【乱の影】京都の炎

■ショートシナリオ


担当:安原太一

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月21日〜11月26日

リプレイ公開日:2006年11月25日

●オープニング

 吉永馬琴は京都御所にて神皇家に仕える志士である。彼のもとに一通の知らせがもたらされた。
「長州側の浪人衆が京都市内に火を放つ」と。
 吉永はその情報をあえて見過ごした。長州藩への反感が募れば募るほど、世論は長州への攻撃を支持するだろう。少数の民衆の家屋が焼け落ちたとて、大儀の前には小さなことである‥‥と。
 それに言うまでも無く長州藩は大藩である。しかも近頃宮中でも大きな力を持ち始めている。確かな証拠無しに疑えば、返って神皇家の為にならない。

 陰陽師の藤倉周蔵は、その情報を事前にキャッチ。冒険者ギルドに破壊工作の阻止を命令した。
 長州側の工作員は十四名。浪人と忍から成る集団で、リーダーは浪人の栗田平蔵。彼らは時を同じくして二箇所で放火を試みていることが判明している。いずれも長州勢の駆け出しで、下っ端の連中であるが、それだけに利用されやすい立場にあると言えよう。

 吉永と藤倉の間では不協和音が生じているが、ギルドの方針はあくまで京の都を守り抜くことである。ならず者の長州の陰謀を阻止すべく、ギルドではこの破壊工作を止めるために冒険者たちに依頼を出すのであった。

●今回の参加者

 ea4759 零 亞璃紫阿(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb4605 皆本 清音(27歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb4891 飛火野 裕馬(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb5009 マキリ(23歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)
 eb5818 乱 雪華(29歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb5862 朝霧 霞(36歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb8664 尾上 彬(44歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb8798 速瀬 刹喜(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●調査開始
 京都御所の一室にて、冒険者たちは集まっていた‥‥。
 零亞璃紫阿(ea4759)はそれとなく今回の依頼について話題を振ってみる。
 見廻組として今回の火付けを見過ごすことの出来ない皆本清音(eb4605)は肩をすくめると、一座を見渡す。
「喧嘩するなら当事者同士でやればいいとは思うんだけど、大和の国も難しいもんだね。それにしたって火をかけるなんて、どういう考え方してるんだろ‥‥」
 とマキリ(eb5009)。
 この前から依頼で散々足軽風の連中と戦ってきたけれど、あれはもしや長州藩だろうか‥‥? これまでの戦いを振り返りながら口を開く朝霧霞(eb5862)。
「それにしたって、長州も一体何を考えているのかしら」
「まあ、長州の無茶は今に始まったことではありませんが‥‥」
 そう答えるのは乱雪華(eb5818)。
 速瀬刹喜(eb8798)はお茶を飲みながら時が過ぎるのを待つ。
 それからほどなくして、陰陽師の藤倉周蔵が姿を見せる。藤倉は人相書きと目的のアジト周辺の地図を配りながら早々に本題に入る。藤倉はターゲットの栗田平蔵を始め十四人の工作員の情報を細かく説明する。それから冒険者たちと藤倉の間で幾つかの質疑応答が交わされ、その場は解散となった。

 皆本は見廻組として京の都を回りつつそれとなく聞き込んでみる。その最中に工作員の一人を発見した皆本は、あとをつけるのもそこそこに、尾行の続きは尾上彬(eb8664)に任せることにする。

 速瀬も同じく京の都を回る。栗田平蔵のことは早くも噂になっていた。市中のあちこちに出没しては、長州藩士と連絡を取り合う姿が目撃されていた。

 知り合いの情報屋のもとへ向かうのは飛火野裕馬(eb4891)。
「用心棒が必要なときにタダにしとくからっちゅうことで」
「その件に関しては、飛火野さんの方が詳しいくらいですよ」
 と情報屋。
「長州の連中、口が堅くて。私もお手上げですわ。今回の騒乱、奴らの目的がどこにあるのか‥‥」
 ぶつぶつと呟く情報屋。飛火野は情報屋の肩を叩くと、
「邪魔したな」
 とその場を後にする。
 それから京の街角で尾上と落ち合う飛火野。
「そこら中に長州藩士がうじゃうじゃしてやがる」
「気をつけろよ彬。連中気が立ってるからな」
 二人は京娘たちに聞き込み。娘たちはこぞってエールを送るのであった。

 尾上は飲み屋街、花街に潜り、西国訛りの浪人が出入りしてないか調べる。十四人もいれば、それなりに飲み食いもするだろうし、女遊びもするだろう。景気付けも兼ねて、栗田が花街に繰り出すということも十分考えられる。それらしき人物に当たりをつけ、後をつける尾上。その前には、茶屋で弟の飛火野と再会を祝したところであった。舞妓さんたちは長州藩士を恐れている様子だった。今の京の情勢では無理もないことである。

「あ、もしかして、あれかな?」
 マキリは市中の大通りをずかずかと行く長州藩士の一団に目を留める。
「そのようですね‥‥」
 乱はマキリとともに店の中に入っていく一団を追う。
「お客さん、係わり合いにならないほうが良いですよ」
 店員がおずおずと声を出す。
「そうも言ってられない状況でね」
 乱は浪人たちの後を追う。マキリもその後に続く。
 再び市中に出た浪人たちを乱とマキリが追う。
 浪人たちが向かったのは裏通りにある一軒の家屋。
 そこで尾上と合流する乱とマキリ。尾上が見張りについて、乱とマキリは仲間たちのもとへと戻る。

●アジト殲滅
 京都市中、夜明け前。工作員の男が闇に紛れて姿を見せる。どうやら朝帰りのようだ。
 不意を突いて急襲する乱。首筋に一撃。男は意識を失った。
「お見事」
 と速瀬。
 尾上が男をロープでがんじがらめにしてしまう。そのまま男を路地にひきずりこんで放り込む。
 先に尾上が偵察に向かう。その後に続く乱。二人がかりで隠れ家周辺に張り巡らされている鳴子を解除していく。
 と、不意に尾上は気配を察知する。見張りが出たのだ。尾上は乱に向かって反対側から回るように合図を送る。二人は素早く行動する。尾上が正面から一人を倒し、乱が背後に回ってもう一人を片付ける。

 飛火野がゆっくりと扉を開ける。マキリが身を乗り出して中の様子をうかがう。マキリは頷いてみせる。
 朝霧は腰の二刀を抜き放つ。皆も抜刀する。
「よし、行くぞ」
 飛火野の合図で乱が進入する。その後に続くマキリ。続いて飛火野。最後に突入する朝霧が背後を守る。
 そして速攻に転じる冒険者たち。
 屋内に上がり込んだところで回し蹴りを放つ乱。直撃を受けて吹っ飛ぶ長州藩士。
「何だ! 敵襲だ!」
 かろうじてそれだけわめく長州藩士。乱は相手のみぞおちに一撃。長州藩士は意識を失う。
 その傍らを走り抜けていくマキリ、飛火野。乱も突入する。
 朝霧は油断なく背後に目を向けながら、奥へと進む。
 室内はあっという間に乱戦模様。
 飛火野は二人の長州藩士を相手にしながら全体に目を向ける。不意を突かれた栗田は逃げを打っている。栗田は乱戦をかいくぐって表口へ向かって走り出している。飛火野は警戒の声を上げる。
「栗田が逃げるぞ!」
 飛火野は二人の長州藩士の首筋に峰打ちを叩き込む。昏倒する長州藩士。
 乱もまた二人の長州藩士を相手にする。その片腕には半透明の盾。長州藩士の斬撃を盾で受け止めつつ素早い動きで二人のみぞおちに拳を叩き込む。長州藩士は意識を失った。
 マキリは小柄を投擲。二人の長州藩士に小柄が命中する。怒りに燃えた長州藩士らがマキリの方へ向かってくる。マキリは敵の斬撃を身軽にかわす。かわしつつ相手の懐に飛び込むと、突き刺さった小柄をまた持って斬撃に切り替える。驚きと痛みでひるんでいる長州藩士の脚を切る。もんどりうって倒れる長州藩士。もう一人の長州藩士は恐れをなして逃げ出した。
 逃げる栗田を急襲する朝霧。栗田は罵り声を上げて反撃してくる。切り込んでくる栗田の刀を弾き返し、二刀で応戦する朝霧。朝霧の二刀と栗田の刀が火花を散らす。やがて、戦況を見た栗田は間合いを取って叫んだ。
「待て! 武器を下ろせ! 降伏する!」
 朝霧は油断なく栗田を見つめる。
 栗田は白旗の意思表示として両手を広げ見せる。
「いいか、武器を下ろせ、降伏する」
 繰り返す栗田。
 朝霧は武器を構えたまま鋭い口調で命令する。
「そっちが先よ。武器を下に置いて、両手を上に上げて膝をつきなさい」
 栗田は言われた通りに武器を捨てると、膝をつく。

 裏口からばらばらと現れた二人の長州藩士。
「そこまでよ! 観念なさい!」
 零は抜刀するとさっと飛び出した。
 驚きつつも攻撃の構えを見せる長州藩士。一人が零に向かって突進してくる。と、その脚がもつれて藩士は倒れた。尾上がしかけたとりもちのトラップに引っ掛かったのだ。
 零は悠然と藩士に近付くと刀を突き出した。
「残念でしたね。あなたたちの計画は私たちがとっくに知るところでしたの」
「な、なぜだ‥‥」
「それはなぜかしら」
 零はそう言って微笑んでみせる。
 もう一人の長州藩士は逃げ出そうとしたが、振り向いたところには尾上が立っていた。
 尾上は藩士の男のみぞおちに拳をめり込ませる。藩士はうめき声を漏らして昏倒した。

 表口。出会い頭の居合い切りは速瀬の一撃。長州藩士は切られた首を押さえて倒れ伏す。
 逃げ出そうとする長州藩士の足首に皆本の忠犬黒吉が噛み付く。藩士は抜刀すると黒吉目がけて振り下ろそうとする。が、そこへ皆本の鞭がうなりをあげる。藩士の腕に絡みついた鞭に、皆本は力を込める。ずる、ずる、と引き寄せられる長州藩士。遂に力負けする藩士。引き寄せたところで霞小太刀を突き立てる皆本。そこへ切り込んでくる三人目の長州藩士。さっと身をかわしながら皆本は小太刀で反撃。速瀬がそこに加わる。皆本と速瀬は二人の長州藩士を退ける。
 藩士二人は降伏した。

●戦闘終結。
「終わりましたね。皆さん無事ですか?」
 零はアジトの中に踏み込んで様子を見る。
「後始末が大変そうだけど、こっちは大丈夫よ」
 そう答えるのは栗田を監視する朝霧。
 室内を捜索していた乱は計画書らしきものを発見して机の上に広げていた。
 傍らから机を覗き込むマキリ。
「全く、とんでもない連中だったね」
「そうね」
 マキリの言葉に肩をすくめる乱。
「お前たちの目的は何なんだ?」
 無駄だと思いつつも飛火野は栗田に尋ねてみる。
「‥‥‥‥」
「無駄よ。そう簡単に口を割る相手じゃないわ」
 朝霧にそう言われて肩をすくめる飛火野。
 と、そこへ皆本と速瀬が現れる。二人の長州藩士を引っ立てている。
「無事に終わったようね。それじゃ、こいつらを御所まで送り届けないと」
 皆本がそう言うと、一同立ち上がり、気絶している長州藩士たちを叩き起こす。
 そして、冒険者たちは長州藩士を引っ立てて御所までの道を歩き始めた。

 後日談ではあるが、尾上から便りを受けた京都御所の吉永は、火付け地点に人員を配置したとのことである。