【聖夜祭】ゆくちま、くるちま

■ショートシナリオ


担当:やなぎきいち

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:12月27日〜01月01日

リプレイ公開日:2006年01月08日

●オープニング

●ほんわか司祭様たちのおはなし。
 冒険者の間で密かに広まっている手のひらサイズのお人形があるそうです。通称、ちま。
 ちまの愛好家さんたちの間では、自分で自分そっくりのちまを作るのが通なのだとか。他にもちまを作って恋人にプレゼントしたり、お守り代わりに懐に忍ばせたり、沢山の着替えを作ったり、ちま愛好家さんたちの想像力と愛情は止まるところを知らないようです。
 ──ちまと一緒に聖夜祭を楽しもう!!
 そんなことを言い出す愛好家さんがいたのも、当然といえば当然のことでしょう。

「今年の聖夜祭はちまさんとご一緒に過ごしたいですわねぇ」
 オーガとちまの交流‥‥ちょっと違うでしょうか、でもそんな報告書を目にしたユーリィさんはほわわんと夢見心地な表情を浮かべました。のんびりやのユーリィさんは女司祭様。普通の人ならちょっぴり──いいえ、かなり嫁き遅れ感の雰囲気漂う26歳です。
 冒険者さんたちが集まる酒場をひっそりこっそり覗いてはちまを見てほんわりと和み、冒険者さんたちがちままごとに精を出しているのをひっそりこっそり覗いてはぽややんと夢を見ていたユーリィさんもとうとう自分のちまが欲しくなってしまったご様子です。
「でも、一人ではわたくしも寂しいですし‥‥ちまさんも可哀想ですし‥‥お友達になってくださる方がいらっしゃると良いのですけれど‥‥」
 頬に手を当て首をかしげ、ふうと溜息を吐くユーリィさん。溜息に合わせて、栗色の三つ編みを止めている質素な白リボンがゆうらりと揺れました。
「ちまさんのお友達ができますように、セーラ様にお祈りいたしましょう〜」
「ユーリィ様、セーラ様にお祈りするのも必要でしょうけれど、冒険者ギルドにお願いしてみるのも良いと思いますわ!」
 人助けに精を出している冒険者さんたちは、この女司祭様たちの間ではセーラ様の御使いに映っているのかもしれません。お金をもらっていることなんて知らないのでしょう、きっと。
「それでは、わたくし早速、冒険者ギルドへお願いしてまいりますわね〜」
 ごきげんよう、と服を摘まんで挨拶を交わしたユーリィさんはいそいそと冒険者ギルドへ向かったのでした。

 ──いそいそとしているのに他の人たちに追い抜かれているのは、おそらく、ドレスタット七不思議の1つに違いないでしょう‥‥。

●今回の参加者

 ea3651 シルバー・ストーム(23歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5297 利賀桐 まくる(20歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea7906 ボルト・レイヴン(54歳・♂・クレリック・人間・フランク王国)
 ea9128 ミィナ・コヅツミ(24歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0976 花東沖 槐珠(40歳・♀・僧侶・人間・華仙教大国)
 eb2581 アリエラ・ブライト(34歳・♀・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 eb3503 ネフィリム・フィルス(35歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

円 巴(ea3738)/ ゴールド・ストーム(ea3785)/ フィニィ・フォルテン(ea9114)/ 麻津名 ゆかり(eb3770

●リプレイ本文

●最初にするのは何でしょう?
 それはもちろんご挨拶です。セーラ様の使徒であるユーリィさんはただの性格かもしれませんが、何だか礼儀を重んじているみたいです。
「お初にお目に掛かります、セーラ様にお仕えしておりますユーリィと申しますの。どうぞよろしくお願いいたします〜」
 深々と頭を下げるユーリィさんに、ちいさなパラのアリエラ・ブライト(eb2581)さんもぺこりと頭を下げました。
「お裁縫はあまり得意じゃないけどがんばるですよ〜♪」
「大丈夫ですわ、セーラ様の御加護がありますもの〜」
「それに加えて、ちまへの愛があればもう無敵ですよね〜♪」
 同じくセーラ様を奉じるミィナ・コヅツミ(ea9128)さんも当然だと頷きました。
 ──いや、セーラ様の加護ってそんな都合の良いもんなのか?
 白の神聖騎士ネフィリム・フィルス(eb3503)さん、同じセーラ様に仕える立場から、思わず心の中でつっこんでしまいました。いえ、ネフィリムさんこそただの性格かも?
「私は、人形つくり初めてなので教えてください」
 思わず目を転じて見てしまったのは穏やかな口調で話した男性、同じくセーラ様の使徒であるボルト・レイヴン(ea7906)さんです。果たしてこの白クレリックはどうなんだろうとまじまじと眺めてしまったネフィリムさんに気付いたのは、幸いにもシルバー・ストーム(ea3651)さんだけでした。クールで寡黙なシルバーさんは敢えて気付いたことを教えたりはしないみたいですけれど。
「私も‥‥家事ならそれなりに出来ますので‥‥。少しなら、お教えできると思います‥‥」
 クレリックではなく僧侶ですけれど同じく白の聖職者、花東沖槐珠(eb0976)さんも色々と教えてくれるようです。本当はちまとセンスの良い凝った服に髪飾りや靴、帽子、着替えの服まで作りたいのですけれど時間が足りません。作れるのは二つ、頑張ってもちまと簡単な服でしょう。その代わり、皆に丁寧にも色々教えてくれるのでしょうか。でもきっとそれが正解! だって、以心伝助(ea4744)さんのちまを見る限り、ちまに凝った服は似合わなそうですしね♪
「ちま仲間が増えるのは嬉しいっす。ユーリィさんも皆さんも、一緒にちまっていきやしょうー!」
「「「おー!」」」
 張り切るちま作りの先輩、伝助さんの掛け声で、いざ、ちま作り!


●いざ尋常に、ちま作りっ!
 仕立て屋さんで布切れを貰ったり、毛糸を買ったり、思いつく限りの材料を全部揃えたらいよいよちま作りです☆
「こんにちま〜♪ 新しいお友達の為にお手伝いに来ました♪」
 遠くから駆けつけたフィニィ・フォルテンさんは立派な先輩ちまを持っていて、ちま作りの強力な戦力になってくれそうです。
「これが見本だ頑張って作れ、わからない事は聞いてくれ」
 シルバーさんの従兄弟というゴールド・ストームさんは何だか偉そうですが、慣れているのかシルバーさんはそんな言葉も右から左。利賀桐まくる(ea5297)さんはそんな二人をみてちょっぴり憧れました。自信に溢れた態度も、過剰に反応しないクールな態度も、どっちもまくるさんには無い物だったからです。
 ──ちくちくちくちく♪
 ──ちくちくちくちく♪
「シンプルな形だから作るのも簡単だと思っていたんですけど、なかなか難儀ですねぇ」
 右脇のラインがなんだかデコボコしてしまってムムムッと唸るミィナさん。材料集めのついでにちゃっかり自分の材料も買い占めてきたしっかり者のお友達、麻津名ゆかりさんも隣で悪戦苦闘。
「手を刺さないように、それだけは気をつけてくださいね〜」
「‥‥いたっ」
 言われた先からちくっと指を刺してしまったまくるさん、大きな瞳を少し潤ませてしまいました。
「大丈夫ですか?」
 慌ててすぐにボルトさんがリカバーを唱えます。ちょっぴり大げさですけれど、ちま作りに血も涙も似合いませんものね。でも、まくるさんの涙の理由は痛さばかりではありません──自分の失敗が悔しかったからです。お裁縫も、お料理も、大好きなあの人に褒められるくらい上手になりたいのです。
「焦らずゆっくり作ればよろしいのですわ〜」
「ユーリィさんのゆっくりは本当にゆっくりでやんすねぇ」
 伝助さんは思わず苦笑い。隣に腰掛けて犬のような耳飾りを教えてもらいながら縫っているのですけれど、何だか合間にちまが1つ作れてしまいそうな気がしてしまいます。でも、こののんびりした雰囲気もユーリィさんの長所でもあるのでしょう‥‥きっと。
「でも、ちょっとお腹が空いてしまったのです〜」
 くぅう〜、と可愛らしい音を立てたアリエラさんのお腹の虫のために、円巴さんがパンにおかずを挟んだ食べやすいご飯を用意してくれました。皆で食べて、午後もしっかり頑張らないといけません。
 パクッと齧り付きながら、まくるさんはお姉さんな仲間たちを見回してぽつりと小さく呟きました。
「‥‥お嫁さんになるまでに‥‥もう少し‥‥家事が上手になりたいな‥‥」
 ちょっぴり嫁き遅れ気味のユーリィさんと同年代のネフィリムさんがパンを落としてしまったのは何故なのか、まくるさんには判りませんでした。


●到着☆ 白銀の大地!!
 一昼夜の移動を経て辿り着いたのは、見渡す限り一面の銀世界でした。
「うわ〜」
 目を見張った伝助さんのふところからでんちゃんがぽろっと落ち──いいえ、飛び出そうとしました。ながーいマフラーが引っかかって宙ぶらりんになってしまったのですけれど。
「あっ、ずるいですよ〜!」
 ミィナさんとおそろいのまるごとトナカイさんを着たみぃなちゃんもぴょこんと飛び出すと、さっそく二人で雪だるまを作り始めました。雪で遊ぶちまなんて、きっと初めてですね。
「ふぅ、ふぅ‥‥ゆーりぃさんも手伝ってくれやせんか?」
「もちろんですわ〜」
 ゆーりぃちゃんも、でんちゃんと一緒に雪玉を転がします。
「ゆーりぃさんが手伝ってからの方が遅くなったみたいですねぇ〜」
 売り子さんちまことアリエラちゃん、トレードマークのふりふりの白いエプロンをしっかりと腰につけ直しています。
「パラのちまって本当にちまいですから、エプロンを落としたらきっともう見つからないのですよ〜‥‥」
 一方、もーもーさんのきぐるみを着たチチちまねふぃりむさんはまくるちゃんと一緒にかまくら作りです。ぺちぺちとちまを片手にスコップを操るネフィリムさん、海戦騎士としての武器をスコップに持ち替えてもなんだか格好良くて、ユーリィさんは手を止めて見惚れてしまいました。
「どうかしやしたか?」
「いえ、ネフィリムさんのような凛々しい方はわたくしの周りにはいらっしゃいませんから‥‥憧れてしまいますね〜」
「そういうもんでやすかね?」
 一緒に雪玉を押していたユーリィさんが足を止めたので伝助さんも一緒に足をとめました。そういうものかと目を転じて見ると、ざくざくと雪を集めるネフィリムさんの隣でふらふらしながら雪を集めるまくるさんが目に映りました。
「ボルトさんとぼると君にもお願いしていいでやんすかね?」
「構いませんよ」
「あたしもスコップ持ってますよ〜♪」
「‥‥‥」
 スッと手を差し出したシルバーさんがミィナさんのスコップを借り、伝助さんのスコップを借りたボルトさんと一緒に加勢です☆ 槐珠さんもそっとまくるさんのスコップに触れました。
「代わります‥‥少し、休まれた方が‥‥」
「ふぅ、ふぅ‥‥ありがとうございます、それじゃ‥‥お言葉に、甘えますね‥‥」
 まくるさんと交代した槐珠さんを加え4人のスコップでどんどん大きな雪山が築かれていきます。まくるさんはアリエラさんとちま用のかまくらを‥‥と思ったのですが、気付いたら雪うさぎがずぅらりと。手のひらサイズの雪うさぎさんは、ちまのお友達にぴったりみたい。
「ふふ、雪うさぎさんの大行進です〜」
「かわいい‥‥」
 ちょこんと雪うさぎにまたがるちま、そのまま飛び出して行ってしまいそうです。
 ユーリィさんと伝助さんの努力の結晶、とてもとても大きな雪だるま。それから大きな大きなかまくらが出来上がれば休憩です♪


●休息は食事と共に
「雪の家みたいですねぇ〜。中は暖かいです〜! あ、これ美味しいです〜」
 アリエラさん、口にした珍しい保存食──かすていら風味の保存食に嬉しそうに頬を緩めました。ミィナさんが珍しい保存食があるから皆でたべましょう、と色々提供してくれたのです。
「抹茶味の保存食も美味しいねぇ」
「小豆を入れた御飯はお祝いの時に食べるんでやすよ」
「それでは、今回にはぴったりですねぇ」
 食べ損ねてしまいそうなユーリィさんに小豆味の保存食を取り分けながら伝助さんがそんなことを教えてくれました。当のユーリィさんはミィナさんのリクエストで温かいシチューを用意してくれているところです。
「あの‥‥よそいますね‥‥」
「お願いいたします〜。ミィナさん、シチューが出来ましたわ〜」
 槐珠さんに用意した器への盛り付けをお願いしたユーリィさんが声を上げると、満足気なミィナさんがかまくらに飛び込んで毛皮の敷物へ腰を下ろしました。そのかまくらの天辺にみぃなちゃんの大事な旗を立てたのはまだ秘密☆
「あ、美味しい‥‥ユーリィさん、きっと良いお嫁さんになれますよ♪ あ、伝助さんとか夫さんにいかがです?」
「‥‥へ?」
 笑いながら指差された伝助さんは吃驚して目がまん丸です。からかわれることになれていないのでしょう、ユーリィさんは面白い‥‥いえ、可哀相なくらい真っ赤になってぷるぷると首を振りました。
「あっ、あのっ、こんな嫁き遅れの相手に挙げるなんて、伝助さんに申し訳ありませんわっ」
「‥‥‥」
 シルバーさんが片眉を僅かに上げました。誰かがテレパシーを使ったなら、慌てたユーリィさんが冒険者と同じくらいの早さで喋れたことに感心したシルバーさんの言葉が聞けたでしょう。
「ユーリィ様‥‥皆さんと同じくらい早く、お話しできるのですね‥‥」
「ゆったりとしか、喋れないんだと思ってました‥‥ごめんなさい‥‥」
 槐珠さんとまくるさんがワンテンポ遅れて驚いた反応を示しました。どこか寂しそうなのは気のせいでしょうか?
「でも気になってる男の一人や二人、いるんだろう?」
「ええと、そ、そんなことは‥‥」
「じゃあ気になってた男はどうだい?」
 ネフィリムさんがシチューを口に運ぶ手を止めて尋ねると真っ赤なユーリィさんは俯いてぐるぐるとシチューをかき回します。ユーリィさん同様、嫁き遅れに脚を突っ込んでいるネフィリムさん、色々と気になるお年頃のようです。そして意外にも興味津々という面持ちなのがアリエラさんです。
「パラだから子供に見えるけど、私だって立派な嫁き遅‥‥じゃない大人ですよ〜!」
 ぷぅっと頬を膨らませたアリエラさんの頭をついぽむぽむと叩いたネフィリムさん。そんな子ども扱いにまた頬を膨らませたアリエラさんに、槐珠さんは思わずくすくすと笑ってしまいました。
「皆さん美人っすから、恋人なんて作ろうと思えばいくらでもできやすよ」
「伝助さんもユーリィさんのこと、満更でもないってことですかね?」
「え? いや、それはっすねぇ‥‥」
 矛先が変わりこちらも真っ赤になっておたおたし始めた伝助さん。はいともいいえとも言えない伝助さんからシルバーさんはそっと目を逸らしました。自分には、少なくとも今はまだ関係ない──そんな事を考えているに違いありません。


●新年の足音、聞こえますか?
 お腹が膨れて温まったら、再びちままごとです♪
「ふむふむ、なかなか興味深いですね」
 ちまかまくらでちまスクロールを広げ研究中なのはしるばー君。
「えーいっ!」

 ──ぼふっ。

 しるばー君の横っ面に大きな雪玉が激突しました。
「わーい、大当たりです〜♪」
「すみません‥‥」
 大喜びするみぃなちゃんの隣でしゅんとしながらも雪玉を構えるまくるちゃん。ちまの手から繰り出される鋭い一撃をクールに交わし‥‥損ね、再びぼふっと、今度は顔面にクリーンヒット☆
「あはは、しるばー君真っ白です〜‥‥はぶっ!」
 楽しく笑うありえらちゃんの顔面にもぼふっと雪玉がヒット!
「‥‥‥」
 邪魔をすると攻撃します、と無言で語るしるばー君へ更に雪玉が襲い掛かりました。
「折角遠くまで来たんでやんすし、一緒に遊ぶっすよ!」
 長ぁいマフラーを靡かせてわんこ耳を着けた伝ちゃんがピッと指を突きつけました。その伝ちゃんにもぼふぼふっと雪玉がヒット! ねふぃりむさんと槐珠ちゃんの投げた雪玉が右と左から頬っぺたに張り付いています。
「きゃあっ」
 ウルの長靴を履いたユーリィさんごとゆーりぃちゃんが転び、持っていた雪玉が宙を待って伝ちゃんの頭にぽとり☆
「皆が敵でも負けないっすよ!」

 ──ぽぽぽぽーん!

 雪玉を次々に投げる伝ちゃん。どうやら今日の雪合戦は乱戦の模様です。
「危ないです‥‥!」
 転んだゆーりぃちゃんを降り注ぐ雪玉から身を以て庇うまくるちゃん。ありがとうと微笑むゆーりぃちゃんの解けそうなレインボーリボンをキュッと結び直し、みぃなちゃんが二人の手を引いて走ります。
「かまくらの陰にかくれて、しるばー君と一緒に応戦しましょうー♪」
「ええっ!? 本当に全員対一人っすか!?」
 ガガーン! 硬直した伝ちゃんにここぞとばかり、雪玉が投げられました。

 みるみるうちに雪に埋もれ目を回してしまった伝ちゃんが目を覚ましたのは翌日でした。

「あら、伝助様‥‥ちょうど良いところです」
 テントから出た伝助さんを招いた槐珠さんが指し示す方角では稜線から明かりが染み出し、湖面に陽光を散らし始めていました。その湖にまくるさんが用意した舟を出す準備をしています。
 シルバーさんとボルトさんに見送られ、ちまたちを連れて湖に漕ぎ出しました。

 やがて、姿を現した赤い太陽がだんだんと黄金色に染まると‥‥アリエラさんが雪ウサギを舳先にちまっと乗せました。
「セーラ様に差し上げるのです〜。でも溶けちゃうから、ここでお祈りです♪」
 伝助さんが太陽に祈りを捧げます。
「来年も今年みたいな楽しい日々が過ごせますように」
「ちま友達がたくさん増えますように」
 まくるさんとミィナさんもそっと瞳を閉じました。そして耳付近の髪を押さえたミィナさんが胸中で祈りました──世の中のハーフエルフ差別が少しでも収まりますように、と。
 最後に宗教の垣根を越え、槐珠さんとネフィリムさん、ユーリィさんがそれぞれの神へと感謝と祈りを捧げました。

 色々あったけれど、一年間無事に過ごせた感謝を。
 新しい年を迎えられる喜びを。
 そして迎える年が平穏に過ごせるように祈りを。

「あの人と‥‥ずっと元気に‥‥一緒に居られますように‥‥」
 小さく漏れたのはまくるさんのお祈りに、ネフィリムさんも釣られて願ってしまいました。
「来年中には結婚できますように」