春の嵐、人喰鬼来襲
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■ショートシナリオ
担当:安原太一
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:04月03日〜04月08日
リプレイ公開日:2008年04月08日
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●オープニング
桜吹雪が待っていた。吹き荒れる春の嵐。舞い散る木の葉。びゅうびゅうと風が鳴る。死者の咆哮のように‥‥。
十体近い人喰鬼が山を下りてきた。鬼達は風鳴りの中を歩いていく。その目は血に飢えた獣さながらであった。鬼の血が騒いでいるのだ。人喰鬼の一団はたけり狂う暴風となってその村に襲いかかろうとしていた。
村にある桜の木も芽吹いていた。行き過ぎる村人たちは足を止めて、春の到来を身近なのものに感じていた。
「もう桜の季節になったかあ」
「春はすぐそこまで来てるってことね」
「春がそこまで来ても、俺たちの暮らしは一向によくならないなあ」
「最近の世情はどうかしてるよ。噂じゃお侍様たちが戦の準備をしているっていうし、鬼は出るは妖怪は出るわ、俺たちが枕を高くして寝ていられる日は全くないぜ」
「そうだなあ‥‥」
三人の若者たちは桜を見上げて前途に思いをいたすのだった。
その時である、村の近くで咆哮があがった。
「何だ?」
三人は顔を見合わせる。
「大変だ! 鬼だ! 鬼が出たー!」
鬼だって? 鬼? まさか! 鬼だって! 鬼が出たのか!
村中を凶報が駆け抜ける。
村人たちは混乱に陥った。鬼を見た村人が村中に警告を告げる。
人々は家の中に駆け戻り、ぴしゃりと戸を閉ざした。
村の中に沈黙が訪れる。
やがて、鬼達は村の中に侵入してきた。家の中から、村人たちは鬼の姿を見た。それは恐ろしい人喰鬼の姿であった。
人喰鬼たちは村の中を歩き回ると、グオオォォ! と威嚇的な咆哮を上げた。
恐れをなして引きこもる村人たち。
頼む‥‥行ってくれ、去ってくれ、頼む!
果たして、村人たちの祈りは届かなかった。
人喰鬼たちは扉を破壊して家々に入り込むと、次々と村人たちに襲い掛かったのである。
村のそこかしこで上がる悲鳴。何が起きているのか村人たちには知る由もない。ただ、恐ろしいことが起こっているとしか想像できなかった。
そしてまた、今もこの家の扉が人喰鬼の手によって破壊されようとしていた。中にいる村人は恐怖に震えていた。
ドンドン! バリバリ!
扉を突き破って姿を現した人喰鬼。悲鳴を上げる村人。だがその声も、鬼の咆哮にかき消され、次の瞬間には家の中は地獄と化した。
村が襲われている。その一報が冒険者ギルドに届いたのは数日経ってから。近くを通りがかった旅人が暴れる人喰鬼の姿を目撃したのだ。
「大変だ! 大きな鬼が近くの村で暴れている! 十匹はいたぞ!」
「まさか‥‥」
ギルドの手代は眉間にしわを寄せると、旅人から話を聞きだす。
村は五十戸ほどの集落で、そのど真ん中へ入っていく鬼の姿を目撃したのだと言う。
旅人の話によれば、その後村の中から悲鳴が聞こえてきて、鬼と思われる咆哮が響いていたと言う。
「人喰鬼か‥‥」
ギルドの手代は依頼書を作成するとそれを張り出した。
今こうしている間にも村人は襲われ、村は全滅しようとしている。冒険者よ、急げ。
●リプレイ本文
宿奈芳純(eb5475)は依頼人に村の地勢などを伺っていた。それをもとに村の簡単な地図を作成する。
出来上がった地図の上にダウジングペンジュラムを垂らす宿奈。
「鬼の頭領」と指定すると、ペンジュラムは地図の上でかすかに揺れたまま、静止することなく動いている。が、それ以上の反応はない。
肩をすくめる宿奈。
時折ペンジュラムが反応するのは偶然だろう。
村を出発した冒険者たち。加速系のアイテムや馬を使って移動する者がほとんどだが。
アンドリー・フィルス(ec0129)はペットのグリフォン、ガルーダに跨り、飛行して急行。
同じく空を飛んでいくのは和泉みなも(eb3834)。空飛ぶ箒で移動する。
和泉は道中ちょっとした実験をしてみた。パラのマントに身を包み、空飛ぶ箒に乗ったまま透明になって移動できるかどうかというものだ。結果、移動しながら姿を消すのは不可能だった。どうしても風に煽られてマントが体から離れてしまうのだ。ただ、じっと浮かんでいるだけなら透明化は保たれた。
レヴェリー・レイ・ルナクロス(ec0126)は刻一刻と失われていく命の叫びに心痛めながら、兎に角急ぐ。
「急がねば、一人でも多くを救わないと!」
また、宿奈もババ・ヤガーの空飛ぶ木臼で上空から急行。途中、村を一望できる場所まで到達すると、インフラビジョンのスクロールとテレスコープで村を探査する。
赤い大きな熱源が幾つか動いているのが見える。人喰鬼だろう。それ以外は‥‥ここからでは障害物が多すぎて分からない。
宿奈と和泉とアンドリーは先に村に到着した。
宿奈の話を聞いて、鬼の種類を写本「オーガの生態」で確認する和泉。今回の鬼は人喰鬼だろう。
アンドリーは腕組みしながら村を見つめていた。
宿奈は後続が追いついてくるまで情報収集する。エックスレイビジョンのスクロールとインフラビジョンのスクロールを併用して逐一村の中を探査する。どちらも効果時間が短いので限られた時間内での調査となる。人喰鬼たちは村の方々に散っており、人々は一箇所に固められていた。
後続が追いついて、MPを回復してからいよいよ行動開始となる。
クロウ・ブラックフェザー(ea2562)は宿奈の魔法探査に拠る情報を得て村に潜入する。匂いでばれないように風下から近付く。物陰伝いに忍び足で移動しつつ、鬼達と人質の居る家屋を確認。村人たちはかなりの数が捕らわれていた。七、八十人くらいである。鬼は人喰鬼が十体。
その情報を宿奈のテレパシーを通して交換するクロウ。
「鬼達はこっちの様子に全く気付いていないだろう、陽動作戦の方、頼むぜ」
「そちらの方もすぐに動き出すでしょう。伝えます」
陽動班も行動を開始する。
「宿奈から連絡が来た。派手に一暴れとしゃれこもうぜ。鬼達はこっちに気付いていないから不意打ち出来そうだな」
クリスティーナ・ロドリゲス(ea8755)はそう言って装備を取り出す。
鋼蒼牙(ea3167)はオーラエリベイション専門を発動。また、同じ陽動班のメンバーで前衛に立つであろうレヴェリーにオーラエリベイション達人を付与しておく。
「ありがとう」
「俺に出来るのはこれぐらい‥‥仲間たちの補助をするぐらいだ」
「それも立派な役目よ。頑張りましょう」
またアンドリーはオーラエリベイション専門を付与した後に、オーラパワー、オーラボディ、オーラシールドをそれぞれ達人で付与して戦闘準備。
「では行くか」
アンドリーはガルーダに跨り飛び立った。
アンドリーは上空から狙いを定めると、外に出ていた人喰鬼に向かって急降下した。スマッシュ+チャージングの強力な一撃。ブレイブランスが深々と人喰鬼に突き刺さる。
――グオオオ! 咆哮を上げて膝をつく人喰鬼。よろめきながら逃げだすと、仲間の鬼たちに呼びかける。
鬼が出て来たところをシューティングPAで狙撃するクリスティーナ。人喰鬼は矢を跳ね返すと向かってくる。クリスティーナはさっさと逃げ出す。
「鬼達の様子は?」
レヴェリーは宿奈と交信した。
「あちらこちらから出てきています。囲まれないように」
その言葉を確認してからレヴェリーは鬼に立ち向かう。目の前の鬼達に向かって闘志を燃やす。
オーラパワーを付与すると、シャクティを開放する。
「汝ら悪鬼、これ以上の暴虐は赦さない! シャクティ、解放せよ!」
レヴェリーの言葉に応じたように、鬼達が襲い掛かってくる。手数では勝る鬼達だが、レヴェリーは重装備で相手の攻撃を跳ね返していた。
仲間たちの側背に回り込まれないように立ち回る鋼。鬼の攻撃を盾で跳ね返しながら、引き付ける。
「あまりこういうのは俺向きではない‥‥だが、やらなければいけない事だ――!」
ひたすら守勢に回る鋼。囲まれないようにしながら鬼達を引き付けていく。
混乱に紛れて家屋の屋根に着陸していた和泉。強弓「十人張」を引き絞ると、思い切り矢を放った。人喰鬼の分厚い体を矢が貫く。
「どうやら陽動作戦が功を奏したらしいな」
クロウはそう言って他のメンバーを促した。クロウの先導で、ミリート・アーティア(ea6226)と香山宗光(eb1599)ら救助班は村人が捕らわれている家屋に辿り着いた。そこへ宿奈も合流を果たした。
人喰鬼が一体いる。
クロウは付近の家屋に忍び込むと、手近な家具を倒して大きな音を出す。人喰鬼の注意がそれたところで、クロウは鬼の背後を襲う。鞭がうなりを上げて人喰鬼を打つ。ミリートは鬼の足を狙って矢を放つ。人喰鬼は反撃を試みるが、クロウは相手の攻撃をかわしつつ後退する。そこで、持っていた追儺豆を全て投げつける。人喰鬼が怯んだところで宿奈が背後からスリープをかけた。人喰鬼は眠りに落ちて倒れた。
鬼を片付けたところで、冒険者たちは村人たちのもとへ駆け寄る。
「ギルドの要請で助けにきたよ。護衛は私たちがするから、今は声を立てず、そっと逃げて」
ミリートは怯える村人たちに向かって言った。
「またしても修羅場に飛び込む様な状況でござるが、しっかり逃げるでござるよ」
と香山。
三人は村人たちを先導して村の外まで彼らを避難させる。
残るは鬼との戦いだが。
「鬼が相手では威力が物足りぬでござる。しかし人命が優先。逃げ出してくれれば良いのでござるが‥‥」
香山は厳しい表情で村の方を見つめた。
オフシフトで人喰鬼の攻撃をかわすクリスティーナ。
「いい加減数が多いからな、救助班はまだかな」
矢はすでに尽きた。鬼は数では勝る。クリスティーナは何とか鬼の注意を引き付けていた。
そこへ、村人たちを救出した四人が合流を果たした。
オーラエリベイション専門を発動する香山。刀にオーラパワーを初級で施して切り込む。さらにフェイントアタックで撹乱しながら攻撃する。香山の一撃を受けて咆哮する人喰鬼。さらに鬼の反撃を跳ね返す香山。
「むう、集団戦であれば何とかやれそうでござるな」
香山は周囲と連携を取りつつ刀を構える。
ミリートはシューティングPA+ダブルシューティングによる足狙い。
「ピンポイントッ!! 相手がどれだけ強かろうと、動けなくさせればいいだけだよ!」
人喰鬼は体に突き刺さった矢を苛立たしげに払うと、ミリートの方に向かって突進する。宿奈がムーンアローで鬼の足を止め、アンドリーが愛騎とともに体当たりする。
クロウのカラミティバイパーが鬼の棍棒を絡め取る。人喰鬼は鞭を振り払うと、クロウを攻撃。クロウはその一撃をかわしつつ再度反撃。
鋼は改めて前衛に立つ者にオーラパワー専門を付与。
「俺が貴様らを直接斬るわけではないが‥‥俺の闘気は貴様を斬る為に存在する!」
そうする間にも和泉は長射程で強弓を引き絞る。ダブルシューティングEXやシューティングPAで人喰鬼を打ち抜いていく。
アンドリーは人喰鬼の戦列を愛騎に跨ったまま突破。人喰鬼の攻撃を受けてもびくともしない。スマッシュ+チャージングで人喰鬼を沈めていく。
もう一人のパラディン、レヴェリーも重装備で人喰鬼の真っ只中にいた。重装備で鬼の攻撃を跳ね返しつつ、シャクティを振るう。
「そこっ!」
シャクティの一撃を受けて咆哮する人喰鬼。
だが、人喰鬼は戦列を立て直すと、猛攻に転じてきた。主にレヴェリー以外の者を狙って攻撃を開始する。
その状況を見て取って、宿奈はスリープを連発。
アンドリーはスマッシュ+チャージングで突入。
そしてレヴェリーはオーラマックスを全開で発動。
「そうはさせない! 全霊解放っ! はぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
レヴェリーは飛躍的に上昇した移動力で人喰鬼たちに切りかかる。
他の者たちも全力で人喰鬼に対する。
立ち塞がる鋼。盾を構えて仲間たちを守る。
「最後の抵抗か、こっちも苦しいところだが‥‥」
「何とか踏ん張るでござる!」
香山は刀を振るう。
和泉も合流を果たすと、アイスチャクラで参戦する。
アンドリーの一撃を受けて重傷を負った人喰鬼をミリートが打つ。
「これでサヨナラ! Bye-byeだよ!!」
ミリートの矢を頭部に受けて倒れる人喰鬼。
「これでもまだ来るでござるか!」
香山はまだ立ち向かってくる人喰鬼に額の汗を拭った。
しかし、そこで鬼達は互いに咆哮を上げると、戦線を離脱して逃げ出した。何とか撃退したようだ。
――戦闘結後。
宿奈は保護した村人たちに言葉をかけて癒していた。
オーラマックスのダメージを回復したレヴェリー。
命を落とした村人達の亡骸を供養して回る。
「救えなくて御免なさい‥‥どうか、迷わず安らかに」
アンドリーも救うことの出来なかった命を弔う。
また人喰鬼の遺骸も運んできちんと弔うのだった。