黄泉人再び
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■ショートシナリオ
担当:安原太一
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:03月09日〜03月14日
リプレイ公開日:2008年03月15日
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●オープニング
森の中を進み行く一団がいる。周辺の村々から祟り神として恐れられている者たち。
干からびた皮膚、さながら異国のミイラのような姿。ぼろをまとった彼らは黄泉人と呼ばれる不死人の類である。
かつて冒険者たちに退けられた彼らは今、再び動き出していた。
京都近郊の小村、夕暮れ時――
村人たちは農作業を終えて家路に着こうとしていた。
昨今の京都近郊は何かと物騒である。夕暮れともなれば人々はなるだけ作業を切り上げて帰宅する。
一日の仕事を終えてくたくたになった村人たち。迫り来る“彼ら”の存在に気付くこともなく、談笑しながら道を歩いていた。
と、その時である。村人たちの前方に黄泉人たちが姿を見せた。その数十体。彼らは何やら念仏らしきものを唱えている。
村人たちは最初修験者か何かが近付いているのかと思い、気にも留めなかった。しかし、その姿が接近してくるにつれ、村人たちは狼狽した。あれは明らかに人ではない。
ああああぁぁぁぁ‥‥
ああああぁぁぁぁ‥‥
黄泉人たちの声は呪念のように響き渡っていた。一体何を唱えているのだろうか。
怨霊の言霊のように連呼されるその不気味な声に、村人たちの足は止まった。
「おい、ありゃあ‥‥祟り神じゃあないか」
そういう村人を始め、すでに他の者たちの足も凍り付いていた。
すると、黄泉人の一人が進み出て、明朗な人の言葉を話した。
「人間から神と呼ばれるとは、懐かしき日々を思い出すわ」
その声に別の黄泉人が答える。
「黄泉将軍よ、我らが神は待っておられます」
「そうであった、者ども、神は待っておられる。儀式を始めるとしよう!」
黄泉人たちは素早い動きで散開する。
「者ども! 掛かれ!」
黄泉将軍が号令する。その掛け声とともに他の黄泉人たちは村人たちに襲いかった。
そこでようやく逃げ出す村人たち。しかし次々と黄泉人たちは村人を捕まえると、くわっと口を開いて村人の顔面に顔を近づける。するとどうだ。捕まった村人の体からみるみると血の気が引いていくではないか。まるで生気を吸い取られたかのようである。
腰を抜かしてそれを目撃していた村人たちはさらに信じ難いものを目撃する。村人から生気を吸い取った黄泉人が人の姿に変身していったのだ。
「た、た、祟り神よ、どうか怒りをお鎮め下さい! 何卒怒りを鎮めたまえ!」
これを祟り神の怒りと思った村人たちは、黄泉人に向かって手を合わせて懇願する。
そんな彼らに歩み寄る黄泉人たち、村人の首をつかみ上げる。村人の首を締め上げる黄泉人。村人の体からまたしても生気が失われていく。次々と倒れる村人たち。
その日、村は全滅に近い被害を受けた。
三日後、全滅に近い被害を受けた村で起き上がるものがある。黄泉人によって亡き者にされた村人の躯である。生気を失った村人の躯は死人憑きとなって蘇えったのである。
それは始まりに過ぎなかった。黄泉人の出現から一週間が過ぎる頃にはすでに五つの村が犠牲になっていた。
相次ぐ近郊の惨劇と死人憑きの増加に伴いギルドは対応に追われることになる。
ともあれ災いの元を断たねば被害は増すばかり。そうして、事態を重く見た御所の何某から黄泉人の撃退がギルドに依頼されたのである。
黄泉人は変身能力を持つ特殊な不死人だ。魔法の武器でしか傷つかず人並みの知性を持ち合わせていると言う。かつて大和の地に出現した時は冒険者たちの手によって彼らは一度粉砕された。その後は残党を見かけたという報告が稀に上がっている。今回現れたのも残党の一派であろうか。
●リプレイ本文
都から周辺の村々に黄泉人襲来の伝令が飛ぶ。村人たちには京の都まで避難するように伝えれた。
間に合うことを祈る冒険者たち。とにかくも今出来ることは限られている。
「私にもまだ出来ることが残されているのでしたら‥‥」
火の高位魔法使いジークリンデ・ケリン(eb3225)の碧眼が閃く。フレイムエリベイション超越で士気が高まっている。
集まったみなを前に黄泉人とその他のアンデッドの説明を行う和泉みなも(eb3834)。
「集団で移動しているなら移動はそれほど早くはないだろう。進路の予測さえ出来れば先回りすることは出来るな。数で劣る場合に敵の頭を叩くのは有効な手段ではあるが、将軍の周囲には多数の黄泉人がいるだろう。その中の将軍だけを狙うと言うのは容易い事ではないな」
琥龍蒼羅(ea1442)の言葉に頷く一同。
生き残りの村人から話を聞くのはバーク・ダンロック(ea7871)。村人たちは祟り神の復活として恐れていた。村の周辺には待ち伏せポイントに適した山寺があるそうである。
襲われた村の位置確認やその周辺状況を村人から聞きだすステラ・デュナミス(eb2099)。生き残った村人は重要な情報を知っていた。亡者を束ねる者たちの会話を聞いていたのだ。黄泉人は西へ向かうつもりであるという。
黄泉人は西へ。手がかりをつかんだ冒険者は黄泉人たちの後を追う。
足取りはすぐにつかめた。周辺の村人たちから話を聞く神田雄司(ea6476)。亡者の群れが通り過ぎていったのは数日前とのこと。
「何かの前触れなんでしょうねえ、現世の将軍だけでも大変なのに黄泉将軍ですか」
神田はのんびりと言いつつ行く先を見つめる。
野営時に簡易の地図を広げるジークリンデ。最初に被害のあった村から順に位置を確認していき黄泉人の進行方向にあると思われる村を割り出す。
地図を見つめる高町恭也(eb0356)とデルスウ・コユコン(eb1758)。次の村で追いつくことが出来るだろうか。
追跡を続ける冒険者たち。
ジークリンデは仲間の手を借りて見晴らしのよい木の上に上がる。テレスコープとインフラビジョンを駆使して広範囲を赤外線視力で索敵する。青い固まりが見えた。亡者の群れか。通常視力でも探ってみる。明らからに死人憑きと思われる者たちが蠢いている。その数百は越えるだろう。
さらに様子を探るジークリンデだが、詳しい状況は分からない。どこに黄泉人がいるのかも定かではない。
「これ以上の犠牲を生まぬ為にも、必ず滅ぼさねば」
相手は近い。己が怒りを封じ込め、レヴェリー・レイ・ルナクロス(ec0126)はその方角を見やる。
一行は手前の村に入った。すでにもぬけの殻である。襲われた後か。
村の中で閉じこもっていた者たちを発見する冒険者たち。村人たちは震えていた。
デルスウは惑いのしゃれこうべを取り出してその頭を叩いた。かたかたとしゃれこうべが歯を鳴らす。
「御免」とデルスウは清らかな聖水を村人たちに振り掛けた。何事も起きない。あるいは黄泉人が近くに潜んでいるのか。
村での捜索を終えて、いよいよ黄泉人の軍団に接近する冒険者たち。
囮と本隊に分かれて行動する冒険者。
村人たちの話通り、待ち伏せにふさわしいポイントがあった。高台の山寺である。高台の麓には亡者の群れが。
囮部隊は山寺に入る。バークは寺の住職に頼んで鐘を打ち鳴らしてもらう。周辺に鐘の音が響き渡る。
亡者たちの動きが止まる。これを好機とバークは引魂旛を振る。ソルフの実でMPを回復しながらバークは引魂旛を振る。メイ・ラーン(ea6254)も一度バークと交代して引魂旛を振る。
動き出す亡者の群れ。引魂旛に吸い寄せられて次々と山寺目がけて進んでくる。
味方に注意した上で達人級アイスブリザードを使用するステラ。およそ百メートルの範囲で巻き起こる吹雪。敵に届かずとも、この魔法を見れば、相手はこちらに戦力を割こうとするだろうと言う読みである。
麓では、黄泉将軍が配下の黄泉人や死人憑きに号令していた。
「我らに立ち向かう気か! 者ども! あの山寺へ向かえ!」
その号令で半数の死人憑きが山寺に向かって動き出す。
ステラの読み通り、死人憑きの大群が山寺に押し寄せてくる。
冒険者たちは突撃する。
十字鎌槍「宝蔵院」+1を構えてステラの前に立つメイ。ステラの護衛を買って出る。
護衛役のメイを伴ってステラも前に出る。高速詠唱マグナブローやウォーターボムで死人憑きを攻撃するステラ。
メイは近付いてくる死人憑きを槍でなぎ払う。
「幻視突撃速攻!」
死人憑きの群れに突撃する神田。接近してくる死人憑きを斬って斬って斬りまくる。
バークはオーラエリベイション専門、オーラボディ達人、オーラソード達人を発動して、死人憑きの群れに突入する。オーラソードで敵を切り裂きながら相手の攻撃はデッドorライブで耐える。死人憑きの群れをはねのけ、オーラソードを振るうバーク。
「俗世の諍いには関われないパラディンだが、黄泉人みてぇなアンデッドに対しては何の遠慮も要らないぜ!」
亡者の群れの前に鉄壁となって立ち塞がるバーク。
「それでも半数が残ったか。にしてもこれではどこに黄泉人がいるのか分からないな」
琥龍は戦況を見やりながら呟いた。
「もし人質と言った手段で来られたら厄介だな。それが生きている人間かどうかの判別も出来ない状況では咄嗟に対応策を考えることは難しい」
「人質か、考えたくない状況だな」
高町とデルスウはむうとうなる。すると、
「つぶさに見てはみましたが、人質はいないようです」
ジークリンデが索敵を終えて皆に戦闘に集中するように告げる。
「ならば外側から行くか。まずはあいつらがどこにいるかを予測しないことにはな‥‥。しかし黄泉人‥‥戦うのは初めてだな‥‥」
高町は武者震いしつつ抜刀する。
本隊の冒険者たちもいよいよ行動を開始する。
火球が炸裂して紅蓮の炎が爆発する。ジークリンデのファイヤーボムが相次いで炸裂して死人たちを焼き払う。ジークリンデはソルフの実でMPを回復しつつ魔法で攻撃。
さらに琥龍のストーム、トルネードが死人憑きを吹っ飛ばす。
敵陣にぽっかり穴が開く。
「よし、これ以上被害が出る前に急いで行かないとな‥‥問題は‥‥黄泉将軍がどれほどの強さか、ということか‥‥」
高町は突撃する。
術者の護衛に回っていたデルスウもそれを見て突撃する。
グリフォンに乗っていた和泉、待機していたレヴェリーも攻撃を開始。
死人たちの攻撃をかわしながらダブルアタックで確実にしとめていく高町。
ちらりと山寺の方を見れば、あちらでも戦闘が続いている様子。
「囮班がひきつけている間にこちらも行くとするか‥‥。向こうが持ってる間に早めに決着をつけねばな‥‥」
と、その時である。
高町が斬りつけた不死人が人語を発した。
「おのれ冒険者か!」
一瞬驚きに捕らわれた高町。
「黄泉人か」
「今回は以前のようにはいかぬぞ、覚悟しておくことだな!」
「黄泉人‥‥その力見せてもらうぞ!」
高町は踏み込んだが死人憑きの壁に邪魔された。
黄泉人は笑声を発して亡者の群れの中に消えた。
デルスウの体に小さな衝撃が走った。ウインドスラッシュである。
見れば黄泉人らしき者が魔法を詠唱している。黄泉人の手から真空の刃が放たれる。しかしデルスウにはかすり傷程度しかつかない。魔法が無駄と悟った黄泉人は、亡者たちに一斉攻撃を号令する。
亡者の群れが襲い掛かってくるが、デルスウはデッドオアライブで耐える。死人憑きを押し返すと至近からカウンターで応戦する。カウンターにスマッシュやスマッシュEXを混ぜて攻撃するデルスウ。
グリフォンのみぞれに乗って上空から強弓「十人張」で攻撃する和泉。魔法で弱っているとは言え、亡者は数が多い。撃って撃って撃ちまくるしかない。低空で距離を保ちつつ十人張を放つ。手持ちの矢が無くなればみぞれに積んだ予備から補充する。
ダブルシューティングEXやシューティングPAも絡めて攻撃する和泉。死人憑きの足を狙って移動出来ない様にしたり、手を狙って攻撃能力を奪っていく。
シャクティにオーラパワーを付与するレヴェリー。
最初は地道に亡者の攻撃を受けていたレヴェリー。何と行っても数の上では相手が上である。レヴェリーは亡者の攻撃など受けてもびくともしないが、それでもこのままでは亡者の群れに埋まってしまう。
止むを得ないと判断したレヴェリー。オーラマックスを発動する。
「全霊解放っ! はぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」
日本刀「姫切」も引き抜いて重騎士二刀流。身体を捻り重心移動で体重を乗せ、剣撃の乱舞を放つ。
「我流剛剣術、双龍剣舞陣‥‥天魔伏滅、散華よせ忌まわしき者」
死人憑きを圧倒的な動きで斬っていくレヴェリー。
数を減らしていく死人憑き。遂には百を越える死人憑きが冒険者たちの攻撃によって数えるほどまでになった。
レヴェリーは反動のダメージを回復しておく。
「これで終わったと思うな冒険者ども! 我らが神の復活は近い!」
黄泉人と思しき者が冒険者たちに向かって言った。
「黄泉将軍よ! 急ぎましょう! 我らが神のもとへ!」
その言葉を聞いたジークリンデが威力最大のマグナブローを放つ。
琥龍はヘブンリィライトニングで黄泉将軍を狙う。
炎と雷が黄泉将軍を襲う。巻き添えを食らった黄泉人が一体燃え尽きて滅びた。
黄泉将軍は重傷を負っていたが、その傷が見る間に回復していく。
「おのれ! 退け! 者ども退け!」
黄泉人たちは逃げ出した。
合流を果たした冒険者たちは全ての死人憑きを葬り去る。
レヴェリーは全てが終わった後、犠牲者の為に祈りを捧げるのだった。
「如何か安らかに眠りたまえ‥‥」