【道敷大神】丹後軍の決死行

■ショートシナリオ


担当:安原太一

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:14人

サポート参加人数:3人

冒険期間:08月12日〜08月17日

リプレイ公開日:2009年08月20日

●オープニング

 ジャパン京都、長崎藩邸にて、数人の修道士たちが藤豊秀吉と謁見していた。
 その中に、ジャパンのジーザス会最高指導者であるフランシスコ・ザビエルの姿があった‥‥。
「‥‥というわけで、地獄の悪魔王ルシファーの復活は、冒険者のおかげで食い止められました」
「天晴れじゃな。壮絶な戦いであった事じゃろう、これで世界は安泰かのう」
 親玉が倒された以上、悪魔軍の侵攻は無くなったか。
「おそらくは‥‥ですが、油断は出来ません。破れたとは言え、地獄が消滅したわけではありません」
 ザビエルの話では、ルシファーと多くの悪魔を失っても、未だ地獄の軍団は健在という。
「悪魔とは底なしか? ぼうふらの如くわくのか?」
「悪魔はわきません。人が魔に落ちぬ限りは‥‥」
 ザビエルの話では、悪魔の総数は数百万とも数千万とも言う。今回は本拠地を強襲し、云わば奇襲により辛くも勝利を得たが、脅威は決して消えていないという。
「ふーむ」
 秀吉は腑に落ちない。それほどの大軍団なら、どうして悪魔王は倒されるのか。人類の敗北は自明ではないか。
「人に人の考えがあるように、悪魔にも悪魔の考えがあるのでしょう」
「肝心な所は、いい加減じゃのう。まあ良い」
 扇を弄ぶ秀吉を見つつ、ザビエルは話を続ける。
「現世に災いをもたらす悪魔の存在は、なくなったわけではないのです。ジャパンには第六天魔王を称する虎長なる者や強欲の魔王マンモンの影が蠢いております。関白殿下におかれましては、暗躍する魔に対抗するためにも、我等ジーザス会の活動を支援して頂きたく存じます」
「本命はやはりそれであったかのう」
 秀吉は思案顔で顎をつまんだ。
「ジャパンを開国させたはこのわしじゃ。ジーザス教徒を迫害するつもりも無い。じゃが‥‥お主らは怪しいからのう」
 ジーザス会の黒い噂、本人を前にして関白はずけずけと言う。不躾にも程がある、脇に控えていた修道士は怒りで顔を朱に染めた。
「悪魔は神の家に棲む‥‥それは事実の一面ですが、真実ではない。殿下は我々と仏教寺院の融和を唱えておられるはず」
 秀吉の老獪な瞳が光った。
「敏いのう。お主の神から天啓なりとも受けたか?」
「‥‥」
 悪魔との死闘、黄泉との決戦‥‥未曾有の国難に対し、いかにも国をまとめるかが秀吉の悩みである。ジーザス会を受け入れる事は、余計な混乱を引き起こすようにも思える。しかし、拒絶する事は秀吉の政策に反する。
「ふーむ」


 丹後――。
 八十禍津日神や丹後の導師などを大将とする黄泉の軍勢は一万五千。屈強な小型がしゃ髑髏や死食鬼、骸骨剣士から航空戦力の以津真天や怨霊、大軍の死人憑きに骸骨兵士を揃えた眠らぬ軍勢だ。
 対する丹後・藤豊連合は二千弱。侍が千五百人弱、足軽が五百人弱、陰陽師が約百人、僧侶・僧兵合わせて約百人である。これに妖狐ら獣など丹後の物の怪たち、大太法師や土地神の地精霊、天津神の火精霊たちが加わっている。この連合軍は徹底したゲリラ戦術を取って、丹後の山岳地帯で黄泉人を各個に撃破していた。
 たが敵は無限とも思える大軍で眠らぬ軍勢、まさに丹後連合軍にとっては激しい心身の疲労を伴う戦いが続いていた。
 そんなある日‥‥丹後軍の元に悪魔鳩摩羅天が姿を見せる。黒い翼を生やした美しい人の姿をしているが、この悪魔は自ら名乗って丹後軍に黄泉軍からの伝言を伝えていく。
「宮津城が丹後の盗賊たちによって占拠されているのは知っているだろう。そして現在八十禍津日神が宮津城周辺に布陣している」
 鳩摩羅天は冷たい笑みを浮かべると、丹後軍の諸将に状況を説明する。
「ここからが肝心なところだ。八十禍津日神からの伝言を伝えるぞ。宮津城に民をおよそ百人捕らえた。丹後軍が宮津城に現れなければ、民を処刑する。山での追いかけっこはお終いだ。丹後軍が宮津に現れない限り、民の命は尽きると心するが良い。だが降伏して丹後を明け渡すというならそれも良し。降伏するなら民は解放すると約束しよう。だが、抵抗を続ける限り、民の命は失われていくことだろう。丹後軍よ決断の時だ。戦うか、退くか、決めろ」
 鳩摩羅天はそう言うと、後退する。
「どうする丹後軍よ。宮津で華々しく散るか、降伏するか、あるいは奇跡を見せるのか‥‥私は高みの見物と拝ませてもらおう」
 鳩摩羅天は笑声を残して消えた。
「‥‥悪魔が、黄泉人め、卑劣な罠を」
 侍の一人が怒りに身を震わせる。
「降伏などと、どちらにしても民を全滅させるつもりであろう」
「だが‥‥どうするか? 事実ならば民を見殺しには出来んぞ」
「事実ですぞ」
 そこへ姿を見せたのは何かと不思議な陽燕和尚。
「百人の民は宮津城の中心に設置された檻に閉じ込められ、丹後の盗賊たちが見張っております。城下町は盗賊たちに押さえられております。そして――宮津城の周辺には黄泉の軍勢が展開しておりますぞ」
「和尚様‥‥」
 それから丹後の将兵は策を練った。幾つか提案が出されたが、最終的には人質の救出を行うことで意見はまとまる。京極家の京極高広、旧宮津藩主の立花鉄州斎、旧峰山藩主の中川克明らが精鋭の侍百人を率いて城下町に侵入する。
 そして陽動として、残りの全軍を以って黄泉軍に攻撃を掛けることが決まった。こちらは京極高知と、藤豊武将の糟屋武則、片桐且元が率いる。
「毎回が決戦のようだが‥‥。民も救って、こちらも生き残る。黄泉人の思い通りにはいかんぞ」
 丹後の将兵たちは立ち上がると、武器を手に一路宮津へ向かって出立する。
 決死の戦いが今始まる――。
 

●今回の参加者

 ea0042 デュラン・ハイアット(33歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea4295 アラン・ハリファックス(40歳・♂・侍・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7871 バーク・ダンロック(51歳・♂・パラディン・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea9502 白翼寺 涼哉(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 eb0655 ラザフォード・サークレット(27歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb2404 明王院 未楡(35歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb4890 イリアス・ラミュウズ(25歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)
 eb5817 木下 茜(24歳・♀・忍者・河童・ジャパン)
 eb9215 雷 真水(26歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ec0129 アンドリー・フィルス(39歳・♂・パラディン・ジャイアント・イギリス王国)
 ec0843 雀尾 嵐淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ec4801 リーマ・アベツ(34歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec5570 ソペリエ・メハイエ(38歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

リアナ・レジーネス(eb1421)/ ケント・ローレル(eb3501)/ 妙道院 孔宣(ec5511

●リプレイ本文

 宮津城近郊――。
 周辺に黄泉の軍勢が展開している。陣中にあって、八十禍津日神は、大刀を突いて鎮座していた。
「人間はどう出るつもりかな? 降伏を申し入れに来るか? ならば良い。奴らの首魁を捕らえて見せしめに首を京都へ送りつけてくれるわ」
「(やはり降伏は黄泉人の罠か‥‥)」
 京極家の忍び木下茜(eb5817)が透明化の指輪で姿を消し、この会話を聞いていた。
 木下は敵陣を探って、素早く帰還する。

 ‥‥サポートのリアナ・レジーネスがフォーノリッジで「フランシスコ・ザビエル」「藤豊秀吉」「京都」「ジーザス会」を見たところ。ザビエルはマンモンの影に打ち倒されており、秀吉はイザナミに食われていた。また京都は黄泉の支配下にあり、ジーザス会は崩壊して教会は廃墟と化していた。
「未来とは変わるもの‥‥ですよね」
 リーマ・アベツ(ec4801)は戻ってきた木下の話を聞きながら、自らもフォーノリッジのスクロールで未来を見る。「八十禍津日神」「導師」「宮津の人質達」「丹後軍」「白虎団」の組み合わせで。すると、崩壊した丹後は黄泉軍に支配されており、人質たちは丹後軍もろとも全滅、白虎団は悪魔教会を建てている姿が見えてきた‥‥。
 それを聞いて倣岸不遜な笑みを浮かべるのはデュラン・ハイアット(ea0042)。
「まあ人質がどうなろうと私の知ったことではないが、まあどうしてもというなら助けてやらんでもない」
「どうしても頼む」
 がっしとハイアットの肩に指を食い込ませたのはアラン・ハリファックス(ea4295)。
「分かった分かった、そう怒るな」
「全く‥‥こんなところへ何度も引きずり出されてたまるか‥‥!」
 アラン激昂していた。
「月は出そうか? こんな厳しい状況じゃ、宿奈のムーンシャドウくらいしか救出方法が思いつかん」
 バーク・ダンロック(ea7871)の問いに、宿奈芳純(eb5475)は陰陽師たちにウェザーコントロールで晴れにしてくれるように頼む。
「今夜は満月だそうです」
 軍勢が宮津城を臨む中、白翼寺涼哉(ea9502)はペットの三笠大蛇に言った。
「風雅、命令だ。この地を守るべく戦う同胞(精霊)を守れ」
「何を言い出すかと思えば‥‥冗談でしょう? 私は帰ります!」
 三笠大蛇は怒って飛んで行ってしまった‥‥。
「土地神は黄泉人を敵と見なしている様子だが‥‥例え種族が違えども、志が同じであれば我々は戦友だな」
 ラザフォード・サークレット(eb0655)は妖怪たちに語りかける。
「神代には多くの精霊や妖怪が集ったそうですが‥‥仮に黄泉や大国主を打ち倒した後、我々には何が残るのでしょうな?」
 狐神の白狐は言ってラザフォードを見つめる。
「妖怪王国か‥‥確かお主たちはそんな話をしていたそうだが」
「丹後藩との同盟は忘れておりません。我らは古の絆に従い、集まったのですからな」
 明王院未楡(eb2404)は氏神たちに語りかけていた。
「氏神様、みなさんには私たちと一緒に黄泉人と戦って下さいますか」
「敵はやっつけるが‥‥あの黄泉人たち本当に倒せるか?」
「あいつらとても数が多い。ぶつかって勝てるか?」
 地精霊たちに取り囲まれた未楡は、根気良く作戦について説明する。
 伊達の武将イリアス・ラミュウズ(eb4890)はアランの知己を得ていて、この戦いにはるばる江戸から駆けつけた。自前で二千本の矢を用意して馬に満載していた。今回は超越級の弓の使い手として上空から陽動作戦に加わる。
「‥‥これだけの矢を用意してきたが、万が一切れた場合は軍の矢を使わせてもらえるだろうか」
 イリアスは藤豊の武将たちに打診しておく。
「ああ、構わんが、関東が大変な時に良くこっちへ来てくれたな」
「政宗公は京都へ兵を送られた。俺が都を守るのに何の不都合があろうか」
「伊達殿にはささやかながら感謝するとお伝えしてくれ」
「義」によって助太刀すると言ってきたのはパラディンのアンドリー・フィルス(ec0129)。アンデッドに脅かされている丹後の民を捨て置けなかった。
 生きて「父」の剣となり‥‥胸の奥にそう誓った雀尾嵐淡(ec0843)。戦闘が近付くにつれ、高まっていく緊迫感に身を委ねる。この一時を嵐淡は好いていた。
「何としても民を救い出さなくては‥‥」
 ペットのグリフォンを撫でながら、陣中に目を配るのは神聖騎士のソペリエ・メハイエ(ec5570)。仲間たちと作戦をすり合わせ、陽動部隊にて戦う。
「行きましょうスカイア。この戦、いつかきっと終わらせて見せる‥‥」
 日が暮れて夜、月明かりの中、丹後軍の決死行が始まる。

 ‥‥黄泉軍陣中。
「丹後軍がようやく現れましたぞ」
 導師は黄泉人の報告を受けて八十禍津日神に告げる。
「どうやら‥‥降伏するつもりはなさそうですな。信じ難いことですが、正面から明かりを持って突進してきます」
「ふん、追い詰められて窮鼠と化したか。民のために散るか‥‥馬鹿めが。絶望とともに粉砕してくれよう。導師よ、奴らを叩き潰せ」
 そして、不死軍は全軍正面の丹後軍に向かって移動を開始する。

 月明かりの中で、丹後軍は至近距離から黄泉軍に攻撃を仕掛ける。
「せいぜい目だって暴れるとしようか‥‥ストーム!」
 ハイアットは挨拶代わりのストームを叩きつければ、亡者の列が木っ端のように吹き飛んだ。
 武器を忘れるとは不覚。アランは軍の刀を借りて亡者たちを叩き切っていた。
「まともに行くなよ! 背後の森まで引きずり込め!」
 アランはがしゃ髑髏の鉄球を跳ね返すと、声を張り上げて部隊の指揮を取る。
 丹後軍は最初から戦う気など無い。それは徹底されていて、将兵たちは黄泉軍を引き付けて後退していく。
 暗闇の中、剣戟と亡者の咆哮が鳴り響き、丹後軍は黄泉軍を各個撃破していく。
「大丈夫か。持ち堪えろよ」
 白翼寺は月明かりの下で負傷兵の応急手当てを行うと、リカバーで傷を回復する。
 僧侶たちも後列にあって、味方の回復に努めていく。
「一斉射撃‥‥行くぞ!」
 ラザフォードは木霊のグラビティーキャノンに合わせて、自身も達人級のキャノンを放つ。重力波が黄泉軍を貫通して亡者たちをなぎ倒す。
「氏神様に‥‥攻撃開始の合図を‥‥目の前の敵に向かって重力反転を」
 未楡は太刀を振るいながら、陰陽師に木霊たちへの伝令を頼む。
 陰陽師はテレパシーで空の木霊たちに念話を送る。
「重力‥‥反転〜!」
 木霊たちは腕を一振りすれば、暗がりの中で数百の亡者がばばっと舞い上がって叩きつけられる。
 ペガサス騎乗で黄泉軍の上空を舞うイリアスは、黙々と矢を放ち続ける。クイックシューティングとダブルシューティングEXを併用して1ターン9連続射撃を行い弾幕を形成する。超絶的な破壊力を誇るイリアスの強弓が次々と黄泉軍の亡者を打ち倒していく。圧倒的な破壊力でイリアスは黄泉軍の戦列を崩していく。
 黙示録の戦いで冒険者たちは強力な力を得た。武器の強化はその最たるものである。長引く戦乱において、京都の秀吉などは密かにそれに目をつけていた。超絶的な武器や防具、大量生産は不可能としても、兵士たちの装備を整えることは不可能な話ではない。あるいは、今は悪魔王を倒した英雄達の最後の時代で――これから超絶的な武具を装備した歩兵達が戦場の主役にとって変わるのではないかと‥‥。
「‥‥さ、急いで」
 嵐淡は救護所にホーリーフィールドを張ると、怪我人を運び入れる。
「俺は‥‥力尽きるのか」
「何を弱気な。我々にはまだ為すべきことがあります。ここが踏ん張り時」
 嵐淡は侍の重傷をリカバーで回復させる。
「――ラプタス!」
 メハイエのチャージング+スマッシュが亡者をなぎ倒す。
 救出班が無事に民を救い出してくれることを祈る。メハイエはランスをなぎ払って、グリフォンの手綱を捌いた。

「おのれ丹後軍‥‥この期に及んで悪あがきか‥‥」
 戦場に姿を見せた八十禍津日神は森に引きずりこまれていく亡者達に苛立たしげであった。
 森に引き込まれたところへ氏神たちのプラントコントロールが襲い掛かり、リーマの超越ストーンが炸裂した。
「一体何が‥‥」
 そこへアランがポイントアタックを叩き込む。
「お前達は俺達の軍に負けもしないが、絶対に勝てん。少し大人しくしてたらどうだ? 5倍以上の兵を率いる将よ」
「ぬおっ?」
 禍津日神はスマッシュでアランを吹っ飛ばしたが、アランはすぐに逃げた。

 ‥‥宮津城下町。
 陽動攻撃で城下町の注意は外に向いていた。救出班のメンバーは夜陰に紛れて、昼間の偵察情報を頼りに急行する。
 バラスプリントで瞬間転移したバークは、人質の周りの盗賊たちをオーラアルファーで吹っ飛ばした。
「民人衆! 助けに来たぜ!」
 同じくバラスプリントで転移してきたアンドリーが、檻をあっという間にバーストアタックで破壊する。
「みんな、逃げ道は確保してます。アタイについてきて」
 木下や京極高広ら侍たちは状況を説明してから民を先導する。
 宿奈はムーンシャドウで姿を見せる。
「残りは私が引き受けます。さ、私に捕まって下さい」
 ムーンシャドウで民を連れて逃げる宿奈。
「よし行け宿奈。移動先の確保は任せろ」
 バークが瞬間移動する。
「殿は任せてもらおう。木下と京極殿は一刻も早く脱出を。少し町を混乱させていく」
 そう言ってアンドリーは殿に着いた。
「よし、行くぞ」
 木下と高広は民を率いて城下町を進んで脱出した‥‥。

 ‥‥丹後の戦いを終えたアランは、関東に赴く前に秀吉に目通りする。
「殿下、かく言う次第です。丹後の民を救う手立てを講じませんと、いつまで経っても黄泉に利用されるばかりです」
「報告は受けておるが――片桐や糟屋に捜索を優先させるか」
「は‥‥それも一案ですが、出来ますれば、忍びをお借りしたく」
「ふーむ」
 思案の末に、結局秀吉はアランの提案を受け入れた。
 丹後の民が少しでも救われれば良いが‥‥アランは主君の前で平伏するのだった。