丹後の物の怪たち・二
|
■ショートシナリオ
担当:安原太一
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 50 C
参加人数:3人
サポート参加人数:1人
冒険期間:11月13日〜11月18日
リプレイ公開日:2008年11月20日
|
●オープニング
丹後の物の怪たちが宮津に狐の大群を率いて現れてから一月が経とうとしていた。
宮津では稲荷神の眷属として祀られるようになった化け狐たちの総大将白狐、先の話し合いの結果、物の怪たちは丹後諸藩と相互不可侵条約を結び、一月毎に話し合いを進めるという結論を受け入れ、狐達を率いて山に帰って行った。
その間にも丹後の情勢は動いている。盗賊たちの動きは相変わらずだが、それ以上に脅威を増しつつあるのがイザナミの不死軍だ。峰山藩に出現した黄泉の王を名乗る丹後の導師は藤豊軍との激戦を制して峰山藩の大半を削り取った。また南東地域には岩山城を手に入れた大国主がおり、南部の大江山には鬼達が小国を築き上げている。
白狐を始めとする化け狐ら丹後の物の怪たちは、この困難な状況において人に味方し、大国主と戦うと言った。白狐はイザナミの不死軍も脅威であると考えているようであり、人に味方すると言ったのもあるいは彼らも生存を脅かされているからか。
今日も復興が進む宮津城下町で、お稲荷さんの前にお供えをする人々の光景が見られる。
その様子をふと目にとめた藩主の立花鉄州斎、そう言えば‥‥と先月のことを思い出す。
「狐達がやって来てからそろそろ一月になるな」
「あの稲荷神の御使いと一月毎に話し合いを進めるのではなかったのですか」
奥方からそう問われて「はて」と首をかしげる鉄州斎。
「そう言えばそんな話も出ておった気がするが。だが‥‥と言ってこちらから狐達を探しに山へ出かけると言うわけにもいかないし、それに相手は物の怪とは言え稲荷神の眷属であろう。あの白狐が何を考えているのか、我らには想像もつかんよ」
鉄州斎はそう言って肩をすくめる。奥方と町の様子を見て回ると、鉄州斎は宮津城へ引き上げていく。
城の再建は順調に進められていた。峰山藩に不死軍が現れたと聞いて、さらに防備も強化されていた。もっともそれは藩全体に言えることでもあった。宮津藩各地で要塞化が進んで迫り来るイザナミの不死軍に対抗しようと言う動きも見える。
峰山藩でのイザナミ軍との大規模戦闘は予想外に藤豊軍が善戦したこともあって、宮津の民の間にはかすかな希望が生まれていた。とは言え、鉄州斎は峰山藩からの避難民を受け入れつつ、最悪の事態を想定している。このままイザナミ軍が東進してくれば宮津は一気に飲み込まれる。奇跡でも起きない限りイザナミ軍を食い止めることは出来ないだろう。イザナミ軍の総大将、丹後の導師は全滅戦を仕掛けてくる勢いだ。宮津に攻め寄せてきたなら、この地を捨てて、東の舞鶴藩に逃げると言う選択肢もあった。鉄州斎はすでに舞鶴藩主と連絡を取っており、イザナミ軍の脅威に助力を請うていた。
迫り来るイザナミ軍の脅威‥‥あの白狐が宮津藩に現れたのはそんなある日のことであった。以前のような狐の大行列は組まず、数体の化け狐――恐らく高位の狐――を伴って姿を現したのである。武士のようないでたちで、顔だけが狐であった。町に現れた白狐たちに人々は畏敬の念を抱いて道を開けたものである。
鉄州斎は稲荷神の眷属に相応しい賓客として、宮津城に白狐を迎え入れた。
「お久しぶりですな。時の過ぎるのは早いものです。お約束どおり、一月後の話し合いに来ましたぞ」
白狐たちは差し出された稲荷寿司を前に正座していた。後ろの方でこっそり稲荷寿司をつまみ食いしている狐もいた。
「そなた達との同盟と言う話だが‥‥それどころでもなくなってきた。目下のところ、イザナミ軍が攻め寄せてきていてな」
鉄州斎が言うと、白狐は頷いた。
「存じております。どうやらイザナミ軍の亡者達は容赦なくこの丹後を蹂躙するつもりのようですな」
「我らには後がない。宮津が黄泉人に突破されればもはや‥‥」
「あの黄泉人ども、大地を死滅させる気ですかな。丹後の氏神たちも怒っておりますしな」
白狐の言葉に鉄州斎は虚を突かれた様子だ。物の怪だけではなく氏神まで出てきた。
「そなたらにとって良い知らせかな? 都の秀吉公はそなたらとの同盟を丹後の問題だと言われたそうな。干渉するおつもりはないそうな。これくらい自分達で決めろと言うことかな」
「ほう‥‥」
「まあ、平織家からの返答は頂いておらぬし、いずれにしても状況は差し迫ってきているわけだが‥‥」
鉄州斎の言葉は重い。イザナミ軍の脅威が目前に迫った今、白狐たちをどうにかして戦力に組み組むことは出来ないか。いや、仮に物の怪の力を得たとしても、あの不死軍を止めることは出来ないかも知れないが‥‥。
とにかくも白狐たちは約束どおりやって来た。鉄州斎は都の冒険者たちにも声をかける。丹後の物の怪たちとの同盟、第二回目の話し合いで、何が得られるだろうか?
●リプレイ本文
長崎藩邸――。
ベアータ・レジーネス(eb1422)は主君の藤豊秀吉との謁見に臨んでいた。
「殿、貴重な時間を割いて頂き、恐悦至極にございます」
秀吉はぽふっと吐息すると、扇子を弄ぶ。
「して、何用かなベアータ」
「はい‥‥先月の、宮津藩における稲荷神との同盟話を覚えておられますでしょうか」
秀吉は勿論だと頷いた。ぽんと扇子を叩く。
「アランが申していた丹後の物の怪の事じゃな」
「宮津を訪れた尾張武将のボルカノ・アドミラル殿がこの同盟に難色を示し、宮津の鉄州斎殿はそれも当然と考えられ、稲荷神との同盟話は平織から回答あるまで保留する事になったのです」
「ほう‥‥」
秀吉の瞳にかすかな興味の光が宿る。
物の怪との同盟を天下布武の妨げと平織家武将が考えるのは不思議でもない。それでなくとも今の丹後は各藩が藤豊家や平織家に近づいていて、政治的に難しい。
「平織には平織の、藤豊には藤豊の考えがあるからの」
「はい。ですが‥‥昨今の平織家の状況を鑑みるに、西に兵を進めるのは容易ならざる様子」
現在、宮津藩と平織家の間で同盟話が持ち上がっている。故に稲荷神の話を棚上げする事にしたのだが、この同盟の実現は困難とベアータは予測した。
「西に兵を進めぬと思うか?」
「平織を知る冒険者の間では、そのような噂です」
「‥‥」
征夷大将軍となり、畿内最大の兵力を持つ平織家が対イザナミ戦線に加わらない。こんな事があって良いものか。
秀吉の顔は厳しい。比叡山や武田と関係が悪化しているとはいえ、所詮は私戦。源徳にしてもそうである。神皇家を守護する武門の棟梁が二人とも、国家の大事を前にして、私戦を優先している。
「ベアータ、困ったわい。何か良い知恵は無いものかな。わしは神々や悪魔との戦いを前に、諸侯を一つとしてこの日本を守りたい。だが、わしが手を打つほど、事態は正反対の方向に動いておる」
秀吉の和平工作が裏目に出たかのように、東国では大戦が起こりそうな気配だ。
「東の混乱もさることながら、京都に迫るイザナミの脅威はジャパン最大の問題です」
ベアータは勇気を振り絞って本来の目的を話す。
「私はこれより宮津に赴き、再び物の怪との会談に臨むつもりです。殿下が、藤豊が宮津へ兵を送ると約束下されば、その場で宮津藩と藤豊家との同盟を提案したく」
「宮津に派兵か」
「は‥‥」
秀吉は吐息する。
「アランがの、尾張に行くと申していた。平織市を口説いてくるとな。左様な時に、わしが宮津を取り込もうとしたと思われてはアレの命があるまい。ぬしは朋輩を殺す気かよ?」
秀吉の回答にベアータは戦慄した。宮津と平織の同盟交渉はまだ破談してはいない。秀吉は平織を刺激したくは無かった。
「されど丹後の事だ。おぬしにも含めておこう」
と秀吉は続けた。
「丹波が落ちた今、わしは京大阪の守りを固める事も考えねばならぬ。宮津に兵を送れば、それだけ都の守りが薄くなるという事じゃな。しかしな、峰山、京極に続いて、宮津もわしに臣従すれば、わしは丹後を一つにまとめて対黄泉の前線基地とする事も出来る。大国主の事はあるが‥‥派兵は考えぬでもないぞ」
秀吉にも色々思うところがある。丹後は対イザナミの最前線だが、いざとなれば丹後を切り捨てる選択も関白には必要だ。都が落ちるか、落ちなくても主戦場となれば影響はジャパン全土に及ぶ。
「イザナミには勝てませんか?」
「率直じゃな。イザナミ軍は10万‥‥正確な数字は分からぬがな。わしが京都に集められる兵は多く見積もって二万かの」
京大阪、それに長崎、薩摩などかき集めた数字だろう。イザナミ軍は放置すれば増殖する。下手に迎撃しても黄泉の軍勢を増やすだけだ。
「西に不安もある。イザナミが西へ向くと厄介じゃ」
長州もイザナミの猛攻を受けているらしい。
「まだ持ち堪えている。黄泉軍は西進に本腰ではない。イザナミの目は都に向いているからの。黄泉が本気で攻めたなら長州は沈む。九州に上陸され、大宰府や長崎が黄泉の手に落ちるのは拙い」
長崎藩の武将達は長州が黄泉に襲われているうちに大宰府を攻めて神器を奪還すべきと進言している事を秀吉は明かした。
「わしは反対した。長州は朝敵だが、人間じゃよ」
ともかく、秀吉の戦力では都と長崎を二つともは守れない。秀吉は都に戦力を集中し、乾坤一擲を考えているが‥‥。
ところ変わって宮津。白狐との会談――。
白狐は約束どおりやって来たが、前回と状況は変わっていない。鉄州斎も平織からの回答がない以上、物の怪との同盟を安易に進めるわけにはいかなかった。
冒険者達は一様に狐達との同盟に賛成であったが、鉄州斎は慎重であった。
「どうしたものであろうか?」
鉄州斎はそっとベアータに尋ねる。ベアータは藤豊家臣。秀吉から何か含まれて丹後に来たと鉄州斎は考えたのだろう。
「‥‥えーと」
ベアータは困った。秀吉からは先走るなと釘を刺されている。
アランかボルカノ辺りから知らせが来ないかと時折、東の方角を見ていたが。アラン達が尾張に向かったのが四日前。ちょうど今頃は尾張でも会議が開かれている頃か。
「先月このような話し合いの形式を提示した身で恐縮ですが‥‥情勢は変化しております。今、宮津藩と稲荷神様達との同盟のお話、私は進めるべきと存じます」
平織家の事情に触れられないのではぐらかして答えるベアータ。鉄州斎はじっとベアータを見据えたが、察したようだ。
「平織家の事は存じませんが、我が藤豊家は宮津藩と稲荷神の同盟を問題なしと考えております」
本来なら、ここで丹後への増派を約束する秀吉の書状を取り出す所だったが、想いに反して書状は無い。
「ふむ。実はな、平織家から返答が無いので困っておるのだ」
鉄州斎は今すぐにでも救援を必要としていた。順当に行けば、今頃は平織家と細かな交渉を始めている頃である。
「それは‥」
冒険者達は、平織家がその事で揉めている事を知っていた。言うか否か迷っている。
白狐はそんな人間達には興味が無いようで、陽小娘(eb2975)が作ってくれたお供えの鍋うどんに箸を付ける。白狐のお供の狐たちも鍋に舌鼓を打っている。
「いや、美味でした。寒い時に鍋はまことに有難い。‥‥まあ状況は前回と変わらぬようですし、私達はお暇いたしましょうか」
そう言って帰り支度を始めた狐達に明王院未楡(eb2404)は向き直り、口を開いた。
「白狐様、私は人妖の共闘を望んでいます」
「ほう?」
白狐の瞳がきらりと光った。
「人と妖怪とが共に、この丹後のために闘えば‥‥仲良くなる事が出来ると考えるからです。その為の同盟では無いかと‥‥鉄州斎様はどのようにお考えですか?」
「黄泉の軍勢は強大じゃ。とても我らだけでは歯が立たぬ。稲荷神が助勢して下さるなら、これほど心強い事は無いな」
「我々も同じです。人間同士の争いならば傍観する所ですが、不死の軍勢は生きる物全てを喰らうもの」
「私の提案とは、人と物の怪との共存をどうするかという点ですが」
「伺いましょう」
「丹後南部、大江山をご存知でしょうか」
「ええ、鬼の小国ですな。京極家が進出している地でもある」
「かの大江山の鬼討伐に都の秀吉公が兵をお出し下さるそうです。大江山の討伐が済んだ後、かの地を稲荷神様たちが率いる妖怪の領地とされてはいかがでしょう。かの地はもともと人が住まうには不便な土地です。京極家の頭首様も一考下さるようですし」
大江山討伐後、稲荷神や氏神を祀る社を建て、妖怪たちには山での暮らしを基本としてもらうというのだが‥‥。
「稲荷神、氏神の皆様と違い、妖怪の中には人を脅かすのを好む方々も少なくないと伺っております。人と妖が互いを知り、不要な諍いを起こさない程度まで馴染む間‥‥一定の垣根をおいて触れ合う方が互いの平穏も守られると思うのですが如何でしょう?」
白狐は笑った。
大江山は大江山の妖怪のもの。それを人が討伐し、白狐たちに領地として与えるという。それでは白狐達は人の家来も同然ではないか。
「人間には人間の理があるように、妖怪にも妖怪の理があります。大江山のことは私がとやかく言う話では無いが、人が住むに不便な土地に妖怪を閉じ込める話のどこが友好なのですか? 承服できかねます。勝手にそんな話を受けては、私が稲荷神様に怒られましょう」
白狐に否定されて未楡は慌てた。
「いいえ、稲荷神様や氏神にはこのような制限は致しません。それどころか、氏神には各位の領域に社を立て、祀ることを考えています」
精霊や妖怪を村々の神として祀る。神代の頃はそのように人とあやかしは交流していたともいう。だが。
「待て、少し待て。そのように勝手に話を進められては困るぞ」
この案には鉄州斎が慌てた。太古は知らず、今はかつて精霊や妖怪が居た地位を仏教寺院や武家貴族達が奪っている。簡単に言えば、村々で妖怪達を祀ればそれだけ布施と税収が減るのだ。それに強力な妖怪や精霊を氏神に持てば、それだけ軍事力を有する事にもなる。
藩主としては、一時的な共闘ならともかく、藩政を根本から揺るがす話を勝手に進められてはたまったものではない。
「出過ぎた話である事は重々承知していますが、共存を願う者として、今回の話は一時のものとしたくは無いのです」
未楡はそう言って、白狐と鉄州斎に頭を下げた。
互いの立場は大きく違う。
「今、人と妖怪は離れてしまっています。その差は話し合う事でしか埋められないでしょう。何卒、今のこの時を大切にして頂きたいのです」
白狐も鉄州斎も未楡の案に同意した訳では無いが、もう少し話を続ける事にして席に戻った。
そんな同盟話の片隅で、小娘は宮津を訪問している京極高広に話しかける。高広も今回の同盟話に興味が沸いたらしい。客人扱いで同席していた。
「高広さんたちも藤豊の人になったんだよね? その‥‥宮津と藤豊が組んだら動きやすくなるのかな?」
「同じ藤豊派同士、戦をするようなことにはならないと思うが‥‥」
「そうだよねえ‥‥」
小娘には政よりも高広と相談しておきたいことがあった。
「ところで、狐さんとの同盟が成立したらさ、おいしい油揚げ取り寄せて狐さんとこまで運んで欲しいんだ‥‥! 例えば毎月寄付するとかね」
「それは構わんが、まずは大江山の鬼を何とかしないとな」
高広は苦笑すると白狐との話し合いに目を移した。未楡が白狐に気がかりなことを尋ねている。
「氏神様方なら、もしや‥‥丹後の陰の気の浄化法をご存知ではありませんか?」
ふむ、と白狐は顎をつまんだ。この問題はしばしば冒険者達が情報収集を試みているのだが‥‥。
「千年を生きる大妖怪であれば或いは‥‥しかし誰か方法を知っている者が丹後に居れば、既に試しているのでは無いですか?」
白狐の意見はもっともだ。浄化法を知る程の者なら、今の丹後の状況に気づかない筈はあるまい。ならば丹後にはそれ程の者は居ないか、居ても浄化するつもりが無いか。
「つもりが無い?」
不浄の土地を喜ぶ者がいるのか。それとも、丹後を浄化する事でそれ以上の問題が発生するか。
「例えば、大国主。かの者は古代の呪法に詳しいと聞き及びます」
大国主配下の亡霊軍団にとっては、陰の気が盛んな方が行動しやすそうではある。白狐は神聖魔法に通じては居ないので、憶測に過ぎないが。
尾張から早馬を駆ってボルカノ・アドミラルが訪れた時、白狐はまだ宮津に居た。
未楡の引き延ばし工作と小娘のお供え攻勢が功を奏したのだ。
「間に会って良かった」
胸をなでおろす未楡に案内されて、肩で息をするボルカノは鉄州斎に目通りした。
「同盟の話は白紙として頂きたい」
「なんと!?」
ボルカノは鉄州斎の前で頭を床に擦りつけて謝罪した。
「此度の事は私の独断でございました。尾張にて評定を行いましたが、平織家には宮津と同盟する意思はありません。宮津藩を迷わせ、破談とした事は全て私の責。申し訳もございません」
「そうか。残念だが仕方あるまいな」
ボルカノが尾張藩主を説得出来なかったのは確かに残念だが、同盟はそう簡単に結べるものでもない。拗れなかっただけマシである。
「今後は身を慎み、宮津の危機には必ずや駆けつけます! 首を落とされても文句は言えませんが、どうか償いの機会を御与え下さい」
「それには及ばん。そなたは宮津の為に何度も戦ってくれた。何の文句があるものか」
血判状を渡すボルカノに、鉄州斎は同盟交渉で奔走した彼を労った。
捨てる神あれば拾う神ありという。
藤豊家臣のベアータは藤豊家を頼る案を進言し、未楡は同盟の懸念が無くなった以上、稲荷神との同盟交渉を進めるべきと話した。
「お待たせしたが、同盟のこと。宮津藩は前向きに進めたいと存ずる」
「それは良き答き。そろそろ戻らねばなりませぬゆえ、詳しい話は次回といたしましょう」
「承知した」
鉄州斎は白狐の落ち着きぶりにやや気圧され気味であった。
こうして二度目の会談は終わった。不可侵期間の更新を約束し、白狐たちは宮津城を後にしたのである。