【倭国大乱】乾坤一擲の丹後軍

■ショートシナリオ


担当:安原太一

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:15人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月12日〜10月17日

リプレイ公開日:2009年10月21日

●オープニング

 丹後、宮津――。
「さて‥‥人界も騒がしくなってきたが、イザナミ様の苦労を少しは肩代わりせねばなるまい」
 言ったのは丹後黄泉軍の総大将である八十禍津日神。
「禍津日神様‥‥では」
 丹後黄泉軍の副将である死人使い導師は、巨人の黄泉の大将軍を見上げる。
「ふっふっふっ‥‥京都の神皇には何もさせん。イザナミ様の手を煩わせることも無い。わしが動けば十分よ。丹後から南進し、京都周辺に圧力をかけるぞ」
「しかし、丹後軍のことは?」
「あの連中は山に隠れて逃げるしか出来ん。放っておいて大過ない。万が一攻撃してくれば別だが、そんなことは出来るはずも無い。我が軍は二万を越える。丹後軍に何が出来ようか? 進軍の命を下せ大連よ。京都を落す」
 そうして、黄泉軍は宮津を進発し、いよいよ京都を目指して南進を開始したのである。

 黄泉軍の動きは、丹後軍にも伝わっていた。物の怪たちが、全軍で驀進してくる黄泉の軍勢の動きを軍の野営地に伝えてくる。
「全軍を以って動き出したか‥‥敵の狙いは?」
「恐らく‥‥丹後から、京へ向かうつもりでは」
 丹後軍の将帥たちは厳しい顔で見合わせる。民の避難は完了したが、全軍を以って動き出した黄泉の大軍に、二千の丹後軍で何が出来るだろうか。
「こればかりは、打つ手が無い。これほどの大軍を、どうやって止める?」
「かくなる上は、全軍死兵となって突入し、敵将の首を上げるのみにござる!」
 はやる将兵に馬鹿を言うなと片桐且元が叱咤する。
「諦めるな。打つ手はあるはずだ。何か‥‥あ奴らを止める方法が‥‥」
 と、その時である――丹後軍の天津神や氏神、妖怪たちが何かの気配を察したように、空を見上げる。
「来た」
 天火明命が立ち上がり、南の空を見つめた。
「何です?」
 将兵も顔を見合わせ、立ち上がった。
 ざわり‥‥と木々がさざめき、人々も尋常ならざる何かが近付いていると気配を感じ取った。
 そして「彼らは」やってきた。鳴り響く人馬の怒涛。姿を見せる古代人の死霊の兵隊。彼らの数は見る間に増大し、凄まじい数の亡霊軍隊が天を埋め尽くし、丹後軍を取り囲んだ。
「これは‥‥」
「先日の回答を申し伝えに来たぞ」
 そう言って滑るように出てきたのは、先日冒険者たちが説得に向かった三輪山の神霊、大物主神の亡霊であった。
「これが‥‥大物主神の亡霊軍隊‥‥」
 将兵たちは戦慄する。
「お前達に味方しよう。現世の神皇にとって我らは受け入れ難い存在ではあろうが、天津神との盟約に従い、この戦、お前達に助勢する」
 丹後軍の天使、安底羅大将はいい顔をしなかった。
「死者が生ある者の世界を脅かすとは‥‥お前達の存在は許されるべきものではありません」
「安底羅よ、お前はひとまず黙って丹後軍の将兵を助けてくれんか」
 天火明命に諭されてむっとする安底羅。天津神は大物主神を歓迎する。
「よくぞ来てくれたな。何とか間に合った。黄泉軍が京都へ向かって南進を開始した。奴らを止めるぞ」
 丹後軍の将兵は恐る恐る大物主の亡霊軍隊に語りかける。
「先日の説得の件は承知していますが、本当に我々にお味方くださるのですか。あなた方は太古の幽霊。どちらかと言えば大国主に近しい存在」
 すると大物主は思案顔で答える。
「確かに我らの肉体は滅した。余は今さら倭国王などと名乗るつもりは無いが、イザナミや大国主が復讐や国作りと称して人界を侵略するのを黙っているつもりも無い。時が我らを呼び寄せたのだとしたら、今こそ余と余の軍隊が戦場に立つ時なのであろう」
 すると古代兵の亡霊たちは鬨の声を上げて「えいえいおー!」と叫んで刀を振り上げた。
「これだけの亡霊軍隊‥‥敵に回せば脅威だが、味方になればこれほど心強いものは無いぞ。黄泉軍に対する数の不利を覆すことが出来る」
 藤豊武将糟屋武則はある意味現実的な感想を漏らすと、大物主に総兵力を尋ねる。
「大物主神よ、それで此度の戦にどれだけの兵士をお連れ下さったのですか」
「うむ、ざっと五千と言ったところか。予備軍はまだ後方に待機しておる」
「何と‥‥」
 丹後軍の将兵がざわめく。かくして、恐るべき大物主の軍隊を味方につけた丹後軍は、早速軍議に入る。
 新たに大物主の亡霊を受け入れ、地図を広げて作戦を協議する。
「敵はすでに丹後の主要街道を征圧、大軍を幾つかに展開している。続々と大江山に侵入し、京都方面へ抜けるつもりのようだ」
「では、我が軍はどこで仕掛けるか‥‥いずれにせよ、こちらにとって有利な位置で仕掛けたいところではあるが」
 妖怪たちと忍び、さらに大物主の亡霊たちが素早く大江山を飛び、情報を収集する――。
「敵の配置が判明したぞ」
「来たか」
 情報を元に地図を改める。大江山を抜ける三つの主要街道、それらに黄泉軍が展開しているという。
「中央の街道に最も分厚い八十禍津日神が率いる敵本隊、西の街道に導師率いる軍勢数千、東の街道に恐らく黄泉将軍が率いる部隊数千‥‥我々は、ここだ」
 片桐且元は、大江山の最南端に丹後軍の印を置いた。
 丹後軍に合流した大物主の亡霊軍隊。奇跡的な援軍によって数の不利を補う丹後軍の、乾坤一擲の反撃が始まる。

■丹後軍戦力
人間:侍1500、足軽500、僧侶50、僧兵50(白、黒半数ずつ)、陰陽師100、忍者数十名
人外:天津神ら火精霊(天火明命、天御影命、天鈿女命)、氏神ら地精霊(大太法師×1、大蛇×10、木霊×100)、天使の安底羅大将。白狐や化け狐、人語を解する狼、猿、ネズミらを大将とする獣たち1000余り、そして大物主の亡霊軍隊5000余

■黄泉軍戦力
八十禍津日神の中央軍:がしゃ髑髏、死食鬼、死霊侍の集団の他、無数の死人憑きや骸骨兵士、怪鳥アンデッド以津真天、怨霊など、総数10000余
導師の西軍:構成は八十禍津日神と同様。総数7000余
黄泉将軍の東軍:がしゃ髑髏、死食鬼、死霊侍ら高レベルアンデッドは少なめ。死人憑きや骸骨兵士が主。以津真天と怨霊も少なめ。総数3000余

●今回の参加者

 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4295 アラン・ハリファックス(40歳・♂・侍・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7871 バーク・ダンロック(51歳・♂・パラディン・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea9502 白翼寺 涼哉(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 eb0921 風雲寺 雷音丸(37歳・♂・志士・ジャイアント・ジャパン)
 eb1004 フィリッパ・オーギュスト(35歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb1422 ベアータ・レジーネス(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb2373 明王院 浄炎(39歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 eb3529 フィーネ・オレアリス(25歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb4667 アンリ・フィルス(39歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 eb4890 イリアス・ラミュウズ(25歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)
 eb9112 グレン・アドミラル(34歳・♂・侍・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb9943 ロッド・エルメロイ(23歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec3138 マロース・フィリオネル(34歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

木下 茜(eb5817

●リプレイ本文

「来て下さると信じてました。今こそ我が国の義を貫く時です」
 白翼寺涼哉(ea9502)は大物主に言葉を投げかけると、導師や八十禍津日神の能力に心当たりがあるか問う。
「八十禍津日神か、あのような怪物は黄泉の巨人族にいたと聞いたことがあるが‥‥余も詳しくは知らぬ。導師については余は初耳だ。‥‥大連? さて、余は聞いたことが無いが‥‥」
 明王院浄炎(eb2373)は大物主に黄泉人の過去について問う。
「八十禍津日神や道敷大神とは、その昔、どういった者たちだったのか。彼らの復讐と言うのは一体‥‥」
「かつて、この国が倭国と呼ばれていた時代、黄泉人は神であった。イザナミを始め黄泉人を神と仰ぐ人々は生贄を捧げ、他の精霊や妖怪たちがそうしたように、黄泉人の庇護を受けていたのだ」
 その黄泉人が何ゆえ封印されたのかは大物主も知らなかった。

 黄泉軍西軍、導師の本陣――。
 黄泉人が導師の前にやってくる。
「導師様、人間どもが前方に出没したようでございます」
「何?」
 ローブをまとったぼろ骸骨の導師、肉体から瘴気が沸き上がると、瘴気は怨霊となって絶叫する。
「人間どもが? 馬鹿め‥‥死に来たか。がしゃ髑髏を前に出せ、踏み潰してくれるわ!」
 導師は手を突き出して哄笑した。

「黄泉軍の姿を確認しました‥‥。街道から戦域を拡大。正面から突撃してきます」
 宿奈芳純(eb5475)がテレスコープとエックスレイビジョンで黄泉軍の陣容を看破する。
「これ以上面倒は起こさせん‥‥」
「ガァアアア! 黄泉の軍勢め、丹後ででかい面をできるのはこの日限りだ!」
 アラン・ハリファックス(ea4295)や風雲寺雷音丸(eb0921)が藤豊武将達とともに兵士たちの指揮を取る。丹後軍は整然と街道に展開し、敵軍を引き付けに掛かる。超越ウィザードのロッド・エルメロイ(eb9943)は前に出て、ファイヤーボムの発射準備に入る。
 続々と接近してくる黄泉軍に、丹後軍は後退を開始する。ここで威力を発揮したのはロッドの超越魔法。超越ファイヤーボムをとんでもない回復力で撃ち込んで行く。木っ端のように砕け散っていく黄泉軍。
 それでも大軍ゆえの余裕か、導師はひたすら前進を命じる。

 山中に潜んで、導師の側面に回りこんでいた大物主らと冒険者たちは、宿奈の超越テレパシーとベアータ・レジーネス(eb1422)のヴェントリラキュイで戦況を逐一把握していた。忍びや妖怪たちも宿奈と連携し、それをベアータが伝える。
「敵陣、引き伸ばしに成功しつつありますが、導師は小揺るぎもしない模様」
 ベアータからの連絡を聞きながら、天城烈閃(ea0629)、フィリッパ・オーギュスト(eb1004)、アンリ・フィルス(eb4667)ら、兵法知識に長けた者たちが大物主と相談しながら突撃のタイミングを図る。
 そうして、斥候の獣たちが導師の位置を確認し、黄泉軍の隊列が十分に伸びきったところで、大物主は全軍に号令を下す。
「冒険者たちよ、そして我が将兵たちよ。時は満ちた。これより黄泉軍の戦列に突撃を掛ける。行くぞ我が兵士たちよ――! 全軍我に続け!」
 大物主は先陣を切って突撃する。
「味方してくれる死人がいるとは‥‥助かるぜ」
 バーク・ダンロック(ea7871)はフライで飛行しながら突撃する。
 ペガサスで舞い上がった烈閃とイリアス・ラミュウズ(eb4890)はミストフィールドから飛び出すと、超絶的な破壊力にまで高められた強化弓で攻撃を開始する。

「何だあれは?」
 導師は突如として側面から殺到してきた大物主の軍隊に意表を突かれる。亡霊軍隊の突進が亡者の列を貫通して、ばたばたと黄泉軍の死人たちが倒れていく。
 そこへなだれ込んでくる冒険者たち。フィーネ・オレアリス(eb3529)の超越ホーリーが導師を直撃するが、導師は小揺るぎもしない。
 上空からその導師の頭部、頭蓋を列閃とイリアスの魔弓が射抜く。
「ぐお!」
 思わぬ方角から大打撃を受けて、導師は矢を引き抜くと、怒りの咆哮を上げる。
「ぬおおおおお‥‥ああああああ!」
 導師の体から瘴気の渦が爆発して、瘴気は怨霊の弾丸となって冒険者たちに襲い掛かった。
 烈閃とイリアスはクイックシューティングとダブルシューティングEXを駆使して怨霊をなぎ払う。二人は以津真天と怨霊の攻撃に追われることになる。
「ぐあ‥‥!」
 先頭に立っていた浄炎は怨霊弾の直撃を食らって一撃で膝を付く。
「浄炎さん――」
 マロース・フィリオネル(ec3138)がリカバーで回復。浄炎は何とか立ち上がる。
「せいやあ!」
 アンリとグレン・アドミラル(eb9112)の凄まじいソードボンバーが怨霊達を粉々に蹴散らすと、導師は怒りの眼を向ける。
「貴様らごときが‥‥この大連を倒せると思うか!」
 導師は突撃してくる冒険者たちに向かって腕を持ち上げると、怨霊弾を連射した。
 オーギュスト、フィーネ、マロースたちがホーリーフィールドを張って怨霊弾を跳ね返す。
 バークがオーラアルファーで怨霊を粉砕すると、導師も矢継ぎ早に怨霊を召喚して冒険者の接近を阻止する。
 バーク、浄炎、アンリ、グレンたちに、オーギュスト、フィーネ、マロースが付き、導師との距離を詰める。
「しぶとい奴らよ‥‥一撃で葬り去ってくれるわ!」
 導師は後退すると、全身から瘴気を放出し、怨霊弾を連発する。
 だが冒険者たちは耐えると、バークのオーラアルファーで怨霊を吹っ飛ばし、グレンが突撃する。
「食らえソードボンバー!」
「愚か者!」
 怨霊弾の前に崩れ落ちるグレン。
「導師!」
 しかし浄炎がガラントスピアを投げつける。槍が導師の骸骨の肉体を打ち抜いた。
 そして超越オーラマックスで凄まじい勢いで驀進するアンリが怨霊弾をソードボンバーで粉砕し、導師に切り掛かった。
 ドゴオオオオ! と遂に戟の一撃が導師の肉体に打ち込まれる。
「ぬううううう‥‥ああああああ!」
 導師の体から再び瘴気が爆発して怨霊弾が炸裂する。
 アンリは絶命したが、最後の力で導師に体当たり、導師ともつれるように地面に倒れる。
「導師! 貴様は‥‥倒す!」
 結界から飛び出して突進するバーク、浄炎、グレン。
 わめいてアンリの亡骸の下で暴れる導師を三人は滅多打ちにした。
「いい加減にくたばりやがれ!」
 そしてバークのシャクティが導師の頭部を破壊すると、遂に導師の腕が落ちる。
「やったか‥‥?」
 今やぴくりとも動かない導師の肉体は、ただの骸骨であった。
「やった‥‥やったぜ!」
 フィーネがアンリをリカバー超越で蘇生させる。
「う‥‥む? 拙者は‥‥」
「大丈夫です。導師は倒しました」
 フィーネは導師の懐から転がり落ちた潮盈珠を発見して、回収する。

「ん? やったのか」
 白翼寺は丹後軍で回復に当たっていたが、導師を撃破して後、一気に黄泉軍を撃破していく大物主軍と冒険者を見て呟く。
 ベアータのヴェントリラキュイで全軍に導師撃破の報が伝わるのと並行、黄泉軍は勢いを失い、その戦線は崩壊した。
 かくして、導師の西軍を撃破した丹後軍は、東進して八十禍津日神の中央軍に向かう――。

 大物主は予定通りに、行軍している八十禍津日神の大軍の側面から襲い掛かった。怒涛のような突撃で黄泉軍の戦列が崩れる。
 生き延びた黄泉人が導師死すの報を八十禍津日神に知らせる。
「そうか、丹後軍が大連を倒したか」
 ――大物主様に続けえ! 黄泉人どもを打ち破れ!
 亡霊軍隊の叫びが、八十禍津日神の記憶を呼び起こす。
「古代人の亡霊か? 亡霊を味方につけるとは‥‥丹後軍めどんな手を使う」
 八十禍津日神は怨霊を率いて飛び立ち、大物主の軍隊と激突する。
 亡霊軍隊と怨霊の霊体同士が音もなくぶつかり合い、もみ合う。
 八十禍津日神は亡霊を叩き切って、突進。後退する大物主たちを追って山中に入り込んだ。そうして――。
「将の首1つとれずにイザナミに合流とはな。このアラン最早消えも隠れもせん、誇りがあるなら俺の首ぐらい取ってみろ!」
「何?」
 アランが単身姿を見せると、八十禍津日神は牙を剥いた。
 逃げるアランに瞬く間に追いつくと、八十禍津日神は強烈な一撃を叩き込む。アランは槍で跳ね返した。
 これあるを待ち受けていた冒険者たちは八十禍津日神に殺到する。列閃とイリアスが魔弓を叩き込み、バーク、雷音丸、浄炎、アンリ、グレンが一気に突入する。そしてフィーネの超越ピュアリファイが連発――!
「ぬおおおおお‥‥!」
 超絶的な浄化の光が八十禍津日神を包み込む。
「おおのれええええ!」
 殺到してくる冒険者たちの超威力の攻撃を受けても動じることなく――いや、攻撃は効いている。だが刀剣の傷口が見る間に塞がっていく。傍若無人なまでのパワーに再生能力。八十禍津日神は魔王のように立ちはだかった。
「お前を倒して‥‥この戦を終わらせる!」
 アランと雷音丸、アンリのポイントアタックやポイントアタックEXが重装甲を貫き、この巨人の肉体を切り落とす。
「イ‥‥イザナミ様! どうか我らの復讐を‥‥!」
 無敵かと思われたこの魔神の肉体に、烈閃とイリアスの魔弓が打ち込まれ、フィーネのピュアリファイ超越級が打ち込まれる。
 そして、遂に八十禍津日神の巨体が堕ちる。冒険者たちは襲い掛かって八十禍津日神に止めを差す。
「よし! 総大将は打ち破ったぞ! 一気に黄泉軍を叩く!」
 形勢逆転、丹後軍はぎりぎりの戦いに逆転勝利し、黄泉軍に壊滅的なダメージを与えた。

 ――潰走していく黄泉軍を見やり、アンリは大物主に問うた。
「大物主神よ、第六天魔王とは一体何者ぞ」
「‥‥かつて、この国が倭国と呼ばれていた時代、倭国王とともにこの国を支配していた悪魔の王だ。にわかには信じ難いであろう。倭国においては悪魔崇拝が支配的であり、精霊や妖怪、黄泉人を支持する民は少数派であったのだ」
 かくして、長きに渡る丹後における黄泉との戦いは終わった。だが、次なる戦いが近付く――。