京都近郊〜謎の巨人と鬼たち

■ショートシナリオ


担当:安原太一

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 55 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:01月11日〜01月16日

リプレイ公開日:2007年01月18日

●オープニング

「お城みたいに大きかった!」
 子供たちは村の大人たちに報告する。
 近くの森の中で巨人を見つけたと言うのである。
「何だ巨人か」と大人たちは話を片付けようとしたが、巨人が鬼と戦っていると言うではないか。
 そこで村の猟師が森に入って巨人の正体を見極めようとしたところ、実際巨人が鬼たちと戦っていたと言う。
「ほんにお城みたいでっけえ巨人だ」
 と村の者たちはギルドに報告したのである。

 鬼たちは多勢であるとのことから、腕の立つ冒険者たち八人が集まり、鬼退治も兼ねて巨人の正体を見極めるために出発した。そして見事に返り討ちにあった。

「全くついてねえよ」
 返り討ちにあった冒険者たちは愚痴をこぼす。
「総勢二十体近い茶鬼どもが相手だった。何だかよく分からないが、確かに村人の言う巨人と茶鬼が戦っていた。巨人は一体だけ。城みたいにでかいと言うのは大袈裟だが、確かに大きい巨人だ。七、八メートルはあったんじゃないか。巨人は、戦闘の後は何か負傷して疲れ果てているようだったな。ま、それは置いといて、二十体の茶鬼は何とか突破したんだ。茶鬼どもは幾つかのグループに分かれて森に散らばっていてな。こっちが攻撃するとすぐに逃げやがった。それを追って森の奥に踏み込んだところで待っていたのが約十体のリーダー茶鬼だ。まさか茶鬼にリーダーがいるなんて思わねえ。戦ってみたらこいつが意外に強い。気付いたら茶鬼どもに包囲されかけて全滅するところだったんだ。茶鬼の奴ら、リーダーのところまで俺たちを誘い込んで俺たちを罠にかけようとしやがったんだ。全く、ひでえ目にあったぜ‥‥」

「というわけで、森に現れた茶鬼の集団を退治してもらいます」
 ここまでの事情を冒険者たちに説明していたギルドの職員は言葉を切った。
「罠を張って冒険者を待ち構えるその手口。いかにも茶鬼のやりそうなことではあるな‥‥」
「オーガめ、ふざけた真似をしてくれるな」
 冒険者たちはそれぞれ言葉をこぼす。
 しばらく冒険者たちの話を聞いていた職員。村までの地図を取り出しながら口を開く。
「いずれにしろ、今回の依頼ではリーダー茶鬼が相手となります。返り討ちにあった冒険者達の分まで、借りを返してやって下さい。巨人については正体不明ですので警戒して下さい。それでは健闘を祈ります。食糧と、戦闘準備を怠りなく」
 冒険者たちは村までの地図を貰うと、出発に向けて準備を進めるのであった。

●今回の参加者

 ea8755 クリスティーナ・ロドリゲス(27歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb1599 香山 宗光(50歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb1798 拍手 阿邪流(28歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2007 緋神 那蝣竪(35歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb3402 西天 聖(30歳・♀・侍・ジャイアント・ジャパン)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)
 eb5818 乱 雪華(29歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

拍手 阿義流(eb1795

●リプレイ本文

●出立前
「話を聞く限り巨人に実害は無いでござる――」
 刀身を拭きながら香山宗光(eb1599)は口を開く。
「巨人よりも茶鬼でござる。件の冒険者も油断した隙をリーダー茶鬼に襲撃されているでござる。数の多さは侮れないでござる」
 香山は一同を見渡す。
「とりあえず巨人には関わらない方が身のためですね。茶鬼殲滅に集中しましょう」
 宿奈芳純(eb5475)の言葉にひそひそと囁きを交わす冒険者たち。敵の数の多さは侮れないぞ‥‥。
 と、口を開くのは緋神那蝣竪(eb2007)。
「敵も然る者‥‥てわけね。いいじゃない、人間様相手に同じ手管がそう何回も通じやしないってこと、身体で教えてあげましょ」
 その言葉に答えるのは乱雪華(eb5818)。
「ちょっと敵の数が多いような気もしますが、全力を尽くしてみます」
 乱はにっこり笑って拳の骨を鳴らすのであった。

 さて、返り討ちにあった冒険者たちから話を聞くのは西天聖(eb3402)。
「教えて欲しいのじゃ、雑魚とリーダー茶鬼の見分け方と、装備の違いがあるかをの。多勢を相手に生き残れる皆様じゃ、きっと敵の武力や特技も見抜いているのじゃろ」
 口を開く冒険者たち。彼らも少しは腕に自信があった。茶鬼だけなら何とかなったという。リーダー茶鬼は鎧を着ているそうだ。
「ありがとうなのじゃ、助かったのじゃ」
 西天は冒険者たちに礼を言うとその場を後にする。

 そして冒険者たちは出発する。

●森へ
 ‥‥村に到着した冒険者たち。森へと踏み込む。

 森の中、日差しがうっすらと差し込んでいる。
 宿奈はテレスコープで得た視力で、森の中を偵察する。

 ‥‥緋神は湖心の術を使いつつ森の中を進む。術の効果で音を立てることなく移動できる。その傍らには忍犬の武流が控えている。森の奥へと進む緋神。

 クリスティーナ・ロドリゲス(ea8755)も先行する。茶鬼たちをやり過ごしながら奥へと進む。

 気配を殺して森を進む拍手阿邪流(eb1798)。木々の間で蠢く茶鬼たちの姿を確認して立ち止まる。
「少し一服するか‥‥」

 ‥‥やがて戻ってくる緋神とクリスティーナ。
「ご苦労様でした」
 二人を労う宿奈。
 森の中に点在する茶鬼たちの配置を確認した二人。宿奈とともに情報を照らし合わせる。茶鬼は適当に分かれて徘徊しているようだ。
「ふむ‥‥あいも変わらずこちらを待ち受けているようでござるな。猪口才な。我等が茶鬼ごとき輩の浅知恵に屈するものでござるか。目にもの見せてやる‥‥でござる」
 香山は先頭に立って森の中へと踏み込んでいく。
 宿奈と緋神は香山の後を追う。
「それじゃあたしらも行こうか」
 クリスティーナも歩き出す。
 乱と西天はクリスティーナの後から森に入る。
「森の様子はどうでしたか?」
 乱が尋ねると、
「奥の方は荒らされてるね。木とか滅茶苦茶に切り倒されてるよ」
 クリスティーナはそう言って肩をすくめるのであった。

 さて、森の中では宿奈のテレパシーで交信しながら進んでいく冒険者たち。
 宿奈は後方から全体を把握しながら指示を出す。その周囲を他の者たちが警戒しながら進む。
 拍手も宿奈の指示を受けて行動を再開している。

 茶鬼を迂回して進む冒険者たちだが、西天は偶然一体の茶鬼と遭遇。ダブルスマッシュで茶鬼を切り伏せる。
「成敗じゃ」
 二刀を収めると再びリーダー茶鬼のもとへ向かう西天。

 ‥‥森の中、緋神やクリスティーナが先に仕掛けておいた罠に掛かって転倒する茶鬼たち。足止めにはなっているようだ。
 それら味方が仕掛けた罠を避けながら森の奥へと進む冒険者たち。

●対決
「北の方角、数百メートル先の藪の中に、リーダーらしき茶鬼を確認。周囲に五匹の茶鬼が半円状に分散して潜んでいます」
 森の奥を見通しながら宿奈が連絡する。

 宿奈からの連絡を受けた乱。半円状に分散していると言う茶鬼たちに向かって行動を開始する。罠を仕掛けてから陽動攻撃を仕掛ける。
 猛然と襲い掛かる乱。乱の蹴りは盾もろとも茶鬼を吹っ飛ばした。味方を呼ぶ茶鬼。茶鬼たちがばらばらとやってくる。乱は追儺豆を取り出すと、茶鬼たちに豆をぶつける。茶鬼たちは怯んだ様子で盾を構える。乱はオーラシールドを付与すると、茶鬼を挑発するように身構える。豆をぶつけられて怒りに燃える茶鬼たちが乱を取り囲む。一体の茶鬼が乱に襲い掛かる。乱はシールドで茶鬼の斧を跳ねかえす。また別の茶鬼が襲い掛かってくるが、乱はその攻撃をかわすと、その場から後退する。茶鬼たちは乱を追って動き出す。

「乱殿が茶鬼を引き付けています。今ですよ皆さん」
 宿奈が全員に合図を送る。

 走り出す香山、拍手、西天、緋神、クリスティーナ。

 少し開けた森の奥。リーダー茶鬼たちは安穏と構えている様子だった。鎧を着込んでいる。武器や盾はその辺に置いてある。八体のリーダー茶鬼たち。
 クリスティーナは矢をつがえると、茶鬼目がけて弓を引き絞る。
 香山は刀にオーラパワーを付与。
 緋神は印を結ぶと疾走の術を発動。
 西天はオーラエリベイションで気を高める。

 そして――クリスティーナは矢を放つ。矢が茶鬼ののどに突き刺さる。
 香山と緋神、さらに二刀を抜いた西天が突撃。
「けっ、これでも食らいやがれ!」
 と小声を上げて嬉しそうににやけながら印を結ぶのは拍手。完璧なタイミングで魔法シャドウボムを打ち込む。茶鬼の足元で影が爆発する。
 反撃する間もなく切り伏せられるリーダー茶鬼は二体。ひとまず奇襲攻撃が功を奏する。
 動き出す拍手。敵の背後に回りこむ。
 クリスティーナは再び矢をつがえると、全力で援護射撃を開始する。
 香山と西天は猛然とリーダー茶鬼に切りかかる。
 間合いを計りながら茶鬼たちを撹乱する緋神。全力で茶鬼たちを引き付ける。
 香山と西天の斬撃が激しく茶鬼の盾に激突する。茶鬼の反撃も凄まじく、香山と西天は敵の斧を跳ね返さねばならなかった。
 状況を見て、拍手も突撃する。二刀小太刀を抜いて突進する拍手。

「中々出来るでござるな‥‥これは少々危険を冒してでも懐に飛び込まねばならないか‥‥」
 香山は刀を握り直すと、刀身をゆっくり持ち上げ、目の前の茶鬼を睨みつける。

 一進一退の攻防の後、戦場は緊迫した空気に包まれる。時の流れが止まったように、冒険者と茶鬼の睨み合いが続く‥‥。

 宿奈が動く。宿奈はリーダー茶鬼との戦場に向かうことにする。リーダー茶鬼は意外に手強いようである。乱とも連絡を取る。
「乱殿、すぐにリーダー茶鬼のもとへ向かって頂けますか! 戦力が不足しています! 雑魚は後で片付けましょう!」
「分かりました!」
 
 そして宿奈と乱が駆けつける。
 乱は利き脚と右腕にオーラパワー、左腕にはオーラシールドを付与して戦闘に加わる。
 宿奈は鳴弦の弓を取り出すと、弦をかき鳴らす。茶鬼たちの勢いがわずかに弱まる。
 裂ぱくの気合いを込めて繰り出される香山の一撃が茶鬼の鎧を貫通する。茶鬼は体勢を崩して後退。
 西天のダブルスマッシュが茶鬼の頭部を撃砕。茶鬼は地面に崩れ落ちた。
 拍手は二刀小太刀を叩き込む。茶鬼はたまらず後退。
 クリスティーナの狙い済ました矢が茶鬼の眉間に突き刺さる。茶鬼はもんどりうって倒れる。
 苛立たしげに茶鬼は斧を振るうが、緋神は余裕の動きでその攻撃をかわす。
 そして乱の強烈な蹴りが茶鬼の胴体にめり込む。ぐしゃっと骨の砕ける音がして、茶鬼は地面に沈んだ。
 形勢は一気に冒険者側へ。
 それでも残る茶鬼たちは突撃してくる。
 香山は茶鬼の反撃を跳ね返しながら次々と刀を叩き込んでいく。そして最後の一撃が茶鬼の胸にヒットする。茶鬼は地面に沈む。
 拍手も茶鬼の反撃を跳ね返しながら次々と小太刀を叩き込む。そして止めの一撃が決まる。茶鬼は倒れ伏す。
 そして西天。
「人語は解せぬじゃろうがの、覚悟するのじゃ」
 西天が前に進み出ると、茶鬼の足が止まる。
 茶鬼はさっと身を翻して逃げ出そうとするが、その背後を西天の二刀が捕らえる。倒れる茶鬼。西天はくるっと刀を持ち替えると、茶鬼の背中に止めの一撃を突き立てる。

 訪れる静寂。

 だがまだ終わりではない。
「雑魚どもがやってくるようですね」
 宿奈がテレスコープを使い、森の様子を探る。
 やがて、ばらばらと十数体の茶鬼が現れる。
 先手必勝。冒険者たちは突撃する。
 宿奈は再び鳴弦の弓をかき鳴らして支援。
「おらおら、この阿邪流様が相手してやるぞ!」
 拍手が突進すると茶鬼たちの輪が割れる。数体の茶鬼を相手に小太刀を叩き込んでいく。
「さぁ、あたしと舞って頂戴な。‥‥貴方達の死出の手向けの舞いをね」
 緋神は素早い動きで茶鬼たちを引き付ける。
 乱も突撃して数体の茶鬼を相手にヌァザの銀の一撃を叩き込んでいく。
 クリスティーナも最後まで矢を撃ち続ける。
 香山、西天は一撃のもとに茶鬼を蹴散らしていく。
 茶鬼の足を払って転倒させ、小太刀を叩き込む拍手。周囲を見渡す。茶鬼の数は瞬く間に減っている。
 そして、さらに十体近い茶鬼たちが現れる。最後の抵抗。茶鬼たちは突撃してくる。
 冒険者たちはその抵抗を粉砕する。
 わずかに残った数体の茶鬼たちは逃げ出した。
 全てが終わったかに思えたその時‥‥。

 どどーん、と何かが倒れる音が響く。
 冒険者たちは音のする方へ駆けつける。
 木で作られた楼閣が倒れていた。破壊されている。城の一部のようなものだった。
 茶鬼の城? 茶鬼は城を築こうとしていたのか‥‥それはさらに強力な鬼の王の命令だったのかも‥‥。
 そして、のっしのっしと森の奥に去っていく巨大な姿、修行僧のような姿をした巨人‥‥。
 大太法師‥‥それは噂の巨人だった。

●その後
 京に帰還後、戦闘で傷ついた仲間の武具の手入れを申し出る香山。
「この瞬間が至福のひととき。今回も良い仕事でござった」
 香山は刀を鍛え直す。その出来ばえは一流であった。