ジャパンの精霊、道案内

■ショートシナリオ


担当:安原太一

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月26日〜01月31日

リプレイ公開日:2007年01月31日

●オープニング

 江戸近郊。ひとたび大都会を離れれば、何が待ち受けているか分かったものではない。この世は乱世。諸侯の反乱に乗じて悪事を働く者ども、人々に襲い掛かるモンスター、不可思議な精霊‥‥冒険者ギルドには今日も近隣の村々から依頼が持ち込まれている。

 とある村、ある日の夜‥‥。
 村外れに現れた炎の固まり。鬼火である。
 鬼火はふわふわと漂いながら村の周りを周回する。

 しばらくは様子を見ていた村人たち。連日のように鬼火が現れるので冒険者ギルドへ相談にやってきた。
 
「火の玉ですか‥‥それは精霊の類でしょう。何かを警告するために現れたのではありませんか」
 ギルドの青年は村人に伝える。
「警告ですか‥‥そう言えば、何でも森の奥へと人を誘うように消えて行ったとか。森の奥に何があるんでしょう」
「それを調べるのが今回の依頼となりますね」
「もしかしてモンスターとか‥‥」
「その可能性もありますね」
 青年は改めて村人の話を聞き、冒険者たちへの依頼をまとめる。
 村を周回する火の玉。森の奥へと消えていくと言う。十中八九は鬼火であるが、鬼火が何に反応しているのか調べ、対処すること。モンスターとの交戦の可能性もあり。

●今回の参加者

 eb8219 瀞 蓮(38歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb8856 桜乃屋 周(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb8882 椋木 亮祐(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb9708 十六夜 りく(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ec0244 大蔵 南洋(32歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ec0843 雀尾 嵐淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ec0844 雀尾 煉淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●鬼火が道案内
 村への街道を行く冒険者たち。
「前に木霊と出会った事があるけど、彼は人間に対して友好的だったわ。今回の火の玉も精霊の類ならきっと村人に危害を加えたりはしないと思うの。以前にあった森の精霊も子供を危険から守ってくれたもの」
 口を開くのは十六夜りく(eb9708)。
「以前は木霊、次は鬼火‥‥前の木霊は敵対的ではなかったし、疑ってかかるのも失礼とは思うんじゃが、それはそれ、これはこれ。距離はとって様子を見つつ調査となるが‥‥不意打ちには気をつけねばな」
 瀞蓮(eb8219)が腕組みしながらそう言うと、
「精霊の警告か物の怪のいたずらか‥‥乗ってみなければ解らない、か。全く、厄介な依頼だな」
 椋木亮祐(eb8882)はしかめっ面を浮かべて髪をかき回した。
「もしも本当に危険があるのなら排除しないとね」
 と再び十六夜。その言葉に頷く桜乃屋周(eb8856)。
「森の奥に何があるのか分からないが、危険があるなら排除しよう」
「森には何かあるらしいな。十分に用心することにしようか」
 大蔵南洋(ec0244)も自身の心境を語る。
 それにしても、
「鬼火は何を伝えようとしているのですかな?」
 と雀尾嵐淡(ec0843)が問うと、
「鬼火は森の奥の何を伝えようとしているのですかな?」
 と雀尾煉淡(ec0844)がさらに問う。
「鬼火が何を伝えようとしているか‥‥難しいところだね」
 桜乃屋はそう言って肩をすくめる。
「確かに難問ですな‥‥」
 二人の雀尾氏は顔を見合わせて問い返す。
 はてさて鬼火は一体何を伝えるために現れたのか‥‥。

 そうこうする内に冒険者たちは村に到着する。

「何が出るか、しっかり見極めてこよう」
 村人たちに挨拶する椋木。それから情報収集に向かう。森の地形や明るさなど、森の中の様子を聞いておく。また、物の怪が住み着くような場所に心当たりがあるなら教えてもらおう、と問うてみるが、物の怪と聞いた村人たちは返答に窮した様子であった。
 ちなみに、ペットの馬は村に預けておくことにする。

 鬼火が出るまでは村人から話を聞かせてもらうとしよう、と村を回る大蔵。
「鬼火が現れるようになった頃、何か森で変わったことはなかったか。森に入って帰ってこない奴がいるだとか?」
「いやあ、さすがに鬼火が出て以来誰も森には近付いておりませんで‥‥」
 と肩をすくめる村人。
「鬼火が出たのはここ数日とのことだが、例えば昨日の晩も鬼火は出たのか」
「はい、昨夜も夜になると村の周りを周回しておりまして」
「そして森に消えると」
「左様でございます」
 ふうむ、と森に目をやる大蔵。あとは鬼火待ちか‥‥。

 そして夜。件の鬼火が現れる。鬼火の後を付いていきながら様子をうかがう冒険者たち。
 村の周りを漂っていた鬼火。ふと向きを変えて森の方へと飛んでいく‥‥。
「向かうは森の奥。奥というからには、やはり見通しが良い、などということはあるまいな‥‥普段なら慎重に行きたいところじゃが、鬼火を見失うわけにもいかん。浮かぶものと地を行くもの、木々を掻き分けて進まねばならぬ部分もでるじゃろ。何か敵になるようなものが潜んでおっても気配を悟りづらくなってしまう可能性がある‥‥蛇をつれてきたのは正解だったやものう。地を這うものであれば、万一気配を掴めぬ相手がおっても防御戦力として期待は出来ようて。過信は禁物じゃが‥‥」
 ペットのジャイアントパイソンとともに歩き出す瀞。
 他の冒険者たちも松明をかざしながら森へと踏み込む。防寒服を持っている者は身にまとい、鬼火の後を追う‥‥。

●野営
 鬼火を追って森に進入した冒険者たち。隊列を組んで進む。森に潜む獣等から奇襲を受けないよう気を配る。
「一体どこへ連れて行こうというのだ」
 と桜乃屋。
「鬼が出るか蛇が出るか‥‥」
 呟く椋木。
 瀞、十六夜、大蔵は松明の明かりを頼りに周囲への警戒を続ける。
 そして、鬼火が森の中で止まった。
 椋木が地面に膝をつく。‥‥焚き火の跡。
「まだ新しいが‥‥一体何者が‥‥」
 冒険者たちは周囲を捜索するが、手がかりは得られない。結局森の中で一晩を過ごすことにする。
 改めて火を起こす冒険者たち。
 
 暖を取りながら交代で見張りを立てる冒険者たち。
 桜乃屋はテントを張ると、十六夜をテントに入れてあげる。

 焚き火を突付いていた椋木。食糧の包みを開ける。
「しかしこの鬼火、本当に、どこへ俺たちを連れて行く気なんだ」
 保存食を食べながら鬼火を見上げる。
「それなりの森、かてて加えて鬼火が何か伝えようとしているというのが本当なのであれば、厄介な相手がおる可能性も考えておいた方がよいか?」
 瀞も食事を取りながら鬼火を見上げる。
 焚き火を突付いていた雀尾嵐淡のもとへ雀尾煉淡がやってきて、見張りの交代を告げる。すぐに嵐淡が見張りに向かう。
 そこへやって来た十六夜。「異常無し」と報告する。
 立ち上がる椋木と瀞。大蔵と桜乃屋と交代する。
 そして焚き火のもとへやって来た桜乃屋と大蔵。
 大蔵と桜乃屋は「いただきます」と言って食事を始める。
 十六夜も食糧の包みを開ける。
「鬼火が警告に現れたってことは、やっぱりモンスターか何かがいるはずよねえ?」
 と十六夜。
「そうだね。モンスターがいたら退治しておかないと」
 相槌を打つ桜乃屋。
「モンスターか‥‥それが妥当なところだろうな」
 大蔵はそう言って食糧を口する。
 やはりモンスターか‥‥雀尾煉淡もそう思いながら焚き火を突付く。

 深夜、再び鬼火の様子が変化する。さらに森の奥へと移動を開始する。
 急いで鬼火の後を追う冒険者たち。

●鬼火の案内で‥‥
 鬼火の後を追って森の中を進んでいた冒険者たち。前方に明かりを確認して立ち止まる。
 そろりそろりと明かりの方へ近付いていく冒険者たち。
「明かりの方角に七個の生命反応。大きさは人程度」
 雀尾煉淡がデティクトライフフォースで前方の様子を確認する。
 十六夜が木々の間を抜けて前方の様子を確認しに行く。
「犬鬼ね‥‥」
 犬鬼たちが焚き火を囲んでいる。
 仲間たちのもとへ戻った十六夜。
「予想通り、モンスターがいるようよ。犬鬼が七体。ここは迷わず退治ね。モンスターを野放しにしていたら、いつ村を襲うとも限らないわ」
「犬鬼となれば話は別だ。先手必勝。奇襲攻撃といこう」
 椋木は抜刀する。
「犬鬼は毒を持っておったはず‥‥戦いの最中に毒を受けては、まずその最中の復帰は難しかろう。攻撃は、何とか受けずに済ませたいところじゃ。とはいえ、わしはさして身も軽くない、守りに回っては相手の数によってそのまま手数で押し切られかねん。馬鹿の一つ覚えのようではあるが、懐に飛び込み攻めることで相手に攻撃をさせぬように狙っていこう。武器を持つような相手であれば、距離を極限まで縮めれば戦いにくかろうしな」
 と瀞。
 それから攻撃のタイミングを打ち合わせする冒険者たち。
 奇襲攻撃の態勢をとる。

●VS犬鬼
 椋木は刀身を振り下ろす。刀身から放たれる真空波、ソニックブームが犬鬼の背中を切り裂く。
 十六夜は春花の術を発動。犬鬼の一体が昏倒する。
 冒険者たちは突撃。雀尾煉淡は後方で待機。煉淡の護衛に十六夜が付いた。前衛で切り込むのは瀞、椋木、桜乃屋、大蔵、雀尾嵐淡。
 奇襲攻撃を受けた犬鬼たちは瞬く間に防戦に追い込まれていく。
 それでも反撃してくる犬鬼。犬鬼の攻撃を跳ね返しながら確実に打撃を与えていく冒険者たち。
 仲間の援護を受けて高速詠唱メタボリズム+フェイントアタックで犬鬼たちのMPを奪っていく雀尾嵐淡。
 と、大蔵が一体の犬鬼をつばぜり合いに持ち込んで後方に下がると、雀尾煉淡の方へ犬鬼を押し倒す。
「これより、デスを発動します。皆さん、避難して下さい」
「皆さん、煉淡がデスを使います。離れて下さい」
 二人の雀尾氏の警告を受けて離れる十六夜。
 冒険者たちもまた一気に犬鬼たちを押し返して魔法の射程距離から離れる。
 煉淡は合掌して高速詠唱でデスの魔法を解き放つ。一瞬黒い光に包まれる煉淡。射程内に倒れこんでいた犬鬼はぱたっと動かなくなった。
 瀞、椋木、桜乃屋、大蔵は確実に犬鬼たちに打撃を与えながら、適度に煉淡の方へと追いやっていく。
 犬鬼の数が減ったところで、大蔵は後方で刀を振り回している一体の犬鬼の方へと向かう。この犬鬼たちを束ねる頭である。大蔵はスマッシュを繰り出すが、リーダー犬鬼は鋭い刀さばきでその攻撃を跳ね返す。
「ほう‥‥出来るな。意外に使い手か」
 大蔵は犬鬼を睨み付けると刀を握り直す。
 そこへ駆けつける椋木。
「気をつけろ、椋木。意外な使い手だ」
「ほう」
 椋木は鋭い目つきで犬鬼の動きを見つめながら刀身を持ち上げる。
 大蔵と椋木は二手に分かれてリーダー犬鬼に切りかかる。
 二対一ではさしものリーダー犬鬼も形勢不利。配下の犬鬼たちが倒されていくのを見て、後退する。そして、リーダー犬鬼は森の奥へ逃げ込んだ。
 刀を収める冒険者たち。

●戦闘終結
 ‥‥そして。
「鬼火殿は、疑って申し訳なかったの。村の者たちに代わり、礼を言っておこう」
 瀞は鬼火に向かってそう言った。
 鬼火は相変わらずふわふわと漂っている。
「結局、何だ、鬼火は犬鬼の存在を知らせようとしていたのか?」
 椋木が問うと、
「まあ、そういうことになるな。何れにせよ、あのリーダー犬鬼を逃したのは残念だが‥‥」
 大蔵はそう言って肩をすくめた。
 鬼火をその場に残して、冒険者たちはきびすを返す。
 鬼火はしばらくその場に留まっていたが、やがてどこへともなく去っていくのだった。

 森の捜索を終えて村に帰還する冒険者たち。森の中で遭遇した犬鬼たちを退治したことを村人たちに告げる。
 帰りはのんびりと。冒険者たちはゆったりした足取りで江戸への帰路につく。
 後で聞いたところでは、鬼火は出なくなったそうである。