【魔怪村】Red Rain

■ショートシナリオ


担当:やなぎきいち

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 80 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月30日〜09月04日

リプレイ公開日:2007年09月07日

●オープニング

●魔怪村

 ロシア王国内、キエフ公国の一角──首都キエフの北に隣接する場所に、セベナージと呼ばれる領地がある。その名の通りセベナージ領と呼ばれ、マルコ・ラティシェフというハーフエルフを領主に抱いている。その領内にはドニエプル川へ繋がるキエフ湖の半分近くがあり、湖に注ぐ広大な河川が2本ある。片方はチェルニゴフ公国の首都チェルニゴフの近くを通り‥‥要するにセベナージは物品を船で運搬することが多いキエフに於いて交通の要所といえる場所にある。
 ‥‥が、残念ながらそのような事実は今回の依頼と関係がない。依頼は森の中のモンスターが多い地域にある、領民からは『魔怪村』と呼ばれ恐れられている場所から出されたものだからである。開拓や狩猟を行って暮らしているその村の周辺は前述のとおりモンスターが多いのだが、中でもこの地区にしか見られない特異なモンスターが現れること多い。その原因について村では「魔力の吹き溜まりになっている」という説や「土地が肥えすぎている」という説、あるいは「精霊の力が偏っている」という説などが飛び交っているが、最も有力な説は「呪われた土地」という説である。
 ──何故有力か? 客観的な立場から考えるに、都合の悪いことは全部呪いとデビルの仕業に仕立てる方が怒りの矛先を纏めやすいこと、排除できる可能性や方法を考えやすいこと、などが理由だろう。
 だが、そんな面倒な理屈から出た依頼ではなく‥‥もっと単純で切実な問題だった。


●赤い妖精さん

 かちゃん、かちゃん。
 食事を終えた皿を下げ、桶に汲み置いた水で洗う。そんな母親の手伝いをしながら、少女が楽しげに笑った。
「ねえママ。今日も見ちゃった、赤い羽根の妖精さん♪」
 ──がしゃがしゃがしゃん!
 わざとらしいほど盛大に食器をぶちまけた母親は濡れたままの手で娘の頭をぱしっと引っ叩いた。
「不吉な話をするんじゃありません!」
「ええー。だって、すっごくかわいいんだよ!!」
 不服そうに頬を膨らませた娘の頭を再びぺしっと引っ叩いた母親の頬は引きつっていた。
 赤といえば、この村では不幸の象徴ともいうべき色。むしろデビルの色といいたくなる色である。
 何の因果か、魔怪村の周辺では赤い色をしたモンスターが多い。しかも、それらは元の種の亜種であるらしく、ちょっぴり(という言葉では生ぬるいほど)強かったり、迷惑ではないがちょっぴり厄介だったりする、そんな存在なのである。
 娘の見たという妖精がどんなものか解らないが、きっとろくなものじゃないわ‥‥と断じた母の考えは、この村では当然というか仕方のないことである。しかも、ここひと月ほどの間──セベナージ領の各地の村が相次いで謎の襲撃を受け、壊滅しているという噂もあるのだ。
 怯える母が娘にとっては不思議だったが、事情を知れば納得もしたかもしれない。‥‥事情を聞くにはまだ幼すぎるけれど。
「ほんとにもう、あんたって子は。他所ではそんな話、するんじゃないわよ? ほら、もうお手伝いはいいから。そろそろ寝なさい」
 もひとつおまけにお尻をぱしっと引っ叩き、母親は娘を厨房から追い払った。

 しかし、その数日後。妖精を目撃したのが自分の子供だけではないと知ることとなり。
 怯えた村人たちにより、魔怪村からキエフのギルドへ急ぎの依頼が持ち込まれることとなったのだ。


●子供と妖精

「赤い妖精さんだ!」
「えへへ、やっぱりかわいいよね〜」
 子供たちの間では、赤い妖精は既に日常といえる存在になっているようだ。
「お前たちは僕たちが守るんだ、大人なんかにまけないぞっ」
 守ると宣言した少年の笑顔は明るく、使命感に燃えている。
 そして宣言された妖精は、くるりと少女の周りを飛んで袖口をくいくいと引っ張る。
 別の妖精がよいしょよいしょと少年の背中を押す。
「ふふーん、俺懐かれたー!」
「ずるーい!」
 少年少女は気付いていない。妖精たちの必死な表情に‥‥

●今回の参加者

 eb5617 レドゥーク・ライヴェン(25歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5631 エカテリーナ・イヴァリス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5655 魁 豪瞬(30歳・♂・ナイト・河童・華仙教大国)
 eb5662 カーシャ・ライヴェン(24歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec3237 馬 若飛(34歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ec3272 ハロルド・ブックマン(34歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●8月30日
 セベナージ領の村、通称「魔怪村」へ行く依頼を受けた――――――ハロルド手記

 焚き火の炎を頼りに記すハロルド・ブックマン(ec3272)の手記は、そう書き出されていた。
「魔怪村か。あんま、うれしくない呼ばれ方なんだろうなぁ」
 ひょいと羊皮紙を覗き込んだ馬若飛(ec3237)は、記された文字にそんな感想を抱く。
「ただでさえこの地方は最近、デビルが活発らしいしな」
「この地方に限ったことではありません。ラスプーチンの一件以来、ギルドに並ぶ依頼はデビル関連と思しき物が増えていますし」
 就寝の準備をしながら、エカテリーナ・イヴァリス(eb5631)がそう返す。
「村の方々は魔怪村と言われることには抵抗がないようでしたけれど」
 愛らしく首を傾げたカーシャ・ライヴェン(eb5662)の言葉に魁豪瞬(eb5655)はごんぶと眉毛を持ち上げて訊ねた。
「カーシャさんは、訪れたことがあるのじゃろうか?」
「ええ、一度だけ‥‥」
 ふ、と翳りを帯びた視線を逸らしたカーシャの手からバックパックを取り上げて、夫レドゥーク・ライヴェン(eb5617)が苦い笑みを浮かべる。
「どうも、何だか嫌なことがあったらしく、私も詳しく聞いていないのですよ」
 さっとカーシャの頬に赤みがさしたが、やはり語るつもりはないようだ。語られぬ情報より不可欠な休息を選び、カーチャはテントの天幕を開いて振り返った。
「先に休憩をいただきます。レドゥークさん、カーシャさん、あとはよろしくお願いします」
「お堅い騎士サマだぜ」
 若飛の呆れた声を聞き流し、カーチャはテントへ姿を消す。つまらなさそうに肩を竦めると、若飛も割り当てられた寝床へと姿を消した。


●8月31日

 魔怪村に到着した。風の噂に伝え聞くほど変わった村ではないようで、落胆を感じ得ない――――――ハロルド手記

「きゃあああ!!」
「冒険者がモンスターを連れてきたぁぁっ!!」
 咄嗟に一同が確認したのは、カーシャの愛馬ブラウニー。正確には、その背に潜んだ翼を持つトカゲ──アノーン。しかし、トカゲなりに躾の行き届いたアノーンは主の言いつけを守って荷物に紛れている。
「ち、ちちち違うんぢゃ! ミーはモンスターではないんじゃ〜っ!」
 豪瞬の叫びは村人に届かない。モンスターと間違われないように‥‥と気をつけてはいたが、河童という種族を初めて目にする村人にとっては充分モンスターに映る。というか、モンスターそのものに見えているだろう。
「‥‥ああ、そうじゃ! ほれ、これを見るのじゃ!!」
 今にも火掻き棒で殴られそうな豪瞬は、救いの主を思い出した! 胸に輝く青銅のメダル。王家の紋章の裏に記されたのはラスプーチンによる反乱の起きた年月と共に「王国のために尽力した勇者を称えて」と文字が躍る──褒章メダルを目にし、村人たちは視線を交わし合い、今度は諸手を上げて歓迎した!
「いやあ、あの時の勇者さんかい。悪かったな、信用しなくて」
「信じてもらえればかまわんのじゃよ」
「なんだぃ、良いモンスターなのかぃ! おばちゃんすっかり食われると思ったよ!」
 あっけらかんと笑うおばちゃん。
「あの、だからモンスターじゃ‥‥」
「いや、むしろ捌こうとしてただろ。確かに亀っぽくて美味そうだけどさ!」
 それは、おばちゃんの手に握られた手入れの行き届いた包丁を指差した青年の言葉。
「だから、ミーは! って聞いて欲しいのじゃ〜!!」
 すっかり豪瞬を良いモンスターと認識したようである‥‥めでたいのかめでたくないのかは別として。
「良い人たちなんですよ‥‥?」
 カーシャのフォローも豪瞬の寂寥感を増すばかり。レドゥークが心配したほど髪の色に過剰反応を示す村人もいない。おおらかで心の広いレドゥークではあるが、大好きな赤という色に関してだけは少し過敏。魔怪村の村人たちとはちょっとばかり相容れない一点であるかもしれない。


●9月1日
 子供達の案内でターゲットに遭遇。性悪の妖精には見えないが、油断は禁物か――――――ハロルド手記

 さて、何だかテンションの高い村であるが、観光に来たわけではない。頭を切り替え依頼に向き合う。
「まず問題の妖精を見つけないことには始まりませんね」
 レドゥークはふぅむと口を結ぶ。探すといっても、いるかどうかも解らないものをどうやって探せば良いものか。
「子供たちを説得しましょう、彼らしか見ていないのですもの」
 そう提案したカーシャだが、彼女自身もどう説得すればよいのかという点までは考えていなかった。想定の範囲内ではあるが、当然、子供たちにはしっかりと警戒されている。
「妖精ねぇ」
 ぽりぽりと頬を掻いた若飛にハロルドの達筆な字が反応した。
『赤い妖精、恐らく火のエレメンタルフェアリーなのだろう』
 夫妻が事前に当たりをつけたモンスターを、伝聞ではなく確実に己の知識とするため、ハロルドはキエフの図書館で事前に調査をしている。もちろん、その絵姿もしっかりと脳裏に焼き付け済。ちなみに、説得については会話を伴うため、仲間に丸投げ中である。
「って、あれか? 最近同業者さんがよく連れてる、シフールを半分にしたような奴」
 こくりと頷かれ、鼻を鳴らす。ちなみに、説得が失敗したら尾行すればいいと考えた若飛もまた、説得は仲間に丸投げ中。
「あんま害がありそうな感じはしなかったが野生だと違うんかね」
 数年前線を離れていただけでそんなに鼻が鈍ったかと、いささか自身に落胆した若飛に、カーシャは優しく笑みを向ける。
「野生のものの方が更に臆病でしたわ」
「自ら人と接触しない種族ですから、おそらく何かあったのでしょう」
 先日もエレメンタルフェアリーと関わる仕事をしたばかりの夫妻にとって、その存在や情報はまだ記憶に新しい。表情は変えぬものの‥‥予備知識を蓄えてきたハロルドは、昔なじみが見る限り、ちょっと悔しそうだった。

 時間は少し遡る。
「妖精を目撃したというのは貴方達ですね」
 見かけた子供たちを鋭い視線が射抜く。ビクッと身体を震わせて、けれど竦んだ足では逃げることも叶わず、ある者は涙目で、ある者は敵視の眼差しで、カーチャを睨み返す。
「あんたたちは大人の回しもんだろ!」
「絶対に教えないんだから!」
「俺たちが守ってやるんだ!!」
 使命感に燃えた子供たちの姿は、とても微笑ましく。
 怯えさせてしまったかと、カーチャは表情を引き締めたまま言葉を選ぶ。
「害があると判断すれば退治しますが‥‥大人達にも話しましたが、まずはその妖精を見てみないと何とも言えません」
 よほど彼女の瞳が冷たく見えたのだろう、子供たちはそれでも胡散臭げな視線を変えなかった。
 黄色い嘴で器用に苦笑し、子供たちの目線までかがみ込んで、豪瞬はその頭を撫でた。
「別に妖精が変だからって問答無用で討伐したりはせぬので安心して欲しいのぢゃ」
 緑の肌や太いつながり眉毛、嘴などに目を奪われていたが‥‥その瞳が優しく微笑んでいることに気付いて、子供たちは戸惑い視線を交わす。揺らいだことを見て取った豪瞬は敵愾心を抱かれているであろうカーチャを振り返った。
「はい、解っています。‥‥害のある妖精であれば、子供たちが真剣に守ろうとは思う事すらないでしょうからね」
 厳しそうな女性が、しっかりと子供たちと妖精のことも考えてくれている。その事実は、子供たちの背中を押すに足るものだったようだ。豪瞬の首に腕を回し、カーチャを手招きし、リーダーらしい少年は小声で告げた。
「‥‥あんたたちと仲間には特別に、明日の朝、会わせてやるよ。早起きするんだぜ?」
 冒険者は真摯な表情を浮かべ、深く頷いた。

 ──第一の関門、突破。

 そう思った次の瞬間。紅葉の手が豪瞬の皿をさわさわと撫でた。別の手がぺしぺしと叩く。
「‥‥って皿を弄るのだけは勘弁して欲しいのぢゃぁ〜」
 半泣きの豪瞬、それも子供に気に入られた副作用だと諦めてもらおう。


●9月2日
 大人たちの説得に失敗。感情論を理論で論破するのは骨が折れる――――――ハロルド手記

 まだ日の昇りきらぬ早朝。朝靄漂う魔怪村の片隅で、赤い羽根の妖精が舞う。
「エレメンタルフェアリー‥‥ですね」
 赤い髪に赤い羽根、それは妖精たちが炎の属性であることを示す。レドゥークは親近感を覚えそっと手を差し伸べたが、妖精たちはさっと身を引き子供たちの背後に身を隠してしまう。覗き見ているあたり、興味は抱いているのだろうが‥‥
「比較的好奇心の旺盛な炎の属性だからこそ、人前に姿を現したのでしょうね」
 目を細めてその姿を愛でる。しかし、ほどなく違和感に気付いた。
 ‥‥そう、妖精たちは子供たちを押したり、引っ張ったり、しきりに働きかけているのだ。
「見てください‥‥ほら、この子達、何か言いたそうですよ」
 カーシャの言葉で子供たちは初めて、その動作に気付いたようだ。
「どうしたの? 何がいいたいの?」
 子供たちの問いかけに、妖精たちは答える術を持たない。幼子に対するように、カーシャはあくまで優しく接する。
「どこかに行きたいのですか?」
 不思議そうに飛ぶ妖精たちは、質問の意図が解らないようだ。
「何か来るのですか?」
 子供たちの頭や豪瞬の皿に陣取ってカーシャを見つめる妖精たち。程なくカーシャは大きな壁にぶち当たった。
「なあ、妖精に言葉って通じないんじゃねーの?」
「‥‥そうですよね」
 若飛に指摘され、がくりと肩を落とした。ペットとて、言葉を理解するわけではない。躾けられ、音の組み合わせと行動とを重ねて覚えるだけ──それこそテレパシーの魔法でも持ち合わせない限り、言葉による意思疎通は難しい。
「ミーに任せるのじゃ」
 進み出たのは豪瞬。眉尻を上げてニヒルな笑みを浮かべ、あごに手を沿え決めポーズ!
「言葉がダメならジェスチャーにすれば良いのじゃよ!」
 ──何処かへ行きたいのかのう? そうか、逃げたいのか。いったい何から? 恐いもの?
 四苦八苦しながら情報を引き出す豪瞬と、それに手を貸すライヴェン夫妻。
 傍観しながら若飛が呟いた。
「河童の方がモンスターに近いって事かね?」
(それは恐らく、違う‥‥)
 ハロルドは内心で突っ込んだが、敢えて貴重な羊皮紙に書き記すほどの事でもないかと、その発言は黙殺した。
 ──そうして、冒険者だけで村の大人へ状況を語りに向かったのだが、安全だと伝えてもモンスターということに違いはなく。
「外見が赤いとか少々変だからってなんでもかんでも排除とかはよくないと思うのぢゃ」
「やつらはモンスターなんだよ!」
「何でも倒せば物事が解決するというものではありませんし、倒した事で事態が拗れる事もありえますから」
「それに、彼らは村に訪れるであろう危機を知らせてくれたのですよ」
「訪れる? 奴らが招くの間違いでしょっ」
「だが、村に危険が訪れる度に知らせてくれる妖精ってのは、手放さねー方がいいんじゃねぇ?」
 若飛の考えていた、全員が納得できる形。確かにそれを模索できるのは冒険者のみだろう。しかし、ベストを選んで失敗するという選択肢を選べないのもプロ。ならばベターを選ばなければならない。カーチャは白熱する双方の間に立ち、仲間たちを押し留める。頷いた豪瞬は、その瞳に悲しげな色を浮かべて、村人を見渡した。
「世界にはわしみたいな河童の住む場所もあるのぢゃよ」

   ◆

 カーチャの提唱したベターとは、妖精たちを倒した振りをし、村の外へ妖精を逃がすという案だ。
 もちろん、それをするには子供たちへの説明が必須。
「それでも‥‥私たちにできるベターですよね」
 カーシャが頷いて。それを敢えて否定する仲間はいなかった。
「せめて滞在できるギリギリまで共にすごさせてあげましょう」
 そう言うレドゥークに異論を唱える仲間もいなかった。
 だから、冒険者たちは村での二晩目を過ごすことになり──‥‥

 それは最も夜闇の濃い時刻。
 欠伸をかみ殺した若飛は、傍らの豪瞬を見遣る。貫きたい理想と現実の壁は、未だ厚かった。
 今度は溜息を押し殺し、窓から外を見回した若飛は、明るい輝きに我が目を疑う。それは、まるでレドゥークの髪のような、赤みを帯びた金。いや、金に輝く赤。端的に言えば、炎の色。
「なぜ鳴子は鳴らなかったじゃ!?」
「空を飛ぶ敵なんじゃねーの? 起きろハロルド!」
「ご夫妻もエカテリーナさんも起きるのじゃ!」
 飛び起きて窓から村を見たハロルドは、掠れた声を漏らす。
「セベナージ領での襲撃‥‥村一面が燃やされる等と聞く」
 眠気など、その一言が吹き飛ばした。
「「行きましょう!!」」
 何故かマスカレードを握り締めたライヴェン夫妻の声に頷き、冒険者たちは駆け出した!!

 轟々と炎が巻く中心に、それは居た。
「燃えろ、燃えろ!」
 ふいごを構えて炎を撒き散らす影。生憎、それが何者なのか判別できる冒険者はいなかったが‥‥異様な外見と、引き連れた数多のインプの姿からデビルであることは容易に想像がつく。
 どうやら、宿を飛び出す前に雨を降らせたことは正解だったようだ。
「仮面レッダー、参上!」
「愛ある限り戦いましょう。命、燃え尽きるまで! 美女仮面クラースヌゥィ!」
 なぜ仮面? 美「少女」?
「さあ、愛と勇気の力です!」
 突っ込みたい衝動を必死に堪えつつ、オーラパワーをありがたく頂戴すると各々の武器を構えデビルたちへと突撃する!
 上空に逃げたインプたちをウォーターボムが、魔弓ウィリアムが、的確に叩き落せば‥‥剣構える者たちは、二度と飛翔する間を与えない。的確に分けられた担当で、陣形の弱点も露呈していた。しかし、攻め込ませねば同じこと。
「武道家は別に拳しか使えぬワケではないのぢゃ、ユーらにはコレで十分ぢゃよ!」
「私の必殺技、パート1!」
 それぞれ魔剣ストームレインだったり、カウンターだったりするのだが、もちろんその効果は期待通りに大きい。
「ちっ、冒険者‥‥引くぞ!」
 劣勢を悟るや否や、首魁はインプに指示を飛ばし夜の闇に紛れた──恐らく、小さな虫にでも姿を変えたのだろう。
「逃げてくれりゃ儲けもんだ。火ぃ消すぜ!」
 村が燃え尽きてしまっては‥‥妖精の忠言も、冒険者の尽力も、灰燼と化してしまうから。

 そして消火活動に力を貸し、妖精たちは任務を果たしたとばかりに姿を消した。
「‥‥悪いことばかりじゃないな、赤いのも‥‥」
 そう呟いたのは誰だっただろう。しかし、レドゥークには、その言葉こそ報酬だった。


●9月3日
 依頼終了。閲覧させてもらった書物によれば、この近辺には大型のモンスターが多く発生するようだ。その殆どが通常のものより赤く、個性的な個体とのこと。これがこの地特有の現象ならば魔怪村と呼ばれるのも得心がいく。
 今後ともこの謎に触れる機会があれば、記す価値があると思われる――――――ハロルド手記