【洞窟制圧】茶鬼との遭遇
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■ショートシナリオ
担当:安原太一
対応レベル:1〜5lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 4 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月13日〜12月18日
リプレイ公開日:2007年12月18日
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●オープニング
江戸近郊の村。ほんの少し前、近くの洞窟に小鬼が出没したこの村では、冒険者たちがその脅威を打ち砕いたことで平和が戻っていた。小鬼が出没したと言う洞窟は村の近くの森の中にある。森の中には街道が通っており、その道は近隣の村や町にもつながっている。
その街道を数人の村人が歩いていた。村人たちは町への用事で出発したのであった。
昼下がり、村人たちは街道の一角に腰を下ろした。昼食の握り飯の紐を解きながら村人たちは世間話に興じていた。先来の小鬼退治の話題が出ると、村人たちは神妙な面持ちを浮かべる。
「例の洞窟だがな、あの後自警団が踏み込んで下に降りる道を見つけたそうだ」
「噂によると、迷宮が広がっているそうだぞ」
「こんなへんぴな村の近くに迷宮がねえ‥‥」
村人は握り飯を頬張りながら迷宮に思いをはせる。
「いずれにしても、もう小鬼は退治したんだ。またやってくることはなかろうて」
「それもそうだな」
村人たちは知るよしもない、再び村に魔の手が迫っていることを。
村。
吹きすさぶ冷たい風が収穫後の畑の上を悲しげに舞っていた。
家の中の村人たちはと言えば、囲炉裏に火をくべて、湯を沸かしながら冷たい冬が過ぎ去るのを待っていた。子供たちは木枯らしの中を走り回り、老人たちは過ぎ去りし日々に思いをいたしながら炉辺で茶を囲んでいた。
そんなある日のこと‥‥。
村を茶鬼が急襲した。
茶鬼はたったの五、六体だったが、こんな小さな村には十分な脅威であった。武装した茶鬼に村人たちが太刀打ちできるはずもなく、十人近い村人たちが茶鬼にさらわれることになる。
村人たちを連行する茶鬼の一団は森の中の洞窟へと入っていく。茶鬼は松明を持っており、村人たちは頼りない明かりの中、洞窟の中を茶鬼に引っ立てられていく。やがて、洞窟の中の大広間に到着した一団は、広間の一角にある階段へと連れて行かれた。
人質となった村人の中に若い青年がいた。青年は大胆にも茶鬼の隙をうかがっていた。そして、階段に下りる直前で青年は身を翻して走り出した。足の速さには自信があった。確かに青年は早かった。茶鬼は不意を突かれて青年を逃がすことになる。
洞窟を脱出して村に帰りついた青年は、一目散に村長のもとへと向かう。
生還した青年を村人たちは驚きの眼差しで迎えた。「よく生きて戻ったな」と。
青年はさすがに息を切らしていた。
「何とか逃げ出したんだ。他の連中は茶鬼に連れられて地下に下りていった」
地下という言葉に村人たちはどよめいた。あの地下迷宮に連れて行かれたのか‥‥。
「それだがな‥‥」
と、老人が一人、村人たちを制して前に進み出た。
「我が家に代々伝わる古い地図があってな。それによると、あの洞窟には昔恐ろしい魔物がすんでいて、それが今でも地下に封印されているというのだ」
「魔物だって? 馬鹿言うなよ爺さん。こんなちっぽけな村にそんな魔物がいるわけないだろう?」
「それは伝説だ。いずれにせよ、あの洞窟には地下があって、村人たちはそこへ連れて行かれたのだ」
「またギルドに捜索願を出さねばならんな」
というわけで村人たちは江戸の冒険者ギルドまでやって来た。
ギルドの受付の青年は村人たちが差し出した地図を受け取ると、引き続いて依頼内容を書き留めていった。
「今度は茶鬼ですか。不穏当な時勢が続きますねえ」
「全く、どこからやってくるのか、見当もつきませんで」
「今度は地下に下りなければいけないのですね」
「左様です。今度の相手は茶鬼ですぞ」
「ご心配なく、ギルドには腕利きが揃っていますからね。何とかなるでしょう」
「お願いしますぞ」
村長の老人はそう言って頭を下げるのであった。
※洞窟マップ 1階
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■■■■入り口■■■■■■■■■■
■=岩壁 罫線=通路 ○=部屋 ◎=大広間。地下への階段がある。
※洞窟マップ 地下
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■=岩壁 罫線=通路 ◎=一階に上る階段がある部屋。
○=部屋 ×=落とし穴の仕掛けがある部屋 ★=広間
●リプレイ本文
村に到着した冒険者たち。
茶鬼の手を逃れた青年から話を聞くアトゥイチカプ(eb5093)とティア・プレスコット(ea9564)、そして志摩千歳(ec0997)に神代青葉(ec4072)。
攫われた人の性別や年齢などを青年から聞き出す冒険者たち。人質はおよそ十人。茶鬼は五体位とのこと。
アトゥイチカプはちょっと寄り道して村に馬を預けていく。
村の古老たちから話を聞いていたのはパウェトク(ec4127)とキミ・カロニコフ(ec4178)。連れて行かれた村人の共通点、茶鬼の様子などを聞き出す。ここでも生還した例の青年が呼び出された。青年から地下へと下りる階段の位置、洞窟の広さ、高さ等も聞き出しておく。
パウェトクは村長から洞窟の地図を見せてもらうことにする。地下の図がないかも確認する。
魔物伝説については、村長も古い話なのでよくは知らなかった。
「もし労働力としての捕虜ならば、攫われた方々の居場所は地階‥‥大広間が有力でしょうか」
地図を見ながらキミが言った。
「わしもキミさんの意見に賛成するぞ。捕虜を閉じ込めておくには最奥の大広間が最も適しておる」
パウェトクも頷いてみせる。
「まあ、実際目で見ないと確定はしようもありませんが」
二人は地図に改めて目を落とす。
村での聞き込みを終えた一行は洞窟へと向かう。
「そういや、前にここに来た時は小鬼が見張りやってたんだってな。今回はどうかな」
アトゥイチカプは茂みから洞窟の入り口を窺う。見張りらしき茶鬼が一体立っている。
アトゥイチカプは茶鬼に向かって小石を投じる。茶鬼は飛んできた小石の方に顔を向けると、何事かと向かってきた。茶鬼の注意がそれたところを一気にパウェトクと神代が襲う。アトゥイチカプも打って出る。三人は一気呵成に茶鬼を倒した。
見張りを倒してからアトゥイチカプ、パウェトク、神代の三人で一階を偵察する。
「一階については大体分かっているつもりなので、大船に乗ったつもりでいてくださいな。まあ、地下があるなんてことは全く気がつかなかったんですけどね」
神代は洞窟の暗闇に目を凝らす。
「今回はどうかな。いや、人質がどこに捕らわれているか、それが気になるんでね」
アトゥイチカプはそう言うと、提灯に布を被せて明かりを押さえる。
「腕が鳴るわい」
パウェトクはそう言ってにやりと笑った。
「せめて集合場所を決めておこうぞ。洞窟を一回りして最初の部屋で落ち合うと言うことでどうかな」
「大丈夫です」
「それでは、参るとしよう」
三人は洞窟の中へ侵入した。
やがて三人は一階の大広間で合流する。
「誰か敵を見た?」
アトゥイチカプは尋ねてみるが、他の二人は首を振った。
「となると、地下か」
パウェトクが大広間を捜索する。そして、地下への階段を発見する。
階段は地下へと下りている。その先は闇に包まれて見えない。
「さすがに、これ以上俺たちだけで進むのは危険すぎるな。地下には茶鬼もいると思う」
アトゥイチカプは一同を見渡した。
「予定とは違いますが、仲間の皆さんを呼びますか」
神代の問いにアトゥイチカプは頷いた。
そうして、パーティは一階の大広間に集結することになる。
地下へと下りたパーティ一行。下りた先は明かりの灯った部屋だった。松明の炎が岩の壁を照らし出している。南に伸びる通路にも明かりが灯っている。
「明かりはいらないようだな」
アトゥイチカプは提灯の明かりを消した。
「わしが先行して様子を探ってみよう」
パウェトクがそう言うと、
「一人よりは二人の方が都合がいいでしょう。もう一人は仲間との連絡を取りながら進みましょう」
神代がそう言って、パウェトクとともに先行した。
神代とパウェトクが地下を進む。
二つ目の部屋は空だった。最初の部屋と同じように壁には松明の明かりが灯っている。
神代は仲間を呼ぶためにいったん戻る。
パウェトクはさらに前方の通路に目をやる。通路には明かりが灯っている。遠くの方から何やら声が聞こえてくる。
やがて後方から他の仲間たちがやってきた。
「声が聞こえる」
アトゥイチカプは耳を澄ませる。
「モンスターの声だろう。茶鬼かな」
「この次の部屋まで進んで様子を探りましょう」
神代は先に立って進む。パウェトクもそれに続く。
さらにパーティは分かれ道を通り過ぎて、奥の大広間に近付いた。人質がいると予想される場所である。茶鬼もそこにいるはずである。
パーティは三つ目の部屋で止まった。最奥の大広間からわめき声が聞こえてくる。
パウェトクが先に進んで大広間の様子を探る。
地下の大広間は広大な空間だった。壁には松明の明かりが灯っている。そして攫われた村人たちがいた。茶鬼の数は四体。殴りあったり罵りあったりしながらげらげらと笑っている。茶鬼の背後に村人たちの姿を垣間見ることが出来る。
パウェトクはその様子を確認すると、仲間たちのもとへ戻った。
「いったん茶鬼を大広間から誘い出しましょう。大人数の人質を一気に連れ出すのは困難です。彼らの位置を変えずに安全を確保するための手段として」
キミが言った。
「一つのチームが既に確保した部屋へと茶鬼を誘導し、もう一つのチームでその背後を襲うのです」
挟み撃ち。キミの作戦に一同賛成した。
「茶鬼の不意を突くにはよさそうだな。よし、俺と神代さんで茶鬼を引き付けよう」
アトゥイチカプが言うと、
「それでは、わしらは茶鬼の背後を打つとよう」
パウェトク、キミ、志摩、ティアはあとから戦いに合流することにする。
「お二人の武器にはバーニングソードを付与しておきましょう」
キミはアトゥイチカプと神代の武器に魔法の炎を付与する。
そしてアトゥイチカプと神代は出発した。
アトゥイチカプと神代は大広間の様子をうかがっていた。そして、二人は意を決して部屋に突入する。
二人の姿を確認した茶鬼たちは一瞬虚を突かれた様子だったが、すぐに立ち直り襲い掛かってきた。
逃げ出すアトゥイチカプと神代。
一方、分かれ道に身を隠していた挟撃チームは近付いてくる騒ぎ声を聞きつけていた。
キミはパウェトクの小太刀にバーニングソードを付与する。
やがて、アトゥイチカプと神代が通路を駆け抜けていく。その後を茶鬼が追っていく。
挟撃チームはすぐに行動を開始。茶鬼の背後を追う。
アトゥイチカプと神代は二つ目の部屋まで後退して茶鬼を引き付けた。四対二、茶鬼は自らの優勢を確信していた。しかしそれも束の間、背後から四人の冒険者たちが突入してくる。これで数の上では冒険者たちが勝ることになる。
アトゥイチカプ、神代、パウェトクは茶鬼との接近戦にもつれ込む。ティアはウォーターボムで後方支援に回る。キミはクイックラストで茶鬼たちの戦闘能力の低下を図る。志摩はリカバーでの回復やコアギュレイトでの援護に回った。
やがて、接戦の末に茶鬼は猛攻に転じる。前衛の冒険者三人を押し返した茶鬼たちは、退路を作ると逃げ出した。
戦闘終結後、冒険者たちは捕らわれていた村人たちのもとへ向かった。村人たちは救援が来たことに歓喜の声を上げていた。
ティアは疲れきった村人たちに保存食を分けたり、クリエイトウォーターで水を作り出して村人たちの喉を潤した。
そんな様子を眺めていたキミ。ふと、広間の一角に立っている岩に目を留める。キミはその岩に近付いていった。
「これは‥‥石碑? 碑文が掘ってある。何々‥‥かつて、この地に封じられたるもの、ありき」
キミはもう一度石碑の文を読んだ。
「魔物伝説ですか‥‥」
キミは村の老人たちの言葉を思い浮かべていた。
「どうしたの?」
そう呼びかけたのは志摩だった。キミは石碑に彫られた碑文について説明した。
「封印されている魔物の話があったけど、本当だとしたら厄介よね。私たちだけでは手に余るかも‥‥」
志摩はそう言って、石碑をじっと見つめるのだった。
それから、冒険者たちは地下の落とし穴の調査に向かった。
落とし穴の仕掛けがあるという部屋をアトゥイチカプ、パウェトク、神代の三人が調べる。仕掛けを発見したのはアトゥイチカプだった。壁の小さな隠し戸を発見したのである。隠し戸の中には取っ手があった。
「みんな、下がってくれ」
アトゥイチカプの言葉に一同は部屋の隅まで後退する。そしてアトゥイチカプは取っ手を押した。すると、部屋の壁から槍が飛び出してきた。仰天する冒険者たち。アトゥイチカプは肩をすくめた。
「すまん、これじゃなかったみたいだ」
「あのー」
ティアだった。みなが「どうしたのか」とティアを振り返る。
「私何か踏んだみたいなんですけど」
見ると、ティアの足元の地面が沈んでいる。
「逃げろティアさん!」
アトゥイチカプが叫んだが遅かった。ティアの足元の地面がぱかっと開いた。地下に落ちるティアを、寸前のところで志摩がその手をつかんで支えた。
「お、重い、落ちる」
神代とパウェトクが駆けつけて、志摩を支え、ティアを引き上げた。
それから、落とし穴を覗き込む冒険者たち。落とし穴の直径は四、五メートルと言ったところか。
アトゥイチカプはロープに提灯を下げて落とし穴の中へたらしてみた。明かりが中に転がる人骨を照らし出す。冒険者たちは息を飲んで穴の中を見つめていた。それからアトゥイチカプ、神代、パウェトクらが落とし穴の中へ直接下りて中を調べてみたが、落とし穴はそこで行き止まりだった。
こうして村人を救出した冒険者たち。茶鬼は撤退し、村に吉報を持って帰ることが出来たのである。
その夜、冒険者たちは村人たちの歓待を受けることになる。人々は集まって鍋を囲んでいた。ふと台所に目を向けると、村の女性たちと一緒に料理を作る志摩の姿があった。