丹後の決戦、大国主との戦い
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■ショートシナリオ
担当:安原太一
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:15人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月25日〜11月30日
リプレイ公開日:2009年12月09日
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●オープニング
丹後南東――。
大国主の居城、針の岩城に向かって、丹後軍と大物主の亡霊軍隊が攻撃を開始していた。
と言っても、大国主軍もいまだに一万を超える亡霊兵士を有する。岩城の手前で、両軍は交戦状態に入る。
大国主のもとで、かつて黄泉人から救われた丹後の民は、戦闘地域から離れて、両軍の激突の話を聞く。
「これで‥‥本当に帰ることが出来るのでしょうか」
「大国主様には守って頂いた。だがのう‥‥本来ここはあの方の物ではない。あの方と丹後軍との戦いは、避けられるものではなかったのじゃ」
いずれにしても、民人は戦場に巻き込まれることは無い。
「大国主は朝敵。あ奴を倒し、神皇様の御親征の憂いを絶つ。大国主を放置しておくのは危険が過ぎると言うものだ。我が軍に与えられたのは、丹後の地を守り、大国主から民を取り戻すことだ」
丹後軍の武将達は、兵士たち、侍たちを激励する。
「大国主を討ち果たすは関白殿下よりの主命である。行くぞ者ども。この地を、あの妖術使いから取り戻すのだ」
‥‥太古の神々たちは、太古の時代、大国主と戦ったことがあるという。倭国大乱と言う大きな戦において。
天津神たち氏神ら精霊、白狐ら物の怪たち、そうして、丹後軍に味方した大物主の亡霊軍隊――。彼らは大国主を倒すために、今再び丹後軍とともに戦いを挑む。
戦いが始まり、針の岩城の下は乱戦に突入する。数万の亡霊兵士たちがぶつかり、丹後軍の兵士たちも針の岩城に突入する。
冒険者たちは丹後軍とともに岩城に突入した。岩城の中にも亡霊兵士たちや魔獣が待ち受けていたが、それらを撃破して、冒険者たちは岩城の最上階に到達する。
大国主は最奥の台座に鎮座していた。冒険者たちの姿を認めると、すっと手を持ち上げる。
「止まれ、都の勇士たちよ」
冒険者たちは大国主と対峙する。
「無謀なことだ。余を討つなど、お前達に出来ようはずが無い。だが、あくまで武器を振るうなら、余の絶対無敵の力を思い知るが良いぞ」
冒険者たちは、武器を抜いた。
「答えは一つだ大国主‥‥亡国の幽霊よ。神皇様の命により、お前を討つ!」
「話し合う余地は無さそうだな‥‥仕方あるまい」
大国主は玉座から立ち上がった。
「来るが良い都の勇士たちよ。せめて余の力をその目に焼きつけ、散っていくがいい」
――そして、城の最上階で冒険者たちと大国主の戦いは始まった。
●リプレイ本文
「大国主よ、お前は岩の巨竜を駆り数多の秘儀を操る英傑にして、王であり、現存する神話だ」
アラン・ハリファックス(ea4295)は目の前の大国主に向かって言う。
「それに比べ俺は人間だ。お前には及ばぬ。極めつけ小さな人間に過ぎぬ。畏れはある。だが俺はお前を打倒する。さもなくば俺は、此処から一歩も先に進めぬ」
アランは大国主を見据える。
「さぁ、これが思い上がりと思うのなら、この俺を夢の狭間で終わらせてみせろ、愛しき、丹後最後の御敵よ!」
大国主は感銘を受けた様子で、腕を一振りする。ぼうっと、大国主の指先の軌跡が虹色の光を宿す。六精霊の魔力が光り輝いていた。
「よくぞ申したわ神皇の勇士よ。だが、力で余を打倒できるはずはない。来い、生きながら神となった余の力を前に砕け散るのみだ」
戦いが始まる前、イリアス・ラミュウズ(eb4890)は仲間たちを制して前に出る。
「大国主よ、俺の疑問に答えてくれ。この国の秘密を。即ち、ジャパンはイザナギとイザナミという悪魔によって作られた鬼と不死人を先住民とする国であり、そこへ外から乗り込んできた神の眷属こそが侵略者の立場だったのではないのか? そして人間も神と悪魔の陣営に分かれて戦い、その一方が神皇家となり、他方の末裔が平将門だったのでは?」
「真実は、神のみぞ知る。ならば奴が答えよう。――鳩摩羅天よ、答えてやれ」
すると、中空にふっと鳩摩羅天が姿を現す。
「ジャパンの秘密か。人間の興味は尽きぬようだが‥‥私の記憶が確かなところでは、この国はかつて第六天魔王を頂点とする悪魔の国であった。魔王の支配は盤石であったかに見えた。だが倭国大乱において、アマテラスを筆頭に精霊や黄泉、妖怪たちが魔王に戦いを挑む。国は二つに割れ、悪魔を奉じる倭国王らとアマテラスたち反乱勢力に分かれて戦った」
「だが最後には悪魔は敗北し、アマテラスは勝ったのであろう」
「そう、アマテラスは勝つ。天津神の力を得た神皇家が先頭に立ち、大和朝廷を樹立した者たちは倭国を倒す。それにより我ら悪魔はジャパンでの基盤を失う。華国より仏教が伝来したのはそれから数世紀後のことだ。天使の介入で黄泉や妖怪らは徐々に遠ざけられることになるのだ。この国で皇藩制度が始まり、蘇我氏と聖徳太子は黄泉人を封印。平安京に遷都したこの国は、大和から日の本の国と名を改めることになる。天津神たちは姿を消し、現在のジャパンの姿が形作られたのだ」
「‥‥‥‥」
冒険者たちは沈黙する。悪魔の口からすらすらと語られるのは真実か否か測りかねるが。鳩摩羅天は笑声を残して姿を消す。大国主は踏み出してきた。
「余興はここまでだ。行くぞ神皇の戦士たちよ。所詮は血塗られた道であったな」
あるいは、大国主の気迫は冒険者たち圧倒した。そしてこの古代王の力は尋常なものではなかったのである。
大国主は腕を持ち上げると、周囲から虹色の閃光が立ち上る。
「来るぞ!」
アルフレッド・ラグナーソン(eb3526)とマロース・フィリオネル(ec3138)は仲間たちにレジストデビルを付与する。白翼寺涼哉(ea9502)も加えて三人の白魔法使いたちはホーリーフィールドを張る。
「‥‥せめて苦しまぬよう、一撃で逝かせてやろう」
大国主の周囲を、赤、青、黄、緑、金、銀の光の巨大な竜が取り巻く。
「六精霊力のドラゴン‥‥!? こんな術を」
超越魔法の使い手でもあるイリア・アドミナル(ea2564)は絶句する。同じくルメリア・アドミナル(ea8594)、ベアータ・レジーネス(eb1422)、宿奈芳純(eb5475)、ロッド・エルメロイ(eb9943)ら術師たちも言葉を失う。
大国主は腕を振り下ろした。六頭の光の竜は口からそれぞれ炎や吹雪など、属性に応じたブレスを吐き出した。
轟音と閃光が冒険者たちの視界を覆う。莫大な光と熱と冷気、重力波などが冒険者たちを叩きのめした。
前衛系の冒険者たちは術者をかばってブレスを受け止める。
アランに風雲寺雷音丸(eb0921)、ミラ・ダイモス(eb2064)に明王院浄炎(eb2373)、イリアスにマグナス・ダイモス(ec0128)らは大打撃を受ける。ただ一人、ファング・ダイモス(ea7482)はとてつもない防備でこれに耐える。
「なんて術だ‥‥信じられん、これほどの打撃を‥‥」
アランは何とか立ち上がる。
「しっかりしろ‥‥すぐに回復する」
白翼寺はリカバーをかけて仲間のダメージを癒した。
閃光の中から、冒険者たちが立ち上がってくるのを見て、大国主は驚いたように眉をひそめる。
「ほう‥‥余の術に耐えるか」
超越ミラーオブトルースに映る大国主を確認して、イリアはウォーターボムを発射する。
「実体はそこにいるよ!」
ルメリアも超越ライトニングサンダーボルトを撃つ。ベアータもライトニングを放った。イリアスは強弓でダブルシューティングEXとクイックシューティングで9連射。ロッドは超越マグナブローを叩き込む。宿奈は超越ムーンアローを撃つ。
超越魔法とイリアスの強弓が大国主に吸い込まれていく。爆炎と電光が大国主を包み込む。強弓が貫通してムーンアローが直撃する。
しかし、大国主の姿がぼろぼろに崩れてはまた不意に出現し、超越魔法の嵐に耐える。
「大国主‥‥何ですかこの妖術師は」
ルメリアは超越ライトニングを連射しながら、次々と崩れては復活してくる大国主に驚嘆していた。
超越ムーンアローはロストすることなく命中していたが、大国主は不死身のように復活してくる。
「都の勇士たちも尋常ではないな‥‥これほどの術を」
大国主は腕を一振りすると、その周囲から次々と獣や人の姿をした六精霊が湧き上がってくる。精霊たちは襲いかかってくる。
「精霊召喚だ! 叩き落とせ!」
アラン、雷音丸、ミラ、浄炎、マグナス、ファングは迫りくる精霊たちを次々と叩き切った。
そうする間にも魔法使いたちとイリアスは大国主を長射程で撃っていた。だが大国主の実体を確実には捉え切れず、魔法合戦は互角の戦いであった。
大国主自身も全ての精霊魔法を駆使して反撃してくる。白翼寺、マロース、アルフレッドらは結界を張って術師を守り、前に立って戦う冒険者たちを適時回復させていく。
無敵とも思える大国主は、かすかに浮かび上がると、もの凄いスピードで突撃してきた。
「奴が突っ込んで来るぞ!」
雷音丸は突撃してくる大国主に相対する。
大国主の手には呪符があった。ベアータとルメリアはストームで大国主を吹き飛ばそうとするが、大国主は転移の呪符で瞬間移動すると、冒険者たちの至近に迫る。
「大国主!」
斬りかかる冒険者達に、大国主はばばっと呪符を放った。炸裂した呪符爆弾は冒険者たちの足を止める。これでも並みの戦士なら吹き飛んでいる。
冒険者たちは大国主を包囲するが、大国主は無数の呪符を空中に放って、魔獣を生み出す。
「勇戦を称えよう、かつて、余に立ち向かってきたアマテラスの戦士たちにもこれほどの猛者はいなかった」
「言ってくれますね。ですが、そんな余裕はありませんよ」
マグナスは勢い突撃する。魔獣たちを一刀両断した。
「今日はあなたが再び敗れる日です、今度は復活はありませんよ」
ファングは大国主の首を斬り飛ばした。が、直後には崩れ落ちた大国主がファングの背後に出現する。
「愚か者!」
大国主は空中から光り輝く剣を取り出してファングを斬ったが、奇しくもファングの防備は魔神クラスで魔法の剣が効かない。大国主は驚く。
「愚か者はそっちです」
ファングに切り裂かれた大国主は、またしても実体ではなく、別の場所に出現する。
ミラと雷音丸、マグナスは突進して、魔獣を切り裂き道を作る。
「捕まえるまであなたを斬るまでです!」
「余と互角に相対するだけでも奇跡よ‥‥これが神皇の勇士たちか」
浮かび上がった大国主に一瞬油断があったのかも知れない。
ズン! と浄炎の槍が大国主の肉体を貫いた。手応えがあった。
「――!?」
大国主は驚愕して、背後に立つ浄炎を振り返った。
ごぼっと大国主の口から血が溢れる。
「何‥‥だと‥‥! 余の肉体に傷を‥‥!」
大国主は神でも悪魔でもなく肉体は人間であった。浄炎の槍は、大国主に致命傷を与えるに十分なものであった。
浄炎自身も驚いていた。まさか命中するとは思わなかった。
本当に崩れ落ちる大国主。
「馬鹿な‥‥余が‥‥」
「大国主よ、お前は人間であったのか」
「言ったであろう、余は生きながら神となったのだ‥‥だが、わが命もこれまで、か‥‥」
大国主はふらふらと浮かび上がると、冒険者たちが見つめる中、最奥の玉座に身を横たえた。
冒険者たちはこの国津神の王だった男と向き合う。大国主は瀕死であった。
「もし次が有るなら、王朝を倒す者でなく、民を守り王朝を立て直す、守護者として地上に出でて下さい」
マグナスが言葉をかけると、大国主は笑った。
「私は第六天魔王と契約を結んでいた。強大な倭国を統治するには魔王の力が必要だったのだ。今や無用の力ではあるが。魔王も私を見捨てたようだな」
アルフレッドは厳しい口調。
「魂を弄ぶあなたを許すことはできません。悪魔の力を借りる者を」
「行くがいい勇士たちよ‥‥せめて‥‥イザナミを倒すことを‥‥祈っている」
がくりと大国主の頭が落ちた。この一年余は、大国主にとって束の間の夢であったか。かくして大国主は倒れる。
――大国主が打ち取られたという知らせは、大国主軍に少なからず衝撃を与える。将軍クラスの亡霊たちが兵をまとめ、一斉に壊走した。
勝利に湧き上がる丹後軍。
「後はイザナミだ」
アランは投降してきた旧舞鶴藩の相川宏尚らを見やる。捕縛するのは我ながら甘いと思った。
ロッドは大物主神に今後のイザナミ戦への協力を求める。大物主神は協力するにやぶさかでないと言うが、その話を取りまとめるのは大変だろうと言う。