●リプレイ本文
●作戦開始
政府軍の防御陣地に到着する冒険者たち。
「あたしは由月。こっちは弟の陽健。真神姉弟をヨロシクね」
真神由月(eb1784)は政府軍の兵士たちににこやかな笑みを向ける。
「よろしくな!」
由月の弟である真神陽健(eb1787)は兵士たちに元気よく挨拶する。
陰陽師の登場に兵士たちは敬礼する。
「ほっほう!」
と黄桜喜八(eb5347)は忍犬トシオを連れて歩きながら、楽しそうに兵士たちに敬礼を返す。兵士たちは唖然として黄桜を見つめている。
風の鬼若(eb9217)は巨体を揺らしながら陣中を見渡す。兵士たちは鬼若の巨体に「でけえ‥‥」と目を見張っている。
ラファエル・シンフィニア(eb9543)と日高瑞雲(eb1750)は戦況について語りながら兵士たちの士気の高まりを確認していた。冒険者たちの到着で、兵士たちの士気は高揚しているようだ。
政府軍を指揮する永富のもとへ案内される冒険者たち。待ちかねた、とばかりに永富は冒険者たちを招き入れる。
広げられた戦場の地図を改めて確認するラファエルと日高。
鬼若と黄桜が永富と打ち合わせを行う。
「この人数ではこちらも無理は禁物。我々は撹乱に徹するべきだと思う」
「早朝に野盗の陣地から煙が立ったら合図だ。攻め込んでくんな。あと、敵の総大将を連れてくるからよ」
永富は了解の意を冒険者たちに伝える。
「私は隠密行動の心得が無いゆえ、政府軍の攻撃開始と共に参戦し、混乱を目的とした戦闘を主に行おう」
「俺も皆と同じく、敵陣に忍び込んで混乱を誘ってみよう」
日高とラファエルの言葉に頷く永富。
「私たち、鬼火を使うから、兵士の皆さんには、火矢などの火計を使わないようにして下さるかしら。攻め込んだ時に、鬼火が兵士を襲うといけないから」
由月の忠告に「心得た」と頷く永富。
そして日高とラファエルはその場に残り、黄桜と鬼若は陣地を後にする。
由月と陽健はそぞろに歩いて陣中を見て回る。
戦闘開始は早朝なのかぁ。陽健は、ちゃんと起きられるかな? と、そこはとない由月の不安が‥‥。
「朝方に奇襲すんのか‥‥眠いなー」
大きな声の陽健。その頭をぺしっと叩く湯月。
「声が大きいのよ、あんたは」
「冗談だよ。ちゃんと起きるってば」
「大丈夫かしら‥‥」
「姉ちゃん俺のこと信用してないな。おいらだってやる時はやるんだからさー」
「そうやって軽口叩いてるところ見ると、まだ真剣になってないわねあんた」
「いや! おいらは真剣だって! ほんとにもう、真剣そのもの!」
「いい? あたしの背中をアンタに預けるんだからね? ちゃんと護ってよね」
「自分の身くらい自分で守れよー」
「何ですって?」
「何でもありません」
二人はあれこれと話しながら陣中を歩いていく。
夜‥‥。
空飛ぶ木臼に乗って、野盗勢力の陣地に潜入する黄桜。以前叩いた野盗の生き残りがいるかもしれない、と思いつつ、慎重に敵陣の一角に着陸する。
背負い袋には毒キノコに浸したどぶろく十本。
何食わぬ顔で野盗たちの陣地に踏み込む黄桜。
「政府軍はすっかり怖気づいちまったようだ! どうだい! 勝ちは決まったようなもんだ! 景気付けに一杯やらないか!」
野盗たちは突然現れた黄桜を警戒することもなく、どぶろくを回し飲みした。
「河童! 気が利くじゃねえか!」
野盗たちは黄桜の恐るべき差し入れをがぶがぶ飲んでいる。
「良い香りだろ? ちぃとニゲェかも知れねぇけどよ」
黄桜は良い調子で仕込み酒を飲ませていく。すっかり上機嫌の野盗たち。
一口でも飲んでくれりゃ〜朝には眩暈、発熱、嘔吐、下痢で体力気力を削れる。思いっきり飲んでくれりゃ〜よ‥‥さよならだ。黄桜は振る舞いもそこそこに、その場を後にすると、陣地内を歩いて回る。酒盛りに注意を取られて野盗たちは気もそぞろであった。その隙を突いて、黄桜は手早く野盗たちの弓矢の弦を切っていく。
明け方‥‥野盗たちの退路に簡単な罠を仕掛けていた鬼若が野盗の陣地に戻ってきた。
鬼若は陣地の周りをぐるっと回って、見張りを一人一人片付けていく。
そして日が昇る。野盗たちの陣地から煙が上がった。黄桜の合図だ。
●戦闘開始
「お前ら何してやがる! 敵だ! 政府軍の奴らが背後に現れた! 敵襲だ! 敵襲!」
と、野盗の陣中で触れ回っているのは日高。野盗の頭目の声音を真似しているのだ。
呆気に取られた野盗たちは慌てて起き上がる。しかし、その半数はうめき声を上げて起き上がれない。
「く、苦しい‥‥」
這いずり回る野盗たち。
そこに近付いていく黄桜。
「何か悪いものでも食ったか、え?」
「か、河童‥‥てめえ、昨日の酒は‥‥」
「うまかったろうが。毒キノコ入りの酒だよ」
その言葉を聞いて倒れ伏す野盗。
黄桜は野盗の頭をぽんぽんと叩くと、立ち上がった。黄桜は印を結ぶ。
「忍法、大ガマの術!」
大ガマのガマの助が出現。黄桜はガマの助と忍犬のトシオとともに仲間たちの援護に回る。
野盗たちを急襲する鬼若。一人を背後から襲う。手刀を一撃。昏倒する野盗。
「うわっ! 巨人だ!」
野盗たちは後ずさる。
鬼若はずかずかと手近な柵に歩み寄っていく。柵の一部を引きはがした鬼若は兵舎らしき一角を塞いでしまう。
野盗たちはわけも分からないままに一箇所に集まり始める。
そこへ由月と陽健の姉弟が。由月はスクロールを広げると念を発する。轟音とともに火柱が上がる。
「な、何だ! ま、魔法だ!」
動揺する野盗たち。
続いて陽健もスクロールを広げて念を発する。再び立ち上る火柱が野盗たちをばらばらにしてしまう。
そこへ急降下してくるグリフォン。
「ぐりほん!」
日高の合図で旋回しながら野盗の一人を爪で攻撃するグリフォン。野盗は胸を切り裂かれて悲鳴を上げる。逃げまどう野盗たち。
日高も野盗の一人に突進。素早く抜刀して一撃。
ラファエルは両手に持った剣を振り回しながら野盗に攻撃を試みる。野盗と一対一の攻防を繰り広げるラファエル。魔法を使う余裕はなかった。
立ち上る火柱。その間隙を縫って、野盗たちが由月と陽健に迫る。
「あいつらだ! 陰陽師をやっちまえ!」
その前に立ち塞がる鬼火の「ひーちゃん」と「迦具土」、熊犬の「建御雷」。
野盗たちに襲い掛かる建御雷。野盗の攻撃をやすやすとかわしながら一人で三人の野盗たちを足止めする。
「ひーちゃん、ゴ〜♪」
ひーちゃんと迦具土は前に出ると、炎の壁を由月と陽健の周りに張り巡らせて防御する。
「そろそろ来ても良い頃だけど‥‥」
由月の呟きに応えるように、ときの声が響き渡る。政府軍が野盗の陣地に乗り込んできたのだ。
「始まったわね、行くわよ、陽健」
「よし、行こう」
由月と陽健はひーちゃんと迦具土、建御雷を連れて戦場に出た。
そこへやってくる日高とラファエル。
「大勢は決したも同然。残るは大将格を狙うのみだ」
そう言いながら野盗の攻撃を跳ね返す日高。
戦場の中を駆け抜けて行く四人。
日高とラファエルはひたすら野盗の攻撃を跳ね返していく。
そこへ合流する鬼若。
「こっちだ」
鬼若の案内で、後方に隠れていた野盗の頭目のもとへたどり着く冒険者たち。
「よし、それじゃ‥‥」
由月は仲間たちに魔法の効果について説明する。政府軍が全滅した幻覚を見せて浮かれさせるから、油断したところを討ってくれ、と。そして、印を結ぶと魔法の力を解き放つ。
「今よ、行って」
由月の合図で一同飛び出す。
「よおお前ら! 政府軍は全滅したって?」
魔法の効果で野盗の頭目は上機嫌。
日高、ラファエル、鬼若は武器を構えると、頭目を取り囲み、一斉に襲い掛かった。
三人が相手ではなすすべもなくぼこぼこにされる頭目。
「良い夢は見れたカナ?」
悠然とやってくる由月の言葉に応えられるはずもなく、頭目はただうめき声を漏らすだけ。
そこへ現れた黄桜。空飛ぶ木臼に乗っている。黄桜はロープを下ろすと、
「つかまれ!」
と頭目に向かって叫んだ。
頭目はこの「救助」に飛びついた。
頭目がロープをつかむと、空飛ぶ木臼は全速で戦場から離脱。行く先は政府軍の指揮官永富のもと。
大将が逃げ出すのを目撃した野盗たちは瞬く間に壊走して行くことになる。
「悪魔のような作戦だ‥‥」
そう呟いたのはラファエル。
戦場に戻った冒険者たち。野盗の陣地はすでに政府軍の兵士たちに占領されていた。
黄桜は忍犬トシオを撫でながらその働き振りを褒めていた。
由月と陽健は野盗たちの処遇を巡って永富と話し合いを進める。
日高、ラファエル、鬼若たちは水筒に口をつけながら戦場の様子を眺めている。政府軍の兵士たちが野盗たちを引っ立てていく。
鬼若が仕掛けた罠に引っ掛かった野盗たちも兵士たちに捕らえられていた。
●開放
ばりばりっと、要塞化された村々のバリケードがはがされていく。野盗たちは壊走。入場してくる政府軍を村人たちは今か今かと待っていた。
鬼若も村の開放を手伝う。バリケードを破壊しながら、野盗勢力の敗北を人々に告げる。
バリケードが取り払われると、村人たちがやれやれといった様子で家の中から現れる。
「ようやく終わりましたか。やれやれですなー」
村人の一人があれこれと鬼若に話しかける。
「立ち話もなんですから、うちに上がって下さい。茶でも出しますから」
「せっかくですが、まだ先に開放を待っている村がありますので」
「そうですかー、大変ですなー」
村人は鬼若の肩を叩くと、他の村人たちのところへ向かった。
鬼若は政府軍とともに村を出ると、次なる村へと向かうのであった。