雛ちゃんと温泉郷

■ショートシナリオ


担当:やなぎきいち

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 97 C

参加人数:6人

サポート参加人数:6人

冒険期間:08月10日〜08月20日

リプレイ公開日:2007年08月20日

●オープニング

 ジャパンの忍者という人種は、謎に包まれている。
 その中でも、謎が服を着て歩いているような特異な少女が一人。その少女がばたばたと冒険者の酒場へ駆け込んだ。
「大変なーのよーぅっ!!」
「どうした?」
 少女が喚くのは珍しくないのだが、友人たちにとっては気になって仕方がないところでもあるようだ。
 しかし、少女の齎した情報は──驚愕をも齎すものであった。
「あのね、温泉のある村、何かががーってやってぐちゃぐちゃなんだって!」
「がーって‥‥?」
「ぐちゃぐちゃ?」
「そなのよぅ! おうちは燃えちゃって、おんまさんは死んじゃって、あっちこっちボロボロで、それでねそれでね、お仕事もできないのー。大変がいっぱいでいっぱい大変!!」
 話を聞いた冒険者たちは顔を見合わせる。
 家が燃え、馬が死ぬ。村中がボロボロのぐちゃぐちゃ。それは壊滅と言わないだろうか。
「村の人はご無事でいらっしゃるのでしょうか‥‥」
「んとね、穴に逃げて大丈夫だったみたい? でも、死んじゃった人もいて、怪我しちゃった人もいっぱいなんだって‥‥!」
 冒険者が温泉郷として夢を抱いた村。その村が、今、危機に立たされていた。

 その後、商人や旅人、冒険者仲間らの情報により村がドラゴンのような大型のモンスターに襲撃され、壊滅状態になっていることが正式に判明した。家や森は焼け、所々は凍りつき、家畜は泡を吹いて死に、死傷者も多い。坑道は襲撃時の衝撃で一部が崩落し、逃げ込んでいた住民たちの一部は生死不明という有様。
 訪れたという商人や旅人、冒険者仲間らはあまりの惨状に手も足も出せず、運んでいた食料や薬などを寄付あるいは売却し、冒険者ギルドへの依頼を預かってキエフまで訪れたのだと唇を噛みながら語ったという‥‥

 情報を齎した少女の名は、雛菊。
 酒場の名は、スィリブローといった。

●今回の参加者

 ea3665 青 龍華(30歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5766 ローサ・アルヴィート(27歳・♀・レンジャー・エルフ・イスパニア王国)
 ea9114 フィニィ・フォルテン(23歳・♀・バード・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ea9603 ウィアード・ジャルガー(31歳・♂・ジプシー・ジャイアント・エジプト)
 ea9617 シモーヌ・ペドロ(29歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●サポート参加者

ゴールド・ストーム(ea3785)/ リュシエンヌ・アルビレオ(ea6320)/ 王 娘(ea8989)/ 宮崎 桜花(eb1052)/ シャリン・シャラン(eb3232)/ キリル・ファミーリヤ(eb5612

●リプレイ本文

●3人の男

 いっそ白星が憐れに思えるほど沢山の料理道具や食材を乗せ、自身も腕が耐えられるだけの荷物を抱えた青龍華(ea3665)がその村に訪れたとき、村には血臭と死臭が漂っていた。
「姐さん、これでいいっすか?」
 付き従うは顔や腕やあらゆる所に青痣を作った3人の男。それぞれに背負っていた荷物をどさりと降ろす。彼らは‥‥単独で大荷物を運ぶ龍華を狙った盗賊だった。
「これに懲りて馬鹿なことは止めるのね」
 ──構ってる暇ないんだから、さっさと向こう行きなさい!!
 愚かな男どもへ龍華は燃え上がるような怒号と共に容赦なく殴って蹴って龍飛翔!! 僅かな間でぼろぼろになった盗賊たちは必死に命乞いをしたが、龍華の怒りは揺らがなかった。けれどその盗賊たちも謎の襲撃で村を失ったばかりなのだと聞いて、彼女は道中の食料と引き換えに荷物持ちと護衛を頼んだのだ。魔法の靴についてくるのはその辺りの僧侶の苦行より厳しかったに違いなく、男たちは大真面目に首を振った。
「姐さんがこの村を出るまでは手伝うス。俺らの村はなくなったけど、ここはまだ残ってるスから」
「そう? じゃあ水汲みと薪集めをお願いするわ。けが人の治療なんかにも使うから水はたっぷりね、あって困るものじゃないから」
 使えるものを手放せる状況ではないと判断し、てきぱきと指示を出した龍華は村人と話をするため村内を歩き始めた──


●惨状

 半日ほども経っただろうか、冒険者たちの一団が到着した。時間がずれているのは、それぞれ必要だと思うものの調達に走っていたからである。こちらの一団は、エチゴヤでの調達で用が済んだ以心伝助(ea4744)と、ヤーブラカ通りに棲家をひっくり返すような音を響かせて必要な品を発掘したローサ・アルヴィート(ea5766)、資材ではなく鍛えぬいた肉体での協力を考えていたウィアード・ジャルガー(ea9603)と同じく身ひとつで支援に向かったシモーヌ・ペドロ(ea9617)、雛菊(ez1066)の5人。

 ──そして何よりも先に目にしたのが、この惨状である。

「一体何がどうなって、こうなったのよ‥‥」
 軽いノリも明るい笑顔も消えたローサがやっと搾り出したのは、掠れた声と一筋の涙。潰れた家、乾いた血痕、炭と化した森の木々──何よりも彼女の胸を締め付けているのは森の姿。纏わりつくように足元を歩いていた雛菊が紅葉の手でローサの手を握る。
「やっぱりアレの仕業なのでしょうか‥‥?」
 数ヶ月前からの激変ぶりに目を眇めていた伝助も、自分を落ち着かせるように妹分の頭を撫でながら呟いた。名を呼ぶことすら憚られる、悪魔の存在を懸念して。
「アレって何のことでショー? ‥‥それはともかく、片付け甲斐はありそうデスネ」
 疑問を乗せた視線を送るも伝助に交わされ、肩を竦めたシモーヌは話を復興に摩り替える。
「ここを温泉街として盛り上げて、俺様の根城にするか。直に元通り、いやそれ以上にしてやるぜ」
 ウィアードの野心にシモーヌはにこにこと頷くだけ。
「そうよね、盛り立てないと! あたしらしく前向きにいかなくちゃ」
「雛もいくなのー!」
 涙を拭って薔薇の瞳で村を見据えるローサ。繋いだ手の温もりを信じて、村に足を踏み入れるのだが──
 復興への道程は果てしなく長く長く長いものなのだと、彼らはすぐに知ることになる。


●食事

 大きな鍋から掬われたシチューが縁の欠けた器に盛られる。料理したのは自他共に認める料理人となってきた龍華、アシスタントはアシスタントの専門家シモーヌである。
「はい、雛ちゃん。これ運んでね。零したらお仕置きよ?」
「はわ、雛、気をつけるの〜‥‥!」
「これもスプーンも持って行ってイタダケマスかー? あと、これと、それと、ああこれもお願いシマース」
「ええー!?」
 ぽんぽんぽんと積み上げられた荷物に目を白黒させる雛菊。やはりシモーヌは天敵だと再認識したところで、ウィアードがひょいと大きな手で取り上げた。
「ほらほら、動けるやつは手伝いな、てめぇ等のメシだろ。雛菊だって働いているんだからな、少しは手伝え」
 促されて村人たちの手が伸びるとシモーヌはこっそり頬を膨らませた。右往左往する雛ちゃんが可愛いのに。
「ウィアードさんのいけずー」
「あぁン? 何か言ったか?」
「何も言っておりませんデス」
 呟いた言葉を拾ったウィアードに睨まれたシモーヌ、しれっと微笑むと「フィニィサマ遅いデスネー」とあからさまに話題を変えたが‥‥ウィアードはふん、と鼻を鳴らしただけだった。
 届けられた大量の食材に、そして暖かい食事に村人たちも緊張の糸がふつっと切れたようで、空気が徐々に和らいできたのが伝助にもわかった。
「これは必要なかったみたいっすね」
 木彫りの夢喰獏を突付き小さく呟いた。その殆どがドワーフとジャイアントというこの村である、人々の精神もそれに見合って強いのだろう。しかも文字通りの職人で、職人気質そのものという風情であるのだから。
「‥‥‥?」
 ふと、何か見落としている気がした。その不安を払拭するように、ユニコーンを連れた女性が現れた。最後の仲間、フィニィ・フォルテン(ea9114)その人である。
「オカエリなさいマセ」
 どこからかちゃっかり現れたシモーヌが出迎える。それが彼女のスタンダード。しかしフィニィはそんな扱いに慣れておらず、どこか緊張の面持ちで笑みを浮かべる。
「すみません、遅くなりました‥‥」
 友人ゴールド・ストームと共に服や布を買い付けていたフィニィは、必要量が確保できずキエフを発つのが遅れたのだ。仕立て屋に行けば出来合いの服があるわけではない、服というのは採寸して個々に合わせて仕立てるもの──仕立て屋を急がせたが、それでも村1つ分の衣服が賄えたわけではなかった。がくりと落ちた肩を叩き、龍華は暖かいシチューを勧める。
「今日はテントを張ったり食事の用意をしたり薪を集めたりで忙しすぎちゃって、かなりの重傷の人以外は手当ても出来てないのよ。明日から、その布を使い切るまで働いてもらうわよ?」
 それはフォローでもなく、ただの本音で。だからこその暖かい言葉に、フィニィはそっと悔し涙を拭った。


●治療

 さて、一夜明けてからが本腰を入れての救助となったのだが。村に残った龍華とシモーヌはてんてこ舞いである。辛うじて雨露を凌ぐ程度の屋根を残した家には重傷を負ったケガ人が横たえられていたのだ。
「添え木を当てるからね、痛いときは痛いっていうのよー」
「いてててて!」
「うるさい! 男ならこれくらい耐えなさい!」
 女尊男卑‥‥ではなく、基準は可愛いかどうかなのだが、龍華の容赦ない叱咤激励が飛ぶ。しかし、愛すべき小さな子らに対しても言葉遣いが違うだけ。この状況ではそれ以上気遣う余裕がないのだ。
「はイ、龍華サマ。お水お持ちいたしマシタ」
 シモーヌが水を運び込み、泣いていた子供の手をあやすように握る。
「ありがと。そっちの人たちのケガ、洗ってあげて!」
「シモーヌめにお任せアレ」
 にこりと微笑み、泣き止んだ子の頭を撫でると、シモーヌは指示されたケガ人の看護に当たる。メイドの割に本当は家事など得意ではなかかったりするのだが、そこは見た目でカバー。清潔になる傷口と裏腹に、ケガ人の口からは耐え切れない叫び声が迸る。
「てめ、傷口こするンじゃねええええ!!」
「えぐりマスカ?」
 にっこり微笑んだシモーヌの迫力に、ドワーフの青年はむぐっと口を噤んだ。
「あぁ? 元気なヤツがいるみてーじゃねぇか。ちびっ子も遊ぶの我慢して働いてるんだ、動けるなら手伝えよ」
 片しても片しても片付かない瓦礫の山。その中に埋もれていたジャイアントの子供を助けたウィアードは、必死に手伝う雛菊を示しながら青年を睨む。抱えた子供は瓦礫に足を押しつぶされ、半身を焔に焼かれ──シモーヌも思わず素に戻る。
「うわ、酷い‥‥」
「生きてるだけマシだぜ」
 吐き棄てるように言うウィアード。どれだけ酷い遺体を見てきたのか、尋ねる気にもならない。雛ちゃんには辛かったかしら‥‥と顔を見せない友人を憂いながら、龍華は別のテントへウィアードを案内した。そしてヒーリングポーションを飲ませ様子を見る。このケガでは、ポーションでの完治は難しいだろう。
「村でこれだと、坑道はどうなってるのかしらね‥‥」
 救いを求めるように、天を仰いだ──


●捜索

 一方、その坑道の中はといえば。
 崩落があったのは三方に伸びる坑道の二つ、キャッツアイの坑道とトパーズの坑道。トパーズの坑道は鉱脈資源が豊富なこともあり、村人たちが崩落個所を既に掘り起こしていた。崩落が小規模だったこともあり、惨劇の形跡は色濃く残るものの通行は可能な状況。
 冒険者たちが対応に当たることになったのはキャッツアイの坑道──温泉に通じる道である。
「あたし未だ入ってないのに!」
 明るく混ぜ返すローサの言葉が坑道に響く。元々採算の取れない坑道としてうち棄てられる運命だった坑道である、岩盤の崩落の規模も大きいとなれば後回しにされていることも納得はできる、のだが‥‥。
「フィニィちゃん、ランタン!」
「はい」
 インフラビジョンのスクロールを広げるローサ。坑道は青い光になり、伝助や柴丸、フィニィの姿は赤い光になる。しかし、ローサから見える範囲内に仲間以外の赤い輝きはない。
「まだいないみたい。もっと掘らないとだめかな」
「それなら掘るまでっすよ」
 二人は担ぎ上げたスコップで瓦礫を少しずつ避ける。避けた瓦礫はフィニィが小型の荷車に載せ、龍華の拾った三馬鹿が坑道の外まで運び出す。ちなみに、坑道への出入りは梯子を使用するので、単純な割にこれが一番の重労働だったりする。
「フィニィちゃん、暗いの辛かったら外で休んでおいで。人が見つかったら呼ぶからさ」
「いいえ‥‥この奥の方々はもっと辛い思いをされているはずですから」
 ふるふると、血の気の失せた首を振る。狂化と隣り合わせでの作業の辛さは、ローサや伝助には想像することしかできない。
 ざくざくと掘り進めて行くと、突然柴丸がけたたましく咆えだした!
「どうしたでやんすか?」
 尋ねながらも脳裏では判っていた。愛犬を労い、彼と同じ嗅覚を得るため印を結ぶ。そして、滲んだのは涙ではなく、憂い。
「人が‥‥」
 伝えるには充分だった。温もりを持たぬ人と言えば、生きた人ではないのだから。
 傷つけぬように丁寧に掘り起こすと──現れたのはジャイアントだった、遺体。信者ではないものの、故人が安らかに眠れるようにと黙祷を捧げ十字を切る。そして悲嘆に暮れた目を開くと、
「柴丸!!」
 主人を守るべくクナイを加え飛び掛る! 瓦礫を崩すための鎚を力任せに叩きつける!
 しかし元がジャイアントの、しかも鉱山で働く男。たった一人とはいえ、装備も整わない無警戒の所を襲撃されてはパニックにも陥ろうというもの。矢筒に伸ばしたローサの手は、空を切り天使の羽飾りに触れる。天使の羽飾りと天使の額冠を装備したAngelic Archerが送るべき死者に手も足も出ないとあっては名が廃る。
「効いてくれなきゃ困るっ!」
 とっさに選んだスクロールを広げ、揺らぐランタンに掲げて視線を走らせる。
「‥‥‥ふう」
 目の前で石化したジャイアントの遺体に、伝助は冷や汗を拭った。理不尽な死を迎えた、死に切れぬ想いが、この坑道には溢れている。これが関わった事件の顛末かと考えると、胸が苦しかった。
「‥‥続けましょう、まだ生きている人のためにも」
 フィニィが伝助を促し──同じ事があっても対処が取れるように、ウィアードと雛菊を坑道に呼んだ。


●顛末

 最終日までの救助作業で坑道からは3名の生存者が、村の瓦礫からは先の1名が発見された。見つけ出した死者の数は9名。判明していた死者と合わせれば20名にも上る。
「村の生存者を含めてこれだけの人が生き延びていたということは、流石にドワーフとジャイアントの村だと褒めるべきところなのでしょうか」
 目を輝かせた龍華が「ふふふ、今回のこの刃。美味しい物食べた皆の笑顔に飢えているわ‥‥」とまるで呪われたような形相で作った柔らかな蒸しパンとスープを配りながら、フィニィが首を傾げた。肉体労働の疲労から腹の虫に負け、早々に貪り食っていたウィアードが皿から顔を上げる。
「適当な所で諦めて坑道に逃げ込んだからじゃねぇのか?」
「そっすね、あの崩落も外からの衝撃が原因のようでやすし。坑道は見つかってなかったんじゃないっすかね」
 泡を吹いて死んでいた馬たちは毒により死亡したとローサは言った。その毒がこの辺りの植物から採れる類の物ではないということも。森には炎か灼熱の光線のような物が貫いた痕跡があった。射出されたのは村の中央付近から。けれど、ローサは当初にくらべ随分と元気になった──灰の中から顔を出す雑草を見てから。
「よう、ちび。食わないのか?」
「雛、ちびじゃないも! ‥‥でも食べるなの」
 ウィアードの膝にちょこんと座った雛菊は、懐からリコリスのクッキーを取り出した。遠いキエフで、ウィアードから貰った小遣いで買ったものだ。村の子供たちに一欠けらずつ配って、残りはほんの僅か。
「はい、あーん」
 雛雪と柴丸の口にぽんぽんと放り込む。最後の一欠けを誰にあげようかと仲間を見回した雛菊の正面にシモーヌがしゃがみ込んで口を開けた。
「やーなのっ」
 ぽいっと自分の口に放り込む雛菊。それでいいんデスヨーと頭を撫でたシモーヌに複雑そうな顔をする。その顔を申し訳なさそうに見つめ、フィニィは雛菊にもらった簪が壊れたことを謝った。
「こちらは大切にしますから」
「組紐っすか、いいっすね。あっしには何色が似合いやすかね」
「ああー!!」
 羨ましさを隠さず明るく笑おうとした伝助の言葉に、雛菊は素っ頓狂な声を出す。驚いた三馬鹿が皿をひっくり返した。
「‥‥雛、伝ちゃんお兄ちゃんたちにあげる分、忘れてきちゃったなの‥‥」
 小さな笑いを誘った雛菊の笑みは、冒険者の笑顔と共に村人の心に小さな希望の燈を灯した。

 亡くなった者を埋葬し、村は一先ず活気を取り戻した。救援物資として多数のテントや食料、ポーション、リュシエンヌから200Gが寄付され、そこから冒険者へのわずかばかりの報酬が支払われる。
 家族や友が死んだ坑道を観光資源にするには時間がかかるだろう。
 冒険者の希望どおり複数の風呂を作るのは更に時間がかかろう。
 職人気質の村人たちが客商売をさせるなど、気の遠くなる話である。
 しかし‥‥冒険者は既に宣伝を始めた。彼らの意思はともあれ──もう、後には引けないのだ。

 余談であるが、ハーフエルフではないシャリンが送った手紙をマルコ・ラティシェフが見つけ、復興の手を差し伸べるのはもう少し後の話である。