ジャパン男児よ! 褌を掲げて立ち上がれ!

■ショートシナリオ


担当:やよい雛徒

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月06日〜09月11日

リプレイ公開日:2004年09月13日

●オープニング

 ジャパン男児の心。その名は『FUNDOSHI』。

 ジャパン表記『褌』である。

 エチゴヤを訪れた大山一郎は、一向に売れない褌に愕然とした。(人物注釈『大山一郎』:しがない漁師)
 何故だ! 何故に売れないのだっ!? 
 褌が輸入されると聞いた時には、心躍った彼だったが、現実は酔狂な貴族や僅かな愛好家が購入するに至っていたのである。
 つい最近、海を渡ってきたジャパン伝来の男性下着『FUNDOSHI』は本来ジャパン男児に愛されてしかるべき商品だ。
 キャメロットは文化が違うだろとかつっこんではいけない。
 真なる男たるもの! 心意気は皆同じ!
 大山一郎は信じて疑わない。
 そこでジャパン男児が立ち上がった。彼の名は『大山一郎』、漁師である。(THE リピート)

 彼は思った。今こそ立ち上がるときなのだと。
 ジャパン人に限らず、褌の機能性に胸を打たれ、愛用する者もキャメロットにいるはずだ‥‥
 
 というわけで冒険者ギルドに依頼が舞い込んだ。
 依頼内容は『ジャパンの歴史が生み出した男の心、褌のイメージアップを手伝ってくれる者募集』だという。
 はてさて、ジャパンが誇る男性下着『FUNDOSHI』は無事に誇りを取り戻すことが出来るのか?
 こうご期待。

●今回の参加者

 ea1745 高葉 龍介(34歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1916 ユエリー・ラウ(33歳・♂・ジプシー・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea3009 トルト・メトラ(17歳・♂・レンジャー・シフール・エジプト)
 ea3248 ヴァーニィ・ハザード(23歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea5984 ヲーク・シン(17歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)
 ea6401 ノイズ・ベスパティー(22歳・♂・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 ea6596 フィミリア・リヴァー(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

「では褌を広めてもらいたいわけだが」
「みなまで言うな大山一郎! 俺がフンドシのよさをキャメロット中に広げてやるぞ!」
「大山さんの褌に対する情熱的な心意気に感動しました。俺も、いかに褌がスバラシイ下着かを世間にアピールしたいです!」
「ふっふっふ、頼もしいではないか!」
 がしっと手を握って怪しい笑みを浮かべる団体様御一行。
 大山一郎はトルト・メトラ(ea3009)とユエリー・ラウ(ea1916)の威勢のいい声にじぃーんと胸を打たれつつも、褌もって冒険者街へときていた。褌広めようキャンペーンに参加した冒険者七名。何故か女性の姿まである。しかもユエリーに限っては、すでに褌一枚だ!
 意気込みが違う、というかこれぞまさしく男である。
 大山一郎、涙で前が見えない。
 なんていうか、言っちゃいけないけど‥‥ぶっちゃけ暇人だ。
 仕事はどうした大山一郎。
「楽しい事は好きだぞっ! 盛り上がっていこ〜」
 依頼人のぐーたら生活疑惑はさておいて。
 大量に用意された羊皮紙を手に、大山一郎含む八人は「おぅ!」とトルトのかけ声にあわせて空へ拳をつきあげた。大山一郎提案による褌祭りの始まりである。
 まず大山一郎は自分が隠し持っていた褌コレクションを皆に披露、続いて何枚かを冒険者に貸し出した。高葉龍介(ea1745)とノイズ・ベスパティー(ea6401)がジャパン語を知っている為、白い面に文字を書いてゆく。
 『愛羅武勇』、『闘魂』、『夜露死苦』、『大和魂』、『誠』、『雪月花』。
 ジャパン語の分かる人間にとっては複雑な心境だ。経費削減の為にビラは撒くのではなく許可を取って各所に張り出すことに決まったらしい。
「後はノイズ様の為に、なるべく人目につく場所に貼り出すだけですわね」
「そうだね。僕は会場が取れたらサクラになるよ。はやし立てる!」
 実演販売を思い浮かべて闘志を燃やすノイズ。
「フンドシって男くさいイメージがあるけど、俺みたいにカワイイ少年が締めれば、超ラブリーに見えるぞ!」
 トルト含め冒険者達には褌に対して抵抗がないらしい。
 彼らは今、未知なる暴挙――否、冒険に旅立とうとしていた。

『漢の裸祭り! 褌姿で俺達と握手!!』
 怪しげな煽り文句が書かれた羊皮紙が、街の此処其処へ張られてゆく。金の髪に白い肌、碧眼とくれば基本美形の特徴なわけだが、エルフ独特の外見に光り輝く『愛羅武勇』の書かれた褌一枚。そんなユエリーに引き続き、『夜露死苦』と書かれた褌を締めてるトルト。
 ジャパン人が見たら、危ない組織のにーちゃんだ。
 いや彼らの中にもジャパン人はいるのだが。
 まともな格好でビラを張り出す龍介やヴァーニィ・ハザード(ea3248)が微妙に不憫に見えてくるが、彼らも至って堂々と歩いている。男の中の男を思わせる風体に、何故か褌の宣伝。笑顔で爽やかに道を練り歩く男たち。奥様にはたまらない光景だ。
 一歩間違えたら連行されそうだが気にしてはいけない。
 さらに彼らの中には紅一点。フィミリア・リヴァー(ea6596)の姿まで。
 なんと彼女は褌を締めていた! 輝ける褌をその身に纏っている。白い玉の肌にきゅっと締まったその褌。くびれを嫌でも誇示する彼女の褌姿に――道行く男たちは虜というより顔真っ赤にして逃げ出していた。女性の素肌は色んな意味で目に毒だ。
 お色気担当を自称するフィミリア。
 むしろ‥‥誰か止めないのか、若者達よ。
 この場にいないヲーク・シン(ea5984)は、只今とある大会への交渉中だ。なんでもイイ男の大会があるらしいのだが、果たして潜り込めるかどうかは疑問である。何しろ相手は貴族様、ちょっと変わってるけど貴族様だ。
 噂をすれば、ヲークが道の向こうから歩いてきた――――抜け殻になって。
「ど、どうしたんだ」
 ヲークから不自然に漂うオーラに気圧されつつも、龍介はヲークに近寄りガクガクとゆすった。眼球が白い。意識が何処か遠くにいっているらしく、飛び戻すのに時間が掛かる。
 ヲーク・シン、若くしてジャパンの彼岸を眺む。
「う? お、皆どうした」
「こっちが聞きたい。屋敷で何かあったのか!?」
「屋敷‥‥――途中の事は、よく覚えてないんだ」
 スッと青い顔で目をそらす。
 ザ、身の危険センサー(本能)発動!
 これは聞いちゃいけない、十中八九聞いちゃいけない。本能的に何か危険なものを感じ取った男たちは追及をやめた。ともかくイイ男大会での披露許可はもらえなかったらしい。七人は大会での宣伝を急遽、冒険者街での宣伝に変更した。
 そして当日。
 冒険者街の一角で人が集まっていた。お立ち台の上にはデカデカと『FUNDISHI』の文字が書かれている。何が起こるんだろうと興味本位で来ている人間の方が群れを成していた。どこからともなく「これから褌ショーを始めます!」と聞こえてくる。
 と、ここでヴァーニィが現れた。ヴァーニィは『誠』の文字入り褌を締めて観客に離れるよう指示すると、ずらりと剣を抜き放ち、剣舞を披露したではないか! 
 おぉぉぉ! とどよめく観客達。ヴァーニィは動いてもずれない褌をアピールしていた。
 続いてヲークとノイズが現れる。二人はおもむろに向き合うと。
「ショップ・ジャポン! ヲークシーン・マーケチング提供!」
 と叫び、怪しい外国人風に喋りだした。
「Hi! ノイズ、今日は素晴らしい商品の紹介DA!」
「それは何? ヲーク」
「ジャポンの伝統! 神秘の肌着『FUNDOSHI』さ!」
「OH! そいつはグレートだね」
 漫才をやっているように見える、この二人。
 ‥‥いたって本気だ。
「ところでノイズ、格好良く割れた腹筋! みんな憧れるよNE!」
「ああ、でも鍛えるの大変で」
「ノ〜〜ォゥ、プロブレム。このFUNDOSHIは皆の熱い視線で脂肪を燃やし、締め付け運動で筋肉も鍛えられるのSA!」
「そいつは凄い! でも女性の筋肉ムキムキは」
「OH! 筋肉は腹部の脂肪を延ばすから、ウエストがくびれるんDA!」
「成る程、それじゃ女性にもお勧めだね!」
 褌1丁でボディビルダーの如きポーズをとった。
 ――――怪しさ満点である。
 様々な方法を駆使して褌のアピールを続ける冒険者達。一通りの公園が終わると、ノイズはひょいと舞台上に現れた。トルト、フィミリア、龍介、ヴァーニィの順で一列に並ばせると、声を張り上げる。
「じゃあ早速、愛用者の声を聞いてみようか!」
 ノイズはトルトから一人ずつ聞いて回った。
「フンドシのお陰でこんなにモテました! ラブリーフンドシ最高です!」
 コレを聞いたキャメロット在住モテないブラザーズ達は褌を買い求めた。
 切ない。切ないぞ男たち!
「褌姿の男性ってなんて素敵なのかしら! それにこの褌を着用するようになって以前よりウエストのくびれが格段にアップしましたわ、こんなに簡単に美しいくびれが保てるなんて‥‥今回いらして下さった方々だけの秘密ですわよ?」
 コレを聞いたフィミリアのファン達及び、贅肉に悩むご婦人達は褌を買い求めた。
 騙されている。順調に騙されている!
「おしゃべりは苦手だ‥‥。男なら、背中で語れ」
 コレを聞いた渋いダンディ達は褌を買い求めた。‥‥間違ってはいない、多分。
「褌は、身も心も引き締まり動きやすいな」
 コレを聞いた騎士の皆様は(以下略)。
「はいはーい、おさないでー!」
 ユエリーと大山一郎の所に怪しい空気を纏った人々が殺到している。
「色は情熱の赤と純真の白の二色から選ぶ事ができます。し・か・も!! 今なら特別に素敵なジャパン語の文字を入れる事も出来て、とってもお買い得! 記入はあちらで!」
 販売上手なユエリーが老若男女問わず営業用スマイルで対応。ばかすか売れる褌。まるで街の主婦の買い物光景だ。熱狂に包まれた会場で、大山一郎は理解してもらえた『かもしれない』褌の売れ行きに涙していた。大山一郎が用意した褌はすぐに完売。
 其々、依頼完了の事実に拍手して喜んでいた。

 その夜、一応成功したらしい褌祭りに関係者は宴会を開いた。宴会の最中。
「下着だけで恥ずかしくないのかって? え、これって下着なんだ? エジプトじゃ皆こんな格好で歩いてるぞ。ジャパンは違うのか?」
 知らぬが仏とはまさにこの事。
 実は下着と知らなかったトルトが、間の抜けた発言をしたとかなんとか。
 彼ら七人が身に纏っていた褌は、洗濯後に大山一郎の借家の壁に――飾られた。すごく輝いて見えたとは本人談。壁一面に褌を飾る感性はよくわからないものがあるが、ともあれ良くも悪くも褌は七人の手によって王都の一角に広められた。

 その後エチゴヤの褌が売れたかどうかは、――定かではない。