丹後会合、天津神の召集

■ショートシナリオ


担当:安原太一

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月18日〜05月23日

リプレイ公開日:2008年05月26日

●オープニング

 丹後、籠神社――
 世間は尾張平織氏の上洛でにわかに慌しくなっていた。京都方面は蜂の巣を突付いたような騒ぎである。
 ともあれ、この丹後はそのような騒動とは無縁。
 騒ぎの付け入る隙がなく、平和そのもの‥‥ではない。その逆だ。
 この地の希望は絶えた。天下の行く末がどうであれ、死人や盗賊を何とかしなければ身動きが取れないのである。丹後の有力氏族は自分たちの領地をそうした脅威から守ることで精一杯だった。
 魔界と化した丹後の噂は京都近郊には聞こえており、ここには平織氏からも延暦寺からも何の声も掛かっていなかった。放置されていると言えばその通りなのだが、ある意味稀有な状況であることは確かである。

 さて、籠神社職員の多度津真吉は天下の騒乱を知ることはなかったが、この地に天津神が降臨したことで神社の手入れにも熱が入っていた。先日、ここ籠神社にて天火明命、天御影命、天鈿女命と、いずれも火を司る三神が降臨した。その噂は籠神社周辺には瞬く間に広まっており、特に宮津からは神様を一目見ようと参拝者がやってきており、神社はささやかながらかつての賑わいを思わせる喧騒に包まれていた。
 真吉が目をやると、社殿の前に鎮座する三神は炎に包まれており、その周りをぱらぱらと訪れた人々が取り囲んでは祈りを捧げていた。
「この地にも少し希望の灯が見えてきたのかもしれないぞ」
 社殿の周りを掃除する真吉の動きはぴんしゃんしていた。参拝者たちをもてなしつつ、忙しく動き回っては神々の様子をうかがって神社の雑用をこなしていた。
 と、その時である。人々がにわかに騒ぎ始めた。人々の悲鳴が交錯する。
「何だ? どうした」
 真吉は騒動の方に目をやった。人だかりを割って武装した一団がやってくる。馬に乗った侍たちである。みな甲冑を身にまとっている。
「どうしたんだ一体‥‥」
 真吉は呆然と立ち尽くして成り行きを見守っていた。

 侍たちは馬から下りると、神々の前で立ち止まって恭しく一礼した。
 一見侍たちは普通の人間のように見えた。しかし、その瞳は真紅に染まり、顔色は青白く死人のようだった。真吉は寒気を覚えて、何か嫌な予感を覚えた。
 侍の一人が口を開く。
「天津神よ! 魔王より言葉を伝える! しかと聞くが良い! 我こそは正当なる日ノ本の王である。かつての禍根は忘れ、我らに味方せよ! 人と天津神の望みを叶えられるは我のみである。さもなくば、たとえ八百万の神々と言えども魔王は容赦せぬことを知るがよい!」
 静寂が訪れた。人々には何のことがさっぱりだった。だがこの侍たちが天津神を脅しに掛かっていることは見て取れた。人々はどうなるのか状況を見守った。
 天火明命ら三神は沈黙していた。その身にまとう炎がゆらゆらと揺れていた。
「天津神よ! 答えを聞こう! 我らに味方するや否や!」
 すると、天火明命は高らかに笑声を発した。
「いやいや、本物か騙りか判断に迷うわ。混沌に冒されし丹後、春ともなればおかしな連中がわいて出るのも珍しくないでなあ。
 しかし、真に魔王の使いというなら片手落ちもいいところだな。他の者は知らず、我が戦わずして軍門に下ると思うか。まだ千年も経っておらぬのにおぬし達の魔王はそれも忘れたか。それとも、我程度を下すは邪魅魍魎で十分と思うたか? おぬし達では退屈凌ぎにもならぬゆえ、帰って主に伝えるが良い。丹後の天火明命はいつでも話を聞く用意があるとな」
 天火明命の言葉に侍たちの瞳がぎらりと光った。
「これは不思議。感知の術を持たぬ火精霊が、我らの正体をご存じか」
「戦場で鍛えた勘だ‥‥と言えば聞こえは良いが、ハッタリだ。お主達は謀を良くする割に、意外に素直で親切だろう」
「悪魔に親切とは、さすが音に聞こえし天火明命。‥‥言われてみれば、如何にも親切心かもしれぬ。貴様らが生き残るには、魔王の軍門に下るより無いのだからな」
「我らに生死を語る無意味を知れ。先の事は分からないが、今は貴様ら悪魔に加担する気はない。それだけだ」
「‥‥何故だ」
「従わぬ。当然であろう。そう簡単に我らが魔王に付くと思ったのか」
「貴様はおかしな事を言っているぞ天火明命。何故気付かぬ。‥‥まあ、よかろう、後悔しても知らぬ」
 悪魔たちはそう言い残すと、馬にまたがってその場から風のようにいなくなった。
 人々は呆気に取られたように天津神と悪魔のやり取りを眺めるばかりだった。



 宮津城下――
 丹後宮津藩主、立花鉄州斎は、天津神の訪問を受けていた。
「――という次第だ」
 天火明命は鉄州斎に意見を求めていた。
「魔王ですか‥‥」
 鉄州斎は呟いた。噂によれば最近上洛した平織虎長を魔王と称する向きもあるらしい。延暦寺を攻撃する仏敵だから魔王という話で、何も虎長が悪魔という事では無い。
 鉄州斎は平織虎長の件を天津神に話して聞かせた。
「ほう‥‥その虎長なるものが大軍を率いて仏教の総本山を攻めようとしているのか」
「左様です」
「その虎長、死して一度蘇えったというのだな」
「そう聞いておりますが」
「背後に何らかの力が働いたのは確かだが、魔王と結びつけるのは早計と言うものだな」
 悪魔と思わせて人の疑心暗鬼を誘うのは常套手段だ。神社に現れた者達が真実、魔王の配下かも分からないが、天火明命自身、待つことに厭いている。
「藩主、おぬしはどうする気だ」
 天火明命の言葉に、鉄州斎は扇をぱちんと折りたたんだ。
 どうすると言われても、宮津の小藩に選択肢は多くない。大国主や天津神に魔王等とスケールのでかい話をされても、正直手に余ること夥しい。が、それを正直に言って、この天津神の不評を買うのも困る。
「魔王だろうと虎長だろうと、断じて私の藩を好きにはさせませぬ」
 景気のいい事を云った。
「ほう、強気だな。都に臣従して兵を送り、後日丹後の平定に力を貸して貰うところかと思ったが‥‥」
 意外に無難な事を云った。
「まさか。あ‥いや、無論それも考えないではありません。民の為ならば‥‥」
「ともあれ、大国主の侵攻の事もある。都への対応も早急に決める必要があるな」



 京都、冒険者ギルド――
「というわけで、今回は直々に宮津藩主と天津神から召集が掛かりました。
 都が大変な時に、なんだか立て続けに丹後に呼ばれますね。何か関係があるのでしょうか?
 今回は丹後の今後にについて冒険者の意見を求めたい、とのことです。おもな議題は平織氏の勢力下にある都との対応、延暦寺に派兵するか否か、籠神社に現れた謎の魔王の使者への対策‥‥等です。
 宮津藩の選択は、籠神社に滞在している天火明命の行動にも影響を与えそうですが、今一つ何を考えているのか分からないので藩主は困っているようです。悪魔からも勧誘され、京都の最も近くにいる天津神ですので、その去就は気になるところ。
 場所は宮津城下、宮津藩主立花鉄州斎様が天津神との調停を果たされます」
 今回天津神が聞きたがっているのが京都の情勢である。それに関連して、丹後の行く末を占う話し合いが開かれるそうである。冒険者の選択やいかに。

●今回の参加者

 ea7468 マミ・キスリング(29歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 ea9502 白翼寺 涼哉(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 eb2905 玄間 北斗(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb3601 チサト・ミョウオウイン(21歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ec4697 橘 菊(38歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 宮津城下、藩邸。
 宮津では激闘が終わった直後であった。玄間北斗(eb2905)は疾走の術で峰山方面から帰ってきたところである。
「峰山での戦いも終わったのだ〜。あちらも亡霊たちを追い払ったようなのだ」
 玄間の言葉にチサト・ミョウオウイン(eb3601)は安堵の息を漏らした。
 チサトは傍らにいたパラの老婆に問いかける。丹後で最も物知りという老婆を彼女は探して、保護してきたのである。
「婆様、亡霊たちはどうしようと言うのでしょう」
「大国主とな。さて‥‥失伝した古き言い伝えがあると婆の大婆様より聞いたことがある。
 黄泉の者よりもさらにそのまた昔、まだ都が作られる前の太古の話であるとか。しかし、それほど昔であれば、人の身で記憶する事はかなわぬ。伝無き伝なれば、朽ちぬもの、人でなき者の声を聞かねばなるまい」
 冒険者たちが所在無げにしていると、藩主の奥方である秋乃御前が部屋に入ってきた。
 会見の用意が整ったと伝えに来た。
「待たせたな」
 あぐらをかいていた白翼寺涼哉(ea9502)は背筋を伸ばした。
 御前の案内で部屋を出る冒険者たち。

「久しぶりの京都なのですが、こちらも余り良い状況とは言えないようですね」
 マミ・キスリング(ea7468)は廊下を歩きながら言った。彼女は江戸に居た。西も東も暗雲色濃く、父祖の地が波乱に満ちている事にマミは複雑な思いを抱いていた。
「どこへ行っても戦が絶えないのですね‥‥」
 マミの言葉に橘菊(ec4697)も吐息する。滅多なことでは影を落とさぬ橘の表情にも珍しく暗いものがある。当世は末法にて明るい話題はとても少ない。
「けれど、神皇様がその御意思を示されたからには、悪戯に戦火を広げるのは不忠というもの。都の戦も結果が出ぬうちは片方に肩入れするは危険じゃ。慎重に考えねばのう」
「どっちに転んでも良いことはありませんわ。こうなった以上、虎長公も延暦寺も無傷では済まないでしょう。いずれにしてもお互いに禍根を残すことになりますわ」
「そうですな‥‥」
 と、一同を案内していた秋乃御前が立ち止まり、手を差し出した。その先に、部屋の入り口から、炎をまとった天津神三神が鎮座しているのが見える。
「どうぞ、お入り下さい。あれにあるは我が夫、あそこに見えますは丹後の籠神社に降臨された三神の神様でございます」
 冒険者たちは勧められるまま、部屋に入った。

 神々との会見が始まった。まずは藩主の立花鉄州斎が挨拶した。
「ようこそ集まって下さった。このたびは天津神様の召集に応えて下さったこと、お礼を申し上げる」
「藩主よ、堅苦しい挨拶は抜きだ。戦も済んだことであるし、もう少し肩の力を抜いてはどうだ」
 そう言ったのは天津神が一柱、若武者の姿をした天火明命であった。
「いや、まあ‥‥そう申されても。神々との会見を調停する機会など滅多にありませんので」
 天火明命の傍らには二人の神がいる。こちらも炎をまとっている。偉丈夫が天御影命、すらりとした若い女が天鈿女命である。天御影命はじっと黙っていたが、天鈿女命は口を開いた。
「都の戦士たちよ、よく集まってくれた。早速みなの意見を聞きたく思うが」
 それでは、とマミから口を開いた。
「江戸をご存知でしょうか」
「エド? それは何じゃ」
 天鈿女命は問うた。
「東国の地名にございます」
「ふむ」
「東国はこのところ乱が絶えません。私が知る限りでも、源徳が奥州の伊達に追い出されてから平穏とは程遠い有様です。奥州藤原氏に属する伊達政宗は江戸支配の源徳家康をかねてより狙っていたと噂でしたが、死んだと思われていた源氏の嫡子源義経を奉じて江戸城を乗っ取り、今もかの地を占拠しています。そのため、関東では緊迫した状況が続いているとか」
「ほほう。ジャパン中で戦が起きているという訳か。昔を思い出す」
「昔といますと?」
「ここしばらくは、小さな戦いしか無かったが、何度もこの大地には争いが満ちた」
 最も最近では150年前。歴史から消えた関東王。古くは大和王権誕生以前。尤も、時の流れを気にしない天火明命の話は断片的で取りとめが無く、冒険者達は戸惑うばかり。
 それでは、と鉄州斎が白翼寺に目を向けた。
「京都の医師・白翼寺涼哉と申します。以後お見知り置きを」
 白翼寺はお辞儀した。
「私が見聞き知っている事件としては、帝都四方の事件があります」
 白翼寺の言葉に耳を傾ける天津神。
「ほう」
「一、二年前から帝都四方を巡る変死事件が起こりました。五行相克にあやかり死体に細工した事から、帝都全体に呪詛を施したと考えます」
「五行に呪詛とな。陰陽とやらの術か?」
「そこまでは何とも。尻尾をつかむには至っていません」
「ふむ」
「また、京都北部で、埋められた死人や土蜘蛛等が大量発生しております。最近では宗教対立に関わる貴族が土蜘蛛に襲われましたね」
「京都の北か。丹後に関係すると言いたいのだな」
「そうかもしれません。土蜘蛛は丹後から流れた物なのでしょうか?」
「我は炎の化身。土だの蜘蛛の事は分からん」
「では別のことを。帝都北東の山には鬼王が棲んでます。延暦寺が潰れたら帝都は鬼の脅威に晒されるでしょう。私は、国津神に斬られた村の守神を…救わずにはいられませんでした。民の拠り所を守る事も医師の務めでもある、と考えています。しかし神々が争い、また人が信仰心より争うのは心配でなりません。解決する方法は無いのでしょうか」
「戦士ならば、己の信じるものの為に戦え。我が言えるのはそれだけだ」
 この神が炎の神格だとすれば、戦いを好む武神であるのか。
 白翼寺は些か失望を覚えつつ、また話を変えた。
「‥‥ところで、相撲は古来から伝わる神事だと聞き及んでます。神様同士で、相撲等嗜まれるのでしょうか?」
 そこでチサトも問いかける。
「誇り高い方が自身の考案した訓練法を差置き、縁者が戸惑うほど熱く相撲を語る事に不自然さを感じます。相撲と言えば神々に愛好される方々も多いとお聞きしますが‥‥その可能性はありませんか?」
「何の可能性だ?」
 天津神に問われ、チサトは躊躇いがちに云った。神が憑依しているのではないか、と。
「相撲か‥‥好きな者もいたな。人に憑く者と言われると、はて思い出せん」
 天津神は気乗りしない返事だ。何か別の事を考えているようにも見える。
 次いで口を開いたのは橘。
「神皇様が講和による和睦を望んでおられる現状、宮津藩がその仲立ちをしてはどうか」
 これには藩主の鉄州斎がうなった。
「仲立ちすることにやぶさかではないが‥‥しかし」
「その際、使者には天津神様のどなたかを立てるべき」
「何だと?」
「都の大戦を差し置いて、丹後のみが静観を保つは日和見主義と思われよう。しかし、虎長殿と延暦寺、どちらか一方に肩入れも更に危ない。ならば、天津神と神皇家の関係を利用してはどうであろうかの。
 それに、国津神の侵攻ある中、悪戯に兵を割くのも良策ではあるまい」
「むむう。しかし、私の一存で決められるものではない」
 鉄州斎は天津神たちを見やった。
「丹後の使者というが、我らは藩主の臣下ではないぞ。戦に我らを利用し、使い魔のごとく扱うか」
 そう言ったのは天御影命である。
「そんなつもりは無いのだ。事情を聞いてほしいのだ」
 玄間が天御影命に進言する。
「神皇様は天孫の系統‥‥天津神の皆様を無碍に扱う事は出来ないと思うのだ。それに、魔王を称する者が恭順を求めた件について、“信虎公を魔王と称する風潮があると聞くが、黄泉人を使者にはすまいと断っておいたわ”など語って、信虎公の様子も合せて伺えないかな? なのだ」
「信虎って誰?」
「確か信玄公のお父上では」
 北斗は何かおかしいと腕組みし、慌てて訂正した。
「虎長様の間違いなのだ!」
「ふむ、虎長なる者のことは興味が無いではないが、しかし‥‥我らの立場を利用しようとは少し姑息ではないか?」
「無理なお願いではあろうが‥‥」
 橘は続ける。
「わたくし達の言葉よりも直接、虎長殿を見た方が、見定めも容易ではないかと思うがのう」
「なるほどな‥‥一考の余地を残すところだな、藩主よ」
 天火明命はそう言って鉄州斎を見やった。
「私には良しとも悪しとも分かりかねますな。さりとて、天津神様が都へ行かれるならお止することなど出来ませぬ」
 鉄州斎はそう答えるのみだった。
 続いて意見を述べたのはチサトである。
「今は丹後本来の姿を取り戻し、都の脅威とならぬ事が‥‥都の背後を守る事になります‥‥。先々代国司の一色氏は、都に臣従し兵を送る道を選びましたが‥‥結果は皆さんご存知の通り、領内の守りが行き届かず民人に無用な血を流させただけでした」
 チサトの言葉に玄間も賛同する。
「丹後は都まで一日で進軍出来る距離で、呪術的な面でも重要な要素を持つ土地なのだ。この地を平定する事が今丹後に出来る一番の都への忠義だと思うのだ。源細公亡き後、新たな国司が定められたとも聞かないのだ。虎長公が白と言い切れない現状で下手に救いを求めたら、魔王とも何とも言えない軍勢を迎え入れるだけにもなりかねないのだ」
 天津神は粛々と聞き入っている。チサトは頷くと、話題を転じた。
「魔王についてですが‥‥天津神様の知る千年前の魔王とは何者なのでしょうか? 伽羅夜叉が猛威を振るった数百年前‥‥それすら判らない事ばかりでした。まして千年もの昔の事となると判らない事ばかりです。ご存知の事を教えては頂けませんか?」
「魔王か。彼奴は変幻自在、何者と言われても答えに困るな。彼奴の事を最も良く知るは、おそらくスサノオであろう」
 スサノオ‥‥イザナミ、イザナギの子であり三貴子の一柱。天照大神の弟。
 そこで再び玄間が口を挟んだ。
「そう言えば、国津神に茶々を入れて回っている黄泉人が居るらしいのだ。修験者の姿を纏い、反魂の方を用いて操ろうとしたり、村人を唆して神域を怪我させたりしてる様子なのだ。魔王の使者を名乗った者は黄泉人だったと聞いたのだ、かつての魔王とは死者の王だったりするのか? なのだ」
 天火明命は深い吐息を漏らした。
「死者? いや魔王は今お主達がジャパンと呼んでいるこの大地を支配していた」