くじを引くように二人の相手をさせられているのは、たっぷりしたヒゲを三つ編みにした、体格のよい壮年のドワーフである。
「キキとリリのお使いに、大飯食らいじゃない冒険者を貸しやがれなのです」
「唐突だな。仕事の中身を話してもらわないと、こっちとしても受けようがないんだが」
「がちがち頭の頑固ドワーフですね、ヒゲのおリボンが泣いてるですよ!」
 口が悪く、ぎゃんぎゃんと喚き立てる方がキキ。
「キキちゃんとリリでねぇ〜、お菓子をいいーっぱい作ったの〜。頑張ったから、食べないでほしいの〜」
 いまいち趣旨の読めない発言をするぽえぽえの方がリリ。
 10の言葉を交わしても1に満たない情報しか読み取れない双子の相手を毎度の如く担当する羽目に陥っているドワーフのギルド員は、冒険者時代に培った持ち前の忍耐力で辛抱強く言葉を交わす。10で足りねば100の言葉を交わせば良いだけ‥‥あとはこのマイペースすぎるシフールたちの言動に耐えればよいだけなのだ。
 そうして途中で切れかかりキキに喚かれたりしながらもギルド員が辛抱強く聞き出した所によると、キキとリリは、どうやら貴族の依頼でシフールサイズのお菓子の家を作っているのだが、どうも二人には重くて運べそうにない‥‥ということらしい。
 しかもはちみつをたっぷり使った匂いに惹かれてか、双子の家の周りをコボルトがうろうろし始める始末。仕方なく双子は窓から抜け出し冒険者ギルドに助けを求めた、というのが事の顛末のようである。
「そんな中に菓子を置いてきて大丈夫なのか?」
「えへへ、うちには強い番犬、じゃなくて番エルフがいるから大丈夫〜」
「脆弱なので荷物持ちには向かないのですけれどね、あの食い倒れエルフは」
 食い倒れるようなエルフに菓子の番をさせるのは剛毅なのか馬鹿なのか‥‥食い倒れの汚名が濡れ衣だと知っている少数の者以外は、後者だと判断するだろう。

 お菓子の家を運び、ついでに護衛もしてくれる、辛抱強い冒険者募集中☆

 数分の後、なんとも軽いノリのそんな依頼書がギルドに掲示されたのだった。

●今回の参加者

 eb3232 シャリン・シャラン(24歳・♀・志士・シフール・エジプト)
 eb3308 レイズ・ニヴァルージュ(16歳・♂・クレリック・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb5812 トーマス・ブラウン(36歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec0720 ミラン・アレテューズ(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ec1051 ウォルター・ガーラント(34歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国)
 ec1789 シーリス・ヴォルザース(28歳・♀・神聖騎士・エルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

アナスタシア・オリヴァーレス(eb5669

●リプレイ本文

●森の中の一軒家

 徐々に強くなる初夏の日差しが緑の葉によって和らげられ、それでもなお明るく森の中を照らす。そんな森の中を歩いていると、ログハウス風の建物が姿をのぞかせた。
 先頭を飛んでいた赤い羽のシフール・キキがぴっと小さな指を差す。
「あそこがキキたちの家なのです」
「シフールサイズというわけではないのですね」
 家を見てミラン・アレテューズ(ec0720)が先ず抱いたのは、そんな感想。それをぽろりと口にしてしまったのが運の尽きか、
「シフールはあまり定住はしないから借家なの。うふふ、ビックリした〜?」
「その頭が飾りじゃないならその程度パパッと推理しやがれですよ! でっかくても当然なのです!」
 瞬く間に飛来したキキがぎゃーぎゃーと喚きだし、リリは頓珍漢なフォローを入れ始める。流石のミランも左右からの口撃とも呼ぶべき攻撃に閉口していると、キャプテントーマスことトーマス・ブラウン(eb5812)とウォルター・ガーラント(ec1051)が赤い羽を摘まんでぺいっと投げ出した。
 咄嗟に抱きとめたレイズ・ニヴァルージュ(eb3308)が苦笑いと注意を口に乗せる。
「何も投げなくても」
「前にいると危険でゴザルゆえ、目を瞑っていただきたいのでゴザル! ‥‥おお、今のセリフは格好良かったでゴザルな」
 自分のセリフにちょっぴり感動しロングソードの鍔を鳴らすトーマス。その隣ではミランが白い槍を構え、二人の背後でウォルターが月の輝きの弓を構える。すると、待っていたかのようなタイミングでコボルトが姿を現した!
「二人とも、じっとしてて‥‥そうだ、僕の懐に潜ってて下さい」
「無理したらぶっ飛ばすですよ」
「はい」
 彼女なりに心配しているのだろうとくすくすと笑いながらレイズも胸元から十字架のネックレスを取り出した。
「立ち塞がるなら、手加減はしませんわよ」
 淡々と宣言したミランはコボルトへ向かって駆け出す!! 突き出された槍が脇腹を貫いた!!
「後続はできるだけ牽制します、キャプテントーマス、近付いた敵をお願いします!」
「任されるでゴザルよ!」
 コボルトたちはあまり戦い慣れていないのだろうか、冒険者たちとの力量差は大きく攻撃は面白いほどよく当たる。相手が6匹だろうと、そんな差は感じさせないほどに。
 しかし、前衛に立つトーマスもミランも全ての攻撃を捌ききれている訳ではなかった。10回の攻撃があればそのうち1回はかすり傷とは呼べない傷を負う。トーマスの異変にまず気付いたのは、回復を担当していたレイズだった。
「キャプテントーマスさん!」
「さんは要らないのでゴザル!」
「え? は、はい」
 トーマスの拘りに、こんな時でもつい返事をしてしまう律儀なレイズ。几帳面にも、改めて名を呼びなおす。
「キャプテントーマス、さっきから顔色が悪いですよ」
「む? そういえば妙な動悸がするでゴザルな」
「‥‥アンナが言っていた、コボルトの武器には毒がある、と」
 友人アナスタシア・オリヴァーレスから聞いたコボルトの特徴をボソッと零したミランに、トーマスはわなわなと震える。
「わ、忘れていたでゴザルぅぅ!」
 アンナと再会を喜び合ったのに!
 そのアンナと協同戦線を張っていた依頼を思い出さなかったとは!
 あの時も敵はコボルトで‥‥トーマスは毒を食らったのだ。
「うぐ‥‥」
「キャプテントーマス、下がって治療を」
「しかし‥‥!」
 ミランの淡々とした言葉に、二人ぽっちの前線を憂う。
「矢はまだあります。でも早く戻ってくださいね」
 信用してください、とウォルターの笑顔が言っていた。そうだ、一人で戦っているわけではないのだ、とトーマスは頷き、素直に治療を受ける。
「かたじけのうゴザルな、解毒剤は高級品でゴザルのに」
「いいんです、命には代えられませんし。それにコボルトは解毒剤を持っているといいますから」
 ──使った分くらいは頂いてもセーラ様は怒ったりなさらないでしょう。
 にっこりと上品に微笑んだレイズが純真なのか、現実的なのか、意外と腹黒いのか推し量りかねつつもミランはコボルトの胸に槍の穂を埋める。
 思った以上にしっかりと貫いてしまった槍を引き抜こうとした刹那の隙に、コボルトが剣を振るい上げた!
「ミランさん、危ない!!」
 弓弦から放たれた矢は一直線にコボルトの胸元に突き立った!!
 毒と傷を癒すため交互に下がり、そのために少々時間は掛かってしまったが。元よりコボルト如き、彼らの敵ではなかった。
「この槍は‥‥凄いな。体に羽根が生えたように感じる」
 アンナから貰った白い槍。白き軍神の加護を受けている貴重で素晴らしい槍なのだと、振るった身体が何よりも実感していた。
「早く行かねば、食い倒れエルフ殿が全てを喰らい尽くしてしまうでゴザル」
 見たことも無い、夜着を着た妙な人形がトーマスの脳裏に浮かんだが、何のことだかさっぱり解らなかった。


●ジャパン流‥‥!

「遅かったな」
「ゴロゴロしてただけの食い倒れに言われたくねーですよ」
 ウォルターの頭部に陣取ったキキが喚いた。
「良かった〜、お家は無事だったの〜」
 レイズの頭から飛び立ったリリがお菓子の家に抱きついてすりすりと頬を摺り寄せた。
「リリ、駄目ですよ」
 慌てて制止するウォルターと共に、ぷうと頬を膨らませたキキが偉そうに頷く。
「そういうことは手を洗ってからするのです! 汚れたらどうするですか!」
「‥‥そういう問題なのか?」
 頭を抱えたミランの肩を、留守居をしていたエルフ、シードルが叩いた。
「この双子に常識は通用しない」
「‥‥そんな気はしていたが」
 やれやれと頭を振った。先が思い遣られる。
「でも、これだけしっかりと出来ていると‥‥分解して運ぶわけにもいかなさそうですね」
 硬く焼いたパンを骨にし、クッキーの壁に蜂蜜でパチスラが張られている。パチスラはミンチにした果実を薄く延ばして天日で干したものだが、今回は資金源があるので卵白や砂糖を混ぜて豪華に作られている。もちろん、味のほうも一段と良くなっている。
 屋根には双子が頑張って平たく焼いたトゥーラにプニャリキが飾られている。どちらも蜜菓子だが、トゥーラはパンに近く、プニャリキのほうが菓子のイメージに近い。
「僕の目には、出来上がっているように見えるのですが‥‥」
「レイズちゃん、ちゃんと見て〜。まだ、雪が降ってないの〜」
「そんなことにも気付かないなんて、レイズも目玉をくりぬいてよく見ないと駄目なのです!」
 ──目玉をくりぬいたら余計に見えないだろう。
 その場にいた、恐らく双子以外の全員がそう思ったが、矛先が自分に向かぬよう誰も口にしなかった。
「さて、問題はこれを運ぶ手段だな‥‥」
「ここまで出来上がっているのなら、ジャパンのミコシという方法はいかがでしょうか」
「「「ミコシ??」」」
 きょとんとした視線がレイズに集まる。
「人や物を運ぶ手段のことらしいです。箱や大きな籠に入れて布を被せて‥‥」
「箱や、大きな籠に‥‥」
 一同の視線が、今度はお菓子の家に向かう。どう見ても1メートルは優にある。これを入れる箱となると、ちょっとこの家で探すのは難しそうな気がする。
「‥‥お、大きな板に乗せて布をかけるのはどうでしょうっ。それに前後に長い棒を渡して、それぞれ一人か二人かずつバランスを取りながら持つと言う手法なんですけれど」
「テーブルを逆さにすれば、何とかなるかな‥‥」
 ミランはどうやら乗り気の様子。ひょっとしたら、他に案が思い浮かばないだけかもしれない。
「そうですね、前後に2人ずつにすれば運べそうですし。他の荷物なら僕のロバやトーマスの」
「キャプテン!」
「‥‥キャプテントーマスの馬に乗せれば大丈夫でしょう。疲れたらシードルに時々交代してもらうという手もありますしね」
 ウォルターも異論はなさそうだ。トーマスは、ジャパンという単語が出た時から既にノリノリ。
 数分後。
 ひっくり返したテーブルに丈夫な棒を括り付け、その上にお菓子の家を乗せて。即席ミコシが完成した★

 ちなみに、こんなものがジャパンに本当にあるかどうか‥‥ここにいる7人は誰も知らない。


●甘〜いミコシと誘惑と

「エイ」「ホー」「エイ」「ホー」
 足並みを揃える掛け声が響く。何となく早足になってしまいそうな掛け声は、これもレイズの似非ジャパン知識によるものだ。
「──でいいんですよね、キャプテントーマス?」
「‥‥‥‥‥‥‥もちろん! でゴザル」
 ジャパンのサムライのようになりたいトーマスであるが、ジャパンにはまだ入ったことがない。詳しいわけでもない。長い間があったから、多分、知らないのだろう。
(ふむふむ‥‥これはひょっとしてワサビというものでゴザろうか。さすがジャパンは奥が深いでゴザルな)
 キャプテントーマスの中にも、似非ジャパン知識が蓄えられていく。
 そんな副次効果を発生しながらも、何とか2日間の距離を進むことができた。
 日が暮れる前にテントを張る。レイズの持つ2人用のテントはミランと双子が、トーマスの持つ4人用のテントは男性4人が、それぞれ使用する。どちらが貧乏くじなのかは言うまでもなかろう。
「それにしても‥‥」
 焚き火の前に陣取って、両腕に抱いた愛犬レフをもふもふもふ。
「良い香りですね‥‥」
 もふもふもふ。‥‥ちらっ
「そんな目で見ても食べられませんよ、レイズ」
「や、僕はクレリックですから! 断食も修行に入っている位ですからっ。僕は気になりませんっ‥‥!」
 もふもふもふもふもももももふっ
 腕の中でもふられすぎたレフが嫌そうに身を捩った。
「レイズ、目が追っている」
「ああ、神よ僕はまだまだ未熟です‥‥」
 そういうミランの視線もちらりちらりとミコシを盗み見ていて、ウォルターは小さく笑った。
 しかし、その笑いは直後に凍りつく。強烈な甘い匂いに慣れた鼻はいつもの鋭さを持たないが、耳と目はよく鍛えた人一倍鋭いものだ。その目に、コボルトの姿が映ったからだ。今度は3体。しかし、そのうちの1体は他と比べて明らかに精悍。
「気をつけて下さい‥‥あれは恐らく、コボルト戦士です」
「あれが‥‥」
 ウォルターの言葉にレイズは気を引き締める。これが6体でなくて本当に良かったと思いながら‥‥
「護るものがあるからな、悪いが手加減はしない」
 ミランの瞳が炎を映して煌いた。そして、既に馴染みつつある槍を振るう!!
「キャプテントーマス、どこです!?」
 ウォルターの矢がコボルト戦士の腿を射抜く!
「おほくなったえおじゃる」
 もごもご。
「キャプテントーマス、まさか‥‥」
 レイズの頬が引きつった。
「助力しよう」
 引き絞った弓から鋭く放たれた矢は、一直線にコボルト戦士の眼窩を射抜く。
「やりますね、シードル」
 同じ弓使いとして、腕の立つ男の登場にウォルターの中で何かがめらりと燃え上がる。
「逃げるなら今のうちですよ!」
 どうせ通じまいと思いながら警告を発し、次いで矢を発す。
「‥‥おまえもなかなか筋がいいな」
「どうも」
 視界を欠いたコボルト戦士をトーマスの剣が袈裟懸けに切り裂く!!
「お菓子には指一本触れさせぬでゴザル!」
 よろめいたコボルト戦士に幾本もの矢が突き立った。
 しかし渾身の力で、敵も攻撃を返してくる。それはまた、毒を塗った武器の攻撃で‥‥トーマスの肩を浅く切り裂いた。
「ミーは自分の運の悪さを知ってるでゴザルからな、こんな事もあろうかと、解毒剤や回復薬は常時持ち歩いてるでゴザルよ」
 先日はリカバーを受ける必要もあり使用しなかった解毒剤。懐から取り出したそれが壊れていないことに安堵しつつ、一思いに飲み干しニヤリと笑う。
 そして振るった剣がコボルト戦士に止めを刺した!! ミランの槍がもう一体のコボルト戦士に止めを刺すと、残されたコボルトは文字通り尻尾を巻いて逃げ出した。この様子ならば、これ以上追ってくることもないだろう。
「ミーのジャパン流剣術の前に敵はいないのでゴザル!!」
 ビシッ!!
 ポーズを決めたトーマスの額をミランが弾いた!!
「そういうのは頬にプニャリキが付いていないときに言うものだ」
「まったくなのです!!」
「‥‥キキ、リリ。あなた方もですよ」
 やれやれと肩を竦めて、ウォルターは双子の口の端に付いていたパスチラの欠片を拭った。
「‥‥色々とお疲れ様です」
 そんな中だったから、レイズがシードルに同情したのも当然のことだろう。これが毎日だなんて、『賑やか』なんていう生易しい表現をフライングブルームで通り越してしまうようなものだろうから。

 そうして、4人とシードルの努力の甲斐もあり、無事にお菓子の家は貴族の家に届けられた。
 アーモンドの粉末に蜂蜜と卵白を加えて粘土のようにしたもの──二人は魔法のパンという意味でマジパンと呼んでいたが、それで家の周囲の細かいアイテムを作る。水分を少なめにしたヨーグルトに蜂蜜を混ぜ、屋根やマジパンに盛り付けて、出来上がりだ。
 夏に向かうこの時期に冬を思わせるこのお菓子の家は、確かに楽しいかもしれない。
「こんなに大きなお菓子の家、食べ切れるんでしょうか‥‥」
「数人の家族で食べきる量ではないでしょうから、恐らくパーティーか何かに用いるのだと思いますよ」
 こんなに頑張って運んだものがあっさり他人の胃に納まってしまうというのは何だか寂しくもあるけれど。
「ふう、おっきいお仕事も終わったしぃ、皆で美味しいもの食べよ〜」
 相変わらずレイズの頭の上に陣取っているリリが間延びした声でそう言った。
「美味しいものより甘いものが良かったな」
 ぽそりと零したミランの一言には、心情がとてもしっかりと籠もっていた。
「ふふん。そう言うと思って、用意してあるですよ」

 日当たりのいい森の中でお菓子の家の欠片を食べよう。
 それから少しだけお土産を持って帰ろう。
 そんな仕事が、たまにはあってもいいじゃない?