【道敷大神】丹後の死人使い、進軍開始
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■ショートシナリオ
担当:安原太一
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:15人
サポート参加人数:10人
冒険期間:01月11日〜01月16日
リプレイ公開日:2009年01月21日
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●オープニング
宮津城――。
イザナミ軍を統率する謎の人物丹後の導師は、宮津に本拠を置き、次なる攻撃の準備を進めていた。
「丹後軍など恐れるに足りず。このまま一気に丹後に滅びを与えてくれよう」
導師の瞳がフードの奥で爛々と光っている。恐るべき大軍を操る不死軍の総大将に躊躇いはない。次なる標的は舞鶴か‥‥。
そんなある日、宮津城を訪れる一団があった。少年と美女、若い男に老人、大女に少女という取り合わせであった。彼らは丹後の死人使い七人衆と名乗る魔物たちであった。七人衆のうち、一人は冒険者に倒されており、残る六人が宮津城を訪れたのであった。
導師はこの訪問者にさしたる興味も示さなかったが、七人衆がイザナミ軍に協力したいと申し出ると、導師は彼らを城に招き入れた。
「‥‥丹後の死人使いか‥‥イザナミ様に協力するというのか」
「私達は導師様同様、丹後の民に滅びを与えるべく活動して参りました。導師様のお力は存じております。都の軍勢をも退けたあなた様のお力を、我々にもお貸し頂きとう存じます」
「ふん、殊勝な言い様よの。死人使いに何が出来るというのだ?」
「私達は丹後全域の亡者を集めて舞鶴に突進致します。ですが今、丹後軍は都の増援を得て増強されております。兵をお貸し下さい。戦力さえあれば、舞鶴を灰燼と帰してみせましょう」
「どの程度の兵を出せと言うのだ?」
導師は退屈そうに話を聞いていた。
「我々が用意できるのがおよそ千‥‥導師様からも千ほど兵を頂ければと存じます」
「ほう‥‥」
導師の体を取り巻く怨霊が七人衆達に恐ろしげな牙を剥く。――無礼者が! 殺してやる!
「よかろう――将軍よ」
「は‥‥」
ローブ姿の魔道士が進み出てきた。
「この者たちに適当な兵力を与えよ」
「よろしいのですか? 名も無き死人使いなどに‥‥」
「せっかくイザナミ様に協力しようと言う者たちだ、無碍にも出来まい」
そう言う導師の本心は違っていた。丹後の死人使いなど本より捨石としか見なしていないのだ。本気で舞鶴を落とす気なら導師自ら動いている。千程度すぐに補填できる数である。舞鶴の丹後軍がまだ機能しているのか、七人衆を使って確かめるつもりであった。
いずれにしても、こうして総数二千の亡者達を従える死人使い七人衆は、舞鶴に向かって動き出した。
舞鶴城――。
「不死軍の一隊が動き出した?」
藩主達、藤豊の武将達は顔を見合わせた。その傍らには天津神や白狐がいる。
「どういうつもりだ丹後の導師め‥‥兵力の一部を出してくるとは‥‥なぜ全軍で攻めて来ない?」
丹後軍に七人衆の情報は入っていない。
「いずれにしても迎撃せねば。敵の総数は千を越える大軍と聞く」
「うむ、我らに逃げ道はない。ここで不死軍を止めるしかない」
丹後軍もにわかに動きが慌しくなる。
これ以上不死軍の侵入を許すわけにはいかない。敵が舞鶴に入る前に打つ。
かくして、死人使い七人衆率いる二千の不死軍と丹後軍は雌雄を決することとなったのである。
丹後側の戦力は藤豊軍二千弱、峰山・宮津・舞鶴の侍たち三百弱、藤豊軍の陰陽師約四十、僧侶・僧兵約三十、丹後の僧侶達およそ五十、丹後の土侍およそ百である。
冒険者ギルドにも不死軍二千との戦いに参戦を求める依頼が張り出された。戦力はほぼ互角。丹後軍に下がる一手はない。亡者を迎え撃ち、舞鶴への侵入を食い止めるしかないのであった。
●リプレイ本文
由良川流域――。
「不死軍が来ます」
陰陽師が対岸に迫り来る不死軍の姿をテレスコープで捉える。
「遮蔽用意」
武将達の言葉で陰陽師たちがマジカルミラージュで森の蜃気楼を作り出し、自軍を覆い隠す。遠目には鶴翼に布陣した中央部分だけが不死軍を待ち構えているように見える。
アンドリー・フィルス(ec0129)は陰陽師を乗せてグリフォンで上空を旋回している。
「黄泉人たちが渡河を開始したようだな‥‥バーク!」
「おう、始まったようだな」
バーク・ダンロック(ea7871)も阿修羅魔法フライで上空を旋回していた。
「上流の魔法使い達に知らせてくるぜ」
そう言うとバークは広域移動魔法バラスプリントで上流にテレポートした。
上流は雨が降っている。楠木麻(ea8087)がウェザーコントロールで天候を変化させたのだ。
「敵さんが渡河を開始した」
バークの言葉を待っていた楠木とロッド・エルメロイ(eb9943)は由良川の水面にグラビティーキャノンを放つ。
「行っけええええ!」
魔法の重力波が水面に叩きつけられる! 水面が炸裂してしぶきが激しく舞った。が、それだけだ。
「あれれ?」
しーんと静まり返る水面に三人とも立ち尽くすのみ。グラビティーキャノンで鉄砲水を起こし下流の死人を押し流すと言う策だったが‥‥。
「どうやら全く威力が足りんようだな」
バークは憮然として水面を見やる。雨が降って水量は増しているが、グラビティーキャノンで大きな波が起こることはなかった。
「まあ仕方ないか、味方に知らせてくる」
「上流の作戦は失敗だ。波は起こらないぜ」
バークの知らせを受けて、アンデッドを誘引する効力を持つ引魂旛を持った三組が出発する。
バークもその一人。残る二組は魔法の絨毯に乗った明王院未楡(eb2404)と月詠葵(ea0020)のペア、蒙古馬騎乗の雷真水(eb9215)だ。
不死軍の動きにおよそ戦術めいたものは無く、二千の亡者が続々と川を渡ってやってくる。
引魂旛を持った冒険者達は不死者たちの渡河を混乱させようと旗を振るが、反応するのはごく一部。大部分は正面に見える丹後軍に向かって真っ直ぐに進んでくる。
バーク、アンドリー、ロッドらは今回の不死軍の様子に首を傾げる。航空戦力の以津真天や怨霊がほとんど見られないのだ。
あるいは増援が来るのかも知れない‥‥そう思いつつ、敵の上空を旋回する。
「これ以上は待てんぞ‥‥放て!」
地上では武将達が号令を下す。丹後軍から次々と火矢が放たれる。
「前回はまさかの不覚をとったがな‥‥炎よ、黄泉人どもをなぎ払え!」
ロッドはグリフォン騎乗で上空に舞い上がると、超越ファイヤーボムを放った。炸裂する火の玉! 炎と爆発が亡者の群れを打ち砕く! 超越魔法は乱戦になる前が最も効果的である。ロッドは持てるMPが尽きるまでファイヤーボムを撃ち続けた。
接近してくる不死軍に対して、火矢に続いて侍衆のソニックブーム、スリングによる火炎瓶攻撃などが叩きつけられる。
中央部分は後退しつつ突出してくる亡者を引きつける。その間に遮蔽された両翼は前進し、不死軍の側面に回りつつある。このような部隊間の連動もひとえに陰陽師や空飛ぶ白狐たちのテレパシーなどに頼っている。
「導師がいない?」
武将達はアンドリーの言葉に耳を疑った。
「間違いない。俺は前回導師が岩の天幕をがしゃ髑髏に引かせているのを見た。今回は以津真天も怨霊もほとんどいない。おかげでくまなく敵情を偵察できた。断言できる、導師はいない。怨霊の数が少ないのもそれで説明が付く。導師の周りにはいつも怨霊が取り巻いている様子だからな」
「そうか‥‥導師が何を考えているのか分からないが‥‥」
「これは前哨戦と言ったところか」
「がしゃ髑髏の数はどうであった?」
「確認した。約十体と言ったところだな」
「何れにしろ増援も無い様子だ、同数の軍勢ならば、勝機はある」
「全軍に突撃の合図だ。打って出るぞ」
「おお!」
武将達は膝を打つと、全軍に突撃の号令を下した。
「アンデッド共‥‥気取りもここまでだな。貴様らには墓場が似合いだ」
アラン・ハリファックス(ea4295)は姫切アンデッドスレイヤーを構えると、傍らにそびえ立つ大太法師や大蛇を見上げた。
「氏神よ、戦いの時は来たぞ。今こそ怒りを解き放て」
「氏神って何だ?」
「‥‥気にするな。前を向け、敵が来るぞ」
「敵はやっつける!」
大地の精霊たちは雄叫びを上げると突撃していく。
「氏神様が突撃されるぞ! 後に続けえ!」
足軽や侍たちはときの声を上げて走り出す。
一斉攻撃の合図を聞いて、天火明命が姿を見せた。
「導師は本気を出してはおらぬ様子、心して掛かることだな」
「罠であるとお思いですか?」
「いや‥‥戦いはまだ続く。増援は無い様子だが、戦力を消耗しては後に響こう」
すると白翼寺涼哉(ea9502)が口を開いた。
「私達は丹後軍の誰一人として、失わないよう全力を尽くす所存です」
白翼寺の背後にはこれから戦場に赴く頴娃文乃(eb6553)、未楡にマロース・フィリオネル(ec3138)、他の僧侶・僧兵達がいた。
「都の僧侶たちか‥‥」
天火明命は天御影命と天鈿女命を呼ぶ。三柱の天津神たちは白翼寺らにフレイムエリベイションを付与する。
「気休めだがな。気合いで乗り切れ」
意外であったが天火明命の心遣いに僧侶達は感謝する。
「行くぞ」
天御影命と天鈿女命は剣を抜き、戦場に向かう。
中央部隊――。
「戦いの女神とまで称された私の武、存分に披露させて貰おうか!」
南雲紫(eb2483)は最前線で飛び回っていた。魑魅魍魎刀にスマッシュ、シュライクを交えて死人たちをなぎ倒していく。
「破刃、天昇!」
メグレズ・ファウンテン(eb5451)のソードボンバーが炸裂。
「これ以上お前達を進ませるわけにはいかない! 黄泉人よ地に還れ!」
井伊文霞(ec1565)は死食鬼の首を吹っ飛ばした。
「まだまだ荒削りもいいとこだけど、実戦で磨かせて貰うぜ!」
真水はオーラパワーを付与した太刀で怪骨を打ち砕く。
と、その時だ、真水目がけて巨大な鉄球が飛んできた。危ない!
――キイイイイン! と盾でそれを受け止めたのはアランだ。
「あのがしゃ髑髏は俺に任せろ。やらせはせんよ」
がしゃ髑髏の鉄球を受け止めたアランに南雲がひゅうと口笛を吹いて見せる。
「やるな」
真水は「すまねえ」と冷や汗ものだ。
メグレズは鉄球などものともせず、がしゃ髑髏に立ち向かっていく――。
「今回は負けるわけには参りません‥‥何としてもここで不死軍の足を止めなくては‥‥」
文霞も背水の陣で臨んでいる。
南雲は死人憑きや怪骨を次々と打ち砕いていく。
「雑魚は任せろ!」
「行って下さいアラン殿!」
鉄壁のメグレズはデッドorライブにカウンター、ソードボンバーの合成技「破軍」で丹後軍の道を切り開く。
アランと文霞、真水は侍達とともにがしゃ髑髏に切りかかっていく。
翼部隊も突入、月詠は乱戦の渦中にあった。集団戦では月詠ほどの使い手でも孤立すると窮地に立たされる。周囲の侍や足軽たちと連携しながら前進を続ける。
「‥‥我が流派。黄式猛虎拳に、負けは許されない!」
朱蘭華(ea8806)は右手の姫切を振るいつつオーラパワー付与の拳と蹴りで亡者達を寄せ付けない。
そしてこちらにもがしゃ髑髏や死食鬼が現れる。鉄球の一撃に足軽たちが吹っ飛ぶ。
「侍衆は前に出ろ!」
こちらに回っていた片桐が叫ぶ。侍達は前に出る。月詠と蘭華も強敵に向かう。
死食鬼の鋭い攻撃を見極めて反撃する月詠。一撃でその首を吹っ飛ばすが死食鬼の体力は尋常では無い。
鉄球をかわしてがしゃ髑髏の懐に飛び込んだ蘭華。左手の拳が唸りを上げる。
「爆虎掌!」
しかし巨大な髑髏は小揺るぎもしない。利いてはいるはずだが。反撃をかわして姫切を叩き込む。
バークやアンドリーは空中からがしゃ髑髏に切りかかっていた。飛行魔法に瞬間転移の魔法まで身につけた阿修羅の騎士たちは一撃離脱でがしゃ髑髏を追い詰めていく。今回空中から邪魔する以津真天や怨霊の大軍はいないのが幸いだ。二人とも回避に長けてはいないが防御分のAPは残してがしゃ髑髏の攻撃を跳ね返す。そして瞬間移動で離脱。バラスプリントは正確に敵の背後に回れるわけではないが、微調整はフライで行う。
白翼寺たちはホーリーフィールドの中で治療活動を行っていた。死人憑きも周囲にいる中で、下がってきた侍や足軽たちの回復作業を行っていた。
文乃は応急手当を施す白翼寺の手さばきに感心していた。
「こっちを頼む」
「はい先生」
白翼寺から預けられた兵士を文乃はリカバーで回復する。
「前回よりは戦況はましだがな‥‥よし、ここはいいだろう、移動だ」
「大丈夫そうですか?」
マロースは運び込まれてきた足軽の様子を見つめていた。
未楡が応急手当を試みるがその額には汗が浮かんでいる。
「駄目かも知れません‥‥マロースさん、回復をお願いできますか」
「はい‥‥」
限られたMPを使って何とか回復させるマロース。――足軽は意識を取り戻した。
「良かった‥‥この方は救護所までお運びしましょう」
中央ではメグレズ、文霞、南雲、アラン、真水に加えて楠木も参戦し、雷撃魔法で援護していた。現れたがしゃ髑髏は全て撃破した。
翼部隊では月詠、蘭華たちが踏ん張った。
そうして、やがて不死軍が後退し始める。大きなダメージを与えた訳ではない。がしゃ髑髏は倒したが、相当数の亡者達が健在だ。
後退して行く不死軍に土侍達が強化弓の矢を浴びせる。矢が殿の怨霊を仕留めた。
アンドリーは上空からその様子を見つめていた。丹後軍組み難しと判断したのだろうか‥‥敵の指揮官を発見するには至らなかったので何とも言えないが。
とにかくも、不死軍は引き上げていく。だが宮津には導師の本隊が控えている。黄泉の攻勢を支えきれるかどうか‥‥運命の時は迫っている。