京都近郊〜犬鬼来襲

■ショートシナリオ


担当:安原太一

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 80 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:12月07日〜12月12日

リプレイ公開日:2006年12月12日

●オープニング

 京都。
 近郊で多発するモンスターの攻撃、あるいは諸問題に対して、今日も冒険者ギルドには、様々な方面から依頼が舞い込んでいた。
 ギルドの職員たちは、詰めかける冒険者たちに依頼の内容を説明していた‥‥。

「年の瀬も迫って来たと言うのに、依頼の数は減りませんねー」
 職員は世間話を交わしながら冒険者たちを前に依頼用紙を広げる。
「ええっと、まあこれは、政府からの依頼でして。ご承知の通り、京都の政府は何かと手一杯でしてね。モンスターの攻撃とか、色々、地域の問題には中々対処し切れない部分があるようでしてね」
 職員は用紙を確認すると内容を読み上げ始める。
「周辺の村が武装した犬鬼に占領された模様です。村民たちはほとんどが避難できたようですが、逃げ遅れた者も何人かいるようです。以下、偵察部隊からの報告です。村の入り口となる西と東の林道には見張りの犬鬼が四から五匹います。偵察チームは手薄な南の森から村の中へ侵入しました。南側は田畑が広がっており、遠くに要塞化された村の中央を臨むことが出来ます。北側は山のふもとです。北側一帯には木の柵で防備が施されており、巡回の犬鬼たちが七から八匹。そして肝心の中央の要塞部分ですが、その東西と南には塹壕が張り巡らされています。今も犬鬼たちは塹壕を掘っており、昼間は五十体近い犬鬼たちが動員されています。その作業を指示しているリーダーらしき犬鬼たちが目撃されています」
 職員はさらに続ける。
「塹壕には切れているところがあるので、夜、偵察部隊はそこから入り込み、要塞に近付きました。要塞は村の住宅地を利用して作られています。住宅地の道を木の柵でふさぎ、即席のバリケードを築いているのです。柵越しに見たところでは、さらに二重三重のバリケードがあって、中はちょっとした迷路になっているようです。火が焚かれており、犬鬼たちの声が響き渡っていました。リーダー犬鬼たちは要塞の奥にいるのでしょう。リーダー犬鬼は十体以上はいるとのこと。偵察部隊が侵入できたのはそこまでです」
 職員は用紙を置いた。
「ギルドの方でも指針が出ています。リーダー犬鬼を倒すことです。リーダーを失えば、統率を失って他の犬鬼たちも撤退するでしょう。犬鬼たちは縄張りでも主張しているつもりでしょうが、とんでもない話です。陰陽師からは速やかにこれら犬鬼の集団を排除せよとの命令が出ています。冒険者の皆さんには、至急現地へ急行して頂きいと思います」
 そう言うと、職員は、村までの地図を取り出して、冒険者たちに手渡した。
「それでは宜しくお願いします。食料と、戦闘に備えて準備を怠りなく。健闘を祈ります」
 職員は冒険者たちを見送ると、次の書類を取り出した。
「それでは次の方、どうぞ!」

●今回の参加者

 ea6358 凪風 風小生(21歳・♂・志士・パラ・ジャパン)
 eb1599 香山 宗光(50歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb1798 拍手 阿邪流(28歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3834 和泉 みなも(40歳・♀・志士・パラ・ジャパン)
 eb4891 飛火野 裕馬(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

太 丹(eb0334

●リプレイ本文

●出発から道中まで
 太刀を抜く香山宗光(eb1599)。その刀身には一点の曇りもない。
 拍手阿邪流(eb1798)は拍手阿義流と双子の兄弟。上着に袖だけ通している。
「身長と童顔の所為でよく子供と間違えられ、子供の割に大人びた性格だと言われますが、年相応なだけなんです‥‥」
 話しながらグリフォンの「みぞれ」に予備の矢を十本づつまとめていく和泉みなも(eb3834)。留守番させてきたトカゲのうしおのことが少し心配。
 解毒剤を荷物に詰め込む宿奈芳純(eb5475)。万が一に備える心積もりだ。

 要塞までは数キロ。時間にして一時間くらいであろう。情報を仲間たちに伝える凪風風小生(ea6358)。
「犬鬼は群れで行動する場合もあるんです。士気は低いと思いますけど」
 犬鬼の特徴や習性などを仲間たちに伝える和泉。
 逃げ遅れた村人たちは十人以上はいるとのこと。村人たちの外見を脳裏で反芻する飛火野裕馬(eb4891)。
「よほど頭のいい犬鬼がいるんでしょうかね、相手には」
 宿奈が愉快そうに言うと、冒険者たちの間に笑声が上がる。彼らの士気は高い。
 鞍上から今回の依頼について言葉を交わす冒険者たち。

●要塞
 夜、南の森。事前に偵察隊から森の状況を聞いておいた飛火野。狩猟で獲物を追うときの足跡追跡などを活かして見回りが来ないようなところを進む。草木を掻き分けて進む冒険者たち。やがて冒険者たちは森を出る。暗闇の向こう、煌々と赤い光が闇を照らし出している。要塞化された村を照らし出す炎。風に乗って犬鬼達の鳴き声が聞こえる。
「ここまでは音沙汰なしか‥‥飛火野さん、和泉さん、行ってくれ。俺たちはここで待ってる」
 拍手の言葉に頷いた飛火野と和泉はみぞれの背にまたがると、夜の闇に飛び立った。

 みぞれに乗って村を周回する飛火野と和泉。住宅地の上空を旋回する。至る所に火が焚かれており、犬鬼たちが建物を出入りしている。地獄絵図を髣髴とさせる光景だ。
 一回りして帰還する二人。
「ま、要塞と言っても、あれは滅茶苦茶に木を積んだだけやなー」
 飛火野の言葉に、所詮は犬鬼か‥‥と呟くのは凪風と香山。野戦の心得がある侍や志士、浪人たちには大体想像がつく。
「村の中は空っぽだけど、さすがに要塞の周りには見張りが立っています。要塞の中は犬鬼で一杯ね」
 和泉の言葉に頷く凪風、作戦を確認する。
「夜明けの時限とともに地上から潜入する者と上空から強襲する者とでリーダー犬鬼を挟撃。こっちはもう少し待ちだね」
「それじゃ私たちは一足早く挟撃態勢をとります。飛火野殿と北側へ」
 和泉は飛火野とともに北側に回りこむ。

「そろそろ頃合だな」
 凪風の言葉に頷く冒険者たち。
 村の中へと歩を進める拍手。その動きは本職の忍者顔負けである。
「自分で言うのもなんだが、どんな陰陽師だか‥‥ま、さすがに数が多いからな、端からつぶしていくわけにもいかねぇ、無駄な体力をつかわねえようにするぜ」
 後続が明かりを使うようなら、手拭いなどを使って目立たなくするところであるが、使わないに越したことはない。
 凪風は念には念を入れてブレスセンサーを使う。犬鬼たちの数を察知。確かに村の中は空っぽのようだ。
 塹壕の切れ目を突破したところで数匹の犬鬼の見張りと出くわしたが、宿奈がスリープで見張りを眠らせる。

●要塞内部
 要塞のバリケードの迷路地帯では建物の上によじ登り、高い位置で迷路を抜ける道を見てブレスセンサーでリーダーと下っぱの犬鬼達の位置を確認する凪風。早速宿奈とテレパシーを使って情報交換する。
「凪風さんが先行するようですね。私たちも後に続かないと」
 宿奈がそう言うと、拍手がロープを取り出す。
「俺が先に行く」
 拍手はロープをバリケードに引っ掛けると壁の上に立つ。それから宿奈と香山を引っ張り上げる拍手。降り立つ三人。
 犬鬼相手なら自分の攻撃は脅威に値するはず。リーダー発見まで我慢し、発見後は派手に暴れる。多少やられても薬で復活し、再び暴れまくる‥‥。
「大げさに動けば良いのでござるな。腕の見せ所でござる」
 要塞内部に目を凝らす香山。敵の数が数だけに侮れない状況だ。
 凪風からの情報をもとに犬鬼たちをやり過ごしつつ要塞内部を進む三人。刻々と変わる状況をテレパシーで伝える宿奈。飛行班との情報の連携も完璧である。

「さーてどうするかな‥‥」
 凪風は建物の影から様子をうかがう。すでに要塞の奥深くまできている。先には十体以上の犬鬼。
 間もなく夜が明ける。
 程なくして、仲間たちが追いついてくる。
「何か問題でも?」
 拍手の問いに凪風は肩をすくめる。先を覗き込む拍手。
「なるほど、これ以上は避けられないか」
「こんな時こそ岩鉄を連れて行きたいでござる」
 ゴーレムの岩鉄で撹乱している隙に目的を果たす考えが一瞬香山の頭をよぎったが、絆が浅いので無理と判断したのであった。
「その日が来るよう頑張るだけでござる」
 回想から覚めた頃には、仲間たちは突入の態勢を整えていた。香山はオーラパワーを太刀に付与すると、犬鬼たち目がけて走り出した。

 夜が明ける。笛の音が響く。凪風の合図だ。
 和泉と飛火野は犬鬼の逃走ルートを塞ぐ様に舞い降りる。
 最初に現れたのは人、村人たちである。上空を飛んだ時には分からなかったが、彼らは無事だったのだ。飛火野は駆け寄った。混乱する村人たちを静める飛火野。どうやら隙を突いて逃げ出してきたらしい。
 それを追って現れた五体の犬鬼たち。犬鬼たちは咆哮しながら襲い掛かってくる。
「逃げろ!」
 そう言って突進する飛火野。しかし犬鬼たちの動きも早い。二手に分かれ、村人たちを追いつつ飛火野を取り囲むところだが――。和泉の強弓がうなりを上げる。解き放たれた矢は命中して犬鬼の体を貫通。犬鬼はその一発で地面に沈む。その隙に犬鬼に切りつける飛火野。
「早く隠れて!」
 和泉は村人たちに叫びながら強弓を引き絞る。

「意外に手こずりますな」
 仲間たちの中心に立って戦況を見つめる宿奈。印を結んでスリープを解き放つ。昏倒する犬鬼。
 大上段から犬鬼を切り伏せる香山。深手を負った犬鬼は悲鳴を上げて後ずさる。突っ込んでくる犬鬼の攻撃をかわしつつ気合とともに刀を振るう。刀は深々と犬鬼の体を切り裂く。わめきながら後退する犬鬼。
 凪風はウインドスラッシュを連発している。
 拍手は素早い動きで犬鬼の足を払う。犬鬼が転倒したところに小太刀を突き立てる。その背後からまた犬鬼が‥‥。拍手は振り向きざまに回し蹴りを放って気勢を制すると、二刀の小太刀で犬鬼を蹴散らす。
 犬鬼たちは逃げながら咆哮する。
 拍手は舌打ちする。
「仲間を呼ぶ気か‥‥行くぞ!」
 冒険者たちは一気にその場を突破。新手がやってくる前に要塞の最奥へとなだれ込む。と、またしても十体以上の犬鬼たちが現れる。凪風の手から放たれた稲妻に怯みながらも、犬鬼たちは突進してくる。激突する冒険者たち。
「今までと動きが違う。隊の長でござるな! 踏ん張り所でござるぞ! 宿奈殿!」
 香山の声を受けて長弓をかき鳴らす宿奈。リーダー犬鬼たちの動きが鈍る。
 凪風はウインドスラッシュを連発。
 動きも鈍ったリーダー犬鬼とはいえ、数が多いことに変わりはない。複数のリーダー犬鬼を相手にする拍手。何とか相手の攻撃をかわしつつ反撃する。
 なるべく一対一に持ち込む香山。流れるような偽装攻撃でリーダー犬鬼の防御を崩してしまうと刀を振り下ろす。その一撃が深々とリーダー犬鬼の体にめり込む。悲鳴を上げて後退するリーダー。
 背後では犬鬼たちの咆哮が響き渡っている。
 リーダー犬鬼たちは勢いを得て反撃に転じてくる。その刀が香山にヒットする。
「むうっ‥‥」
 香山は顔をしかめながらも刀を振るう。凪風も武器を構えて香山の援護に向かう。犬鬼たちの攻撃を引き付ける凪風。そして香山の一撃がリーダー犬鬼を切り伏せる。その懐から転がり出た瓶。瓶を拾う香山。
「解毒剤よ!」
 援護射撃しながら突っ込んでくる和泉。そのあとから飛火野。飛火野は村人たちを守っている。
 香山は解毒剤を飲む。それから回復薬も飲む。再び前線に復帰する香山だが、再度犬鬼の反撃を食らう。
 和泉の強弓から放たれた矢がリーダー犬鬼の体を貫く。犬鬼が振り向いたところ、さらに矢が命中。倒れるリーダー犬鬼。凪風が転がり出た解毒剤を香山に投げて渡す。
 飛火野も突進。リーダー犬鬼たちの攻撃をかわしながら反撃する。
 連携してリーダー犬鬼たちを撹乱する拍手、凪風、飛火野。
 回復した香山は犬鬼たちの隙を突いて、一対一の攻防に持ち込む。裂ぱくの気合いを込めて刀を振り下ろす香山。刀身が犬鬼の体を切り裂く。深手を負った犬鬼は後退する。
 負傷した犬鬼たちをやがて圧倒していく冒険者たち。一体、また一体と葬り去っていく。
 残るリーダー犬鬼も戦線を離脱していく。
 そこへ配下の犬鬼たちが殺到してくるが、リーダーたちはわめきながら逃げ出した。それに続いて逃げ出す犬鬼たち。
 
 要塞に響き渡る犬鬼たちの咆哮。悪夢のような叫び声だが、それがやがて遠ざかっていく。

 静寂。

「終わったようだな」
 小太刀に付いた血を振り払いながら二刀を収める拍手。
 飛火野は村人たちをかばいながら空を見上げる。
 灰色の空に光が差してくる。

 無人と化した要塞の中を歩いて回る冒険者たち。戦闘は終結した。犬鬼たちは敗走。冒険者たちはやれやれと息を吐き出した。

●至福の一時
 京に帰還後、戦闘後の武具の手入れを念入りに行う香山。この一時が至福の時。仲間の道具も希望があれば手入れする。
「この時が一番心安らぐ時でござる。貴殿らも宜しければ手入れするでござるよ。もちろん御代は結構でござるよ」
 せっかくの申し出。飛火野は自身の刀を鍛え直してもらう。輝きを取り戻す刀。その出来ばえはまさに一流であった。