京都近郊〜野盗退治

■ショートシナリオ&プロモート


担当:安原太一

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月16日〜11月21日

リプレイ公開日:2006年11月18日

●オープニング

 京都。
 近郊で多発するモンスターの攻撃、あるいは諸問題に対して、今日も冒険者ギルドには、様々な方面から依頼が舞い込んでいた。
 ギルドの職員たちは、詰めかける冒険者たちに依頼の内容を説明していた‥‥。

「ええっとですね‥‥」
 職員は冒険者たちを前に依頼用紙を広げる。
「まあこれは、政府からの依頼でして。ご承知の通り、京都の政府は何かと手一杯でしてね。モンスターの攻撃とか、色々、地域の問題には中々対処し切れない部分があるようでしてね」
 職員は用紙を確認すると、それを読み上げた。
「ええっと‥‥村を治める侍が周辺の野盗と組んで街道の商人たちを襲っているとの噂が飛び交っているそうです。冒険者のみなさんには、早急に事態の解決を図るべく、該当地域の村に向かって、事態の解明、場合によっては事態の解決に乗り出して欲しい、とのことです」
 職員はいったん言葉を切った。
「今回、周辺の野盗勢力がアジトにしているのは、村の近郊にある森のようでして。多分、少しは要塞化されているでしょう。彼らが、商人を襲うという事例が後を絶たないようですね。ええっとそれから、と。問題の侍が治める村は幾度か監査を受けているんですけど、村人たちから的確な証言は得られていません。そこのところはどうなっているのか、情報収集が必要でしょう」
 そして、職員は別の用紙を取り出した。
「次にまた街道で商人が狙われることも予想されるので、冒険者の皆さんには、商人たちの護衛をかねて村へ向かってもらいます。次の出発日時は‥‥と」
 職員は用紙に目を通しながら、日時を告げる。
「戦闘に備えて、準備を怠りなく。健闘を祈ります」
 ギルド職員はそう言うと、村までの地図と周辺の地図を冒険者たちに手渡した。
「それでは次の方、どうぞ!」
 今日もギルドは慌しい一日が続く。

●今回の参加者

 eb1932 バーバラ・ミュー(62歳・♀・レンジャー・パラ・ノルマン王国)
 eb4605 皆本 清音(27歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb4891 飛火野 裕馬(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb5347 黄桜 喜八(29歳・♂・忍者・河童・ジャパン)
 eb8113 スズカ・アークライト(29歳・♀・志士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb8176 如月 嵐(34歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb8467 東雲 八雲(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb8798 速瀬 刹喜(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●村への道中
 バーバラ・ミュー(eb1932)は鞍上から福の様子に気を配っている。
 東雲八雲(eb8467)は商人に村に関する話題や噂を聞いていた。
「少し尋ねたいことがあるのだが‥‥」
 商人の口から出たのは、侍が野盗と手を組んでいるというもっぱらの噂である。
 そうこうするうちに一行は村へと通じる林道へ入る。
 皆本清音(eb4605)は側面や背後からの奇襲に備え、辺りを警戒する。
 飛火野裕馬(eb4891)とスズカ・アークライト(eb8113)は世間話をしながら周囲に目を向けていた。
 と、飛火野の目が森の中で蠢く人影を捕らえる。
 飛火野は密かに合図を送る。全員武器に手をかけ、賊を待ち構える態勢に入る。八雲は霞刀を抜いた。
 飛火野が五本指を皆に向ける。敵は五人。
 野盗たちは雄たけびを上げながら襲い掛かってきた。林道は一転して戦場と化す。しかし、数でも技量でも勝る冒険者たちはじわりじわりと野盗たちを追い詰めていく。野盗の一人が飛火野に打ち倒されると、彼らは戦意を喪失して退散した。冒険者たちは武器を収める。
 倒れたままの野盗を速瀬刹喜(eb8798)が小突いて起こす。
「う‥‥何だ」
「あなたたちと侍が手を結んでいるという噂があるんだけど。事実なの?」
「な、何を言ってるんだ」
「噂になってるんだよ? 知らないの?」
「俺をどうする気だ」
 速瀬は野盗を突き飛ばすと、抜刀する。
 野盗は神経質そうに冒険者たちを見渡す。
「俺は何も知らない‥‥」
「あ、そう」
 速瀬は抜刀すると、賊の首を一刀両断した。

●村での調査
 村長の侍杉田平蔵の使いの男が冒険者たちを出迎える。男は平身低頭して冒険者たちを出迎える。
「で、そちら様は‥‥」
 男はバーバラの方に顔を向ける。
「ん、わしゃ京都見廻組じゃ。隠しておったって‥‥聞かんだじゃろうが」
「それはご苦労様です」
「早速じゃが、村の中を案内してもらおうか」
「はい、どうぞ」
 男は先頭に立って歩き出す。
「バーバラ、そっちは任せたぞ。俺たちは別方向から村の中を探ってみる」
 飛火野の言葉にバーバラは頷く。そうして、飛火野、スズカ、八雲は別の方へと歩いていく。
 皆本と黄桜喜八(eb5347)、如月嵐(eb8176)は一足先に森の方へと足を向ける。
 男はバーバラを伴って村の中を案内する。
「この通り、畑に問題はございません。‥‥それでは、村民にバーバラ殿を紹介させて頂きます。どうぞ‥‥」

「侍は政府から任命された者。噂は噂でしかないそうだ」
 飛火野は言う。
「侍は潔白か‥‥」
 八雲は事前に用意してきた監査状をもてあそびながら呟く。
「それならそれで結構よ。余計な仕事が増えなくて助かるわ。あら?」
 スズカが侍らしき人物に目を留める。
「あれが侍の杉田って男じゃない? 尾行してくるわね」
 スズカは足早にその場から立ち去った。
「俺は村を一回りしてこよう」
 八雲はそう言って歩き去る。
 それでは、と。飛火野は村娘の姿を探す。洗濯中の娘たちを見つけた飛火野は気軽に声をかける。娘たちは顔を上げると、愛想のいい笑顔を見せる。
「旅のお方ですか、浪人さん」
「ま、似たようなもんやなー。俺は飛火野祐馬、実は‥‥最近噂になってる野盗を拝見しに来たんや」
「え? 何? 拝見って」
「なんというか‥‥この村で今起こっていることを話してくれれば、力になれるかも知れんで」
 娘たちは押し黙っていたが、やがて口を開いた。

 村人の間を回っていた八雲のもとへ、侍の杉田が近付いていく。
 杉田の後をつけていたスズカはそこへ合流する。
「そこもと、一体何者か」
 杉田は八雲の肩に手をかける。
 八雲は杉田の風貌を一瞥して、微笑を浮かべる。
「杉田殿とお見受けする。私は東雲八雲。京都の監査役だ」
「それは‥‥ご苦労様です」
「実は、最近この方面で噂の野盗との関連を調査しに参った」
「‥‥‥‥」
 侍は沈黙を保っているが動揺を隠せない様子である。
 八雲は声を落として言った。
「今言える範囲で結構だが、話を聞きたい。内容によっては力になれるかも知れん」

「侍が野盗と結託しているというのは本当なの? 京の都じゃ疑惑の種になってるよ。本当のことを言ってくれれば協力するから。私たちは野盗を退治するためにここへ来たんですから」
 速瀬は村民の男と話していた。男は安堵の吐息を漏らす。
「実は、野盗のアジトに村民たちが人質に取られていまして‥‥」
「脅迫されていたのですね」
 男は頷いてみせる。

●砦周辺の調査
 皆本、黄桜、如月は森の中へ足を踏み入れていた。離れた所から野盗のアジトを窺う。簡素な作りの砦である。張り巡らされた柵はせいぜい腰の高さ。掘っ立て小屋が幾つか建っている。見張りは一箇所だけある入り口に二人が立っている。
「ま、即席のアジトね。大した防備はなさそうだけど‥‥」
 皆本は呟く。
「それじゃ、もう少し近付いてみるか。一応罠がないかどうかも見てくるぜ」
 黄桜は素早い身のこなしで砦に近付いていく。
 砦の周囲には幾つか罠が仕掛けられていた。黄桜はそれらを全て破壊する。

 夜。黄桜と如月は空飛ぶ木臼に乗って空から潜入する。アジトの広さはそれなりで、大雑把に見積もって五十メートル四方と言ったところか。人質らしき人々が閉じ込められている檻が見える。黄桜と如月は見張りの死角に着陸する。
 二人は小屋の影から影へと移動する。小屋の中からは野盗たちの騒がしい声がする。黄桜は慎重に身を乗り出すと、小屋の中を覗き込んだ。十人以上はいる。
 それから二人は、人質らしき人々が捕らわれている檻に移動した。
「皆さん大丈夫どすか?」
 如月がそう尋ねると、人々は子供だけでも連れて帰ってくれと頼んだ。
 黄桜は頷いてみせる。
 如月がさっと印を結ぶと、檻の鍵が開いた。
 二人は子供を一人助け出して、再び木臼に乗って脱出する。

●アジト攻略
 朝。砦の前。冒険者たちは攻撃を開始する。
 バーバラは弓に矢をつがえると、きりきりと引き絞った。野盗の一人を狙って矢を放つ。矢は野盗の一人に命中した。
「何だ! て、敵襲だ!」
 速瀬は張り巡らされた弓矢の細工を解放する。速瀬は次々と弦を切り、弓矢を砦の中へと放つ。
 何人かの野盗たちがばらばらと現れる。
 皆本、飛火野、黄桜とその忠犬トシオ、如月、東雲、速瀬は一気に突入する。スズカは空飛ぶ木臼に乗って、上空から砦の中に侵入する。
「さすがにこんな物に乗るとは思わなかったわ」
 皆本と如月が野盗たちを引き付けている間に、他の四人は砦の中へ突入する。

 皆本の攻撃は野盗たちを圧倒している。如月は巧みな体さばきで野盗の攻撃をかわしていく。
 野盗たちは斧を振りまわすが、皆本、如月は相手の攻撃を完全に見切っており、野盗たちは空振りを連発した。
 皆本の素早い鞭さばきは野盗たちの目を幻惑し、また鞭が野盗の手から武器を叩き落した。
「くそ! 逃げろ!」
 野盗たちは砦の中に逃げ込んだ。

 砦の中でも冒険者たちの強力な攻撃が続いている。
 まず武器庫から弓を取り出そうとした野盗たちだったが、弓の弦は全て切られていた。
 そこへなだれ込んでくる冒険者たち。
 飛火野はまず人質の安全の確保に向かう。
 何人かの野盗が斧を振り回して飛火野に向かってくる。が、飛火野は一人で三人の野盗を相手に圧倒的な動きで反撃する。
「忍法、大ガマの術!」
 黄桜が忍法で大ガマを呼び出す。大ガマの体当たりが柵や小屋を直撃。砦の中は大混乱に陥った。黄桜自身は鞭をふるって野盗たちを牽制。忠犬のトシオは素早い動きで野盗たちを確実にしとめていく。
 その間にも、バーバラの弓から放たれる矢が野盗たちの動きを鈍らせていく。
 八雲は剣を交えつつ魔法を放つ。解き放たれた魔法の威力で野盗たちは中に舞い上がって再び地面に叩きつけられる。
 速瀬は出会い頭の居合い切りで一人を叩き切っていた。その後は味方の援護に向かう。
 スズカも激戦の只中にあった。野盗の一人をようやく戦闘不能に陥れると、次の敵に向かう。
「次はどなたが相手して下さるのかしら?」
 そこへ向かってくるのは野盗のリーダー格と見られる大男。大男は素早い身のこなしで斧を振り下ろすが、スズカは素早く身を切り返すと、武器をナイフに持ち替えて反撃する。
「こっちの武器は久しぶりだけどまあまあかな?」
 大男は周囲を見渡す。野盗たちは劣勢だ。大男は舌打ちしながらスズカに向かう。
 と、そこへ三人の野盗を蹴散らした飛火野が援軍に駆けつける。
 飛火野が援軍に加わったことで大男はあっという間に追い込まれていった。
 そして、飛火野の日本刀が大男にとどめの一撃を与える。大男は倒れた。
 それを見た生き残りの野盗たちは、戦意を喪失して、一目散に逃げ出した。
 砦は完全に破壊された。
 人質となっていた人々は恐る恐る顔を出す。
「もう大丈夫! 連中は逃げ出した! 家に帰ろう!」
 速瀬の声に、人々は歓声を上げて冒険者たちのもとへ駆け寄った。
 バーバラは矢を回収しながらその光景に目をすがめるのであった。

●帰還
 人質を連れて村に戻った冒険者たちは、侍に野盗勢力を排除したことを告げた。
「このたびは‥‥お世話になりました」
「とんでもない。あ、そうだ、京の監査役って言いましたけど、あれ嘘ですから」
 八雲はそう言って笑みを浮かべる。
「そ、そうでしたか‥‥」
「それでは失礼します」
 八雲は霞刀を上げて敬礼の姿勢をとると、仲間たちのもとへ戻った。

「んじゃ、行くか」
「ああ」
 飛火野と黄桜を乗せた空飛ぶ木臼が舞い上がる。
「やっほー! 楽して悪いねみんな! お先!」
 飛火野は仲間たちに笑みを向ける。
 そんな飛火野を見てスズカ曰く。
「なかなかジャパンの色男さんは個性的ね、でもそれで女性をデートに誘うのはよした方がいいわ。まあ、私の個人的な感想としては、乗ってる所が他人に見られないなら便利かもしれないわね」
 なのであった。