包囲された村、人喰鬼との戦い
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■ショートシナリオ
担当:安原太一
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:01月18日〜01月23日
リプレイ公開日:2008年01月22日
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●オープニング
木枯らしが吹き荒れていた。舞い散る木の葉。ぴゅうぴゅうと風が鳴る。死者の歌声のように‥‥。
十体近い人喰鬼が山を下りてきた。鬼達は風鳴りの中を歩いていく。その目は血に飢えた獣さながらであった。鬼の血が騒いでいるのだ。人喰鬼の一団はたけり狂う暴風となってその村に襲いかかろうとしていた。
村では平穏無事な暮らしが続いていた。普段は鬼とは無縁の暮らしを続ける人々。季節は一月半ば。そうこうしているうちに節分である。村では村の若い衆が鬼の面を作り、節分に使う追儺の豆が蓄えられていた。気の早い家の軒先には柊鰯が飾られている。柊鰯は鬼の邪気を寄せ付けないと言われているものである。ちょっとした節分の足音が聞こえてくる村の風景。そんな村に、山を下りた人喰鬼が襲い掛かる。
襲い来る人喰鬼。人々をあざ笑うかのように鬼達は村を方々から包囲し、村人たちを追い詰めていく。
「急げみなの衆! 後ろを振り返るな! 一刻も早く逃げるのだ!」
村の男たちは追儺の豆を人喰鬼にぶつけながら必死に退路を作ろうとしていた。しかし追儺の豆などものともせず、人喰鬼は棍棒で男たちをなぎ倒す。実際退路はなかった。運良く鬼達の包囲網を逃れた者だけが村から脱出できた。
村人たちは死を覚悟した。総勢十体近い人喰鬼が目の前にいる。村人たちを睨みつける人喰鬼。その恐ろしい瞳は人々を震撼させるのに十分だった。
『よし! 大漁だ!』
『今夜の夕食にはこれでこと足りる!』
『火を焚け! 村を焼き払え! 祝いの儀式だ!』
人喰鬼たちはオーガ語で叫び合う。
鬼達の咆哮は、村人たちの挽歌となるのか。このままではそうなるのも時間の問題である。
――冒険者ギルド。
脱出に成功した村人たちが駆け込んできた。
「た、た、助けて下さい、鬼が‥‥鬼が‥‥」
息を切らす村人たちの姿にギルドの手代は緊迫した面持ちで筆を取る。
「十体近い鬼が現れて、村人たちがさらわれました。私たちは運良く逃れることが出来たのですが、大勢が鬼の餌食となりました。鬼は方々から村を襲って、まるで竜巻のように私たちに襲い掛かりました。ほとんどの者たちが捕まって‥‥本当に、あの鬼たちの動きは獲物を逃さぬ狼さながらでした。捕まった者たちは今頃どうなっているでしょうか‥‥」
ギルドの手代は村人たちの話から村を襲ったのは人喰鬼であると確信する。急ぎ依頼書を作成する。
――京都近郊の村が人喰鬼に急襲された。急ぎ村に向かい、状況を確認の上、鬼がいればそれを撃退すべし。
●リプレイ本文
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今回の依頼を受けたのは総勢十名の冒険者たち、月詠葵(ea0020)、ルーティ・フィルファニア(ea0340)、壬生天矢(ea0841)、神楽聖歌(ea5062)、御神楽澄華(ea6526)、朱蘭華(ea8806)、シフールの鈴苺華(ea8896)、シグマリル(eb5073)、レヴェリー・レイ・ルナクロス(ec0126)、フィディアス・カンダクジノス(ec0135)だ。
ある者は愛騎に跨り、ある者は加速系のアイテムを使い、それぞれの想いを胸に村への道を急ぎ行く。
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村周辺の地理を聞いておいた冒険者たち。村には鬼がいるだろう。適当な距離を保って野営を敷く。まずは偵察組が村へと向かう。
シフールの鈴はその特性を生かして村の中へ瞬く間に入り込む。しばらく村の中を飛び回ってみるが、人気はない。
愛騎のグリフォン、ナフカの背に乗って空中からの偵察に向かうのはルーティ。村の上空に滞空すると、体感気温を下げる風はウインドレスのスクロールで防ぐ。また寒さをしのぐために毛布をまとう。上空から鬼の配置、移動経路など探るつもりであった。焼き払われた村。不思議なことに鬼の姿は見えなかった。残っているのは点々とする建物だけ。鬼は? 村人はどこに?
シグマリルとともに村に忍び込んだ朱。
村は焼き払われた後だった。破壊された家屋が人喰鬼の猛威を物語る。
鬼だけでなく生き残っているかも知れない村人にも気付かれないよう、物音立てず、気配を殺して移動する。
と、二人の足が止まった。一軒の家屋の手前。二人は気配を察知したのだ。二人は慣れた足取りで、阿吽の呼吸で家屋の両側に回りこむ。シグマリルは隠身の勾玉を使って気配を消す。
二人は家屋の隙間から家の中を覗き込む。大きな影が横切った。人喰鬼だ。一体か、あるいはそれ以上いるのか。状況がはっきりとしないので、二人はさらに偵察を続ける。
鈴は村人を発見していた。村人は最奥の一軒家に閉じ込められていた。村人たちの無事を確認してから、鬼達の様子を探る。鬼達は点々と残る家屋の中に立てこもり、分散していた。それから鈴は味方が有利に戦いを進められそうな場所を探してみる。
シグマリルと朱の調査は難航していた。どうやら鬼達は家屋の中に潜んでいるらしい。このまま見つかることなく村の最奥まで進むことは難しかった。
「どうやら相手は私たちを待ち伏せしているようね」
呟く朱。
そこへ鈴が飛んでやって来た。
合流を果たしたシグマリル、朱、鈴は野営地に戻る。
待機していた冒険者たち。
村人が人質に取られているも等しい現状、猪突猛進に攻め込むだけでは不必要な被害者を生むことになりかねない。今は待つしかなかった。
「‥‥待つしか出来ぬのは歯がゆくもありますが」
御神楽はじっと村の方向を見つめていた。
そうこうしているうちに、偵察組が戻ってきた。早速その情報を総合する。
月詠がルーティの話をもとに地面に村の地図を書く。さらに地上班の情報をもとに鬼達の配置を書き込んでいく。
「なるほど‥‥待ち伏せか」
壬生の言葉に一同厳しい表情を浮かべる。どうやら鬼達は既に配置に付き、いつでも攻撃できる態勢をとっているようだ。
「こちらの出方を読んで待ち伏せか。さてどうする」
そこで朱が地面の地図を指差した。
「一見死角はなさそうだけど、この地図を見れば、ここから何とか入り込めそうよ」
「何とか潜んでいけるだろう。村人の方は任せてもらおう」
シグマリルの言葉に一同頷く。
と、ルーティが万が一鬼が人質を取った場合のことを口にした。
「その場合、ローリンググラビティーで人質ごと鬼を舞い上げることも可能なのですが、人質を墜落前に受け止められますか?」
それは最後の手段であったが。話し合いの結果、村人全員を受け止めるのは不可能となったので、ルーティはその手段を使わないことにする。
それから強襲班と救出班の役割分担を確認する冒険者たち。救出班が村人たちを確保し、その後強襲班が鬼達を急襲して倒していくと言う作戦だ。
すでに日は落ちた。今日の行動はここまでとなる。翌日、準備を整えた冒険者たちは行動を再開する。
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鬼達の死角から村に入り込む朱、シグマリル、神楽、レヴェリー。村人たちが捕らわれている建物に忍び寄る。
遠くから鬼の咆哮が響いてくる。強襲班が人喰鬼との交戦に入ったに違いない。
レヴィリーはシャクティを取り出すと、コマンドワードを唱えてその刃を開放する。
「今こそ目覚めよ‥‥シャクティ、開放っ!」
その時だった。近くの建物の壁を突き破って、人喰鬼が姿を現した。一体が待ち伏せしていたのだ。
「予想はしていたけれど、完全な死角とはいかなかったようね」
朱はそう言いながら鉄扇を構える。シグマリルは弓に矢をつがえ、レヴェリーと神楽も戦闘態勢をとる。
その頃、救出班の潜入を受けて村に突入した強襲班は、人喰鬼を出来る限り引き付けつつ交戦に入っている。
月詠、ルーティ、御神楽、鈴の四人は次々と現れる人喰鬼たちと激戦の渦中にあった。
最初の一体に威力最大のグラビティーキャノンを放つルーティ。直撃を受けた人喰鬼が膝をつく。
次いで月詠と鈴のコンビが人喰鬼の前に立ち塞がる。月詠は動き回って鬼の同士討ちを誘うが、人喰鬼も素早い動きで棍棒を振るって月詠を捕らえる。その攻撃を跳ね返す月詠。回避してからの攻撃コンバットオプションを組み合わせたカウンター攻撃を狙っていく。さすがに一撃で人喰鬼を沈めることは出来ないが、月詠の鋭い一撃を受けて人喰鬼たちはやや怯んだ様子である。鈴は鬼の目の前を飛び回って相手を撹乱する。鈴は武術の奥義を使ってみるがあまり効果のほどはないようだ。月詠は一人でも戦えるが、さすがに手数では人喰鬼が有利である。
「葵くん! ちょっとだけ一人で頑張って!」
鈴は鬼の攻撃が当たらない高度まで上昇すると、ライトニングサンダーボルトで月詠を援護する。
鈴のサポートを受けた月詠は人喰鬼が混乱しているところを死角から攻撃する。
御神楽もまた人喰鬼の攻撃を受け止めている。術者のルーティを守るのが前衛たる自分の役目と、積極的に鬼達に切り込むのではなく、ルーティの魔法攻撃を主軸に、反撃しようと攻め込んできた鬼に対して迎撃を加えていく。軽い得物を扱う御神楽。攻撃手段は力任せの技より急所狙い。手数を稼ぐ事を重視する。
複数の人喰鬼とは言え、冒険者四人も並々ならぬ力量である。徐々に人喰鬼たちを圧倒していく。
救出組の方へ向かおうとする鬼には御神楽が切り込んでその足を止める。
建物の戸を壊して中に侵入しようとする壬生とフィディアスであったが、人喰鬼の方から戸を突き破って現れた。
「貴様らに慈悲は無用だな。‥‥ふっ、すぐに地獄へ送ってやるさ」
村の惨状を見ていた壬生。冷ややかに鬼を一瞥する。
上空、少し離れたところにいるペットの妖精に合図を送り、スリープを使わせる。が、人喰鬼に魔法は効かなかったので追儺豆を人喰鬼に投げつける壬生。人喰鬼は怯んだ様子で、何やらわめいている。予めオーラエリベイションをかけておいた壬生。下方から剣を振り上げ鬼の先手を取る。
そこへ別の人喰鬼が駆けつけてくる。
フィディアスはスリープ、コンフュージョンを駆使して鬼の足を止める。さらには村側から巨大な石が転がってきて鬼を潰してしまうイリュージョンを人喰鬼に送り込み、壬生を援護する。
フィディアスとペットの援護を受けながら、壬生はカウンター+スマッシュで確実に人喰鬼を葬り去っていく。
対峙中、救出班の方に向かう鬼がいれば足止めする。
「どうした、動きが丸見えだぞ」
切りかかる壬生。壬生が人喰鬼に切りかかっていくところで、フィディアスがメロディーを歌う。村人を守ろうとする冒険者を褒め称え、今こそ突撃の時と声の限りに大声で歌い上げ、壬生を鼓舞する。
強襲班でほとんどの鬼を抑えたが、完璧にとはいかなかったようである。
救出班の朱、シグマリル、レヴェリー、神楽も人喰鬼との戦いの中にあった。
オーラパワーを付与して村人の前に立ち塞がるレヴェリー。盾で人喰鬼の攻撃を受け流しつつシャクティを一閃する。
「これ以上悪業重ねるならば‥‥裁くのみよ」
常に仲間や村人を守るように立ち回り、特に村人は人質に取られぬように注意する。
朱はオフシフトで攻撃を回避しつつ、攻撃は鉄扇で受け流していた。戦闘は仲間たちに任せていたが、増える鬼相手にそうも言ってられず、朱も参戦していた。
シグマリルは速射撃ちで対応する。相手の眼を狙ってみるが、人喰鬼は棍棒で矢を受け止める。それを見て着実な一撃に切り替えるシグマリル。主に格闘戦を行う味方の援護を行う。
若干防戦気味だった冒険者たち。レヴェリーが状況を打開する。
「燃えよ我が闘気っ! はぁぁぁぁっ!!」
村人たちを守るべく、レヴェリーはオーラマックスを全開。レヴェリーの移動力は飛躍的に上昇。鬼達の攻撃を押し戻す。
やがて、鬼達を撃退した強襲班が合流する。そうして、冒険者たちは全ての人喰鬼を撃退する。
オーラマックスの効果が切れた後で、レヴェリーはポーションを使ってダメージを回復する。
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戦闘終結後‥‥。
村人たちを慰める月詠の姿があった。
壬生は亡くなった村人を埋葬したり、壊れた建物の瓦礫を片付けたりしていた。
村人の亡骸を見て静かに涙するレヴェリー。
私の力で、少しは人の為になれたでしょうか? 御神楽の問いに答える者はなく。
シグマリルは携行しているポーション類を負傷している村人たちに使用する。
フィディアスは今回の冒険をもとに、村人を助ける冒険者の歌を作ろうと思う。
全ての村人たちを救出した冒険者たち。人喰鬼の姿が消えたことを確認して、京への帰路へと着くのであった。