【倭国大乱】大国主と、丹後軍と
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■ショートシナリオ
担当:安原太一
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 85 C
参加人数:15人
サポート参加人数:5人
冒険期間:10月22日〜10月27日
リプレイ公開日:2009年10月29日
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●オープニング
丹後南部、大江山――。
山中と街道に莫大な数の骸が横たわっている。丹後黄泉軍の死人憑きであったり骸骨兵士であったものだ。
丹後黄泉軍の亡者たちは僅かに生き残っていたが、それらも丹後軍と大物主の亡霊軍隊によって掃討されつつある。
丹後軍の追撃を振り切って逃げ延びた黄泉人と黄泉将軍たちは、信じ難い現実に狼狽していた。
「馬鹿な‥‥導師様も、八十禍津日神様までもが人間たちに討ち取られるとは‥‥それにあの亡霊どもは何なのだ?」
「信じられん‥‥我々は一年近くを掛けて丹後を制圧していたというのに、たった数日で、たったの数日によってだ、全軍を壊滅させられるとは‥‥イザナミ様に何と御報告するか」
「このまま西国へ撤退しましょう。イザナミ様にことが知れたら、我々はおしまいです‥‥」
丹後を逃れ、西国へ逃走する黄泉人たち。
先だって行われた丹後軍と黄泉軍の決戦において、二千の丹後軍は黄泉軍二万に対して奇襲攻撃を仕掛け、これを打ち破った。奇跡的な大物主の亡霊軍隊五千の援軍があったとは言え、数倍の軍勢を擁する黄泉軍に対して奇襲攻撃を仕掛け、導師と八十禍津日神を撃破する。ここに、丹後黄泉軍は崩壊し、丹後・藤豊連合は長きに渡る黄泉との死闘に終止符を打つ。
敵勢を撃破したことも大きいが、冒険者たちは導師が持っていた伝説の秘法潮盈珠を奪取し、これを神皇家に収めた。
勝利に沸く丹後軍は宮津方面へ進出する。宮津城と、西部の峰山方面にも丹後の盗賊「白虎団」が居を構えていたが、黄泉軍撃破の報が伝わると、盗賊たちは恐れをなして丹後半島へ潰走する。
丹後軍は黄泉軍によってこの地を追われてから一年、久方ぶりに宮津城に入城する。
「では‥‥我々は役割を果たしたということだな」
大物主の亡霊は勝利に沸く丹後軍の将兵たちに別れを告げにやってきた。
「大国主の動きは気がかりだが、今すぐにも大乱が起こるというわけでもあるまい。我々は三輪山へ戻るとしよう」
「大物主神様――助勢に感謝いたします」
丹後軍の将兵たちは大物主に深々とお辞儀した。
と、その時である。大物主の直臣を務める亡霊が上空から舞い降りてくる。
「陛下!」
陛下とは大物主のことである。
「東方から何やら大軍が進軍してきます! 凄まじい数の軍勢ですぞ! あれこそは‥‥噂の大国主の軍勢ではありませんか!」
「何だと」
丹後軍の将兵は耳を疑う。だがすぐに気を取り直すと、物見櫓から東方を見渡す。
「あれは‥‥!」
確かに、地平線に凄まじい数の大軍が展開している。
陰陽師たちがテレスコープで敵状を視察する。見れば、数多の精霊獣や精霊の戦士などから成る精霊兵団、もの凄い数の人間大の埴輪兵士が整然と並び、そして、無数の亡霊軍隊が盛大に展開している。
「あれを、あそこにいるのは‥‥大国主だ」
「ぬっ!」
すると、地平線に巨大な大国主が何体も出現する。
「マジカルミラージュ、蜃気楼の術か」
そうしていると、大国主軍から大国主その人が岩のドラゴンに乗って飛び立ち、長髄彦や八十神らの幽霊を引き連れて宮津城の上空に飛来する。
対峙する丹後軍と大国主。大国主はヴェントリラキュイで上空から話しかけてきた。
「丹後軍よ、どうやら黄泉人を打ち破ったようだな。なるほど、亡霊の軍隊‥‥死者の兵士を味方につけたか。どこから蘇えらせた」
「大国主よ、余は大物主だ。兵を率いてくるとは、我等に対する宣戦布告か」
「大物主? そうか‥‥余の三代前の倭国王が‥‥卑弥呼の朝廷を受け入れたというあの」
大国主は感銘を受けたようであるが、改めて丹後軍に呼びかける。
「余は大和の朝廷に対して寛大な条件を約束したはずだ。それにも関わらず、神皇は余を倒せと言う。余の未来予知がしばしば警告を発している。黄泉人が倒れ均衡が崩れた今、お前達を放置しておくことは出来ん。余は座して滅亡を待つつもりは無い。丹後軍よ、降伏して丹後を明け渡すか、あるいは余の軍隊と矛を交えるか。道は二つに一つだ」
「何だと‥‥!」
丹後軍の将兵はいきり立った。ようやく黄泉人を倒したと言うのに、丹後を渡せという。
「大国主よ! 貴様の言は詭弁に過ぎぬわ! 黄泉人が倒れた今、おとなしく民を解放し、神皇様に丹後を返すのはそっちだ!」
「神皇の兵たちよ、お前達がイザナミに敗れる可能性もある。その時、民を救うことが出来るのは、余と余の軍隊だけだ」
こうして、宮津城近郊で、大国主軍と丹後軍は睨み合うことになる。
京都――。
関白秀吉は、藤豊武将片桐且元と糟屋武則、旧丹後藩主の立花鉄州斎と中川克明を藩邸に迎えていた。
「どうじゃ、勝てそうか?」
秀吉の問いに、丹後軍の首脳達は厳しい顔だ。
「大国主はいずれ倒さねばならぬ。あ奴はれっきとした朝敵じゃからのう。黄泉人の件が落ち着くまでは様子を見ておったが」
「味方に付いた大物主神の亡霊軍隊は総勢万を下らぬ大軍です。数では負けませぬ」
「数では負けぬか」
さしもの秀吉も神魔の戦いが数で決まるものかどうか図りかねた。そこで「勝てるか」と聞いたのだ。
「何れにしても、丹後はやれぬ。降伏は無い。それに神皇様の御親征の折に、大国主に自由に振る舞われては厄介じゃ」
それが秀吉の答えであった。四人の丹後軍首脳は平伏すると、宮津城へ戻った。
――睨み合いが続き、両軍の間で高まる緊張感が暴発したのは、長髄彦の幽霊たちが一部隊を率いて丹後軍へ攻撃を仕掛けてきたことによる。迎え撃った兵士に死傷者が出て、丹後軍の侍、兵士たちは大国主軍への攻撃を唱える。
「今や我らにも大物主神様の兵がおり、戦力は互角。大国主との決着をつけるべきです!」
すでに小規模な戦闘が始まり、丹後軍の小部隊と大国主の亡霊軍隊などが小競り合いを起こしている。
「では‥‥攻撃を開始する。あの国津神の王を倒し、丹後を解放する。神皇様の御親征前に、大国主を倒す!」
‥‥戦場の外で。
天使の安底羅大将と悪魔の鳩摩羅天が向き合っていた。
「安底羅よ、我々の戦いにも決着が付きそうだな。それと、大国主の腹心達は、集まってきた国津神たちは天探女の術で完全に記憶を消された。何人かが俺様と契約を結んで、大国主を助けてくれとすがってきたわ‥‥」
「お前の思い通りに進むと思わないことですね、悪魔よ」
安底羅大将は悪魔を睨みつけて飛び去る。
かくして、紆余曲折の末に、丹後軍と大国主軍は遂に激突する。
■丹後軍戦力
人間:侍1500、足軽500、僧侶50、僧兵50(白、黒半数ずつ)、陰陽師100、忍者数十名
人外:天津神ら火精霊(天火明命、天御影命、天鈿女命)、氏神ら地精霊(大太法師×1、大蛇×10、木霊×100)、白狐や化け狐、人語を解する狼、猿、ネズミらを大将とする獣たち1000余り。天使の安底羅大将。そして大物主の亡霊軍隊20000余。
■大国主軍戦力
大国主:全軍の指揮を取る大魔道士。
天探女:月の大精霊。大国主の側近を務める。
長髄彦や八十神の幽霊:主に亡霊軍隊の指揮を取る。
国津神たち:転生の秘術と天探女の記憶操作で大国主の部下となった人々。
鳩摩羅天:丹後の悪魔のボス。現状行動不明。背後で静観か。
大国主が召喚した精霊獣や精霊の戦士たち:1000余、大国主の埴輪兵:1000余、大国主の亡霊軍隊:20000余
●リプレイ本文
烏哭にボソっと胸の内を呟く白翼寺涼哉(ea9502)。
「聞こえる――痛みに嘆く国の声が。民を守る事は故郷の誇りを守る事だと思う。戦を終え、国として生き続ける為に――貴様には分からんがな」
「失礼ですねえ〜涼哉君」と言って、烏哭は大国主軍を観察していた。
「大物主神様――」
冒険者たちは大物主と亡霊の将軍たちとこの一大決戦について打ち合わせを行う。
「敵は大兵力をこの平原に、まさに磐石の布陣。我が軍も敵に同数であるからには、中央と両翼に兵を展開する必要があるでしょう」
「尤もだ」
ルーラス・エルミナス(ea0282)の提案に大物主は頷く。
「こちらには魔法使い達が各陣に配置できるはずです。彼らの攻撃力を最大限に引き出すべきでしょう」
アラン・ハリファックス(ea4295)が言うと、超越魔法の使い手たち、深螺藤咲(ea8218)、ルメリア・アドミナル(ea8594)、エル・カルデア(eb8542)、ロッド・エルメロイ(eb9943)らは固く拳を握り締めた。
「俺は今回戦場で指揮を執らせてもらうが、どうか宜しく頼む」
平織家の風雲寺雷音丸(eb0921)は藤豊武将や大物主神の亡霊たちと顔を合わせていた。
「敵は未曾有の魔軍だ。今は目の前の敵にともに戦ってくれ」
敵は魔軍大国主、雷音丸の参戦に意義を唱える者はここにいない。
「私は左翼の指揮を取らせて頂きますが、何卒ご協力下さい」
「今を生きる全てのモノがより善き世を生きる為の戦いでもある。祖たる皆様を蔑ろにする訳ではないが、今を生きるモノを、あなた方の子孫の意志を尊重しては頂けぬだろうか」
レイムス・ドレイク(eb2277)や明王院浄炎(eb2373)の提案を大物主たちは快く受けた。
「祖国を守るために身を捧げるは我らが本懐。せめてこの滅びた肉体が役に立つのなら、我ら全軍死兵となって戦おう。我らの今生への未練はここで断ち切り、安らかな眠りに付きたいものだ。そんな日が来るのかどうか分からぬが」
大物主たちは言って吐息する。死者の彼らに安寧の日は来るのだろうか。
「では行こうか冒険者たちよ、丹後の侍たちよ。決着を付けに行こう。この戦に勝って、丹後を解放する!」
「出陣! 全軍配置に付け! 戦闘開始の合図とともに攻撃を開始せよ!」
大国主軍陣中――。
「良いのか大国主よ。俺様が手を貸してやっても良いのだぞ。悪魔軍一万、ここへ呼び出して戦わせることも可能だが‥‥」
鳩摩羅天は美しい顔に残酷な笑みを浮かべていた。その顔は大国主を嘲笑っているようだった。
「悪魔の助力は無用だ。これは余と大和の朝廷との戦。お前を巻き込むと格好の攻撃材料を与えることになる」
「ほう‥‥」
そこへ長髄彦の幽霊が飛来する。
「陛下! 丹後軍が動き出しましたぞ! 全軍を以って前進を始めました!」
「そうか‥‥奴らはどうあっても戦うか。ならば、余と余の軍隊の力を以って叩き潰すまでだ」
大国主は立ち上がると、全軍に前進するように号令を下した。
「敵軍、前方集団前進してきます‥‥もの凄い数ですよ‥‥」
宿奈芳純(eb5475)はマジカルミラージュで近郊の平原に丹後軍の幻影を作り出していたが、大国主軍はさほど進路を変えることなく、こちらへ向かってくる。宿奈は超越テレパシーで全軍に大国主軍の接近を伝える。
「各自、前衛部隊、各個撃破に専念せよ」
大物主からの通達を宿奈が全軍に伝える。
両軍の戦端は、関東の決戦で見られたような、丹後軍の超越魔法の攻撃から始まった。
「わたくしの魔術を‥‥受けなさい亡国の怨念たちよ‥‥ライトニングサンダーボルト!」
ズキュウウウウウウン! とルメリアの稲妻が大国主軍を貫通する。一撃で大国主軍の一角が消滅する。
「解き放て‥‥重力波‥‥! グラビティーキャノンよ貫け!」
ドゴオオオオオオ! とエルの重力波が大国主軍の埴輪兵を貫通。粉々に砕け散っていく埴輪兵団。
中央部隊で猛威を振るうルメリアとエル。
一方右翼では藤咲がファイヤーボムを連発していた。
「打ち砕け爆炎! なぎ払え炎!」
ボムを連射する藤咲。今回魔法使い達はソルフの実を何百個と用意してきた。凄まじい回復力で超越魔法を連発する。
左翼ではロッドがファイヤーボムやマグナブローを叩きつける。
「偉大なる先達、大国主様でも、朝敵である以上認めるわけにはいかない。この戦いで丹後を取り戻す」
腕を一振り、接近する亡霊たちがボムの破壊力の前に砕け散っていく。
伊達の武将イリアス・ラミュウズ(eb4890)は、前回の黄泉との決戦に続いて航空戦力として参戦。ペガサス騎乗で舞い上がると、超絶破壊力の強弓「十人張」でクイックシューティングとダブルシューティングEXで十秒間に9連射。次々と亡霊を打ち抜きつつ敵軍の上を旋回する。
亡霊軍隊同士の戦力は拮抗している。ならば敵の埴輪兵士や精霊兵団、そして指揮官クラスの国津神を狙うが上策。イリアスは上空から敵情を探り、それら亡霊以外の敵戦力の撃破に注力する。
ズドドドドド! とイリアスの連打を食らって、倒れる国津神。
「大国主様‥‥どうか我らの悲願を‥‥!」
ルーラスも上空から射撃攻撃。超破壊力のウルの弓を叩き込み、敵精霊、埴輪兵を打ち砕いていく。
地獄戦を経て、超絶的な神魔の戦いを制してきた冒険者たち。もはや彼らの戦闘能力は常識外であった。
と、大国主軍の亡霊兵士が急速に突出して来て、矢の弾幕と超越魔法を突破して突撃してくる。
「敵軍急速前進します!」
宿奈の警告に大物主軍と丹後軍が迎撃体勢を取る。
「丹後の興廃この一戦に在り。各員一層奮励努力せよ!」
ここで幾多の死線を越えてきたアランは兵士たちを鼓舞すると、武器を構える。
「ここまで戦い抜いた奴らが、凱旋もできずに死んでゆくこと等あってはならんのだ!」
「迎撃!」
号令が各所に飛ぶ。アランはミョルニルを投げつけると、敵亡霊は消滅した。
「大国主、過去の妄執に囚われた今の貴殿は、残念ながら王たる器ではない! その所業は騒乱に付け込んだ国盗人にすぎん!」
雷音丸は三連撃で敵亡霊を叩き切る。
戦線各所で大物主軍の将軍達が兵士たちを叱咤する。
「一度は滅びたこの肉体! 何を恐れることがあろうか! 民のために今一度剣を振るう時ぞ! 掛かれ!」
突撃する大物主の兵士たち。大国主軍と激突すると、霊体の剣で攻撃する。亡霊と亡霊がぶつかり合い、そこかしこで怒号が飛び交い、そして亡霊兵士たちは互いに次々と消滅していく。
「大物主様、お下がり下さい」
雀尾嵐淡(ec0843)は大物主をホーリーフィールドで包み込んで、この王の亡霊を守った。
「陛下に仇名す不義理な連中よ! この長髄彦が皆殺しにしてくれるわあ!」
乱戦を突破して突撃してくる長髄彦の幽霊。
「ぬう‥‥!」
浄炎は長髄彦の突進攻撃を受けて膝をつく。霊体が貫通して力が抜ける。すぐさまポーションで回復した。
「死ねえええ! 逆臣どもが!」
「ぬうああ‥‥せいやあ!」
浄炎は長髄彦の攻撃を受けながらもアンデッドスレイヤーで切り裂いた。絶叫する長髄彦。
「大国主様の正当な地位を回復するために! この長髄彦、逆臣を滅ぼさん!」
嵐淡はピュアリファイで接近してくる長髄彦を浄化する。
「せめて来世で安らかに眠りなさい」
浄炎がさらに連撃を食らわせると、長髄彦は断末魔の叫びを残して消失する。
中央軍にて奮戦するグレン・アドミラル(eb9112)。ソードボンバーで亡霊をなぎ払いながら大国主軍の突進を受け止める。
「この戦いで朝廷に貢献し、御家に功績を‥‥」
新田家のグレンは関東における戦いの行く末を案じていた。所は違えど、朝廷のために新田の家臣として剣を振るう。
「朝敵の魔軍が丹後の支配を唱えるなど‥‥許されませんよ」
裂ぱくの気合いとともにソードボンバーを振るえば、亡霊兵士が一撃で吹き飛び消失する。
魔法で数を減らしたとは言え、数百の精霊兵士と埴輪兵団が突撃してくる。稲妻や炎をまとった大国主の精霊召喚戦士が剣を振るって襲い来る。埴輪も素早く、人間の全力疾走並のスピードで突進してくる。
「奴らを迎え撃て!」
アランがミョルニルを振りかざせば、宿奈が伝達する。
「来ましたね‥‥噂の精霊戦士ですか」
グリフォンで中央軍の上空を守るコルリス・フェネストラ(eb9459)は、突撃してくる精霊や埴輪に接近すると、ミョルニルを投擲する。投げ下ろされたハンマーはコルリスの手を離れて飛んで行き、埴輪を粉々に打ち砕く。
足軽たちも用意されたハンマーを手に、埴輪に立ち向かう。
精霊たちがブレス攻撃を放てば、兵士たちは盾で受け止め、反撃する。
「怯むな! 突き破れ!」
アランを戦闘に突撃する丹後軍。
「――亡霊どもよ! 掛かって来い! 私の手で滅してくれるわ!」
レイムスは戦闘の緊迫感で狂化を起こしていた。ソードボンバーでひたすら敵軍をなぎ払うが、突進過ぎて危うく包囲される。
「レイムスさん!」
ロッドが大物主の兵士とともに前進して、威力を落としたファイヤーボムで敵勢を蹴散らす。
「レイムスさん、無茶はいけません」
「ロッドさん、何としても大国主を倒しましょう!」
ロッドは何とかレイムスを下がらせる。
白翼寺は後方にあって僧侶達の指揮を取りながら、この激戦の経過を見守る。
運びこまれてくる重傷者を診察しながら、白翼寺はふと手を止める。
「この戦、妖や精霊と神々、そして人――再び手を取り合う事が出来るだろうか‥‥」
そこで僧兵の一人が駆け込んでくる。
「白翼寺殿、敵軍が撤退して行きます」
「勝ったか」
「いえ‥‥大国主は相当の被害を出したようですが、こちらも大物主軍始め、敵の突撃でかなりの損失を出した模様です」
「そうか。だが、ひとまず大国主を退けることが出来たか‥‥」
その後、味方の大物主軍が約五千の兵を失ったことが知れる。丹後軍の兵士にも百名近い死者が出た。
――激戦であった。